(関連目次)→医療事故安全調査委員会 各学会の反応
ぽち→
(投稿:by 僻地の産科医)
個人用のパブコメ中間発表の整理を始めてみました。
OCRですので、誤字脱字はお許しください。
あとざっと独断と偏見でまとめを。
↓ 今までの分です
パブコメに関するニュースo(^-^)o ..。*♡
個人パブコメ その1(>▽<) ..。*♡
個人パブコメ その2(>▽<) ..。*♡
【46】←突然ですが整理番号に直します。
非公開のが抜かれているのを忘れていました。
50代 医師 p120
地域医療の医師不足.産科・小児・救急・外科医療の崩壊等の,現在の医療の問題は,政策上の失敗と制度上の不備の放置という,国家的誤りによるものであり,1厚生労働省のみの立案により,解決しうるレベルの問題ではない.とりわけ医師法21条による,異状死の警察への通報と,刑事事件としての個人の責任の追求は,萎縮医療に向けて決定的影響を与えた.重大な失政と考える.
これに対して.以下に述べる本質的な問題の解決は行なわず,マスコミや「遺族感情」に迎合したまま,医療者側の不満を表面的・姑息的に湖塗した,きわめて欺瞞に満ちた内容が今回の事故調査委員会第3次試案であると考える.
医療の安全の確立については,報告制度と処罰は全く分離されるべきとWHO(WHODRAFT
GUIDELINESFORADVERSEEVENTREPORTINGANDLEARNINGSYSTEMSにより2005年に世界に提言されており.報告者も、他の関与している医療従事者も、報告の結果罰せられてはならない。マスコミにより誘導される世論は一般に、医療事故の責任を個人に帰し、「被告人」を罰する方向に圧力をかけるものなので、この条件を実現させるのは最も難しい。報告の内容は、守秘することが最も良い解決方法であるとされ.また、訴訟に利用しうる情報を出すべきではないとされている.報告制度は、懲罰を行なう権力を持ついかなる公的機関からも、また調査結果に利害関係を有する組織からも、独立していなければならないとされており,このことは報告制度への信頼性を確保するためには必須のことと考えられている。
しかし、第3次案においても、調査組織と処罰組織は、同一の省内におかれることになる。特に、行政処分を下す権限を有する厚生労働省に、調査組織を強引に置こうとしている.医療事故が起きた臨床的な状況をよく理解し、さらにその根底にあるシステムの問題を把握する能力のある専門家によって、報告は解析される必要がある。その場合,政府が運営する報告制度が陥りやすい最大の失敗は、報告を強制するが、それらを解析する人的t物的資源を準備しないことである。専門家の知識t技術が、どのような報告制度であっても、最大の本質的な条件である。
一方、厚生労働省案では、中央に20名、地方に5から10名の調査委員を置くとされている。
それで,年間数百・数千の事例を処理できるとはとても考えられない.
報告は、迅速に解析され、改善勧告がそれを必要とする医療現場に早急に送付されなければならないが,とてもむりではないかと考えられる.調査組織が発する改善勧告は、医療従事者個人の行為よりも、医療システム・医療の手技過程・医療機器などに焦点を当てるべきである。これは、一見個人的な過誤により.発生した事例であっても、医療システムの欠陥によって起きるという考え方で分析すべきであるという考え方に基づいている。このシステムの欠陥が改善されなければ、別な時に、別な人間によって、同じ問題が再発するであろう。
一方、厚生労働省も、当初、医療従事者個人の問題を扱う論調であったが、今回の試案は、個人の責任ではなく、医療システムの問題を追及するというポーズはとるようになった。医師の労働法を侵した過酷な労働の実態、低医療費から来る多忙さなどが、医療システムの問題として浮かび上がる可能性は高い。そうすると、罰せられるべきは、それを放置・悪化させている厚生労働省ないし政府そのものということになる。しかし,3次試案では,医療機関に責任を取らせ、処分するということであり,問題の重大さの認識に欠け,根本的解決にはほど遠いであろう。
厚生労働省案の人員配置では、そうした勧告をだせるのかどうか、極めて疑わしい。さらに、
医療機関にシステムの改変のための、財政的な措置をどのようにとるのか.それがなけれ
ば、改善勧告は実現しない。医療機関は、医療安全に対して投資をする余裕がないし、新た
にそうした措置をとっても、経営に全く寄与しない。大きな医療システムの問題となるであろう。
本来,国家的な視点から関係省庁が全面的に協力して早急に改革を行なうべきところを,WHOの推奨するものと全く背反する組織を,厚労省は強引に立ち上げようとしている。たとえ善意でベストを尽くそうとした医師であっても.結果次第では「重大な過失」として警察に通報される可能¥性があることを避けられない.医療安全の推進よりも強制的な情報開示を優先する姿勢は,表面を糊塗して隠しても,懲罰へと開かれた本質は.医療者にとって大きな脅威を感じさせる.巧妙な粉飾をこらしたこの試案は,現実の当事者意識に欠ける日本医師会も賛成するに至ったが,これをを許せば、急性期医療を「当直」の名の下に,救急医療まで背負って,長時間の勤務や拘束に耐えて,善意で支えている医師の離反はさらに進むことは明らかであり,急性期医療の崩壊に対する最後の一撃となるであろう.
患者側の「事故があった時に隠すな、嘘をつくな、誠実に対応してほしい」
医療者側の「医療者が安心してベストを尽くせるようにしてほしい」
という,それぞれもっともな意見の食い違いを解消する努力を行なう以外に本件の解決の方
向はない.そもそも,業務上過失致死・致傷という刑法の存在自体が問い直されるべきであることは,航空機事故の管制官に対して下された最近の判決に対しても,きわめて重大な問題として指摘されたことである.
まずは医療の安全を確保するための王道はいかにあるべきかに戻り.そのことが.患者遺族の側にとってもいかに重要であるかの説得を真筆に行なって世論を形成し,法体系自体の見直しも含めて,安全な医療を確保すべき適切な政策を改めて立案し,医療資源(とりわけ医師の数・勤務態勢の改善や,有効な医療政策推進に対する財政的措置)を充足させて迅速に実行すべきである.そこから始める以外に崩壊しつつある医療の再生の道はないと考える.
