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(投稿:by 僻地の産科医)
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産科の無過失補償、中医協で初めて議論
新井裕充
キャリアブレイン 2008年10月28日
(1)http://www.cabrain.net/news/article/newsId/18869.html
(2)https://www.cabrain.net/news/article.do?newsId=18876
来年1月から開始する「産科医療補償制度」への加入を促進するため、「ハイリスク妊娠管理加算」などの施設基準の見直しについて審議した10月22日の「中央社会保険医療協議会」(中医協、会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)での委員の発言をお伝えする。
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「産科医療補償制度」は、通常の妊娠・分娩(ぶんべん)にもかかわらず子どもが重度脳性まひになった場合に、医療側の過失を裁判で証明しなくても補償金が支払われる「無過失補償」で、救急搬送された妊産婦の受け入れ困難などの問題の背景にある産科医不足を解消するのが狙い。
厚労省は、「産科医不足の原因は訴訟リスク」との考えから、産科の医療事故をめぐる紛争の解決を裁判に委ねず、民間の損害保険を活用した「無過失補償」によって「訴訟リスク」を軽減し、産科医不足の解消を図ろうとしている。
しかし、「この制度で救済されるのはほんの一部」「補償金の掛け金による収入は年間約300億円で、うち150億円が余る」など、さまざまな批判が相次いでいる。社会保険庁の解体に伴って削減される職員の「行き場」となる厚労省の関連組織の経営安定化を図ろうとする厚労省の思惑も見え隠れする一方、崩壊の危機に瀕している産科医療の現状を改善するため、「無過失補償制度の創設を急ぐべき」との意見もある。
制度を運営する財団法人・日本医療機能評価機構によると、同制度に加入済みの分娩機関は10月24日現在3088施設で、加入率は94.5%に達した。補償金の財源となる「掛け金」3万円を手当てするための「出産育児一時金の引き上げ」も既に決定している。制度の本格的な実施に向けた準備が急ピッチで進む中、「産科医療補償制度」が初めて中医協で議論された。
厚労省が提案したのは、リスクの高い分娩を扱う医療機関が算定する「ハイリスク妊娠管理加算」と「ハイリスク分娩管理加算」の施設基準に、「財団法人日本医療機能評価機構が定める産科医療補償制度標準補償約款と同一の産科医療補償約款に基づく補償を実施していること」との要件を加えること。
委員からは、「民間保険に入っていることを診療報酬の加算要件にすべきではない」「(産科医療補償)制度そのものが、まだ完成していないにもかかわらず診療報酬上の手当てをすることは時期尚早ではないか」などの異論があったため、継続審議となった。
………………………………………………………………………………………
【遠藤会長】
産科医療補償制度が創設されるわけですけれども、その促進のために診療報酬上手当てをしたらどうかという提案。具体的には、「ハイリスク妊娠管理加算」と「ハイリスク分娩管理加算」の要件の中に、この補償制度に入っているということを入れたらどうかという提案ですが、いかがでございましょうか。西澤委員、どうぞ。
【全日本病院協会会長・西澤寛俊委員】
私たちの団体も、この制度を推進する立場ではございますが、ちょっと現状について、いくつか教えてください。いま、対象となる医療機関がどの程度の数あって、現在の加入状況、それから、「ハイリスク妊娠管理加算」、「ハイリスク分娩管理加算」それぞれの点数を取っている医療機関数、さらに、その医療機関のうち、この制度に入っている医療機関数、入っていない医療機関数を教えていただければと思います。
【遠藤会長】
すぐ答え出ますか? では事務局、お願いいたします。
【厚労省保険局医療課・佐藤敏信課長】
平成20年の7月1日現在、ちょっと古い数字かもしれませんが、まず(ハイリスク)妊娠管理加算ですけれども、全国で1722(施設)届け出があります。一方、(ハイリスク)分娩管理加算は623(施設)と聞いております。それから、今ご質問のありました「産科医療補償制度」の未加入医療機関数は、それぞれ、61(施設)、14(施設)と聞いております。冒頭に申し上げました1722と623に対して、61と14が未加入ということで、未加入の割合は、それぞれ3.5%と2.3%と承知しております。
【遠藤会長】
西澤委員、どうぞ。
【西澤委員】
今、もう一つ、質問があったのですが。この、管理加算を取っている…。
【遠藤会長】
あの、質問の残りが、まだ事務局から…、すみません、お願いいたします。
【医政局】
医政局の医療安全室長でございます。現在の全般の加入状況について、ご報告申し上げます。まず、病院・診療所につきましては、日本産婦人科医会の調べでございますが、分娩医療機関が2839(施設)ございまして、このうち、「加入をする」と言っていただいたところが2704施設でございます。現在のところ、加入率としては、95.2%となっております。助産所につきましては、427施設のうち367施設で、加入率は85.9%。全体では、94.0%の加入率となっております。
【遠藤会長】
西澤委員、どうぞ。
【西澤委員】
もう一つ質問ですが、この施設基準に新しく追加する文章の中に、(財団法人日本医療機能評価機構が定める産科医療補償制度標準補償約款と)「同一の」(産科医療補償約款に基づく補償を実施していること)という言葉がございますが、これはどういう意味でございましょうか。
【遠藤会長】
「同一の」の中身でございますけれども。では事務局、どなたでも結構です。
【佐藤課長】
この文章はもともと、制度を検討している医政局の制度設計の中で使われている言葉を使ったものでございまして、「約款と同一の」ということでございまして、財団法人日本医療機能評価機構が定める産科医療補償制度の中で、標準補償約款というのを決めているわけですが、その約款と同一の内容の約款で補償を実施していること、こういう説明になります。
【遠藤会長】
ありがとうございます。西澤委員、よろしいですか? 「内容が同一だということだ」というご説明だったと思いますが。
【西澤委員】
ということは、(日本医療)機能評価機構でなくても、同じ約款がある組織ができたとしたら、あるいはあったとしたら、それでも構わないということでしょうか?
