(投稿:by 僻地の産科医)
Medical Tribuneぱっとみて、第一面でしたo(^-^)o ..。*♡
そうはいわれても、なかなか使いにくい(使用量調節・副作用等)難しい薬ですが!
硫酸マグネシウムで早産児の脳性麻痺リスクが低下
(Medical Tribune 2008年11月20日(VOL.41 NO.47) p.01)
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41470011&year=2008
〔米メリーランド州ベセズダ〕アラバマ大学(アラバマ州バーミングハム)のDwight J. Rouse博士らは,切迫早産の治療法として一般的な硫酸マグネシウムを静注された母親から生まれた早産児は,投与されなかった母親から生まれた早産児と比べて,脳性麻痺を発症するリスクが低いとNew England Journal of Medicine(2008; 359: 895-905)に発表した。
脳性麻痺の33%が早産と関連
今回の研究は米国立衛生研究所(NIH)リサーチネットワークによるもので,NIHのElias A. Zerhouni所長は「脳性麻痺症例の3分の1は早産と関連している。この研究は,硫酸マグネシウムを投与された母親から生まれた早産児では脳性麻痺が有意に少ないことを示している」と述べている。
Rouse博士らは,硫酸マグネシウムが脳性麻痺を予防するのは,同薬が血管を安定させ,酸素欠乏による損傷を防ぎ,腫脹や炎症を防止する働きによるものと考えている。
脳性麻痺とは,運動機能や姿勢保持能が侵され活動性に支障を来す神経症状の総称である。脳性麻痺の原因としては,妊娠中や出生時あるいは幼児期の早期の段階で,脳に傷害を受けたり,発達異常が生じた可能性が考えられるが,十分には理解されていない。
治療選択の一助に
今回の研究は,NIHの機関である米国立小児保健・ヒト発育研究所(NICHD)の母体胎児医学部門ネットワークに属する20の研究センターの研究者らにより実施された。資金の大半はNIHの米国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)から提供された。
NINDSのKarin Nelson博士とカリフォルニア保健福祉省の研究者らが1995年に行った研究によって,早産児で脳性麻痺を発症しなかった児の母親は,脳性麻痺を発症した児の母親よりも,硫酸マグネシウムを投与されている率が高いことが明らかになった。その後行われたより大規模な2件のランダム化試験で,早産女性は硫酸マグネシウム投与によって,児の脳性麻痺を予防できることが示唆されたが,決定的な結果は得られなかった。
共同研究者でNINDS小児神経医のDeborah Hirtz博士は「われわれの研究は,廉価で広く施行されているこの早産治療が,早産児の脳性麻痺の低下に寄与するかどうかを検討した,最大規模かつ最も広範な試みだ。脳性麻痺を常に予防することはできないが,われわれの研究や過去の研究データは,産科医にとって治療選択の一助となるだろう」と述べている。
中等度・重度脳性麻痺の発生率が低下
今回の研究では,NICHD母体胎児医学部門ネットワークに参加している20のセンターで治療を受けた早産リスクのある妊娠24〜31週までの女性を対象とした。陣痛が始まった時点で,硫酸マグネシウム6gを20〜30分かけて静注し,その後1時間ごとに2gを12時間後まで,あるいは陣痛がおさまるまで,または出産に至るまで投与した群とプラセボ群にランダムに割り付けた。両群とも12時間以内に出産に至らず,陣痛が始まったのが妊娠34週目までの場合は再び同じ治療を行った。
Rouse博士らは統計学的解析のため,中等度と重度の脳性麻痺の発生率と死亡率を計算した。軽度の脳性麻痺は時間の経過とともに自然消失することが多いので,計算には含めなかった。
中等度と重度の脳性麻痺を合わせて検討すると,硫酸マグネシウム群の脳性麻痺発生率(1.9%)はプラセボ群(3.5%)よりも低いことが判明した。
同博士らは,中等度・重度脳性麻痺児に死亡した児も含めて解析した。その理由は,両症による早産児での死亡率が非常に高いためだ。その結果,中等度・重度脳性麻痺もしくは出生時の死亡または死産を合わせた率は硫酸マグネシウム群の11.3%に対し,プラセボ群では11.7%であった。
死亡率は,硫酸マグネシウム群(9.5%),プラセボ群(8.5%)の間に有意差は認められなかった。
また,在胎齢は両群間に差は見られなかった。硫酸マグネシウム群では942人から生まれた児のうち41例が脳性麻痺と診断され,プラセボ群では1,002人から生まれた児のうち74例が診断された。硫酸マグネシウム群の児のうち,2.2%は軽度脳性麻痺で,1.5%が中等度脳性麻痺,0.5%が重度脳性麻痺と分類された。プラセボ群のうち,3.7%が軽度脳性麻痺,2.0%が中等度脳性麻痺,1.6%が重度脳性麻痺であった。
共同研究者でNICHD妊娠・周産期学部門のCatherine Y. Spong博士は「これは大きな進歩だ。今回の結果は,早産における脳性麻痺という悲惨な症候群リスクを低減するには,産科医が処方に慣れている硫酸マグネシウムが有効であることが示された」と述べている。
以前にこの論文について拙ブログにてコメントしました。
硫酸マグネシウムが未熟児の脳性麻痺のリスクを軽減(2)
http://kurie.at.webry.info/200809/article_34.html
死亡率に有意差はなくても1%の差(マグネシウム群で高い)があり、これと重度麻痺を加えると、ほぼ同程度となります。マグネシウムが逆に重度障害群を死亡に至らしめている可能性はないのかと疑ってみることもできるように思われたのですが、どうでしょうか?
投稿情報: 医師の一分 | 2008年11 月27日 (木) 12:57
素晴らしいご指摘ありがとうございます(>▽<)!!!
マグは漸く産婦人科医の念願かなって保険適応となった薬ではありますが、やはり副作用の面では使いにくく、(こういうデータをみて、延長に役立っていないとなると、ますます悲しいですが)倦怠感、電解質、さまざま気をつけねばならないこともあり、週数にもよるでしょうけれど、「Mg使ってまで頑張るかな~」という時も多いのが実情です。
(もちろん週数にもよりますけど)
せめて脳性麻痺が少ないというのが本当だとうれしいなっ!と思っていましたけれど、うー。。。残念です。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2008年11 月27日 (木) 18:25