(関連目次)→政治に声を届けよう! 医師のモチベーションの問題
(投稿:by 僻地の産科医)
二階大臣がTBSニュースの中で、発言された
『政治の立場で申し上げるなら、何よりも医者のモラルの問題だと思いますよ。忙しいだの 、人が足りないだのというのは言い訳にすぎない。』
について、声が上がり始めています。
TBSラジオでコラムニストの勝谷誠彦氏もこの問題発言に対して
怒りのコメントしてくれています。(TBSラジオ 2008年11月12日)
音でます!注意!!!
http://podcast.tbsradio.jp/st/files/st20081112.mp3
今日、民主党の足立信也先生(消化器外科医)が
参議院・厚労委員会で11:45から
二階大臣への公開質問
をしてくださる運びとなりました(>▽<)!!!!
8.20の現地シンポ(大野事件)にも駆けつけて出席してくださった
議員の先生で、20年外科医をやっておられた方です。
あとで↓インターネット中継を見ようと思います。
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/today/index.php
あと、日医みなおしました。本当にびっくりです(>▽<)!!
経産相発言は「責任転嫁」―日医
キャリアブレイン 2008年11月12日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/19131.html
「医者のモラルの問題」―経産相発言に全医連が抗議
キャリアブレイン 2008年11月12日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/19120.html
茨城県産婦人科医会
http://www.ibaog.jp/topics/20081112.pdf
抗 議 文
私たち茨城県産婦人科医会は、二階俊博経産相の『医者のモラルの問題』発言に対する全国医師連盟の抗議文に賛同し、発言内容の撤回と日夜過酷な勤務を強いられている周産期医療従事者に対する謝罪を求めます。
平成20年11月13日
茨城県産婦人科医会 会長 青木雅弘
昨今の重症妊婦受け入れ不能の事案に関し、舛添厚生労働大臣と二階経済産業大臣との会談において、 二階俊博経産相が「政治の立場で申し上げるなら、何よりも医者のモラルの問題だと思いますよ。忙しいだの、人が足りないだのというのは言い訳にすぎない」と発言したことが報道されました。 (11 月10 日のTBS ニュース(イブニング・ファイブ)による)上記発言に対し、私たち全国医師連盟は強く抗議します。
現在問題となっている産科救急の問題は、基本的に人員や施設の不足に起因しています。多数の病院で重症妊婦が受け入れ不能である理由の大半は、 NICU(新生児特定集中治療室)が慢性的に満床であることです。そして、NICU が常に満床である理由は、不妊治療や高齢出産による低出生体重時の増加という患者側の要因に加え、NICUを出た後に利用する必要がある『後方ベッド』が整備されていないこと、また、新生児科医師や看護師の不足のため NICU が増床不能であることです。
墨東病院の件では、総合周産期母子医療センターであるに関わらず、当直医が一人であったことが問題とされていますが、これは産科医数の急速な減少を反映しているものと考えられます。ここ数年、全医師数が増加する中、産科医は分娩数の減少を上回る率で減少しています。日本産婦人科医会の調査では、お産を取り扱う病院も昨年から今年にかけて全国で8%(104施設)減少している一方、一施設当たりの産科医数は殆ど増えていません。さらに、先日発表された、日本産婦人科学会の産婦人科勤務医・在院時間調査では、診療や待機などで拘束されている時間は月平均で300 時間を超え、中には500 時間以上の医師もいることが明らかとなりました。また一般病院のうち、当直勤務がある一般病院の医師は月平均4.2 回の当直をこなし、病院にいる時間は月平均301 時間でした。これは、平均的産科勤務医は、過労死認定レベルを超える長時間勤務を継続して行っていることを意味しています。