【佐藤課長】
私ども、医政局からは、「そうだ」と聞いております。
【遠藤会長】
よろしいですか? それとも、その辺をもう少し、後日、明確な…。西澤委員、どうぞ。
【西澤委員】
いくつか整理しますと、まず、例えばこの点数(施設基準)を入れたことによって、「ハイリスク妊娠管理加算」は61(施設)が、もしかしたら点数を取るために入るかもしれない、あるいは、(ハイリスク分娩)管理加算は14(施設)入るかもしれない。また、この二つはダブっていると思います。合わせたところで60か70(施設)、入っていないのが135(施設)とすると、これ(施設基準見直し)があることによって、100%にはなり得ないということが一つの事実だと思っております。
それともう一つ、「同一の」について、今回の制度はある意味で、わたしから見ますと、民間の医療保険に加入することというものが、この公的医療保険の加算の施設基準の条件になっているということでは、ちょっと、(診療報酬制度の)在り方としておかしいのではないかなと考えております。
正直言いまして、わたしたちも、この制度は、無過失補償というのは大事だから進めるということでやってきたのですが、そういう立場は変わりません。(加入率を)100%にするためにあらゆる努力をしようと思っていますが、片方で、中医協委員として、診療報酬制度の在り方、あるいは公的(医療)保険の在り方というものを考えたときに、民間保険に入っているということを条件にするということは、どう考えてもわたし自身は違和感があるのですが、そのあたりはいかがでしょうか。
【遠藤会長】
事務局、どうぞ。
【佐藤課長】
(配布資料の)「総―4第2」の「課題」の最後のところにございますように、この話(施設基準の見直し)の発端は、そもそも、社会保障審議会の関係部会(医療保険部会)において、委員の中から診療報酬上の対応を求める意見があったということが発端だと承知をしておりまして、その意味で、皆さま方の、ある程度、ご理解の上に、このアイデアが乗っかっているということを、まずご承知おきをいただきたいと思っております。
例えば、医療課でありますとか、この中医協をつかさどっている、担当分野であるわたしどもの発案ではないということが、まず第一点でございます。
それから、「診療報酬になじむかどうか」という点では、直接的に患者さんの病気への対応、治療、あるいは健康の保持増進につながるということであれば、一般的に診療報酬上の項目になり得るのでしょうが、直接的に患者さんの病気の治癒に関係しないものであっても、これ一概に診療報酬の項目にならないということでもないし、これまで項目になってきたものもあるんだろうと思います。
それから三つ目は、医療課が言う話ではないかもしれませんけれども、昨今の産科をめぐる事件、事例、あるいは世論、こういったことを勘案しますと、産科の中で特にこう、トラブルというわけでもないんですが、重篤な障害に悩んでいらっしゃる、あるいは、産科の処置をめぐってさまざまな議論が巻き起こっているという中で、非常に社会的な意義が深いという観点から、こういう制度が発案され、まさに西澤委員からお話がありましたように、(加入率が)100%でないというのは、むしろ、そういう意味では、患者さんや国民の立場に立てば、「それでいいのか」というご懸念もありましょうから、「これがすべて」とは言いませんが、ホームページで(の加入呼び掛けなど)ご努力をいただくというようなことがある中の一つとして、診療報酬上もそうした形で、支援なり、応援なり、後押しができるのであれば、という考えだろうと思いまして、今日は提案させていただいた次第です。
【遠藤会長】
事務局、続けてどうぞ。
【医政局】
医政局から、若干補足させていただきたいのですが、佐藤課長からもご説明ありました通り、産科医療補償制度につきましては、現在の産科医療のさまざまな状況を改善すべくつくられたものでございまして、ポイントとしては、お金(補償金)を払うだけではなくて、原因究明、あるいは再発防止の仕組みを入れていくということでございます。
お手元の資料の5ページ(産科医療補償制度の概要図)をお開けいただきますと、原因究明と再発防止の部分につきましては、国から支援をしていくということでありますし、またこれまで制度設計に当たりましては、国としても支援をさせていただきましたので、民間の保険を使うものではありますけれども、これまで国としてバックアップしてきた「特別なもの」とお考えいただければと思います。
【遠藤会長】
はい、ありがとうございます。
【健康保険組合連合会専務理事・対馬忠明委員】
あの、二つほど質問といいますか、意見も入りますけれども、一つは、(平成)21年1月1日から実施されるということで、先ほどの説明の中でも、「予定である」と説明されたと思うのですが、先般、確かに(社会保障審議会の)医療保険部会、わたしも出ていましたけれども、その時にもいろんな意見が出たんですね。
例えば、全体の財源(年間約300億円の掛け金収入)と、実際に発生する(重度脳性まひの)子ども、その差額(約150億円)が出たときにどうするんだとかですね。それについては、(医療保険部会の)各委員に対してはきちんとした、「これについてはこう考える」という資料を出すということだったが、まだ出ていないということもありますし、あと、「パブコメにかける」(国民からの意見を募集する)という話もあるんですが、これもまだかけていないんじゃないかと思うんですね。
そういう意味では、今回、ここで決めるというのはどうなんだろうかということが一つございます。(無過失補償制度の)方向性としては、私もこれに反対するわけでは必ずしもないのですけれども。ま、こういった「本体」(産科医療補償制度)がまだ確定していない段階で、診療報酬上の対応だけを決めるというのは、ちょっと早計ではないかなと、こう思います。
それからあともう一点、今の話に関連するのですが、わたしどもとしましては、これ(施設基準見直し)をやることによって、出産にかかわる医療機関が100%(加入にならない)、今の質疑応答を聞いていますと、必ずしも全部ではないようですね。そうしますと、例えばですけれども、「ハイリスク妊産婦共同管理料」という項目もございますすね。そういった項目の対象としては、例えば100%(加入)になるのかならないのか、そういった議論も若干必要じゃないかな、こう思います。いずれにしろ、今日は方向性というか、そういったことにとどめてはどうか。あらためて、これから中医協もかなりの頻度でやると思いますので、1月1日の実施まで、まだちょっと時間があるかなと思います。提案です。
【遠藤会長】
ありがとうございます。ご提案として承っておきます。先ほどの順番でいきますと、(次は)高橋委員、どうぞ。
【全日本海員組合中央執行委員・高橋健二委員】
一点だけ確認しておきたいのですが、(資料)6ページ(の「補償」)で、「当該分娩機関から当該児に補償金を支払う」という形になっており、いわゆる分娩機関から直接、子に支払うとなっていますが、5ページの(産科医療補償制度の)図で見ますと、保険会社から妊産婦に直接補償金が支払われる形になっているので、どちらが正しいのか教えてほしい。
【医政局】
まず対馬委員からのご質問ですが、実施の時期につきましては、来年の1月1日に生まれた児から補償を開始するという予定で、準備を進めております。「予定」というのは、「こういうことでやる」ということでございます。