≪勝手なまとめ≫
・国家的な問題の失策であり、一厚労省でどうにかできる問題ではない。
・WHOの提言に基づき、匿名性の担保を、罰則をかけてはならない。
・罰則を加えられる組織からの独立性を。
・人員配置の問題から安全性が損なわれている。
・業務上過失致死罪の見直しを。
【47】40代 医師 p122
■刑事処分について
・現状において、「軽度な過失」でも処罰されている。「重大な過失」か「軽度な過失」かという判断は、運用によってどのようにでも解釈し得る。
・悪質か否かも、運用によってどのようにでも解釈し得る。例えば、証拠隠しをしたものに限らず、営利目的、実験的、名声追求の利己目的、説明不足でも、どのようなものでも悪質というレッテルを張られかねない。つまり、運用に歯止めがない。
・現状において、薬剤や患者の取り違いといった、単純ミスは「重大な過失」とされている。死亡という結果の重大性に着目して「重大な過失」とされ、業務上過失致死罪が適用されている。
・現状において、刑事司法は結果の重大性に着目しているが、その取り扱いを変更することについて、何の権限もない厚労省の一検討会の意見に過ぎず、警察・検察の公式見解は書かれていない。
・第3次試案に書かれている通り「責任追及を目的としたものではない」ならば、行政処分機関にも捜査機関にも通知すべきではない。責任追及を目的としていないことの制度上の担保がなければ、現場の医療者は安心して診療に当たることはできない。
(参考)
・刑事司法が再び〝暴走”する危険はないのか
http://www.m3.com/tools/Iryolshin/080214」.html
・単純ミスは「重大な過失」かhttp://www.m3.com/tools/Tryolshin/080115」.html
■行政処分について
・厚労省は、管理者に対する新たな行政処分を設けようとしているが(医療法)、既に存在する行政処分について、十分説明すべきである。例えば、現状において既に次のような行政処分権限が存在する。
○健康保険法ほぼすべての病院に毎年1回立ち入る
社会保険事務局が保険医・保険医療機関・保険薬剤師-.保険薬局の指定・取消の権限をもつ
○医療法ほぼすべての病院に毎年1回立ち入る(医療監視員)
都道府県が医療機関の開設・休止・廃止、増員命令-、医療機関の業務停止命令、施設使用制限命令、管理者の変更命令の-権限をもつ。
厚労省は特定医療機関に関してのみ権限をもつ
○医師法
厚労省が医師免許取消.医師の業務停止命令の権限をもつ
・医療法に基づく医療機関に対する処分権限は都道府県がもっているが(地方分権の流れになる前から、歴史的にも医療は県の行政)、重複して国が処分権限を持たなければならない理由は何か。国に新たな権限を創設するのではなく、県に任せるのが筋ではないか。ひとつの事案について、医療機関に対する処分と、医師(主治医等)への処分とが、両方発動される(厚労省が暴走する・単に処分が二重になるだけ)危険性が高い。
・現に、厚労省は、保険医取り消しの行政処分と、医業停止の行政処分を二重に行っている。
医療機関や管理者に対する行政処分権限を創設すれば、医師(主治医等)に対する行政処分がなくなるわけではない。従って、「個人に対する行政処分については抑制する」保証はない。
■ 医療死亡事故の届出義務化について
届出範囲を限定するとあるが、法令上の条文を個別ケースに適用するか否かは、法的判断をする者が個別に判断することであり、限定することを約束したことにはならない。委員会の結論が警察、検察に対して拘束力を持たない以上、その寵論を尊重するといっても、具体的事件においては無視される可能性が高い。
・現に、厚労省は、犯罪等に適用されていた医師法21条を、医療にも拡大して適用した。厚労省が医師法21条の適用範囲を元に戻さない限り、法令の適用を「限定する」と言っても、信用できない。
・第3次試案の21条改正案では、医療機関が委員会へ届出なかった場合は、医師法21条に基づく警察への届出義務があるため、死亡事例すべて届出とならざるを得ない。上記の届け出範囲を「限定する」制度上の担保は存在しない。
・「制度化」は「義務化」を意味することは、西島英利議員の発言からも明らかである。
・透明性の向上とは何か。医療者が患者・家族に十分説明し、当事者間で話し合うことではないのか。第三者が介入する前に、当事者間の対話を促進するため、院内医療メディエーターを置くといった措置が必要である。当事者間で十分対話を行い、それでも患者・家族の納得が得られない場合に、第三者の介入が必要となる。
(参考)
・井上清成弁護士「4つの原因究明」-¥死韓究明制度・厚労省第二次試案の法的「目的」
は?-¥ MRICメルマガhttp://mric.tanaka.md/2007/12/25/vol_66.html
・元東京地検特捜部長河上和雄弁護士医療事故調に対する見解MRICメルマガ
http://mrsc.tanaka.md/2008/03/26/_voL33.html
・現場からの医療改革推進協議会医師法21条の歴史と矛盾
http://expres.umin.jp/genba/kaisetsuOl.html
・西島英利議員インタビュー〝医療事故調〟の自民党案と厚労省案は別
ソネットエムスリー聞き手・橋本佳子http://www.m3.com/tools/lryolshin/071219_2.html
■医療安全調査委員会(仮称)について
・そもそも真相に最も近く、原因究明を行うべき主体は、当事者である医療者であり、当事者の前に第三者が介入することは、むしろ原因究明を阻害する。まず当事者である医療者が医学的.科学的な真相究明を行い、患者t家族に十分説明し、当事者間の対話を十分に行ったうえで、それでも患者・家族の納得が得られない場合に、第三者の介入が必要となる。
・ひとつの組織が2つの目的を持ち、いずれも達成されない可能¥性が高い。
・全国唯一の組織が「正しさ」を判断することは、医療の統制につながる。医療における判断・選択は、患者ひとりひとり、家族ひとりひとり、医療者ひとりひとりによって多種多様であり、「正しさ」の答えはひとつではないからである。全国唯一の組織が決める「正しさ」に、すべての国民が従わざるを得なくなり、患者,家族の自由な選択は阻害される。国の委員会に一元化することは危険である。
・医学的・科学的な真相究明を目的とし、複数の多様な委員会が、多様な医療専門家による多様な「正しさ」の判断を示せる制度とすべきである。多様な専門家による多様な選択が存在することを、患者・家族が知ることも、納得を得るために重要なプロセスである。
・責任追及を目的としないと明記したことは評価できるが、制度上の担保は何も示されていない。委員会は、責任追及の機能をもつ.
・「法律関係者」「法律家」を入れるのはなぜか。法的判断つまり責任追及をするためであろ
う。「医療を受ける立場を代表する者」を入れるのはなぜか。患者・家族の判断・選択は多種多様であり、それを第三者が代表することはできない。ひとりひとりの多様な選択を尊重するためには、当事者である患者・家族本人が、その希望によって参加するか否か選択できるようにするべきである。
・当事者を調査から排除するならば、ますます真実から遠ざかり、医学的・科学的な真相究明は不可能となる。この委員会が原因究明を目的としているとは考え難い。
(参考)
・井上清成弁護士「4つの原因究明」-死因究明制度・厚労省第二次試案の法的「目的」
は?-MRICメルマガhttp://mric.tanaka.md/2007/12/25/vol_66.html
≪勝手なまとめ≫
・重大な過失、届出の適宜があいまい
・警察・検察の公式見解は書かれていない
・警察への通知はすべきではない
・行政処分権をすでに厚労省は十分なほど有しており、それを強める案には賛成できない
・医師法21条の拡大解釈をやめるべき
・警察の謙抑的は信用できない
・届け出範囲を「限定する」制度上の担保は存在しない
・「制度化」は「義務化」を意味する
・委員会は、責任追及の機能をもつ
・この委員会が原因究明を目的としているとは考え難い
【48】 60代 医療機関管理 p124
【47】と同じ。
≪勝手なまとめ≫
・重大な過失、届出の適宜があいまい
・警察・検察の公式見解は書かれていない
・警察への通知はすべきではない
・行政処分権をすでに厚労省は十分なほど有しており、それを強める案には賛成できない
・医師法21条の拡大解釈をやめるべき
・警察の謙抑的は信用できない
・届け出範囲を「限定する」制度上の担保は存在しない
・「制度化」は「義務化」を意味する
・委員会は、責任追及の機能をもつ
・この委員会が原因究明を目的としているとは考え難い
【50】 p128 不詳
第三次試案に対して私は反対です。第三次試案が現実化された場合、医療現場は崩壊することでしょう。それは以下の理由によります。
1. 医療従事者の刑事罰が可能
2.医療安全委員会において診療関連死の情報がメンバー以外(例えば裁判所、検察)に知らされて裁判の資料にもなる
3.医療行政や医師を管轄する厚生省の中に医療安全委員会が置かれるため独立性がない
4.診療関連死の分析は専門家以外のメンバー(一般市民や患者家族代表)も加わった委員会でなされる
5.分析に時間がかかる
6.システムの問題ではなく医療従事者個人や個々の医療機関の責任に帰される
7.勧告を実行するにあたっての財鯨や人的資源の保証がない
政府の第三次試案は、WHOによる患者さんの医療安全ガイドラインに真っ向から反対するものであり、現場医療を崩壊させるものに他なりません。以下に各項目について私の意見を述べます。
1. 医療従事者への刑事罰が可能
現状では、「謙抑的」と言われる、検察による「お目こぼし」によってのみ医療は立件されないだけであり、医療は常に「灰色の行為」と考えられております。ひとたび結果が悪い場合は、日本では医療行為が刑事罰の対象になる可能性が高い、ということです。
刑法上、医療行為に対する判断を行うことは厚労省の仕事ではありません。単に第三次試案では行政処分をさらに追加して行うことが可能である、という枠組みを作るだけであり、医療に対して更なる厳罰化が起きる可能性すらあります。
少なくとも刑事罰、民事罰の軽減化には全く寄与する確約は全くありません。厚労省がそれを"確約する"というのなら、医療事故調の運用だけに任せるのではなく、"医療における刑事罰、民事罰の軽減"を明文化するべきです。
2,医療安全委員会において診療関連死の情報がメンバー以外(例えば裁判所、検察)に知らされて裁判の資料にもなる
診療関連死の患者名、報告者(医療従事者)、医療機関は決して第三者に明かされてはならない、というのは大原則でありますが、厚労省の第三次試案は、"行政処分の厳罰化"によるムチによって報告させようとしています。
このような劣悪な条件では、そもそもリスクのある環境での医療行為そのものが避けられるようになり、医療は萎縮することでしょう。なぜなら、「報告しないなら罪」、というなら「報告するようなこと自体を避ける」のが、組織として一番正しい判断だからです。最初から医療機関は悪である"という前提にたってムチをふるうなら、誰もムチの下にはいなくなります。
さらには、この報告が"民事裁判を誘発する"危険性が十分にあります。下記に書くように、そのようなリスクのある報告を、「提出しないと行政処分」という厳罰化の方向で医療を締め上げているのがこの第三次試案です。
3.医療行政や医師を管轄する厚生省の中に医療安全委員会が置かれるため独立性がない
医療安全委員会や医療事故調自体が、行政処分に直結し、さらには検案や裁判における資料になる塀三次試案では、「事故調」ではなく、単なる「検察の出先機関」、新たな「行政処分機関」でしかありません。
独立性が保たれた上で、真に医療事故の原因が究明されない限り、同じトラブルが何度でも繰り返され、しかもその真実はいつまでも見つかる事はないでしょう。
4.診療関連死の分析は専門家以外のメンバー(一般市民や患者家族代表)も加わった委員会でなされる
これは、心底、医療機関を震え上がらせているものです。なぜ、医療事故の被害者の会や一般市民が、専門知識もないまま、高度に専門的な医療事故について検討することが可能なのでしょうか?医療の限界や医療の現状、それ以前に"医療とは"という考え方からすでに異なる考えを持ち、「医療は悪である」と考えている被害者の会が医療を裁くのなら、それは医療における「魔女狩り」になることでしょう。
なぜ、非専門家の"感情''を考慮するのでしょう?確かに患者さんのご遺族のかなしみは計り知れません。実際に現場で働いているものとしてそれは痛感します。しかし、「医療の進歩のためにこの第三次試案があるのではなく、単に「怒りに任せたこぶしの落しどころ」を見つけるだけの会議なら、医療はその"感情"のまえに叩き潰されることでしょう。
5.分析に時間がかかる
第三次試案の過程では最悪の場合は、厚労省が行政処分を行い、さらに警察、検察が動き、裁判となる事が予想されます。どこでどのように情報を共有するのでしょう?どのくらいの人材がどのくらいのスピードで、全国の病院にフィードバックするつもりなのでしょうか?
