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(投稿:by 僻地の産科医)
脳梗塞新薬導入3年
チーム医療確立急務
役割明確化、特定医師の負担軽減
岐阜新聞 2008年11月27日
http://www.gifu-np.co.jp/kikaku/2008/inochi/3/inochi_3.shtml
限られた時間の中で、脳梗塞患者にt―PAを使用するのは時間との戦い。チーム医療による連携が求められる=岐阜市柳戸、岐阜大学医学部付属病院
脳梗塞(こうそく)の新たな治療薬として、血栓溶解薬「t―PA」が保険適用されたのは2005(平成17)年10月。使用は発症から3時間以内に限られるため、通常の救急態勢以上に人手を要し、医師不足の問題を抱える医療現場では夜間の医師確保が課題となっている。導入から3年が経過した県内の取り組み状況はどうか。
この3年間で40例近くのt―PAを実践してきた岐阜大学医学部付属病院。t―PAはまさに時間との戦い。医師の数も通常の救急と比べて2倍、3倍と必要となる。当直以外にも脳神経外科医が自宅待機によるオンコールで急な呼び出しにも対応し、24時間態勢を整える。
同大大学院脳神経外科学分野の岩間亨教授は「t―PAを投与するには24時間、CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像装置)の撮影ができ、脳出血に備えて手術ができる態勢も必要。しかし、脳梗塞患者の中でt―PAが適用となる割合はもともと3―5%でしかない。太い血管が詰まった患者では効果の表れないケースも6割ほどある。医師の少ない病院では常時、受け入れ体制を整えるのは難しいかもしれない」と指摘する。
県内では、約20施設が日本脳卒中学会の講習を受けてt―PAが行える準備を整えるが、実績となると偏りがあった。しかし今年4月の診療報酬改定で、新たに脳梗塞の初期治療でのt―PA使用が加算されたことで、t―PAを行う病院は増えてきた。
岐阜市野一色の県総合医療センターは4月、脳卒中センターを立ち上げた。脳神経外科、神経内科、循環器内科などの9人の医師が兼務し、夜間のファーストコールを誰が受けるかなど協力体制を整え、検査に必要なMRI撮影なども24時間できるようにした。中島利彦同センター部長は「センターの立ち上げで脳出血ならば脳神経外科、脳梗塞はセンターの医師と、症状に応じて役割を明確にすることで特定の医師の負担を減らし、治療開始までの時間を早めることができた」と話す。
日本脳卒中協会は支部のある各都道府県で、t―PAの実績があり、24時間対応ができる病院を来春を目標に公表する準備を進める。県支部長の岩間教授は「脳神経外科医によるバックアップ体制は必要だが、t―PAは点滴によって血栓を溶かすので、講習を受けていれば内科医でも行うことができる。医師の限られた地域では、特定の医師の負担を減らすことができるのではないか」と、専門領域の枠を超えた新たな方向性を模索している。
【メモ】
脳卒中 日本人の死亡原因の第3位。脳卒中には血管が詰まる脳梗塞(こうそく)、血管が破れる脳出血、動脈瘤(りゅう)が破裂するくも膜下出血がある。患者の6割が脳梗塞。t―PAは脳梗塞の発症から3時間以内の使用など制限はあるが、点滴で血栓を溶かすことができる。
>脳神経外科医によるバックアップ体制は必要だが、t―PAは点滴によって血栓を溶かすので、講習を受けていれば内科医でも行うことができる。医師の限られた地域では、特定の医師の負担を減らすことができるのではないか
t-PAは安易に使用すると出血性梗塞のリスクがあります。3時間以内という縛りも大変厳しいです。
内科医でも行うことが出来るといっても、脳出血を起こしてしまえば内科医だけでtは太刀打ちできません。
脳神経外科の支援が得られない施設で、内科医はt-PAに手を出してはいけないと思います。
投稿情報: 風はば | 2008年12 月 2日 (火) 13:03