それから5ページの(高橋委員からの)ご質問ですけれども、補償金について保険会社から妊産婦等へ直接(支払うという)線が出ておりますけれども、実際にはこういうふうになりますけれども、契約上の流れといたしましては、分娩機関が妊産婦さんに、万が一の場合に補償金をお支払いする。そこで(補償金の支払いで)生じた損害を保険会社が補てんするという仕組みになっております。
【保険局総務課長】
続きまして、出産育児一時金の関係でございますけれども、医療保険部会での議論を踏まえまして、私ども、政令(改正)のパブリックコメントの作業も急いでいるところでございます。当然、来年1月からの産科医療補償制度の施行ということでございますので、私ども、急いでおるところでございます。
【遠藤会長】
ありがとうございます。引き続きまして、医療課長、どうぞ。
【佐藤課長】
今、(産科医療補償制度について)個別の事実関係を各関係課からお話をしましたので、ちょっと全体的なことについてお話をしたいと思います。
まず、(平成)21年1月1日の予定になっていて、そういう中で、「少し急ぎ過ぎじゃないのか」というニュアンスに近いご質問があったかと思います。で、まず「予定」とは申しましたけれども、私ども医療課の理解では、ほぼ予定通り進むんだろうとは思いますが、今日この時点で、制度全体が法令的な手続きも含めてすべて終了しているということではなさそうだったので、「予定」という言葉を使わせていただいた。恐らく予定通り決着するんだろうという理解でおります。
それから、二つ目は、仮に1月1日実施だとすると、今年中にもまだ何回も(中医協)総会なりがあるんだろうというお話かもしれませんが、私どもが各病院の状況を聴き取りしてみますと、公立病院のようなところは、(補償金の)掛け金の支払いということについて、それ相当の事務手続きが必要なところがあるようです。これは、資料5ページ(産科医療補償制度の概要図)の「掛金」というところを見ていただきますと、分娩機関が運営組織(日本医療機能評価機構)に支払いをするということになっておりまして、例えば公立病院を例に取りますと、公立病院が運営組織に掛け金を払う。
こうなりますと、病院や市町村、県のお考えにもよるでしょうけれども、あらかじめ歳出に関する費目みたいなものを準備しておかなければならないと考えているところがあるようです。そうしますと、通常ですと12月議会にお諮りをしてという、かなり丁寧な手続きまでする自治体、あるいは病院があるんじゃないかと考えます。そういう意味では、ある程度の余裕を持って、こういう制度を導入しようとしているということをお伝えしないといけないのかなと考えた次第です。そういう意味で、今日は相当ぎりぎりに近いタイミングでお話をしているということになります。いずれにしましても、仮にこの場でご了承いただければ、この内容で、都道府県、市町村も含めて全国の医療機関にお伝えをして、そして、特に公立(病院)の場合は、繰り返しになりますけれども、議会の承認を得る等の、必要があればですね、やっていただくという時間的余裕を与えたいということです。
それから、さらに参考までに申しますと、仮にですけれども、本当に1月1日が、こう言うのもなんですが、医政局や保険課のツナワで、1月1日実施が不可能になるようなことがあれば、それに合わせて時期をずらすということは、最悪の場合には、それは考えてもいいのかなと思っております。
それから、恐らくこういうご質問かと思います。「ハイリスク」という言葉が付いている診療報酬の項目は、これ(妊娠管理加算と分娩管理加算)だけじゃないだろう
というお話だろうと思います。例えば、ハイリスク妊産婦共同管理料を取っているところがあるんだから、この二つ(妊娠管理加算と分娩管理加算)さえ、とらまえれば、ハイリスク分娩をやっているところが全部包含されるというわけでもないんじゃないか、というご質問だと理解いたします。結論から申しますと、恐らくこの二つをとらまえれば、ご質問のあったような(ハイリスク妊産婦)共同管理料のようなものも包含されるような形で把握できるだろうと承知しております。純理論的に考えれば、「絶対にすべてそうか」と言われるとちょっと難しいのですけれども、ほぼ間違いなく、この二つの項目の中で対応しておけば、ハイリスクにかかわる妊娠と医療機関というものは、この中に包含されるだろう。「代表選手」として入れるということで対応できると理解しております。
【遠藤会長】
はい、それでは西澤委員、どうぞ。
【西澤委員】
今、(産科医療補償)制度の話になったんですけれども、どうも、制度の議論になっていると思います。わたしは、制度を推進する立場で、それ(制度)はいいんですけれども、そうじゃなくて、あくまでも診療報酬の話をしている。言い方を変えますと、分娩というものは、基本的にはわたしは自由診療だと思っています。一部例外がありますが。その自由診療である分娩における、民間保険を使った補償制度ですね、今回は。それへの加入というものを公的医療保険の加算点数の施設基準にするということはおかしいんじゃないか、そのことを申し上げております。制度自体がどうこう、制度のことを言っているんじゃなくて、そういうことはおかしいんではないか、「診療報酬の在り方としてどうか」という質問です。
【遠藤会長】
医療課長、どうぞ。
【佐藤課長】
分娩は、西澤委員がおっしゃるように通常は自由診療なんですけれども、自由診療で経過していて、突然、異常(状)が、異常(状)というのは、ちょっとなかなか言いづらい言葉なんですけれども、帝王切開が必要になるとか、何か特別な処置が必要になる場合には、そこから保険診療に移行しているわけで、その保険診療の中でも、特に大変な障害や異常(状)が生じている場合には、これが「ハイリスク分娩」や「ハイリスク妊娠」という管理加算が取れるような対象にまで発展していくというか、段階が進んでいくということになるんでしょう。
従いまして、ここで言っている保険上の追加事項の、(ハイリスク妊娠管理加算の施設基準イ・ロの次に追加する)「ハ」とか、(ハイリスク分娩管理加算の施設基準イ・ロ・ハ・ニの次に追加する)「ホ」というのは、正常分娩の方について、何か保険診療上、特別な施設基準の縛りを付けようというものではなくて、正常な妊娠過程だったかもしれないけれども、途中で、あるいは最初から、非常に大変な妊娠、つまり(健康)保険を使うような状態になり、しかもその中でも、特に「ハイリスク」と呼ばれるような状態、そういう方に限定して「ハ」と「ホ」という基準を付けておりますので、必ずしも(西澤)先生がおっしゃるように、正常分娩の方を最初から念頭に置いて、保険上の縛りを付けるという構成にはなっていないと承知しています。
【西澤委員】
「縛り」というのは、今回の施設基準が正常分娩の方の縛りになっていない。その通りでございます。わたしが言っているのは、民間保険に加入するということとの関係が理解できないということでございます。
【遠藤会長】
よく分かります、おっしゃっていることは。高橋委員、何か、よろしいですか?
【高橋委員】
そうしますとですね、分娩機関を通過して妊産婦の方に(補償金が)支払われるということではなくて、直接保険会社から妊産婦に補償金が支払われるという理解でよろしいんですか?
