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(投稿:by 僻地の産科医)
妊娠中の喫煙で早産児のSIDSリスクが上昇
Medical Tribune 2008年10月23,30日(VOL.41 NO.43,44) p.01
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=0&order=1&page=0&id=M41430011&year=2008
〔ニューヨーク〕カルガリー大学(カナダ・カルガリー)小児科のShabih Hasan博士らは,妊娠中に喫煙した母親から産まれた早産児は喫煙しなかった母親の早産児と比べて乳幼児突然死症候群(SIDS)発症リスクが上昇するとAmerican Journal of Respiratory and Critical Care Medicine(2008; 178: 520-526)に発表した。
心拍数・回復時間に有意差
Hasan博士らが,喫煙者と非喫煙者から産まれた早産児の呼吸状態を比較する初の研究を行ったところ,喫煙した母親から産まれた乳児では多くの呼吸機能障害の徴候が見られた。
同博士らは,たばこの煙への曝露が早産児の呼吸器とSIDSリスクに与える影響を検討するため,28〜32週に自然分娩で産まれた呼吸器系の合併症がない22例の早産児を,母親が妊娠中に喫煙していた(たばこを毎日5本以上)12例と,母親が喫煙していなかった10例に分けて比較した。
その際,試験開始時に乳児の正常な状態における呼吸パターンを計測し,呼吸数,呼吸休止と回復時間,心拍数,血中酸素飽和度を測定した。測定後,乳児に鼻カニューレを通して,低酸素ガスを5分間吸入させた。この間,乳児用の蘇生装置を手元に置いて厳重に監視した。
その結果,両群の呼吸数と呼吸休止数は同等であったが,心拍数と呼吸回復時間には有意差が見られた。出生前にたばこの煙に曝露された乳児群では,心拍数が試験開始前と比べて低酸素期間中に上昇したが,曝露されていない乳児群ではその差は観察されなかった。そのため,曝露群では非曝露群と比べて酸素の欠乏状態が原因でより高ストレス下に置かれたことが明らかになった。
さらに,低酸素時の血中酸素レベルは両群で同様に低下したが,その回復は曝露群では非曝露群と比べて十分に行われず,時間もかかった。
退院後のリスクの同定にも
Hasan博士は「今回の研究結果から,出生前にたばこの煙に曝露された早産児は呼吸の休止や低酸素供給からの回復が不完全で時間がかかることが明らかになった。これらの早産児ではSIDSリスクが上昇することを示唆している。また,低酸素状態が継続的に生じた際に,回復できなかったり遅れたりすると脳の発達に有害な影響を与える可能性もある」と述べている。
同博士らは,ニコチンが高選択的内因性ニューロンニコチン様アセチルコリン受容体と相互作用するエビデンスを指摘しており,このことが呼吸器系の制御に必須である中枢神経系領域の発達に影響する可能性があるとしている。同博士は「出生前にたばこの煙に曝露された早産児は退院後,重大な心肺イベントが継続的に生じる可能性が高い。今回の知見は自宅で低酸素状態に陥った場合,その回復が遅れるリスクのある乳児を同定するのに役立つ可能性がある」と述べている。
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