(関連目次)→無過失補償制度 目次
(投稿:by 僻地の産科医)
産科医療補償制度:1月からスタート 疑問多く、申請遅れも /山梨
毎日新聞 2008年11月17日
http://mainichi.jp/life/edu/child/news/20081117ddlk19040131000c.html
◇「踏み倒しは医療機関が肩代わり」「国が支出すべきだ」 妊婦にも負担増懸念の声
出産時に脳性まひとなった障害児の家族を補償する産科医療補償制度が、来年1月から全国で始まる。しかし、県内の病院や助産院など分娩(ぶんべん)機関には疑問の声が少なくない。現在はすべての分娩機関が加入申請を終えたが、一時は申請率が全国ワーストとなるなど出足が鈍かった。北欧などで普及した制度で、財団法人「日本医療機能評価機構」が運営する。医師の過失の有無にかかわらず補償を受けられるのが特徴で、看護態勢を整えるための一時金600万円と、年120万円の分割金が20年間支給される。
ただし、出産に関連した重度脳性まひで出生時に2000グラム以上などの条件がある。先天性や感染症が原因の脳性まひも対象外。各分娩機関が同機構を通じて民間保険会社に1分娩あたり3万円の掛け金を支払う。その分は分娩費用に上乗せされることが予想されている。県内の分娩機関の加入が遅れたことについて、県産婦人科医会の武者吉英会長は「制度の趣旨は全機関が賛成しているが、理解できない点があり、慎重になった」と話す。
「すべての妊婦が補償されると誤解される恐れがある。また、分娩費用を踏み倒された場合、掛け金はこちらの負担になる」と武者会長は指摘し、広報の充実などを求める。分娩機関の中には「掛け金が余れば保険会社が潤うだけではないか」「こちらが掛け金を払う根拠がない。国が払うべきだ」などの意見もある。
一方、金銭的負担増を懸念する妊婦の声もある。甲府市のある助産師は「庶民の感覚で3万円は大きい。補償への加入・未加入は妊婦が判断すべきでは」と主張する。同機構は「独自の基金を作るには10億円以上が必要。早く制度を始めるために民間保険を利用した」と説明しており、補償範囲や掛け金額、民間保険の利用などについて、開始5年後をめどに制度の見直しを行う方針。
◇「人材育成や福祉施設充実に力を」
脳性まひの娘を持つ甲斐市の50代の女性は、産科医療補償制度について「お金をもらっても、親の気持ちは割り切れない。悪い制度ではないが、金銭補償だけで解決しようというのならば……」とうつむき、こう続けた。「助産師の育成など、産科にかかわる人材の充実にもお金を使ってほしい」
20代の娘は、一人では歩くことも食べることもできず、福祉施設にいる日中以外は常に両親の介助が必要という。女性は「精神面でも大変。誰かに相談できるだけでも楽になる」と話し、心のケアをしてくれる施設の充実も訴える。
娘は1200グラムの未熟児で生まれた。もし出生時に制度があったとしても、補償の対象外だ。女性の知る限り、脳性まひの子の大半は未熟児。「現行制度では、ほとんどの人が補償を受けられないのでは」と女性は疑問を投げかけ、補償範囲の拡大も訴える。
コメント