【遠藤会長】
事務局、お願いします。
【厚労省担当者】
便宜的にそうなると思います。契約上は分娩機関が妊産婦さんに対して補償金をお支払いする、そこに生じた損害を損保会社が補てんをするという形になりますけれども、「お金が行ってまた戻って」ということよりも簡便にするために、患者さんのところに(保険会社から)直接お支払いをするという形になります。
【遠藤会長】
ありがとうございます。高橋委員、どうぞ。
【高橋委員】
直接、保険会社から妊婦さんに支払われるという理解でよろしいんですか?
【遠藤会長】
事務局、お願いします。
【厚労省担当者】
はい、費用についてはそう。(補償金支払いの)実際の流れはそうなります。
【遠藤会長】
よろしいですか。
【全国公私病院連盟副会長・邉見公雄委員】
(佐藤)課長さんが(公立病院について)言いましたけれども、公立病院の現状とわたしの意見を述べたいと思います。わたしどもは、制度自体には賛成です。議会とか審議会では、「公立病院なのに、なぜ民間保険に入るのか」という意見もございましたけれども、とにかく今、早く(制度創設を)やらなければならない。直近のデータを見ますと、自治体病院でまだ(制度に)手続き上入っていないのは1施設のみで、ほとんどの病院が入っています。ただ、保険料を払うのが12月議会とか、あるいは補正予算とか、いろいろ。ま、松浦委員(香川県坂出市長)みたいに医療に理解のある市長とか知事がおるところは簡単なんですけれども、なかなか、そうじゃないところは難しい。やはり、予算的措置がありますので。わたしどもも、審議会は通りましたが、まだ議会は通っておりません。分娩ジョウの値上げなどが重なりましたので、ややこしい状況にございます。
ただ、西澤委員も心配されておるのは、民間保険に入るのが今後、診療報酬の加算のルールにいろいろ影響を与えてこないか。例えば、麻酔医は民間保険に入っています。麻酔の事故も、どう注意しても起こることがありますので保険に入っています。内視鏡、例えば胃カメラとか大腸ファイバーなども入っています。そういうのが、入らなかったら麻酔管理料がもらえないとか、内視鏡の点数がもらえないというのは、ちょっと困るんじゃないかなあということもありますので、今回は「特例」というか、「緊急避難的な、スペシャルなものだ」と思って、賛成したいと思います。
【遠藤会長】
はい、ありがとうございます。ご意見ということでございますね。勝村委員、どうぞ。
【連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員・勝村久司委員】
まず質問なんですけれども、制度は1月1日からということですけれども、施設基準を改正する場合、それが実際に運用されるのはいつからですか?
【遠藤会長】
事務局、お願いします。
【佐藤課長】
制度の創設に合わせまして、1月1日を同様に予定しております。
【遠藤会長】
勝村委員、どうぞ。
【勝村委員】
対馬委員からもありましたけれども、今、制度に賛成とか反対とか意見が出ているんですけれども、わたしの認識では、この制度がどんな制度なのかはっきりしていないので、時期が迫っていますけれども、(制度が)はっきりできていない、時期尚早じゃないかと思うわけです。その理由は、ここ(配布資料)に書かれているように、この制度自体は2年前に(日本)産婦人科医会が、自民党、公明党との関係で、この制度をつくるということが決まって、その上で、どういうふうにしていくかという議論が進んできたという理解なんですけど。わたしも、二人子どもを産科の医療事故で亡くしていまして、一人は9日間、二人目は2歳半、二人とも重度脳性まひで結局死亡している関係から、脳性まひの子どもを抱える多くの親とか、実際に医療裁判した知り合いが多いわけですけれども、2年前にこの制度が発表された時には、(医療側と患者側の)両者からそれぞれ多くの危惧(ぐ)が出されていて、この危惧が2年間で払拭(ふっしょく)されるかということが議論になっていたと思っています。その結論がまだ出ていないと思っています。
一つ目は、実際に脳性まひを抱えている親の意見は、これ(産科医療補償制度)は、極めて産婦人科医が訴えられる可能性のある内容に限られていて、脳性まひの子どもが多い未熟児は対象外ですし、先天性(の脳性まひ)も対象外。それは、脳性まひを抱えている親からすると、自分たちが一緒にやっている脳性まひの子どもを抱える親たちのコミュニティーの中に差ができてしまう。それよりも、もっと、(補償の)額を減らしてでもいいから、広く薄く全体にやってほしいという声が一様に出ている。それが実現できないのか、ということ。
さらに、お金の支払い方に関しては、子どもが死亡したら、残りのお金、3000万円のうちの残りのお金を一気に、死亡した場合でも親に全部支払ってしまう。そういうことが、幼児虐待とか言われている中でモラルハザードを起こさないのかとか、お金の支払い方に関して、非常に危惧されておった。それに関しては結論が出ておって、「それは変えられない。ただし、5年後に見直すかもしれない」という結論が出ていると理解しています。
もう一つの危惧は、実際に医療裁判をしてきた人たちからすると、原因の究明と再発防止を求めて、わたしたちは裁判をしてきたと認識しているわけです。にもかかわらず、一部の裁判では、原因を隠そうとしていくようなところがあって、それに対して、「本当のことをちゃんと知りたい」ということが医療裁判であったと、ぼくは認識してるんですけど。そうすると、過失があろうとなかろうと金を払ってしまうということになると、なおのこと原因究明がいい加減になってしまわないか。それと、ますます再発防止に生かされないんじゃないかという危惧が2年前に出たわけです。
それに関しては、この制度の中で、原因究明委員会、再発防止委員会をつくってきちんとやっていくとは言っていますが、それがどんな規約でされ、どんな内容でやられていくのかということに関しては、先送り先送りで、12月になってようやく原案を出していこうかというタイミングだと理解しています。なので、このタイミングで制度に賛成、反対と言っておられるのは、本気で制度を考えている者からすると、ちょっと時期尚早じゃないかというのがぼくの認識で、対馬委員がおっしゃったように、他にもいろいろばたばた慌てておられる中でのご苦労もあるかもしれませんが、ちょっと、この段階で賛成、反対とか、推進すべきと言うのは、特に原因究明と再発防止がどのようにされていくのかという原案、具体案がまだ一切出されていないわけですから、それが出てから、ということの方がぼくは筋が通るんじゃないかと考えています。
【遠藤会長】
はい、ありがとうございます。邉見委員、どうぞ。
【邉見委員】
今、いろんな意見が出ましたので、ここでいっぺんに決めてしまうのは難しいんじゃないかなあと。先ほど、「賛成」と申し上げましたけれども、こんなに多くの意見が、違った意見が出ると、今日1回では難しいんじゃないかなという感じがいたします。賛成という意見を言いました者からして。
【遠藤会長】
分かりました。竹嶋委員、どうぞ。