このような産科医の過酷な勤務を放置し、現状を「医者のモラルの問題」と切り捨てれば、新しく産科医になることを希望する医師が少なくなるばかりか、現在勤務している医師がどんどん離職している現状を改善することは出来ません。
今、政府、国会が取り組むべきことは、産科救急の問題で医師のモラルや情報伝達システムの不足という矮小化した議論に向かうことなく、周産期医療に投入可能となる医療資源を可能な限り増やす努力をすることです。産科医や、新生児科医、その他の医療従事者の労働環境を整備して人員を増加し、NICU や転出先の病床を整備しない限り、IT 技術を駆使しても、殆どの病院が受け入れ不能であることが早く判明するだけであり、問題の解決には繋がりません。
今回の二階経産相の発言は、国務を担う立場での発言として、著しく勉強不足で、事実の誤認を含んでおります。大臣の発言で、モチベーションが下がり、さらに離職する産科医が増えることを危惧し、発言内容の撤回を求めます。
平成20年11月12日 全国医師連盟執行部
平成20年11月12日
周産期医療の崩壊をくい止める会
代 表 佐 藤 章
周産期医療におけるいたたまれない事態が今もなお続いている昨今の状況の改善には、周産期医療に携わる医療者一同努力を重ねておりますが、今もなお国民の皆様の期待と信頼に十分にお答えすることができない状況が継続しており、ご心配をおかけしておりますことをお詫び申し上げます。
しかしながら、現場の努力だけでは解決できない状況を二階利博経済産業大臣へもご理解頂きたく存じます。そして、二階大臣が舛添要一厚生労働大臣との会談において、「政治の立場で申し上げるなら、何よりも医者のモラルの問題だと思いますよ。忙しいだの、人が足りないだのというのは言い訳にすぎない」と発言されたことに対して、周産期医療の崩壊をくい止める会代表として、強く抗議いたします。
周産期領域の医療水準と受け入れについて
<水準が満たされていない状況で患者を受け入れることは違法な行為>
1 医師に課せられた法律上の義務
新潟地裁長岡支部平成14年7月17日判決は、「品胎(いわゆる三つ児)の分娩において帝王切開を行う場合、帝王切開を施行する医師2名、麻酔専門医で輸血を行う医師1名、出生した児の蘇生・介護・検査を施行する医師3名、その助手的看護師3名(新生児1名毎に各1名の医師と看護師)、手術の器械出し、手術の外回りにそれぞれ看護師1名の人的準備と、輸血用の血液、輸液、酸素、新生児蘇生用の気管内挿管器具3組、保育器3台、インファントウォーマー3台、全身麻酔器、血中ガス濃度分析機、その他新生児の血液生化学検査一式が可能な検査設備という物的準備が必要である。」と判示し、上記設備を持たない施設において「分娩を行うこと自体を違法な行為」と判示し、約1億1千万円の損害賠償責任を認めている。すなわち、上記の水準程の設備が整っていない限り、患者を受け入れることは、それ自体が違法な行為であるとするのが司法の判断である。
2 墨東病院、杏林大学病院の事案も受け入れること自体が違法
墨東病院の事案では、当直医が1名しかいない状況で、脳出血の疑いのある妊婦を受け入れることは、それ自体が違法な行為であることは明らかであった。
また、杏林大学病院の事案でも、産科医が手術中であったのであるから、実質的に産科医不在の状況であり、当然に妊婦を受け入れること自体が違法な行為であった。
3 二階大臣の言うモラルとは法に反すべしとの趣旨か
確かに、モラルとは内面的規範であり、外面的規範でかつ物理的強制を伴う法律とは異なる。