6.システムの問題ではなく医療従事者個人や個々の医療機関の責任に帰される
現実問題として、第三次試案は、個人の行政処分の拡大、届けての義務化など、厚労省の行政処分が強化されていますが、さらには捜査機関の通知を行うことを定めており、単に「個人への厳罰化」がすすんでいるようにしか思えません。
実際に、警察は医療事故の際、医療事故詞とは独自に動き、刑事司法はなんら影響されることがないことが関係者からの発言でもうかがえます。この第三次試案は「医療の刑事免責」などでは全くなく、逆に「行政処分による強制届出と、それによる自らを有罪にする資料提出の義務化」になっています。
第三次試案は、医療の厳罰化の方向に向かっていますoこれを唯一押さえているのが、捜査機関の「謙抑的」な操作姿勢という、「医療はそもそも悪なのだが、全部取り締まると病院がなくなるので、しょうがなくお目こぼしをする」という、捜査機関の恩情でのみ医療機関は存在が許される事になるでしょう。
7.勧告を実行するにあたっての財源や人的資源の保証がない
これはどの程度の範囲をどのくらいの人間でおこなうか、それ以前に原因特定のための"解剖"を行う人材も予算もない状況であるのが現状です。法医学や病理解剖は、実際には24時間、ボランティアに近い状況で行われ、従事する人間も劣悪な環境で労働を強いられています。もしもこの第三次試案が現実化したらどうなることでしょう?
「医療の正しさを厚労省が決める」事になるでしょう。現時点でも医療制度そのものより財務省による医療費削減を大命題としている厚労省が、医療そのものの是非を一つ一つ決めていくことこそ、恐ろしいことだと考えます。医学的には正しくても、お金がかかる医療は「日本では正しくない医療」として、否定されることでしょう。
判断を"非''専門家の感情にゆだねると医療は、感情第一になるでしょう。医学的な正しさとは別に、「被害者の感情」を中心に、まるで「人は病院では死ぬはずがなく、もしも病院で死んだら、医療機関は悪い」かのような、狂ったイメージがすでにあります。医師の仕事は今後、「患者さんや家族の感情を逆なでしない」、医学的に正しいのではなく、「患者さんが怒らない」医療をすることになるでしょう。
そして医療機関に対しては「行政処分の厳罰化」によって、さらに厚労省の圧力が重くのしかかるでしょう。結果的に、この第三次試案で得をするのは、権利を強化できる厚労省だけなのです。
検討する点は多々あると思います。以下の点の訂正が必要であると思われます。
1.医療の刑事免責が必要
(そのためには刑法の見直しが必要)
2.厚労省による行政処分の厳罰化を撤回
3.判断基準の明確化が必要
(どこまでが届出範囲なのか不明であり、その基準を提示していないため現場が混乱しています)
4.第三次試案の「行える限界」を明示すべき
(第三次試案は誤解をワザと生んでいる。刑事責任や民事責任追求の軽減化という、「厚労省の仕事ではないこと」をあたかも「出来る」かのようにうたっている。しかし厚労省が刑事責任や民事責任を追及出来るわけではない。基本的に誤解を生んでいます)
5.捜査機関の「謙抑的」な姿勢に綴るのではなく、医療行為そのものが「基本的に違法ではない」という明文化が必要
6.医師牲21条の届出先は、警察の刑事課であり、最初から「医療は悪」という決め付けであ
り、改正は当然必要
再三繰り返しますが、私は第三次試案に反対の立場です。このままの第三次試案の施行は、さらなる医療への厳罰化につながり、日本医療に甚大な被害を与える事でしょう。
≪勝手なまとめ≫
・刑法の見直を
・厚労省による行政処分の厳罰化を撤回
・届出範囲の明確化が必要
・第三次試案の「行える限界」を明示すべき
・捜査機関の「謙抑的」な姿勢に綴るのではなく、医療行為そのものが「基本的に違法ではない」という明文化が必要
・医師牲21条の届出先は、警察の刑事課であり、最初から「医療は悪」という決め付けであり、改正は当然必要
・WHOによる患者さんの医療安全ガイドラインに真っ向から反対している
・医療崩壊が進むのでは
【51】50代 医師 p133
(これの特殊なことは、戦前の教科書のような墨塗り検閲が入っている意見だということです)
・刑事訴追に対する歯止めはない。警察・検察は厚労省の論理では動かない。警察が動くのは法律によってのみ。本来、警察権は国家の大権だから。
・民事に対する歯止めはない。訴訟は個人の権利であるから。
・行政処分だけは強化される。刑事になるかどうかも分からないうちに処分される。刑事罰になった例だけ処分される今の方がまだマシかも。
・個人のみならず、病院に対する行政処分が増える。処分は保険医の取り消しになる。
■■の患者、■■の患者は皆困っている.田舎に病院は不必要だそうだ。
(藤枝と宇和島でしょうね?)
・刑事事件になった場合、既に鑑定が済んでいる報告書が委員会の手に渡り、警察が押収に来た場合、それをとめる方法がない。
・民事訴訟を起された場合、報告書は委員会によって認定された証拠物件として、全てその手中にあり、それが裁判資料に提供される。(何を言ってるんだ。ロウスクール政策の失敗で、弁護士を大量に食わさにやならんのだ。医者はそれぐらい我慢しろ)
・裁判になると、調査報告書が証拠として採用される。鑑定の必要すらない。結果は訴訟された時点でもう決定している。■■事件では、「無理な■■をした」と記載された内調査委員会の報告書が証拠として押収され、刑事訴追の原因となった。同じ事がいくらでも起こる。だいたい、■■なんてみんな無理してやるもんだ。医学を知らないヤツは何言い出すか分からん。■■■■事件の判決なんて、裁判官がどれほど馬鹿かの見本みたいなもんだ。
・だいたい、反省しろと言われて書いた反省文を、その責任を問う証拠にしようなんて、中国文化大革命のときの人民裁判自己批判の手じゃないか。じゃあ、反省しなけりや委員会。
「謝れ」「御免なさい」「やっぱりお前が犯人か」吉本ネタじゃあるまいし。
・刑事になっても民事になっても、裁判になった時点で既に医者には抵抗するすべがない。委員会の結論は、裁判では絶対的な証拠として役立つ。その委員会が告発する。これでも法的判断ではないそうだ。守秘義務はどこへ行った?
・医者は反論も出来なけりや、自己防衛権も無いらしい。(君らは高連な人格を持っているはずだ。諦めろ)
・結果、医者には何の抵抗力もない。まな板の上でバラバラにされて、はいどうぞ。このシステムは医者をおいしく食う方法以外の何者でもない。医療問題専門の弁護士が大喜び。
・■弁護士によると、患者遺族も医者もともに納得していても、民事訴訟は起こさにやならんそうだ。弁護士のために?