【日本医師会副会長・竹嶋康弘委員】
実は今日、中医協委員の中で、(産科医療補償制度の)準備委員会のメンバーはわたしと勝村委員ですね。最初から、勝村委員ご存知のように、相当激しい議論がなされましたね。そして、やってきまして、制度の設計、そういう中で、まさに勝村委員のご指摘のあったような「再発防止」「原因追究」、それからもう一つは、(日本)産婦人科医会から出たのは、言うまでもなく、地域の現場で産科医が「委縮」と言いますかね、そういう状況になっているというようなことの中から、「なんとか」ということで、できて。しかも、患者さん含めてご家族も(準備)委員会に直接出てこられて、訴えられた。そういう経緯は、勝村委員、ご一緒にね、議論したものです。
従いまして、制度に関する議論はですね、これは十分、そこ(準備委員会)で戦わされている。ですから、勝村委員の認識と、私どもの認識は違うということ。それは一つだけ申し上げておかなければいけない。ここで議論するつもりはありません。と申し上げますのは、そういう、きちっとした、オーソライズされた委員会でね、決めましたことを、今からどう、どう、それをね、徹底させていくかということが、まさに中医協の中で、今度は診療報酬で、それを手当てするということが議論されるわけですから。そこのところは、分けてやらないと、これは申し上げておきます。
【遠藤会長】
手短に、勝村委員どうぞ。
【勝村委員】
準備委員会の中では、「原因究明と再発防止が非常に大事だ」ということで認識は一致したという理解でね、いいかと思うんですけど。ただ、具体的にそれをどうしていくのか、どんな規約で、どんな委員会が開かれるのかという具体策はまだ一切出されていない。12月に出る予定だということなんですよね。だから、それを受けて、こういう(施設基準見直しの)議論が始まる方が筋じゃないかということのみを今、意見として言っているつもりですけれども。
【遠藤会長】
はい、大島専門委員、どうぞ。
【国立長寿医療センター総長・大島伸一委員】
産科医療が大変な問題だということは、皆よく理解されていると思うのですが、そのことの問題と、制度そのものの在り方の問題を一体どうするかは随分違う話でして、その問題を分けて、きちんと整理をしていただいて、例えば制度の在り方の問題について、こういったことを基本的に受け入れていくことになれば、一体どういうメリットと、どういうデメリット、あるいはどういう問題が生ずるのかということについて整理をしていただいてですね。
例えば、無過失補償問題というのは、産科問題だけに限った話じゃないんで、いろんなところで、医療全般について起こっているわけですよね。そうすると、あらゆるところから、似たような話が申請されてきたときに、「こういう前例があるから、(診療報酬)制度の中に組み込んでいくのは当然じゃないか」という議論に、もしつながった場合に、「それは問題ない」と言い切っていいのかどうかということが、ちょっと分からないんですね、話を聞いていて。従って、議論を産科医療(補償制度)の問題と、西澤委員が指摘されたように、(診療報酬)制度そのものの在り方の問題と分けて整理していただきたいと思います。
【遠藤会長】
はい、ありがとうございます。それでは、安全管理室長どうぞ。
【医政局医療安全推進室長】
今までの検討の状況なのですが、資料3ページ(産科医療補償制度創設に向けたこれまでの取り組み状況)をご覧ください。このこと(産科医療補償制度)については、平成19年の2月から(日本)医療機能評価機構におきまして、(準備)委員会をつくりまして、議論してまいりました。その中に、竹嶋委員、勝村委員も入っていただいたというところでございます。そして、今年の1月23日に「報告書」を取りまとめまして、その後、保険商品としての認可、また10月からは妊産婦さんの登録も始まっていまして、1月1日からスタートするということになっています。そのような状況の中で、原因究明と再発防止については、(日本医療機能)評価機構の中に設けられました運営委員会できちんと議論してまいりたいと考えております。
【遠藤会長】
ありがとうございます。藤原委員、どうぞ。
【日医常任理事・藤原淳委員】
(産科医療補償制度の創設に伴う出産育児一時金の引き上げを承認した9月12日の)社会保障審議会の医療保険部会に出た委員として一言申し上げますけれども、その場でも大変異論が出ました。しかし、これ(産科医療補償制度の創設)は基本的に了解と。今日出た意見と同じような意見が出されて、結局、「了解」ということになったとわたしは理解しております。
それで、先ほどからいろいろな意見が出ている中で、診療報酬とは関係のない項目を要件としている、ここについては、どなたも少し引っかかるところがあるのではないかと思いますけれども、先ほど厚労省から説明がありましたように、治癒に関係しないもの、そういったことを要件とされると、今後のあしき前例になると。
しかしながら、今、世論なども後押ししている状況の中で、わたしどもとしては、(今回の施設基準の見直しは)「特例中の特例にして」との要望も先ほどありましたので、これはあくまでも「特例中の特例」で、「前例にならない」という位置付けで、わたしはこの会(中医協)でまとめていただきたいと思っております。それからまた、この件に関しましては、制度の在るべき形としては、少し疑問に感じられている方が多いと思いますので、また別の財源をと、これは少し緊急避難的な状況でありますので、そういったことも考えながら対応していただきたいと申し上げます。
【遠藤会長】
ありがとうございます。小島委員、どうぞ。
【日本労働組合総連合会総合政策局長・小島茂委員】
基本的に、産科(医療)補償制度の趣旨については賛成です。あとは、診療報酬上、どう、これ(制度への加入)を要件に据えるかというところについては、西澤委員が指摘されたような、まさに「違和感」をわたしも持っているところです。ここが、今日の議論のポイントだと思うんですけれども。そこについて、(佐藤)課長からも説明がありましたけれども、民間の損保商品に加入することについて、それを診療報酬を算定する条件にすることについてのところが、まさにポイントだと思うんですけれども、「それでいいのか」という違和感を持っているところです。
その際、「特例中の特例」と藤原委員も指摘されていましたけれども、まさに最終判断としては、それもやむを得ないかと思いますけれども、公的な医療保険、診療報酬の算定の要件としては、単に支払補償だけではなくて、勝村委員が指摘された「原因分析」「再発防止」、そこのところをきちんとやるということが、やはり利用者や国民にとってプラスになるということなので、資料7ページにあるように「原因分析委員会」「再発防止委員会」が運営組織できちんと担保されるようなことがあって初めて、「診療報酬上、対応する」ということの根拠、理由になるんだろうと思います。ですので、そこのところ(原因分析と再発防止)がきちんと担保されるということがあって初めて、診療報酬上、今回(厚労省から)提案されているような内容で、「やむを得ない」と思います。「きちんと担保されるかどうか」というところが判断だと思っています。