しかるに、二階経産大臣は、行政府である一省の長として、内面的規範と外面的規範たる法が相反する場合には、積極的に法に反せよとの趣旨で上記発言をされたことになるが、それでよろしいのか。
4 月平均300時間の勤務、月平均当直日数4日は政治と行政府の責任
日本産婦人科医会の産婦人科勤務医・在院時間調査によると、産科医の月平均勤務時間は300時間を超え、月平均当直日数は4.2日であり、産科医の労働基準法違反の違法な勤務状況が常態化している。
舛添厚生労働大臣は、この現状を鑑み、医療行政及び労働行政を管轄する監督省の長として、この違法な状況を速やかに改善しようと努力されている。
しかるに、二階経産大臣は、行政府たる内閣の一員でありながら、この明白な違法状態を「モラルの問題」であり、「言い訳」であると判断しているとするならば、その規範意識の欠落は看過できないものであるし、なにより、法律による行政の原理に反する「モラル」を信条として持っているのであるならば、内閣の一員たる資質において大きな疑問を感じざるを得ない。
結語に代えて
私たち周産期に携わる者は、先の奥様を亡くされたご主人からのお言葉である「妻の死が浮き彫りにした問題を力をあわせて医師、病院、東京都、国で改善してほしい。妻の死を無駄にしてほしくないし息子のためにも息子にとって日本一の母親だったといえるような状態に改善してほしい。」を忘れることなく、事態解決に向けこれからも努力をして参ります。
二階大臣におかれましても、政治の立場において、我が国の医療の状況を正しくご認識頂き、国民のために内閣の一員として、事態解決にむけご助力を頂きますようお願い申し上げます。
以上の次第により、私は、周産期医療の崩壊をくい止める会の代表として、二階経産大臣の上記発言につき強く抗議し、発言の撤回を求めます。
「日本のお産を守る会」
~ 重症妊婦受け入れ困難の事例に関する
二階俊博経済産業大臣の発言への抗議声明 ~
先日来、東京都において重症妊婦の搬送先がなかなか見つからず不幸な転帰をとった事例についての報道を見聞するにつけ、私ども「日本のお産を守る会」としても大変心を痛めております。いかに迅速に対応しても突然の脳出血による死亡を完全に防ぎ得るわけではありませんが、亡くなられた患者様やご遺族のみなさまの無念なお気持ちをお察しいたします。このような生命にかかわる重大な妊娠合併症への対応については、産婦人科医師だけではなく他科医師も含めた救急医療全体の問題として改善に向けて早急に取り組んでいく必要があると考えます。
この事例に関して二階俊博経済産業大臣が「政治の立場で申し上げるなら、何よりも医者のモラルの問題だと思いますよ。忙しいだの、人が足りないだのというのは言い訳にすぎない。」と発言したことが報道されました。
この発言は甚だしい事実誤認に基づくものです。多くの産婦人科医師は日中に通常の勤務を終えた後に当直業務に入り、夜間どんなに忙しくとも翌日も通常どおり業務をこなしています。ほとんど代休も取れません。先日の日本産科婦人科学会の調査では産婦人科勤務医の平均勤務時間は一ヶ月当たり300時間以上にのぼっています。これらの事実に目を向けることなく、すべて医師の怠慢が原因であるかのような発言は、私ども臨床の現場で働く者にとっては看過しがたいものです。
同大臣が「政治の立場で」お考えであれば、産婦人科医・小児科医・その他医療従事者の労働環境の改善や、NICUの整備などに必要な財源を供給していただきたい。何よりも社会保障費削減の基本方針自体を180度転換すべきです。
古来より日本人は言葉には魂が宿っていると信じてきました。モラルを守って精一杯働いている現場の医師を侮辱するような大臣の発言については、ただちに撤回を求めます。
2008年11月13日 日本のお産を守る会
「モラルの問題」との非難、批判は妥当でしょうか?