・そうなると、医者にはトラブルに巻き込まれないようにするしか生き伸びる方法がない。危険な処置はしない。重篤な患者には近寄らない。抗癌剤などのやばい薬は使わない(エリッサ使え、使ったか、やっぱり副作用出たか、それ―訴訟だ)。救急はやめよう(最近は脳外科医でも心嚢穿刺できないと救急してはいけないのだ。じゃあ、うちなんかがやってる救急は犯罪か?)。大きな手術をするやつは馬鹿だ。と若い奴等は、公言している。いずれそいつらばかりの世になる。
・親医者は子医者に、大志を抱くな、安全な科に行けと必死に諭している。だって、触らぬ神にたたりなしなんだもん。かくして、眼科と皮膚科のシボウ者ばかりとなり、医療はシボウする。
・医者の親切、危険なお世話。情けは人の為ならず、自分の首を絞めるだけ。
・公立病院はそろって救急指定返上しよう、と若い奴らは経営陣を突き上げている。早晩、トレンドになるな。なに、20年前に戻るだけのこと。当時、救急は圧倒的に民間病院優位だったから。あ、今は民間も嫌がるか。
・病院は労働基準法を守れ。当直明けで疲れ切ってトラブルを起こしたら、労働条件を整備すべき厚労省の怠慢を訴えよう。いずれ現実。
・医療過誤のない社会とは:救急の無い社会、産科の無い社会、小児科のない社会、危険な医療のない社会。そしてそのうち、外科がなくなる社会、内科がなくなる社会(今内科希望者は、数年前の3分の1)。最後に、皮膚科医と形成外科医と眼科医だけがのこる社会。
・みんな、年寄りは、さっさと逃げ出すことにしようぜ。■■の医者のように、看護婦がミスしたら、医者は民事有責は仕方ないにしても、10月のムショ暮らしと、病院から訴えられて倍賞5000万円だ。人生の最後に来て一気にツケ払い。当方55歳、あと5年。それまで何とか、神様お願い・・・。
・かくして医療崩壊は有終の美を飾る。
追記:誤診が犯罪なら、上級審で逆転判決が出た下級審の裁判官は、どうして逮捕されないんだろう? ■■■■事件の判事は? 誤認逮捕した警官は逮捕されるのか? 誤報をしたマスコミはどうしてる?
それよりみんな、まず法律を守ることから始めようよ。労働基準法って知ってるか? 医師法や医療法なんかより、ずっと大事な法律だよ。
≪勝手なまとめ≫
・厚労省の行政処分はひどい。
・刑事訴追に対する歯止めはない
・民事訴訟に対する歯止めはない
・裁判所はひどい
・労働基準法を守ろう
【52】 50代 医師 p135
2次案より良くなっているとは思いますが、まだ賛成できません。
p3-4:届け出の範囲はおおむね妥当ですが、現場の混乱を避ける意味でも具体例を多く示してほしい。
p9:捜査機関へ通知される(40) 重大な過失の定義が依然として不明瞭です。
p10:(42)院内医療メディエーターの設置を推奨しているようですが、予算の裏付けがありま
せん。
p10-11;裁判外紛争解決制度や無過失賠償制度が整っていない現状でこの制度のみを先行させることは反対です。
P11;現在の医療事故の多くがシステムエラーに起因することはすでに明らかです。この場合に医師個人の責任を問うものでなければ、病院管理者の責任になるのでしょうか?
例えば一人産婦人科医長の状態で事故がおこれば、その状態を放置したとして医療桟関(という事は院長?)に重任がある、ということでしょうか?現実的に改善不可能¥な医療崩壊といわれる現在の医療環境に追い込まれながら、再発防止の計画書を提出せよといわれても医療機関も無理でしょう。医師不足、看護師不足を改善するための具体策とあわせての総合的な医療改革が必要で、この法案だけでは拙速です。
p13;別紙1の図に調査結果を医療機関や遺族へ回答するという流れを明確に記載すべきで
す。
捜査機関との関係について
p15;委員会からの通知を踏まえて、捜査機関が対応する云々の記載は、厚労省の希望的推測にすぎません。
本案では全体として従来より多くの届け出が予想され、医療関係者を中心に膨大な人手と時間が必要なシステムと考えられますが、予算を含めた実効性の裏付けが全く記載されていません。特に実際の調査チームは学会の重鎮や、開業医中心の医師会では困難で、勤務医中心になると推測しますが、上述の医師不足を考えると実現はかなり困難と思われます。
当初は遺族からの依頬があった例からスタートしてはどうでしょうか(遺族からの依頼のない医療関連死は従来通り病院内の医療安全委員会で調査する)。
≪勝手なまとめ≫
・届出範囲が不明瞭
・重大な過失の定義が不明瞭
・院内医療メディエーターの設置の予算の裏付け
・裁判外紛争解決制度や無過失賠償制度が整っていない現状でこの制度のみを先行させることは反対
・捜査機関が対応する云々の記載は、厚労省の希望的推測にすぎない
【53】 50代 医療機関管理 p136
第三次試案を読みました。
悪意無き人道的行為(通常の医療行為)の結果責任を、人道的行為を行った者に課すこと自体が誤っている、と感じます。
■■■■事件が我国医療崩壊の大きなターニングポイントでした。
第三次試案(最終案?)には、
「現在の医療崩壊をどのように食い止めるのか?」
の視点が全く無く、■■の反省が全くなされておりません。
また、医療システムの欠陥(人員不足)による事故の責任は、国が負うべきだと思います。医療団体の要求を擬ね付けた責任が問われるべきです。もう一度繰り返します。
【現在の医療崩壊をどのように食い止めるのか?】
との視点が決定的に欠けています。
≪勝手なまとめ≫
・悪意無き人道的行為(通常の医療行為)の結果責任を、人道的行為を行った者に課すこと自体が誤っている
・医療システムの欠陥(人員不足)による事故の責任は、国が負うべき
【54】 40代 医師 p137 内科勤務医
【Ⅰ】はじめに
小生は内科の勤務医です。臨床医として東京都内の70床の急性期病院で外来と病棟の診療を担当しています。昨年から、厚生労働省医政局長の私的懇談会である「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」での議論の行方を注意深く見守って参りました。厚生労働省には臨床現場のことを考えていただき、本当にありがたく感謝申し上げます。
残念ですが、一連の議論の中では、第一線を担う、いわゆる「勤務医」の意見は全く反映されていないと感じました。学会、大学、医師会、病院団体の代表は同じ医師でも、強い立場の偉い医師です。最前線の、外来も病棟も担当する中小民間病院の臨床医とは全く立場が異なります。当院の近隣では基幹病院の勤務医を辞め、開業する医師が相次ぎ、まさに「医療崩壊」が進行中です。是非、現場の声も聞いてください。
今回の第三次試案は「平成18年2月18日福島県立大野病院産婦人科医の逮捕」以後に加速した、医療崩壊に伴う医療現場の混乱を回避することに重点がおかれています。事故原因究明、再発防止への道筋については評価したいと存じます。しかし、医療現場への捜査機関の介入は現場の混乱を招きます。医療は萎縮し、患者本位の医療は成り立ちません。常に捜査機関を意識し、捜査機関の意向に沿った医療を行うことになります。
第三次試案に対する、小生の私見を述べさせていただきます。
【Ⅱ】重点項目
本試案の重点は以下の4項目に集約されると考えます。
(1)(略)診療行為とは、人体に対する侵襲を前提とし一定の危険性が伴うものであり、場合によっては死亡等の不幸な帰結につながる場合があり得る。
(2)(略)医療事故による死亡(以下「医療死亡事故」という。)が発生した際に、解剖や診療経過の評価を通じて事故の原因を究明し、再発防止に役立てていく仕組みが必要である。(略)
(4)(略)医師等が萎縮することなく医療を行える環境の整備(略)
(7)委員会は、医療関係者の責任追及を目的としたものではない。
以上の4項目を踏まえ、今回の第三次試案の評価できる枠組みは残すと、絶対に修正が必要なところは(8)、(19)、(39)、(40)の4箇所です。
【Ⅲ】権限の分離と所轄官庁
まず、調査権限と処分権限は分けるべきです。以下の如く修正します。
(8)委員会の設置場所については、内閣府に設置する。医師や看護師等に対する行政処分を行う権限が厚生労働大臣にあることから、医療事故に関する調査権限を分離するためである.