【遠藤会長】
ありがとうございます。順番からいきますと、松浦委員どうぞ。
【香川県坂出市長・松浦稔明委員】
わたし、3年前ぐらい前でしたか2年前でしたか、フランスに行った時に、産科、小児科、外科系のお医者さんがストをやっていた。ストの理由は、(医療事故の)保険料が非常に高く、診療報酬を上げてくれなければやれないという状況があって、無期限ストに入っておった。そういう状況を、ここ(中医協)で申し上げたことがある。それが今、日本では、産婦人科の医局に入ろうとする人がほとんどいなくなっております。そういう形で、(無過失補償制度が)出てきたのかなという気がしております。原因究明と再発防止、これは非常に必要なことなんですが、これはまさに、産婦人科を希望していくお医者さんが、学生が希望するかしないかという問題も絡んで、これ非常に複雑な問題を含んでくると思います。わたしは、(施設基準に加わる)「ハ」と「ホ」がですね、産婦人科、産科のお医者さんの負担を軽くするという方向に働くのであれば、わたしは急いですべきだろうと思いますね。以上です。
【遠藤会長】
ありがとうございます。それでは竹嶋委員、どうぞ。
【竹嶋委員】
勝村委員と小島委員の二人から、原因分析委員会、再発防止委員会みたいなものを、ちゃんとつくってやっていくようになるのかということでございますが、私ども(日医)の産科医師、あるいは(日本)産婦人科医会から、この問題に対しては大変なご要望がございまして、第一はやはり、お生まれになってくるお子さまですよね、それからご家族。それから、出産に立ち会う医療機関ができるだけ円滑にいくようにというところから、私は(中医協)委員として、(日本)医師会の立場でも申し上げますが、なんとかうまく(産科医療補償制度を)進めたいということで、各方面に努力をいろいろさせていただきました。
そういう中からですよ、そういう中から、今ご指摘ありましたように、これは財団法人(日本)医療機能評価機構に運営をもう…。ま、これは、勝村先生、もうご存じですよね?
で、どこに(制度の運営を)任せるかというときに十分な議論があって、ここ(日本医療機能評価機構)が一番、国民から見た視線の中で、一番、公平で、公正であるところであろうということで(運営を)委ねましたね。その中で、わたしが持っている情報では、既に、(日本医療機能評価機構の)中に審査委員会、原因分析委員会が二つ目できて、それから再発防止委員会が三つ目できて、それぞれ、原因分析委員会は、例えば、問題が起こると、ドクターはドクターに調査しますが、既に10ページにわたる、しっかりした案ですね、質問要項とか。それから、再発防止委員会の方も、6ページにわたる案も、今作られつつあるんです。ですから、そういう面は、(日本)医療機能評価機構の中で、進められているということは、16日の(運営委員会の)議事録で確かめておりますので、わたしは、その情報だけをここで申し上げておきたいと思います。
【遠藤会長】
ありがとうございます。坂本専門委員、どうぞ。
【日本看護協会副会長・坂本すが専門委員】
わたしは、中医協のメンバーになっていない時に、この話(産科医療補償制度の創設)を聞いた時はですね、「大変うれしい」と思いました。
30年近く助産師をやってきた中で、過失がある状況と、過失がよく分からない状況で、脳性まひの患者さんが産まれたりすることは経験してきました。そのときに、どちらも敵対関係になって戦っていくというのは、大変忍びない状況があって、わたしは、ドクターのこと(産科医不足)を考えなくちゃいけないというのもありますけども、やはり、産まれてくるお子さんとお母さん、ご夫婦、そのことに対して、わたしは早くこの制度をきちっと整えてですね、出していってほしいなと思っております。
過失であるか、過失でないかという判断をして、そしてさらに、過失であったならばそれを改善していくというところは、もちろん、仕組みとして付けていかなくてはいけないのは当然でありますけれども、どちらかよく分からなくて延々と戦っていくという状況を見てきましたので、それについては、早く手を打っていただきたいと思います。
【遠藤会長】
はい、ありがとうございます。西澤委員、どうぞ。
【西澤委員】
どうも、議論が(産科医療補償)制度に賛成か反対かみたいな方に行っているんですが、おかしいと思うんですよね。先ほど、大島委員も言ったとおり、わたしはこの制度は、わたしたちも推進しています。わたしが制度に反対しているみたいに思われがちなんですけれども、賛成しています。ですから、(加入率を)100%にしたいから、いろんな努力をしている。ただ、診療報酬の在り方という観点からどうですか、と言うんですけど、なかなかそういう意見が出てこないで、制度ばっかり言っている。ちょっと、本当の議論になってないんじゃないかと思います。
それともう一つは、(日本医療)機能評価(機構)だからどうこう、ですが、先ほど言いましたように、「同一」というところで、(日本医療)機能評価機構だけではなくて、もし他にできれば、そちらも対象となるということですので、「(日本医療)機能評価(機構)だからいい」ということは、今回の(施設基準見直しの)根拠にはならないということです。ですから、そのことをもう一回踏まえてですね、「民間保険に入っている」というような施設基準が診療報酬の加算条件として合うのかどうか、という議論をしていただきたいということで申し上げています。そのあたりを誤解ないように。
それからわたしは、今回いろんな意見が出て、やはりこの点数(施設基準)が入ることによっていろんな議論が起きると。どうも、診療報酬の点数上は若干おかしいけれども、この(産科医療補償)制度を進めるために賛成みたいな意見があるんですけれども…、ま、それをだから、「特例中の特例」と言っても、「特例という前例」は明らかに「前例」になるわけですから、もっと診療報酬の方からいってどうかということを申し上げたい。
この制度を推進するということは、わたしたちも100%加入の努力は、入っていないところの名簿を頂いて、一件一件口説いて、なんとか達成したい、そういう努力はするつもりでおります。だから、(診療報酬の)中に入れることは、もう一回、考えていただきたいと、そういう意見でございますので。
【遠藤会長】
承知しております。勝村委員、どうぞ。
【勝村委員】
この場がね、西澤委員がおっしゃるような論点で議論する場だということは、ぼくもその通りだと思いますけれども、その前提として、「この制度を、この制度を」って、「この制度」の詳細が決まっていない段階はあれなので、ちょっと筋として、きっちり原因究明、再発防止も、次回にはどういう形でやるのかという具体案が出てくるので、それよりも先に、ここの中医協の場で結論を出してしまうということはどうかという意見を言ったまでで、西澤先生がおっしゃるような議論をしていただいて、全然いいと思うんですけれども、結論を出す時期がちょっと違うという趣旨だったということ。
