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(投稿:by 僻地の産科医)
MMJ2008年10月号からo(^-^)o ..。*♡
高齢化社会に伴い患者数が増加し続ける嚥下障害
嚥下障害診療ガイドライン
―耳鼻咽喉科外来における対応―
(MMJ October 2008 VOI.4 N0.10 p874-875)
嚥下障害から死に至るケースも
嚥下障害は高齢化や脳血管疾患などに伴う障害の1つで、患者数は現代社会の状況を反映し増加を続けている。嚥下障害が見逃されたり放置されたりすると、誤嚥から気管支炎や誤嚥性肺炎を引き起こし、死に至るケースもある。
『嚥下障害診療ガイドラインー耳鼻咽眼科外来における対応-2008年版』(日本耳鼻咽喉科学会/編、金原出版株式会社)は、久育男さん(京都府立医科大学教授)が委員長を務める日本耳鼻咽眼科学会嚥下障害診療ガイドライン作成委員会により作成され、2008年8月1日に発行された。嚥下は□腔期、咽頭期、推進期から構成されるため、関与する部位の構造と機能に精過した医師が嚥下障害の診療を適切に行う必要がある。本ガイドラインは嚥下障害の診断と治療の全般にわたる総括的な診療ガイドラインではなく、対象は嚥下障害の専門外来ではない、一般外来を担当する耳鼻咽喉科の医師である。
本ガイドラインの目的は「嚥下障害あるいはそれを疑う患者を診察する際の手引き」となることであり、具体的には対象となる患者について、
①経過観察 ②嚥下指導
③詳細な嚥下機能評価を専門機関に依頼すること
④診断や評価を行ったうえで治療を専門機関に依頼すること
⑤評価や治療の適応外との判断
―――ができるよう支援することであるという。
簡易検査と嚥下内視鏡検査はベッドサイドで繰り返し実施可能
本ガイドラインの「嚥下障害診療アルゴリズム」(図1)の「簡易検査」は嚥下機能を評価するうえで有用であるが、嚥下内視鏡検査が可能であれば必ずしも必要ではない。簡易検査には、反復唾液飲みテスト(repetitive saliva swallowing test : RSST)、水飲みテスト、食物テスト、血中酸素飽和度モニターがある。 RSSTを紹介すると、空嚥下を指示して嚥下運動が可能であるか観察し、さらに30秒間に空嚥下が何回できるか数え、2回以下を異常と判定する。
「嚥下内視鏡検査」は、耳鼻咽喉科の医師が嚥下障害患者を診察するうえで最大の手段とすべき検査方法である。ベッドサイドや在宅など、場所を選ばすに繰り返し実施でき、録画により詳細な所見の把握や見直しが可能である。検査食を用いない状態と、検査食(主に着色水)を用いた嚥下状態の観察を行い、また咀嚼を伴う検査食を用いた観察も必要に応じて行う。
日常診療で理解しやすい情報源を目指す
本ガイドラインでは、一般の耳鼻咽喉科の医師が日常臨床において理解しやすい情報源となることを第1と考え、推奨の強さを決める「推奨度」は決めず、一般的に適切と思われる臨床行為を利用可能な文献と委員の臨床経験からの「推奨」として示している。また、特定の臨床行為を推奨するのではなく、既存のエビテンスのまとめとなっている項目は、「推奨」ではなく「要約」と見出しがつけられた。
本ガイドラインのClinical Questions(CQ)から紹介すると、
「CQ1 認知障害は嚥下機能に影響を及ぼすか?」に対する要約は、「認知障害は、食欲や摂食行動の異常の原因となり、脱水や栄養障害をもたらすことがある。誤嚥の危険性に留意して代償的手法による予防対策を講じることが一般的に勧められる」である。背景は「認知障害が□腔期や咽頭期の嚥下動態に直接影響し、誤嚥の原因となるという確実な根拠はない。しかし、認知症の進行は、摂食・嚥下における食物の認知や捕食に影響し、嚥下障害の増悪因子となる。摂食・嚥下状況を観察し誤嚥の回避に努めるとともに、認知障害を摂食能力の障害としてとらえ栄養管理に留意する」と記載されている。
「CQ4 嚥下機能評価に嚥下内視鏡検査は有用か?」に対する推奨は、「嚥下内視鏡検査は、嚥下状態の把握や治療手段を選択する検査として実施することが推奨される。早期咽頭流入、嚥下反射惹起のタイミング、咽頭残留、喉頭流入、誤脂を指標とすることで脂下造形検査に匹敵する情報が得られる」である。背景として、1990年代に脂下造形検査を比較対照として、嚥下内視鏡検査で確認できる異常所見の敏感度や特異度に関する研究が行われ、その結果、嚥下内規鏡検査が嚥下造影検査に匹敵する検査法であることが示され、現在では広く臨床応用されるようになっていることがあげられている。
本ガイドラインは、今後、臨床現場で実際に利用した助言や提言を得た後、治療にも言及した診療ガイドラインヘ改訂していく予定であるという。
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