【Ⅳ】医師法第21条と医療死亡事故の届出について
医師法第21条の改正が必要なのは明らかです。医師法第21条は、そもそも、医療と関係ない死亡に関わるものと解釈します。かつて日本法医学会が行った拡大解釈は、臨床医として、全く容認できません。拡大解釈には反対です。
(19)は以下の如く修正します。
医療事故の特性にかんがみ、医療死亡事故は異状死には該当しないと解釈するのが妥当である。医師法第21条を改正し、医療死亡事故は、医師法第21条に基づく異状死の届出の対象とはならないことを明記する。
【Ⅴ】医療事故と刑事責任、捜査機関への通知について
小生の考えは、「医療事故は本来免責とすべきである」というものです。
将来、第三次試案が法律として施行されても、依然として、刑法上の業務上過失の罪は適用可能です。医療事故の免責について社会的合意が得られていない段階では、必要があれば、捜査機関は医療現場に介入します。
さて、臨床医は一人の患者だけを診ているわけではありません。医師は時々刻々と変化する患者の状態に向き合い、瞬時にその時点での最善の判断を下します。かかる条件下で、医療に関連した死亡が発生した場合、結果から遡り、原因を追求することは必要です。
しかし、結果から遡り、捜査機関へ通知される可能性があれば、医療は萎縮せざるを得ません。実際に病院の勤務医は次々と辞めています。
したがって、小生は委員会から捜査桟関への通知は反対です。まして、調査結果により、捜査機関に通知するのは、公平を欠くものですから、納得できません。委員会は、捜査機関とは独立した立場をとるべきです。
(39)(40)は以下の如く修正します。
(新39、新40)診療行為そのものがリスクを内包するものであること、また、医療事故は個人の過ちのみではなくシステムエラーに起因するものが多いこと等を踏まえると、医療事故の特性にかんがみ、医療事故は刑事責任を問うべきではない。
【Ⅵ】その他
最後の「3 医療安全調査委員会以外での対応(医療事故が発生した際のその他の諸手続)について」は以下の如く修正します。
医療安全調査委員会は、医療死亡事故の原因究明及び再発防止を目的としたものであり、その業務は調査報告書の作成・公表及び再発防止のための提言をもって終了する。医療死亡事故が発生した場合の民事手続、行政処分【削除:、刑事手続]については、委員会とは別に行われるものとする。[削除二なお、捜査機関との関係については、別紙3参照。】
《新制度》(別紙1)の右下の「警察へ通知」を削除します。
(別紙3)の「捜査機関との関係について」はあくまでも現時点での希望的憶測に過ぎず、改めて検討が必要と考えられるため、削除します。日本国の医療を支えている勤務医の声にも耳を傾けていただくよう、心からお願い申し上げます。
以上です。
≪勝手なまとめ≫
・内閣府下での設置を
・医師法第21条の拡大解釈には反対
・医療事故は本来免責とすべきである
・医療安全委員会の役割は調査報告書の作成・公表及び再発防止のための提言をもって終了
・警察へ通知をすべきではない
【55】 60代 医療機関管理 p141
医療関連死亡事故を、警察ではなく中立的な第三者委員会を新たに創設して、そちらに届け出をすることには全く異論はありません。届出内容も、先ず院内の事故調査委員会で検討した上で、医療者側にとって予期せぬ死亡および遺族が必ずしも死因に納得されない症例に限定して、医療機関の管理者が届け出を行うことにも賛成します。
但し、医療事故再発防止の観点からすると、この中立的委員会は先ず第一次的には医療関係者のみに限定するべきであろうかと考えます。医師はじめ当該事故関係医療者は、起こった出来事を総て委員会に申告してこそ、はじめて真の事故原因追究が出来るものと思います。その申告内容は臨床所見の記録と同程度に重要で、病理解剖所見を対比検討してはじめて総合的に死因を突き詰めていくことが可能になると思いますが、これにはその疾患分野の専門医が当たるべきかと考えます。死亡後に、レトロスペクテイブに供述された内容は、当然良好な結果に導き得なかった反省も含まれていますので、このことを個人の刑事処分に連動するような可能性を残せば、正直に反省点を導き出して事故再発予防の手段に使えなくするばかりか、医学・医療の進歩の妨げになることは間違いありません。この段階でなお結果を遺族に説明しても納得されないような場合には、法律家、有識者、医療者等で構成される二次的な委員会に諮るべきかと考えます。
日本の医療者は近年、高度で急速な進歩をしている過密な医療に対し、欧米に比して極めて少数の医師.看護師で対応しています。一般的には十分な休暇も取れずに頑張っている状況があります。システムエラーとして捉えるべき問題を個人のエラーに帰して、遺族の処罰感情に迎合することで一件落着とする風潮は、この社会全休で厳に戒めるべきものと考えます。
≪勝手なまとめ≫
・調査委員会は医療関係者のみに限定すべき
・刑事への通知はすべきではない
・システムエラーとして捉えるべき問題を個人のエラーに帰して、遺族の処罰感情に迎合することで一件落着とする風潮は、この社会全休で厳に戒めるべき
【56】 20代 医師 p143
・現状において、薬剤や患者の取り違いといった、単純ミスは「重大な過失」とされている。死亡という結果の重大性に着目して「重大な過失」とされ、業務上過失致死罪が適用されている。
・第3次試案に書かれている通り「責任追及を目的としたものではない」ならば、行政処分機関にも捜査機関にも通知すべきではない。責任追及を目的としていないことの制度上の担保がなければ、現場の医療者は安心して診療に当たることはできない。
・全国唯一の組織が「正しさ」を判断することは、医療の統制につながる.医療における判断・選択は、患者ひとりひとり、家族ひとりひとり、医療者ひとりひとりによって多種多様であり、「正しさ」の答えはひとつではないからである。全国唯一の組織が決める「正しさ」に、すべての国民が従わざるを得なくなり、患者・家族の自由な選択は阻害される。国の委員会に一元化することは危険である。
・医学的・科学的な真相究明を目的とし、複数の多様な委員会が、多様な医療専門家による多様な「正しさ」の判断を示せる制度とすべきである。多様な専門家による多様な選択が存在することを、患者.家族が知ることも、納得を得るために重要なプロセスである。
・「医療を受ける立場を代表する者」を入れるのはなぜか。患者.家族の判断・選択は多種多様であり、それを第三者が代表することはできない。ひとりひとりの多様な選択を尊重するためには、当事者である患者・家族本人が、その希望によって参加するか否か選択できるようにするべきである。
・当事者を調査から排除するならば、ますます真実から遠ざかり、医学的・科学的な真相究明は不可能となる。この委員会が原因究明を目的としているとは考え難い。
≪勝手なまとめ≫
・重大な過失の定義があいまい
・届出をすべきでない
・遺族の代表ではなく、当事者を入れるべき
【57】 不詳 p144
【50】と同じ
≪勝手なまとめ≫
・刑法の見直を
・厚労省による行政処分の厳罰化を撤回
・届出範囲の明確化が必要
・第三次試案の「行える限界」を明示すべき
・捜査機関の「謙抑的」な姿勢に綴るのではなく、医療行為そのものが「基本的に違法ではない」という明文化が必要
・医師牲21条の届出先は、警察の刑事課であり、最初から「医療は悪」という決め付けであり、改正は当然必要
・WHOによる患者さんの医療安全ガイドラインに真っ向から反対している
・医療崩壊が進むのでは
【61】 50代 医師 p149
第三次案の「重大な過失」の定義をきちんと具体化すべきである。例:手術時の患者取り間違い、カリウムの誤静注による死亡など。下記の■■による曖昧な定義では、医療関連死がすべて重大な過失と解釈される可能性があり、医師は安心して医療行為自体ができない。とくに大野事件の求刑根拠となった2番目の根拠はあらゆることに利用される可能性があり、この理論が通って有罪判決が出るようであれば、産科医療だけでなくすべての医療が崩壊する。
"重過失致死罪の記述に、「重過失とは、注意義務違反の程度が著しい場合を言う」、「わずかの注意を払うことにより結果の発生を容易に回避し得たのに、これを怠って結果を発生させた場合」とある。"
≪勝手なまとめ≫
・医療関連死がすべて重大な過失と解釈される可能性があり
・No more Fukushima!!!!