それからもう一つは、原因究明と再発防止がきちんとできるようになれば、医療費とかを考える上で非常にいい方向になっていくということは、小島委員がおっしゃる通りだと思うんですけれども、(日本)産婦人科医師会はこれまでも「医賠責」(医師賠償責任保険)という保険に入ってて、そこで原因究明や再発防止をしようと思ったらできたはずなんだけれども、これまで、特に産科医療として反省すべきとかいうところを出してきたということがなかったというのがあるわけですよね。だからこそ、この制度がきっかけで、本当に個々の事故の原因を究明して、個々の事故を再発防止に生かしていこうという流れができれば、非常にぼくもいいことだと思っておりますが、逆に、今までと同じように、事故があっても、(日本)産婦人科医師会が事故を把握するけれども、外にうまく出てこないために、再発防止に生かせないということになっては困る。じゃ、実際にそこをどうやっていくのかというところに非常に注目が集まっている。そこはぜひ、中医協としても、それを受けて、そういうことならば医療として良いという方に進めていってもらうことができたらいいと思っています。
【遠藤会長】
先ほどから事務局から手が上がっていますので、お願いいたします。
【保険局総務課長】
先ほどから、西澤委員の方から、民間の保険に加入することを要件にするのはどうかというご指摘がありますけれども、例になるのか分かりませんけれども、基本的には診療報酬というのは、保険者と診療側との契約、公法上の契約だと。療養担当規則を守って診療した場合に、診療報酬点数表に基づく報酬が払われる。介護保険の介護報酬も基本的には療養担当規則に基づく運営基準を守ってサービスを提供すれば報酬が払われる。(診療報酬と介護給付は)同じ関係だと思います。
例えば、介護療養病床の運営基準には、「事故発生時の対応」ということで、入院患者に賠償すべき事故が発生した場合には損害賠償を速やかに行わなければならないということが運営基準に決まっていて、運営基準の解釈では、損害賠償保険に加入しておくか、もしくは賠償資力を有することが望ましいということが言われています。これは、保険診療としてサービスを提供した場合に、何か事故が起こった場合には速やかに賠償されるべきだということが、いわば「公法上の保険者との契約内容」として定まっている。当然、「保険」というのは、「公的保険」「民間保険」を含めた保険に入っておくことが望ましいことになっているわけです。今回の産科医療補償制度というのはむしろ、国が事故の再発防止ですとか、究極的には地域における産科医療の確保というような観点から、国が検討段階から関与して、公的な仕組み、枠組みをできることになったわけでございます。実施としては、「速やかな実施」ということで民間保険になったわけでありますけれども、そういう半ば公的にかかわった仕組みとして、こういうものができて、なおかつ、一般的な介護療養病床ですら、みんな保険に入ることが望ましいと言われている中で公的な仕組みができて、なおかつ、非常にリスクの高い患者さんを扱うという中で、それを条件にすることが本質的な保険契約の内容ということで、「値段表」の方の要件、(診療)報酬点数表の要件として書かれるのか、療養担当規則とか運営基準に書かれるのかという問題はございますけれども、本質論として言うと、契約内容にそのようなことが入っているという例は、「現にあるんだ」と認識しております。
【遠藤会長】
ありがとうございます。西澤委員、先にどうぞ。
【西澤委員】
今の説明、介護保険の方はわたしも承知しておりますが、違うのは、何らかの保険に入っている、あるいは賠償するだけの能力を持つと書いてあります。今回(の見直し案)は、「能力があっても保険に入る」です。
実は、(全日本病院協会の)ある会員(病院)から聞きましたが、年間500例以上(分娩が)あるそうですが、保険料として(1分娩3万円なので)1500万円払うんだろうと、「ここ数年間、(脳性まひの)例はないよ。だったら、自分のところで貯めてやった方がいいんだけどな」と言われるけれども、「いや先生、これ(産科医療補償制度)は大事な制度ですから、入ってください」と言いました。ですから、今の(厚労省の)説明であれば、(保険に)入るか入らないかは自由であっていいと思います。(賠償金の支払い)能力さえあればいいということです。今回は、能力があっても入らなければならない。そういうことで、これは(加入を)強制しているんです。全く違うとわたしは考えています。
ですから、今、(神田総務課長が「(民間の損害賠償保険への加入が条件となっている)例は現にある」と)言ったような例があるのであれば、そういう例を全部出していただいて、じゃ、本当に診療報酬上、今まで民間保険への加入を条件としたものがあったのか、なかったのかを出していただいて、さらに、これ(加入)が条件として入った場合に、今後どういうことが考えられるかという中で、総合的にもう一度考えていただくのなら、よろしいかと思います。(声を強めて)すいません。
【遠藤会長】
先ほど、(挙手した)渡辺委員、お願いします。
【日本歯科医師会常務理事・渡辺三雄委員】
わたし自身、(社会保障審議会の)医療保険部会にも出ていたのですが、そこでも、この制度がまだあやふやな部分が(あるとの指摘が)かなりありましたですね。そういう意味では、もう少し、私たちも(制度の)中身を知りたいというのは事実です。それから、勝村委員や坂本専門委員からもお話がありましたけれども、お子さんにとって、お母さんにとっては、微妙な境目の中で区別をされるのは、大変不幸せなことだと思うんですね。そういう意味では、(補償対象となる)「正常(分娩)」という言葉に、わたし引っかかっているんで。先ほど、帝王切開などの話もありましたけれども、その場合に「正常じゃないんですか」ということになってしまうと、どうなんでしょうか。
それから、本当に微妙なところで、「正常」という形で大きく、くくられてしまうと、少し問題があったときに、それが外れてしまう。そうすると、お子さんやお母さんにとって、大変な境目になってしまうというところが、わたしは非常に、制度上、心配しています。その見直しも(5年後に)行われるんでしょうが…。
もう一点は、西澤委員がおっしゃられていますが、わたし自身も「ハ」の条件を付けるということ、そういうことだけが、課題に挙げられた「診療報酬上の対応を求める」の中身なのかなあ、というのはちょっと疑問に思います。他の方法はないものか。他の方法で、わたしたち中医協として、この制度をバックアップする考えは他にないのか、今日のいろいろな意見を通して、もう少し方法論を考えられないかなというのが、わたしの考えでございます。
【遠藤会長】
はい、ありがとうございます。松浦委員、どうぞ。
【松浦委員】
わたしのところの病院は、産婦人科の医者がいなくってですね、わたしは、そのことを頭に置きながらですね、(施設基準に追加予定の)「ハ」「ホ」(の要件)が、産婦人科、お産に携わる人たちをですね、多少でも楽にする、気分的にも楽にするということであればね、(創設を)急がないと、あらゆる角度から、少しでもお産に携わる人たちの負担を軽くしてあげる、こういうことに役立つのであれば、どんなことでも取り入れていくべきだと思いますね。
