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(投稿:by 僻地の産科医)
もう先週号になってしまったようですo(^-^)o ..。*♡
AERA 2008年11月24日号
特集は 婚活も超氷河期/株価「反転」いつだ
さてこの中から気になった記事を一つ。
今まで女性のものばかりと思っていた介護問題。
確かに言われてみれば。。。。
家庭生活との両立は、いずれ独身女性・独身男性にも
ふりかかる重大な問題なのですねo(^-^)o ..。*♡
誰かに言われたことがあります。育児で愚痴っていた時。
「育児はまだいいよ。先が見える。希望も。
介護に先は見えないんだよね」
大量介護退職時代
独身王子のリスク
15年後には出産休職よりも増える
女性より未婚率の高いアラフォー男性。
仕事に消費に邁進できて気楽かと思いきや、
じわじわと不安が押し寄せていた。
親の介護が必要になったら。
老後ひとりぼっちになったら。
働き盛り世代が抱えるナイーブな問題に、
企業も危機感を強めている。
(AERA 2008.11.24 p38-40)
出席したお見合いパーティーは114回、結婚相談所を通してお見合いした女性は68人。5年間で300万円をかけ、今のところ独身。大学講師の樋口康彦さん(42)は、自身の「婚活」の細かい記録を著書『崖っぷち高齢独身者』に収めている。
5年前、10年後の自分を想像して不安が極限に達した。いつか自然に結婚すると思っていたけれど、何もしなければこのまま1人でいることは確実。内向的な性格だから恋人どころか友達もいない。独り暮らしの部屋で倒れていても誰も見つけてくれなかったら――。
「異性とのコミュニケーションが全く取れず、外見も気にしたことがなかった。自信はないけど自意識だけは高い高齢独身者は多いが、何も行動しなければいつまでも結婚できません」
結婚より先に親の介護
婚活を急ぐのは女性だけではない。男性だって孤独だし、不安なのだ。しかも独身男性には、女性以上に敏感に感じる不安要素がある。
デザイナーのタケルさん(35)は、東北地方に住む母(65)からの着信には一瞬、通話ボタンを押すのを躊躇する。
「お父さんがまたガスつけっぱなしにしたのよ。いよいよ呆けちゃったかしら」
罪悪感と無力感に胸を締め付けられながら、ただ耳を傾けるしかない。
父(62)は2年前に定年退職してから、急に物忘れが激しくなった。玄関や車の鍵をかけ忘れたり、電気をつけっ放しにしたり。テニスで鍛えた脚も痩せ細ってきた。元気そうに見える母も高血圧を抱えている。
実家までは新幹線で1時間半だが、帰省は年1回。連絡がなければ親のことは心の片隅へ。何しろ仕事が忙しすぎるのだ。
深夜3時に終われば早いほうで休日出勤もざら。20代のように徹夜すると身体がもたないから、徒歩5分通勤のマンションに引っ越した。最近の不況の影響でいつまで仕事があるかもわからない。いずれ結婚したいがリアルには考えられない。
「自分を守るだけで精いっぱいなのに、結婚より先に親の介護が降りかかるかもしれません」
未来のお嫁さんあてに
父は長男のタケルさんが結婚して家を継ぐものと信じ、退職金で実家の隣に土地を買った。
「家はお前が建てろ。姉さんと子どもを住まわせて、週末だけ帰ってくればいいだろ」
父の勝手な計画だが、むげに断れない。地元で公務員になれと言われたのに東京で就職した。孫の顔も見せていない。期待を裏切ってばかりという負い目があるから、親が倒れたら人任せにはしたくない。それがせめてもの親孝行だと思う。
けれど現実には、東京で仕事を続けながら地元で介護できるはずもない。呼び寄せたいが、親は納得するだろうか――。
『独身王子は早く死ぬ?』の著者の牛窪恵さんは、40歳前後(アラフォー)の独身男性にとって、親の介護は極めてナイーブな問題だという。
「結婚を先延ばしにするのと同じで、危機感がないわけではないのに、あえて考えないようにしている。まだ見ぬ『未来のお嫁さん』を親の介護のあてにしている人すらいます」
親への感情も複雑だ。20代のような仲間意識も、団塊世代ほどの義務感もない。父親に尊敬、母親に愛情を強く抱いているのに素直に表現できず、介護について話し合えないまま、腹の探り合いが続く。
「介護を他人に任せることには抵抗を示すのに、仕事優先の生き方も変えられない。八方塞がりになるケースが多いのです」
両立の道閉ざす男性
少子高齢化と未婚化で、独身男性にとって介護は他人事ではなくなっている。2005年の国勢調査で男性の未婚率は30代後半で30%、40歳前半で22%。いまや同居している介護者の4人に1人が男性だ。