【62】 40代 医師 p150
拝啓、担当者殿。
当委員会の目的は医療事故の原因究明と再発防止にあるものと信じます。
それならば個人免責が一番最初に当然のものとしてあるべきです。場合によっては警察に通報、警察に資料を証拠として渡すなど論外です。誰が見ても違法な医療行為はこの委員会とは別に警察司法が関与するのは当然です。違法な医療行為は多くの場合患者や家族遺族が訴えることになるのはもともと施行する人間がうしろめたさを感じる違法行為だから当然です。そうではなく、この委員会は一般的な医師、法を遵守する普通の医師が通常医療行為をしたのに予期せぬ事故がおこったときにその原因究明と再発防止をはかるためのものだと理解しています。ですから委員会の主要メンバーは毎日最前線の病院で働いている一般の医療関係者特に勤務医(大学で実験や研究ばかりして実際の臨床医療を行ってない教授などは請外)や看護師などを据えるべきです。医療関係以外の他の一般市民(いわゆる有識者や患者団体関係者)はあくまで補助メンバーないしオブザーバーとして考えるべきです。さもなければ、今でも進行している医療崩壊が決定的となり、国民の皆さんが急病にかかったとき(以下文字化け)
≪勝手なまとめ≫
・個人免責が一番最初に当然のものとしてあるべき
・警察への通知など論外
【63】 40代 医療機関管理者 p151
以下の事例を持ってしても医療トラブルへの刑事介入は果たして適切に行われるといえるのでしようか?
「マスコミが報道しない京都大学脳死肺移植手術事件の一面」
京都大学大学院消化管外科 水野靖大
http://mric.tanaka.md/2008/04/16/_vol_46_1.html (以下本文略)
≪勝手なまとめ≫
・医療トラブルへの刑事介入は果たして適切に行われるといえるのか?
【66】 50代 歯科医師 p153
医療安全調査委員会(仮称)について
委員会の設置
(13) 2行目- や臨床医(歯科医師を含む)、とすべきで、医師以外の医療関係者(例えば、薬剤師、看護師)とすべきでしょう。なぜなら歯科医師は医師と同じく医療の専門家であり、事案により当然調査チームの一兵として必要だからです。
同じ理由で薬剤師、看護師も医療の専門家とすべきかと思います。
≪勝手なまとめ≫
・対象は医師だけではない
【67】 不詳 p156
1 はじめに
(i)Hl1年米国のInstittlte Of Medicineから to err is humanが出版された。同年横浜市大事件都立広尾病院事件などを契機に、医療行為の無謬性が否定され、「事故は起こるもの」との認識が広まった。従来の「事故は起こらない」前提での医療制度の転換が必要になった。その結果、
①事故の公表と謝罪のできる制度
②被害者救済の制度(無責補償制度)
③強制医賠責保険制度、(参事故原因調査委員会)
④医療安全推進機構
⑤ADR制度
などが必然として構築されなければならない。
(3)事故調の設置は絶対に必要である。この委員会の目的は医療の不確実性を国民に対して明らかにすることにある。その意味は日常生活の中でも発症する突然死が入院治療中に原病とは関係なく発生した場合を除いて、医療行為の結果としての人の死に、医療人の責任が全くないことはありえないからである。結果論的にああすればよかった、こうすればよかったということは必ずある.反省点のない者はリピーターになる。自己の反省が次の安全に結びつくものである。広尾病院のような事例においては、死因は明らかであり、事故調の役割としては、医療機関が事故を隠さないで公表し、直ちに謝罪できる条件を作ることにある。加えてシステムエラーの原因を追究し再発防止-の提言が出来ることである。すなわち①④⑤の機能を持つことになる。
2 医療安全調査委員会について
(6)(8) 医療システムに主原因を求める時、厚労省が当事者になりうる。厚労省の下に設置するとしても、独立した第3者機関とするべきである。
(9)地方委員会は都道府県におかれた今は有名無実の「医療安全推進センター」の主たる業務に組み込むのがよい。
(13) 構成委員は医師、看護師、薬剤師、医療安全管理者など医療関係者でよい。心理学者、システム工学者などを入れる。法律関係、医療を受ける立場を代表して入った委員の果たす役割は、議論を萎縮させるだけである。真筆な反省と次の改善が最も求められ、これを公表することで透明性は確保されるはず。しかしこのことは、刑事訴追との関係があり、明確にしておく必要あり。(後段で述べる)
「医療死亡事故の届け出」
(16)不透明な21条問題の解敦のために、本論議がある。制度化することは必須。
(17)現在の法医学会の見解による異常死定義と最高裁の拡大解釈による21条の下では、届け出範囲①は必須の届け出であり、同時に謝罪を行う。②は医療後の死亡を予期していか否かにかかわらず届け出が必要と考える。合併症と患者が納得してくれればよいが、それができないから紛争になっている。一定の合併症であると言いつつ、この点こそ反省点のもっとも多い所であり、事故原因のグレーゾーンと言われるところである。届けるべきか届けないでおくか、判断を迫られる苦脳から一時も早く解放されたいと言うのが、すべての院長の願いである。すなわち機械的自動的に届け出る制度でありたい。現行の21条の運用からすれば、患者家族が納得していても、届け出ておかないとどうなるかわからないという不安があるからである。医療行為による死亡事故が、その医療行為が死に起因したか否か迷う例も届けることとしておいたほうが良い。例えば胃癌手術後順調な経過をたどる。医療行為は給食のみで10日目の深夜、呼吸停止状態で発見、蘇生できず死亡した例など。理想の在り方は21条を今のような極度の拡大解釈から本来の文字通りの法に戻すことを前提に、新しい事故調で医療事故の透明性を確保すればよい。届け出る事例は、いわゆる法医学会のいう異常死をすべて届ければよいということになる、外科系学会のいう合併症の届け出が不要である(21条-の届はその通り不要であるが)とは思わない。
合併症の分
析こそ次の医療安全-の大きな糧であり、注意義務違反の有無の最大の争点になる点であ
る。ただし、患者家族との間で納得が得られたケースは届出不要とする。事故事例収集の意味で例外なくとする意見があるが、同一事例は必ず報告されるであろうから、数を求める必要はない。例えば内視鏡ポリープ切除の際の腸穿孔、死亡は予防的処置をしても一定の率で起こりうる。といって患者が全て納得してくれるものではない。すべてを届け出て、院内で合併症であるから届け出不要と判断する代わりに、委員会で合併症として不可避であるとの結論を期待する.一方過失ありと判定されても、納得いくものであれば、即患者-の謝罪が出来るというものである。勿論こうすればよかった。ああすればよかったとの意見は必要である。再発防止のための反省点、教訓が民事、刑事に使用される危倶があり、公表資料の中に入れるべきかどうかの議論がほしい。医療者に還元すればよいことであるから。
(22)届け出に院長判断を迫る制度ではいけない。特に院内安全管理委員会などの協議を得て届け出るなどはナンセンスである。
(23)上記の範囲の届出制にすれば遺族からの調査依頼などはないはず。
(27)地方委員会での窓口で、有力なトリアージ機能を持たせて、窓口で処理する楼能を持たせる。多数の機械的報告に対する処理制度を構築する。解剖の実施は現実としては相当困難を伴う。時間的制約など、どう設計していくか、具体化が必要。
「捜査機関への通知」
(39)21条を何度読み直しても、医療関連死を届け出よとの法律ではない。異常死体を検案した時、見た医師(診た医師ではない)が届けることになっているのである(院長が届ける根拠は無い)。検案とは診察をしたことのない、病歴の明らかでない死体の外表を戟察することである。どう見ても医師の医療行為を対象とした法律ではない.この法は犯罪捜査上必要であり、残してもよいが、罰則規定33条をなくすることも一案である。そうすれば文字通りの法になるであろう。この法の扱いを放置して、本事故調論議は成り立たない。別紙1に新制度と書いてあるが、現行は現行のままであり、新制度が新たに加わるのみである。精神的負担の増を示すのみであるo運用で説明されても解決にはならないo今回の医療事故調査委員会の設置に当たり、これまで医療関連死のうち医療側、あるいは患者側が過失傷害、致死と考えられる事例を届け出て公表し、責任ある場合には謝罪ができると言う制度の構築を目指すべきである。その中で故意、未必の故意(判断の困難を伴うが言葉として確定しておくべき)の事例を捜査当局-通知することとする。この通知の根拠は医師法21粂ではなく、今回の検討の中で創設する。但し、重大とはいえ過失によるものは捜査機関に通知する必要も、義務もないと考える。刑事事件化の怖れが委縮医療を呼び、防衛医療を呼び、医師の使命感を阻害しているからである。善意を持って行った不確実な医療の結果を刑事事件として扱われることはない。厚労省自身の考えとして主張すべきである。この基本的コンセンサスが事故報告制度を有効とする根幹と考える。