で、(勝村委員が強調する)原因究明と再発防止、これはまた別問題です。これはまた、非常に難しい問題を含んでいると思いますから。それは別の議論として、特に産婦人科、お産ができなくなった病院を抱えている者としては、そう申し上げたいと思います。
【遠藤会長】
はい、分かりました。勝村委員、ほんとにあの、短くお願いします。
【勝村委員】
一般的に、そういう(産科医不足の)危惧がされていると思うんですけれども、(医師免許取得後の研修先を決める)臨床研修のマッチングなんかを見ても、産婦人科の希望はそんなに増えていないということもあって、できるだけ、そういう(産科医不足を解消する)方向でいいと思うんですけど。
ちょっと話が変わるかもしれないんですけど、ぼくは、これを機にぜひ厚労省にお願いしたいと思うのは、(分娩を)自由診療じゃなしにね、産科医療そのものを保険、現物(給付)の保険適用をするという検討を始めることはできないのかと思うわけですよね。それで…
【遠藤会長】
ちょ、ちょっと待って! それは外れてますので。
【勝村委員】
ま、まあ、そうなんですけど、中医協の場(で議論する論点)ではないんですけど、(産科医療補償制度に)加入していない医療機関、全部から聞いたわけじゃないんですけど、取材したマスコミの方から聞いた話によると、(補償金の掛け金3万円に充てるため)「出産育児一時金」を(35万円から38万円に)値上げしても、出産費を払えない家族があって、その分も、(分娩機関が運営組織に)お金を3万円出さなきゃいけないという問題もどうのこうのだっていう話があったり、また、(産科)医療を考える場合には、妊婦健診を受けない人たちが「ハイリスク」になっていることが多いとかいうこともあるんで。助産所も含めて、こういうこと(産科医療補償制度)をやっていこうという話なんで、そういうところをちゃんとやっていかないと、いつまで経っても、産科医療の議論というのは「外堀」「外側」だけばかりになってしまうんじゃないかと。(話がそれて)すいません。
【遠藤会長】
はい、ありがとうございます。いろいろなご意見を頂きました。「民間保険に入っていることを診療報酬の加算要件にすること自体が適正ではない」という(西澤委員らの)ご意見や、「(産科医療補償)制度そのものが、まだ完成していないのではないか。にもかかわらず診療報酬上の手当てをすることについてはもう少し審理を続けたらどうか」という(勝村委員らの)考え方と、さらには「早急にやるべきだ」という(日医委員らの)ご意見があったと思います。
本日、ここで、この加算要件を「お認めいただけますか」と言うと、合意ができるかということですが、本日、「(厚労省の)原案通り賛成する」ということに対して、反対の方がまだいらっしゃると思うんですけども、いかがでしょうか。対馬委員は先ほど、「もう少し検討を」という話がありましたが。
【対馬委員】
まあ、「急がなくちゃいけない」ということは、事務局の説明でよく分かりましたけれども、「12月まではとても待てない」と、こういうことだったと。ただ、いろんな意見がありまして、わたしはもう一回ぐらい、今月中にでも、日程がタイトだと思いますけれども。特に、「診療報酬上、どうなんだろう」というのは、確かにわれわれも、「民間保険と公的保険をどういった形で」というのは基本中の基本ですよね。
ですから、そのあたりも含めて、他の方策はないのかというところも含めて、もう一回議論して、最終的にやはり、「喫緊の課題で早急に」ということになれば、それはそれでやむを得ないと思いますけれども、今現在、ちょっと消化不良のままで、ここで一気にいったら、なかなかちょっとどうかなと、こういう感じはしますけどね。
【遠藤会長】
分かりました。同じようなご意見、渡辺委員もそうだったと思いますが、お二人ともですね、社保審(社会保障審議会)の(医療)保険部会の委員ということでもありますので、ご意見はいかがでしょうか。
【渡辺委員】
わたしも対馬委員と同じような意味合いで、先ほど発言しました。表現一つにしても違うと思うんですね。表現の仕方によって、後で「これはこういう意味合いです」という説明があるのと、きちっと(診療報酬の)中に基準として入った場合とですね、その意味合いが大分違うと思うんです。それは、そういう形で対応すべきではないかと思うことと、この補償制度そのものを推進するというのは、基本的に、中医協の中での「合意」という形で考えていいんじゃないかと、この二つの考えです。
【遠藤会長】
ありがとうございます。それでは、そういうことで、まだ意見の一致が十分に見られないと理解いたしますので、本件につきましては、継続審議ということで、早急に次回の総会で議論をするという形にしたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか? (各委員うなずく)
はい、では事務局、そのように手配をお願いしたいと思います。
【牛丸聡委員・早稲田大学政治経済学術院教授】
今の決定に関しては、賛成いたします。次回、いつになるのか分かりませんけれども、今お話がありましたように、共通認識としては、この(産科医療補償)制度自体に関しては、「推進」ということで合意が得られたと思うんですけれども、西澤委員がおっしゃるような原則論というか、そこのところはしっかり最終的な議論をした方がいいと思います。ところで、次回までか、もっと先でも結構なんですけど、ここ(中医協)で議論すべきことと、この領域から外れるところを分けないといけないと思うんです。実はわたし、この制度を聞いた時に、「運営組織」(日本医療機能評価機構)の在り方、ここがよく分からない。
今日のお話の中で、一定のところは出てきていますし、原因分析、再発防止、一番重要なところでしょうけれども、それが、ここの議論(施設基準見直し)とどうかかわるかということもありますけれども、それだけではなく、お金が流れていく、その(分娩機関と保険会社の)中間に位置する組織ですので、どんな組織を考えていらっしゃるのかと。別の部会で議論されて、ある程度の方向ができていると思うんですけども、その情報を頂きたいということです。それが、ここの議論にかかわってくるのかどうか分かりませんけれども、一応、議論する者としては情報を得ておきたいものですから、事務局にお願いいたします。
【遠藤会長】
はい。確かに、この制度自体は社保審で十分もまれてるわけですけれども、中医協に上がってきたのは初めてですので、社保審と関係のない委員の方々は、(制度を)十分ご理解されているかどうかという問題もありますので、次回、議論するときに、その辺のところも簡潔にご説明いただければと思いますので、ご準備のほど、よろしくお願いいたします。
それでは、そういうことで、本日の議論はこれで終了したいと思います。
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