兵庫県立柏原病院の小児科を守る会
代表 丹生裕子
私たち「県立柏原病院の小児科を守る会」は、兵庫県丹波市で、「子どもを守ろう、お医者さんを守ろう」をスローガンに活動しているグループです。市民を助けたいと思っている医療者と、助けてほしいと思っている市民の間に横たわっている溝を埋めようと、活動をしています。
先日の「政治の立場で申し上げるなら、何よりも医者のモラルの問題だと思います。忙しいだの 、人が足りないだのというのは言い訳にすぎない」という二階俊博経済産業大臣の発言は、患者を救おうと、過酷な労働環境の中でがんばっておられる産科、小児科、いわゆる周産期医療にたずさわっておられるお医者さんの心を折る発言ではなかったかと、残念に感じています。
赤ちゃんは、何時に生まれるか分かりません。私の3人の子どもは。日中に生まれましたが、明けがたに出産したり、年末の深夜に生んだメンバーもいます。交代勤務ができるほどお医者さんはおられませんから、へその緒を切って下さったドクターは、その翌日も、朝から夜まで働き続けられたことと思います。ほとんど、眠れないままに、です。
産科医は、ここ数年でものすごい勢いで数が減っています。その結果、辞めずに残られたお医者さんたちの負担がどんどん増える悪循環に陥っています。今も周産期医療に携わり続けておられるお医者さんたち、私たちのためにがんばっていただいているお医者さんたちにかける言葉は、「モラルの問題」という非難めいたものなのでしょうか?夜も寝ない、眠ることができない状況でがんばっている人たちを、「忙しいだの、人が足りないだの」と、批判することが、果たして妥当なのでしょうか?
私たちの地元の兵庫県立柏原病院も43人おられたお医者さんが、3年ほどで20人にまで減りました。今年7月、病院のすぐ近くで開かれた医療フォーラムで兵庫県知事は、こんなあいさつをされました。「もっと情熱に燃えた医師と地域が協力し、医療を確保している所がある。我々も負けてはおれぬ」。半分に減った医師数で身を粉にして働くより、医師数が多い別の病院に移った方が、お医者さん自身は幸せでしょう。しかし、自分の幸せよりも、患者の、住民の幸せを優先し、地域医療を支える道を選んで頂いている。そんなお医者さんに対して、「もっと情熱に燃えた医師が」などと、あたかもお医者さんの情熱に問題があり、お医者さんの情熱不足が医師不足や地域医療の低下を招いているかのような発言をされたことに、落胆しました。お医者さんたちに申し訳なく、涙がこぼれそうになりました。
兵庫県立柏原病院には、今は3人の産婦人科の先生がおられますが、4月からは、55歳の上田先生と50歳の丸尾先生のお2人になります。2人でお産を続けるということは、2日に1度、年間180日病院に泊まらなければならないということになります。泊まらない残りの180日も、緊急帝王切開などが入った時に駆けつけられるよう、待機が必要になり、24時間365日の緊張状態、休めない、ということになります。
地方には、1人、2人で産科医療を支えておられる病院がたくさんあります。1人、2人のお医者さんが「もう続けられない」とお辞めになるだけで、産科医療がゼロになってしまう地域がいたるところにあるのです。東京で産科医が不足すれば、地方から補充され、地方の医師不足は進みます。これは周産期に限ったことでなく、全ての救急医療現場に共通していることです。
政治家の先生の不用意なひと言が、医療を壊してしまうことがあります。とにかく現場に足を運び、お医者さんの声に耳を傾けて下さい。
今日の産科医療、医療崩壊の原因は、医師個人の資質にあるのではなく、産科医を、勤務医を続けたくても続けられなくしている社会にあるのではないでしょうか。私たちは、患者、国民の側から、医師を守り、医療を守る運動を続けます。
大臣が、政治の側から、医師を守り、医療を守る運動を展開して頂けることを期待します。
終わりに、墨東病院でお亡くなりになられた方のご冥福と、意識不明が続いておられる方の回復を心からお祈り申し上げます。また、この世に生を受けた2人のお子さんが健やかに成長されることをお祈り申し上げます。
今、インターネット中継見てます。
足立信也議員、グッジョブだ~
13時30分からの午後の委員会で、二階氏の釈明が見られるかもしれません。
投稿情報: so-shiro | 2008年11 月13日 (木) 12:46