「遺族と医療機関との関係」
(44)何度も意見を書いたが、医療事故の反省、教訓は必ずある。正確な事故原因などはふつうグレーゾーンの中である。調査報告書の在り方によっては紛争を助長する。素人の裁判官の心情的判決の増加をきたし、医療界-のプレッシャーが増す可能性がある。報告書には事実関係の明確化と正確な原因究明が不可欠であるというが、場合によっては事実関係のみの記載で有責、無責の判断を保留せざるを得ないケースを残すべきである.このことが医療の不確実性を証明することにもなる。この先はADR或いは民事の裁判ということになり、被害者救済の仕組み②が必要になる所以である。
「行政処分」
(48)システムエラーの処分について、計画書の作成等を求めるのはよいが、財政的裏づけのない計画など書かせても負担が増える上に、画に書いた餅になる。医療機関挙げての安全対策が実現するためには財政的支援が不可避である。
個人の行政処分は刑事罰(故意犯)のケースは免許停止、免許剥奪を含めて厳重とする。
過失に対しては教育重視とし、リピーターは免許停止もやむをえない。医師免許もそろそろ更新制と定年制を考慮するべきではないだろうか。80,90歳でも実働医師として勘定されているのは実体を示していない。
≪勝手なまとめ≫
・事故調の設置は必要である
・その必要条件として①事故の公表と謝罪のできる制度②被害者救済の制度(無責補償制度)③強制医賠責保険制度、(参事故原因調査委員会)④医療安全推進機構⑤ADR制度の確立が必要である
・厚労省から独立した機関とすべき
・構成委員は医師、看護師、薬剤師、医療安全管理者など医療関係者でよい。心理学者、システム工学者などを入れる。
・医師法21条の拡大解釈をやめるべき
・故意、未必の故意のみ捜査当局へ通知とする
・合併症については院内で検討 データは集積すべき
・解剖について全例行うことは困難
・調査結果については結果についてのみ記載
・80,90歳でも実働医師として勘定されているのは実体を示していない
・リピーターは免許停止もやむをえない
【68】 50代 医療機関管理者 p159
第一次試案に対するパブリックコメントよりずっと述べてきてことであるが、医療安全調査委員会の存在意義はあくまで医療事故の原因究明・再発防止におくべきであって、医療事故を起した医師を罰するという要素を完全に捨て去るべきである。これはなにもこれらの医師の責任追及や指導を全く放棄せよと言っているのではない。それは別の仕組みを考えるべきであり、それが担保されない限り原因究明・再発防止に資する情報が集まるかどうか疑問を抱かざるを得ないからである。(責任追及の内容に関しても意見があるが、後述する)。
又事故に伴う紛争解決も全く別問題である。
しかるに今回の第三次試案でもこれらの概念が混在しているように思えるので、以下に具体的に意見を述べたい。
(1)まず「医療の安全」という言葉に疑問を持たざるを得ない。不確実性を秘めた「人間」を完全たり得ない「人間」が医療を施すうえで真に「安全」という概念は存在しない。従って「安全」という言葉を全面に出す事に危うさを感じる。
(10)原因究明が目的である限り、調査チームは医療関係者だけで構成すべきであり、法律家やその他の有識者は必要ない。医療従事者だけでは国民がその中立性を疑うという懸念にたいしては、それを払拭するような実績を残せば良いし、又啓発も必要であろう。
又解剖担当医が充足出来るかどうか疑問である。
(16)今回「ペナルティー」という言葉は消えているが、制度化という言葉には抵抗を覚える。真に原因究明だけの組織と認知されれば、ほとんどの事故は届けられるであろう。
(20)届出範囲②の定義が未だ不明である。
(21)届出はやはり真に真相を知りたいに違いない主治医が行うべきである。
(22)(23)届出不要と判断した場合には、届出義務違反に問われないがそうでない場合には行政処分が科せられるとあるが、判断の定義が未だ不明である。
(27)④所管大臣に提出された調査報告書が処分の資料となってはならない。
(38)現在の医療事故情報収集等事業の情報は必ずしも全ての医療機関に伝わっていない。今後中央委員会の情報が全ての医療機関に伝わるような方策を考えるべきである。
(39)故意と過失は根本的に異なるものである。故意によるものは事故ではなく犯罪である。従って刑事罰に処されることに者かではない。しかし過失による医療事故に刑事罰を加えることには断じて賛同できない。
福島県立大野病院の件で、検事が医師をまるで殺人者の如く断じ、遺族もまた激しい憎悪を示しているのを見聞するのは誠に悲しい風景である。医療に最善を尽くしながら結果が悪いからといってこのように処遇されるのは理不尽であり、過失事故を刑事罰に問うべきではない。
(40)(むは犯罪である。
② リビターといえども必ずしも刑事罰に問うべき者ばかりとは限らない。
③ 「標準的な医療行為」は法的評価でなく、医学的判断であるがばらつきが出る危険性が高い。又これによる「重大な過失」の認定は無意味である。以上の問題点が有り、それを解決せずに捜査機関-通知する事は許されない。
48)再教育を重視した行政処分ならば個人に大きな負担をかけないという安易な考えが見られるが、勤務医等に対する行政処分がたとえ指導や戒告とはいえその将来の障害となる危険性もあり、やはり謙抑的に行われるべきである。
最後に別紙3の問答集で、この制度により検察・警察の捜査が抑制されるかの如き記載があるが、元東京地検特捜部検事e: 氏が「これは法を無視するものであり到底受け入れられない」と述べておられるように、甘い幻想ではないか。
以上述べてきた如く、まず事故を起した医師を刑事罰に処するという思想を改めるべきである。それが解決しない中、本制度はあくまでも原因究明・再発防止の立場を鮮明にすべきであり、拙速な法案化は将来に禍根を残すであろう。なお我々医師も、自浄作用を強力に進め国民の信頼を得るように努力すべきである事は論を待たない。
以上
≪勝手なまとめ≫
・医療安全と紛争解決はまったくの別問題
・原因究明が目的ならば調査チームは医療関係者だけで構成すべきであり、法律家やその他の有識者は必要ない
・解剖担当医が実質充足しないのではないか
・届出の定義が不明、ペナルティに不快感
・調査報告書が処分の資料となってはならない
・調査分析結果の医療機関へのフィードバックを考えるべき
・故意は犯罪 しかし真摯に医療行為を行い刑事事件とされてはならない
・ 「標準的な医療行為」「重大な過失」等が曖昧
・再教育を重視した行政処分ならば個人に大きな負担をかけないという安易な考えが見られるが、勤務医等に対する行政処分がたとえ指導や戒告とはいえその将来の障害となる危険性もあり、やはり謙抑的に行われるべき
・業務上過失致死罪の見直しを
【69】 40代 医師 p161
1)まず、目的は「医療事故による死亡原因の究明と再発防止」に絞るべきであり、複数の目的が混在すれば焦点がずれることになる。「医療事故による死亡原因の究明と再発防止」を唯一.無二の目的とすることを懇願する。
2)委員会の設置は絶対に厚生労働省に置くべきではない。調査権と処分権限は当然分離すべきである。
3)調査チームは先述したように目的を絞れば、自ずと医療専門職になるべきで、法律家や有識者など医療専門外の人が入ることは害こそあれ専門的な原因究明に何の役にも立たない(役に立つとすれば国民の目線での感情論である)。逆に、原因究明の目的では、臨床病理医と法医学の専門家はどちらか、あるいは両方は必須にすべきである。
4)調査報告書は医療関係者以外のものが理解しやすいように配慮するとあるが、これも目的が原因究明と再発防止し絞れば、むしろ逆であって専門的な議論と学問的な防止策として医療関係者に向けて発信すべきである。
5) リピーター医師や故意は別として、重大な過失に関しては定義や評価判断が困難になると考えられる。考えようによっては何らかの過失は出てくる可能性はあり、むしろそのような小さな過失でも見逃さずに究明して、今後の再発防止に役立てるべきである。しかし、過失の大小によって刑事罰が科せられる可能性があれば専門的に突っ込んだ議論は不可能になってし辛う。それではこの制度自体の存続意義がなくなる。
6)民事手続き、行政処分、刑事手続きについては、委員会とは別に行われるとのことだが、報告書がそのような手続きに利用されることは絶対にあってはならない。なぜなら、目的が「医療事故による死亡原因の究明と再発防止」だけであれば、専門的にかなり突っ込んだ議論ができ、関係者の小さな過失でも究明しようとする意志が働くが、これが刑事や民事の裁判などに利用される可能性があるとなると小さな過失(後で第三者が見て重大な過失と評価する可能性がある)を糾弾する表現はできなくなる。したがって、この報告書は断固として「医療事故による死亡原因の究明と再発防止」の目的以外に利用されることがないように明記すべきである。