男性たちが見て見ぬふりをしてきたこの現実だが、企業は直視して対策をとり始めている。
ワーク・ライフバランス代表の小室淑恵さんが仕事をしたある大手メーカーは、15年後には介護が必要となる親を抱える社員が6分の1を占めると試算していた。小室さんも15年後、育児で休業する女性よりも親の介護で休業する男性のほうが多くなると予測。働き盛り男性の労働力が介護に奪われる――。敏感に反応したのは、親の介護に直面する40~50代の管理職の男性たちだ。
「育児は他人事だったけど、介護には危機感がある。介護のためにワークライフバランスを推進する動きが出始めています」
というのも、介護のために休むだけでなく、女性の出産退職と同様、「介護退職」を選ぶ男性が大量に出る恐れがあるからだ。
小室さんが企業の管理職研修で、親の介護が必要になった場合について尋ねると、3分の1の人が「仕事を辞めざるを得ない」と答える。両立を望む人も3分の1いるが、多くが「評価されないだろうからぶら下がり社員になる」と割り切り、残り3分の1は「親より仕事をとる」と答える。
残業や休日出勤が当然の独身男性たち。育児休業や時短勤務をする同僚を評価してこなかったために、いざ自分かその立場になると働き続けるべきではない、と思いつめる。先が見えない介護というトンネルを前に、自ら両立の道を閉ざすのだ。
牛窪さんは、エリーート志向の独身男性ほどこうした傾向が強い、という。計画や目標が思い通りにいかなかった経験が少なく、完璧を求め過ぎるからだ。
ケンタさん(44)は父がガンだと母から電話を受けたとき、あまりの衝撃で記憶がぽっかり抜けるほどだった。いてもたってもいられず、会社を辞めて関西の実家に戻った。
実際に父の面倒をみたのは母と姉。車を運転できないケンタさんは戦力にならず、週1回、病院から汚れものを持ち帰るくらい。地元で再就職先を探したが、見つからなかった。
父の入院機に実家に
痛みに苦しんだ父の死は、自分の老後を考えるきっかけになった。もしも強烈な痛みがある病気になったら。一人で寝たきりになってしまったら――。再就職のため再び上京したが、いずれは実家に戻ろうか、と漠然と考えている。
商社に勤めるユウトさん(41)は3年前、父の入院を機に母(64)が心配で実家に戻った。すぐまた家を出るつもりで独り暮らしで使っていた冷蔵庫は処分していないが、仕事から帰れば食事が作ってあり、合コンで遅くなっても母は干渉してこない。居心地の良い生活が長引くにつれ、家を出にくくなった。
最近、母はクロスワードの一種「ナンクロ」と向き合っている。以前は読書をしていたのに、呆け予防か? 近くに住んでいる妹には子どもと義父母がいる。ユウトさんは長男で実家暮らし。介護からは逃れられない。
「収入が絶たれるから仕事は辞められない。有休を消化してつなぐしかないが、何年も続くとしたら……」
パラサイト虐待の増加
中央大学の山田昌弘教授(家族社会学)は、
「介護費用や生活費をまかなえるだけの資産が親になければ、親子共倒れの危機です」
と話す。アラフォー世代ではひとり息子が両親を支えるケースが少なくないが、
「独身男性だからといって施設サービスを優先的に受けられるわけではない。家族形態が変わっているのに、介護保険制度は依然として家庭内介護が前提なのです」
日本高齢者虐待防止センターの田中荘司理事長は、同居の息子による「パラサイト虐待」の増加を指摘する。厚生労働省の昨年の全国調査で、65歳以上の高齢者を家庭内で虐待した加害者の4割が息子だった。
埼玉県春日部市で昨年11月、ガンで死亡した74歳の女性は、同居の長男(当時47歳)の暴力を恐れ、アパートの庭で3日間、寝起きしていた。介護疲れや生活苦による母息子の心中も絶えない。パラサイト虐待では親の年金や財産を搾取する「経済的虐待」も目立つ。親の年金でパチンコ三昧、両親の財産を管理しながら面倒をみない「介護放棄」。いずれも40代の息子だった。田中さんは言う。
「もともと親に寄生しているため、親の年金が介護費用に消えていくと、自分の老後に焦りを感じる。息子の経済的・精神的不安を取り除かない限り、パラサイト虐待はなくなりません」
追いつめられないためにも、仕事と介護が両立できる仕組みづくりが必要。前出の小室さんは備えとして、働き方の見直しを勧める。
「生産性や勝率が高い人は、たとえ時間の制約があっても評価する仕組みに企業は変わりつつある。効率よく成果をあげる訓練をしておけば、介護に限らず結婚・育児などさまざまなライフスタイルに対応できる、生涯プレーヤーになれるはずです」
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