(関連目次)→医療崩壊特集
(投稿:by 僻地の産科医)
週刊東洋経済からですo(^-^)o ..。*♡
2008年11月1日特大号
特集は「医療破壊」
消える病院、命を落とす医師、さまよう患者と家族
病院の経営危機、医師の過労死、行き場失う患者。
このままでは日本の医療は崩壊する。
ちなみに雑誌全体へのDr.Poohの感想はこちらですo(^-^)o ..。*♡
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医療破壊
DrPoohの日記 2008-10-28
http://d.hatena.ne.jp/DrPooh/20081028
さて、
医療の担い手は疲労困悠
医師酷使社会の恐るべき現実と銘打った特集記事です。
過労死、自殺が次々と起こる
勤務医の2割が過労死ライン
労基法違反はなぜ問われない
人を助け、命を救うのが医師の役目だ。その医師が自ら命を断つ日本の現実。
(週刊東洋経済 2008.11.1号 p60-62)
10月22日午後2時30分。東京・霞が関の裁判所合同庁舎内の記者会見で、勤務医の過労自殺訴訟原告の中原のり子さんは時折、声を詰まらせながら話した。
「(亡き夫には)残念だったとしか報告できません。なぜ裁判所は一生懸命働く労働者を守ってくれないのか。勤務の過重性を認めながらも病院に非はないとする判決は、理解を超えるもので納得できません」
夫の中原利郎医師の過労自殺をめぐる判決で、東京高裁はのり子さんの控訴を棄却、敗訴判決を言い渡した。勤務先の佼成病院(東京都杉並区)に安全管理義務違反はないとし、損害賠償を求めるのり子さんの主張を退けたのだ。
小児科医の中原医師が病院の煙突から投身自殺をしたのは1999年8月16日の早朝。後に病院関係者から手渡された3ぺージにわたる遺書は、「私には医師という職業を続けていく気力も体力もありません」と結ばれていた。中原医師は、のり子さんおよび3人の子どもを残して命を絶ったのである。
中原医師の死から高裁の判決日までに9年2ヵ月が過ぎていた。
病院の7割で労基法違反
当直の実態は夜間勤務
中原医師の労災認定をめぐる訴訟では2007年3月14日に東京地裁の判決があり、うつ病と業務の因果関係を認め、労災支給となった(国は控訴せず、判決が確定)。ところが2週間後の病院を相手取った民事訴訟はうつ病と業務の関係を否定。
180度異なる事実認定をした。
今回の高裁判決は、労災認定訴訟がすでに確定していることから、業務と自殺、うつ病との因果関係を明確に認めた。が、その一方で病院側の責任はいっさい認めなかった。
「病院は中原医師が心身の健康を損なっていたり、精神的な異変を来していると認識できなかった」と結論づけたのである。
記者会見で原告側弁護士は、「このような判決では、使用者の責任が問われず、今後、(過労死や過労自殺の)被害が拡大しかねない」と高裁の判断を強く批判した。
今までに医師の過労死や過労自殺をめぐる判決としては、公立病院の麻酔科勤務医の過労死に関する大阪地裁判決(07年3月30日)、総合病院の麻酔科女性医師の過労自殺に関する大阪地裁判決(同5月28日)がある。ともに病院の安全配慮義務違反を認定し、損害賠償を命じた。
今回、のり子さんの主張を退けた高裁は「予見可能性」という言葉を持ち出した。安全配慮義務が問題となる場合には、業務による疲労の蓄積がもとで精神障害を起こすおそれについて、具体的客観的に予見可能であることを必要とした。
中原医師の場合、「勤務が過重な月もあったが、あくまで一時的なもので、本人の意思で解消できるものだった」と高裁は言及。また、「中原医師から病院側に人員確保の働きかけがないことからも、心身の健康を損なうことを具体的・客観的に予見できなかった」とも述べた。
だが、こうしたものの見方は、一面的ではないだろうか。高裁は「具体的客観的に予見可能であること」を病院が安全配慮義務を問われる際の必要条件に据えた。しかし、現実には医師の労働の実態や心身の状態をきちんと把握している病院がどれだけあるのだろうか。そして、実態把握を怠ったがゆえに問題を予見できず、その結果として責任も免れるということになれば、本末転倒ではないか。
現に多くの病院で、勤務医に対する労務管理は極めてあいまいであり、ずさんなことが厚生労働省の調査からも明らかになっている。
たとえば当直(宿日直)の扱いだ。
同省労働基準局が596の医療機関を対象に行った「宿日直」に関する監督結果(06年3月)によれば、72%に当たる430の医療機関で「何らかの労働基準関係法令違反がある」ことが明らかになっている。中でも「宿日直時に『通常の労働』を行ったことに関する労基法第37条違反(割増賃金不払いに対する違反)」が101件、そのうち医師にかかわるものが50件となっている。
厚労省は先立つ02年3月19日付で「医療機関における休日および夜間勤務の適正化について」と題した労基局長通知を出しており、この中で「宿日直勤務」について詳しく規定している。「宿日直勤務とは本来業務は処理せず、構内巡視、文書・電話の収受または非常事態に備えた待機」などで「ほとんど労働する必要のない勤務」とされている。
ところが、病院の当直は厚労省通知に書かれているような穏やかなものではなかった。実際には宿直(当直)の中で医師が夜間診療や救急に携わっている病院は少なくない。本来、そうした突発的な通常労働に対しては割増賃金を支払わなければならないが、実際には払っていない病院が多いことが前出の厚労省調査で判明している。
また、医師が自宅に待機する「宅直」(オンコール)については、労働時間に該当するとして、時間外手当の支払いを求める訴訟が県立奈良病院の産婦人科医2人によって起こされている。
勤務医の労働実態は、通常勤務についてもきちんと把握されていない疑いがある。医師の勤務時間を記録するタイムカードがない病院や、大学院生をただ働きさせている大学病院もある。こうした事実は世間には知られていないが、医療界ではごく当然のこととされている。
勤務医の2割以上が「過労死ライン」に相当
医師の労働時間は長いと言われるが、実際はどうなのか。日本病院会による「勤務医に関する意識調査」(06年7月実施、上グラフ)では、2割以上の勤務医の労働時間(当直を除く常時)が「週64時間以上」となっている。40時間の法定労働時間を超える部分を月換算すると96時間以上の超過勤務だ。これは厚生労働省労働基準局が定めた過労死の労災認定基準(脳血管疾患および心疾患)に該当する。つまり、勤務医の2割以上が通常勤務だけで過労死ラインになるのである。
日本病院会の同じ調査では、「1ヵ月の夜間当直」の回数も尋ねているが、「3~4回」が40・8%、「5回以上」が17・1%と合わせて5割以上に上っている。
たとえば、週1回の夜間当直を通常勤務と併せて考えてみよう。当直時間を病院に拘束されている時間に含めると、勤務医の約7割が週64時間、すなわち時間外だけで100時間も病院に拘束されている計算だ。
夜間当直の翌日についても、「忙しさと無関係に翌日は普通勤務をせざるをえない」が88・7%を占めており、ほとんどの病院で当直明け勤務が常態化している。
宿直8回、休日出勤6回
医師に人権はないのか
日本外科学会が会員を対象として06年11月に実施した調査(回答依頼数3680件、回収数1355件)によれば、「当直明けの手術参加」について「ある」は72%に達している。大学病院に勤務する外科医は「もうろうとした意識の中で手術を行うこともある」と本誌記者に実態を語っている。
前出の日本病院会調査でも、「医療過誤の原因と医師の勤務状況との関連」について、「過剰な業務のために慢性的に疲労している」が71%にも上っている(上記下グラフ)。
こうした実態を踏まえたうえで、中原医師の勤務実態を見ていきたい。高裁に中原医師の労働に関する意見書を提出した松崎道男・松崎クリニック院長(前・虎ノ門病院医療安全対策室長)は、「うつ病を発症させたと思われる3月の適重労働の実態について、宿直8回、休日出勤6回、24時間以上の連続勤務が7回、休日は月に2日しかなかったことが提出されている。この勤務実態は明らかに労働基準法を逸脱しており、少なくとも3月は過重労働があったという事実がある」と指摘する。
そして松崎院長は意見書をこう結んでいる。「この過重労働を許した人事の管理責任者である病院長、事務員に落ち度がなかったというのであれば、労基法は医師には適用されず、医師には安全に働く人権はないということ、そして労基法を病院は順守しなくてもよいということを判決で示すことになる」。
高裁判決は、業務とうつの関係を認めた。しかし、病院にいっさいの法的責任を問わなかった。松崎院長が言うとおり、裁判所は医師に人権を認めなかったのかもしれない。
ただ働きや過労死ラインの超過勤務が蔓延する医療界が長続きするはずはない。
宿直その他の通達のことや安全配慮義務違反を認める判決について東洋経済の記者さんに説明したことをちゃんと書いてくれてよかったと思っています。
投稿情報: 江原朗 | 2008年10 月28日 (火) 23:04
たびたび恐れ入ります。
当市の市立病院を守るべく活動している者ですが今回病院を宣伝する広報紙を作成しました。来月上旬発行予定です!
投稿情報: 留萌がんばるかい 代表 澤田知明 | 2008年10 月30日 (木) 17:32