7)上記にも関連するが、医療関係者の責任追及を目的としたものではないと明記しているにも関わらず、関係者の免責については記載がない。関係者は免責事項がなければ自分の不利になるような表現や言動をするはずがないし、正直に自分の責任を言うことを強要もできない。正直者が損をするようなことは絶対に避けるべきである。「医療事故による死亡原因の究明と再発防止」を最大。唯一の目的とするならば、関係者の法的免責を明確にするか、それができなければ少なくとも報告書が民事や刑事裁判および行政処分に利用されることを絶対に禁止することを明記すべきである。
≪勝手なまとめ≫
・目的を絞るべき
・調査権と処分権限は当然分離すべき
・原因究明を目的とするなら、医療専門職のみとすべき
・専門的な議論と学問的な防止策として医療関係者に向けて発信すべき
・重大な過失の定義が曖昧
・報告書は断固として「医療事故による死亡原因の究明と再発防止」の目的以外に利用されることがないように明記すべき 民事・刑事ともに使用すべきではない
・関係者の免責を
【70】 70歳以上 医師 p164
2.医療安全委員会について
【委員会の設置】
(8):医療事故の原因を明らかにし、安全対策を進める為の委員会であって【責任追及を目的としたものではない(7)】とすれば、そして本試案の内容からは委員会が行なうことは、「調査チームによる調査(10)」、其れを基にした「地方委員会の報告書の作成(ll)」、中央委員会はそれにより「医療の安全確保のための施策等について行政機関等への勧告建議する(12)」ことを仕事とするのであるから、監督官庁である厚生労働省乃至厚生労働大臣ののもとに設置する必要はなく、第三者的立場で、まとめられた報告、勧告、建議が出来る権利を確保するべきであると思う。(43)にも述べたが、家族の信頼を得る為にも此のことは重要であると思われる。
(13):調査チームの医師以外の医療関係者について(例えば、・・・看護師)と書かれているので、助産師も含まれていると考えて良いのか。調査チームは、事例ごとに置かれる事になっており、任命は大臣となっているが、選任するのは誰か?専門領域の研究者も必要だが、現場の臨床の豊富な経験と広い見識を持つ医療関係者を選任する必要がある。
(15):「業務を支える事務局の設置についても併せて検討する」とあり、また(30)にはモデル事業における「調整看護師のように、・・.」とあるが、常設の事務局として看護師のほかに事務選任者を置くという認識で良いか?
事例ごとの調査チームが設置されて時には、当然事務処理担当者が必要と考える。
【医療死亡事故の届出】
(17)、(20):本委員会が「死亡の原因究明・再発防止」を目的としているので届け出対象が死亡例に限定されるのが当然であるが、死亡に至らない医療事故でも患者家族にとっては原因究明・再発防止が強く望まれると思われる。
例えば、分娩中の管理や医療処置と関連して発生する胎児や産婦の軽重様々な障害。後遺症は家族にとっても医療者にとっても原因究明・再発防止を強く望む問題である。しかも双方にとって精神的.身体的・経済的.時間的に負担となっている。
(20)、(図表):対象となる死亡例について、「誤った医療を行なったかが明らかでない死亡例について【医療処置を行なった後に死亡する事を予期していた】場合には「届出不要」とされているが、医療処置による死亡は(特に手術や出産においては)ある程度予測されるものである.例えば、分娩における妊産婦死亡は10万出産に4~7(県別で見れば0-27)であり、周産期死亡は1000出産に5-6(県別で見れば4-7)となっている。産婦人科医は分娩に伴う死亡を「予め期待」はしていないが、「予め想定」して死亡事象が発生しないように診療しているのである。此れ等を「予期していなかった」とすれば、年間5000例強の死亡例は総て対象になる。
また医療者が「予期していた」死である事を明示する為に、それぞれの施設におけるすべての医療処置に起因する死亡の頻度を、あらかじめ告知しておく必要がある事になるのではないか?
【地方委員会による調査】
(27):本制度は、医療行為に関わる死亡例については解剖が行なわれる事が前提となっていると思う。私の今までの50年の医師生活の経験では、解剖を実施出来る所が少ない、結果が出るのに時間がかかる、此の事もあって積極的に家族に解剖することを奨めないのと共に家族にも解剖は避けたいという気持ちが強い。
最低限でも、病理解剖医と臨床法医医の養成は急務ではないかと思う。
①委員会の調査の権限はどの程度のものか?
②※死亡時画像診断等を補助手段として活用する事の検討も急務であろう。
③※ (これらの評価・検討は、医療関係者の責任追求を目的としたものではない)が、結果が公表されるので、民事刑事訴追に結びつかない筈がない。
⑤ 「医療従事者等の関係者が、地方委員会からの質問に答える事は強制されない」は自分にとって不利な事を答える必要はないという『黙秘権』に相当するものと思われるが、真実を明らかにしたいという家族の意向や当該委員会の役割りと反するものやあり、社会的圧力が強く、空証文に過ぎなくなる恐れがつよい。
(40)の③ :「(,この判断は、あくまで医療の専門家を中心とした地方委員会による医学的判断であり、法的評価を行うものではない。)」と書き添えたものも、委員会が法的評価を行うのは越権行為であり当然の事であろう。公表された調査結果と委員会の判断を司法がどう使うかは知らないと言っているだけの事である。
悪質な医師に対する対応は監督官庁と学会或は医師団体とが行なうべき事と思われるが、其れを放棄して司直に任せるということではないか。医療関係者個人よりも、システムエラーが多いことが問題であるとすれば、なおさらの事である。
【遺族と医療機関との関係】
(43)遺族に対して、「第三者による客観的な評価結果」である事をどのように保証するか。その意味からも委員会の設置場所は厚生労働省から分離すべきであろう。
【行政処分】
「責任追及を目的とするものではない」としながら此の項目が入るのか理解出来ない。
対策をどうやって立てるかの筋道を立てる事が大事ではないか。
周産期医療の組織化が必要である事は40年前から指摘されているにも拘わらず、行政は医師の個人的な努力で母子保健指標が改善される事でよしとしていた。医療技術の進歩、細分化を予測出来ずに必要な医師数の見込を誤って医師を過労に追い込み、現在の医療崩壊と言われる状況を生んだ行政の責任はどうなるのか。
≪勝手なまとめ≫
・【医療処置を行なった後に死亡する事を予期していた】場合には「届出不要」とされているが、医療処置による死亡は(特に手術や出産においては)ある程度予測されるものである.例えば、分娩における妊産婦死亡は10万出産に4~7(県別で見れば0-27)であり、周産期死亡は1000出産に5-6(県別で見れば4-7)となっている。産婦人科医は分娩に伴う死亡を「予め期待」はしていないが、「予め想定」して死亡事象が発生しないように診療しているのである。此れ等を「予期していなかった」とすれば、年間5000例強の死亡例は総て対象になる。
・解剖ができるところはごく限られている。
・結果が公表されるなら、民事刑事訴追に結びつかない筈がない
・委員会が法的評価を行うのは越権行為
・委員会の設置場所は厚生労働省から分離すべき
・行政処分はすべきではない
【71】 50代 医師 p168
1.はじめに および 2.医療安全委員会について
この委員会は、死亡事故の原因究明、再発防止、医療安全の確保を目的にするとされている。また文書にははっきり明記されていないが、実は主要な目的は医療紛争の解決、医療を刑事事件化の抑制と考えられています。
はたして、この委員会が1)原因究明、2)医療安全の確保、3)医療紛争の解決、4)医療の刑事事件化の抑制、に役立つかどうかについて意見を述べます.
1)原因究明に役立つか?
例えば医療側が隠蔽を図っているような場合に第3者組織が立ちいり調査などの権限を持つ委員会がそれをあぱくということは考えられます。しかし、「地方委員会からの質問に答えることは強制されない」という一文からもわかるように、隠蔽に対して強制力を持っているわけではないので、限界があります。隠蔽工作に対しては警察の介入が必要でしょう。検討結果を刑事事件の証拠とする場合があるために、「地方委員会からの質問に答えることは強制されない」という黙秘権を確保した条項が入るわけですので、「正直に情報開示したら責任に問わない」という考えでなければ、真の原因究明は不可能でしょう。
医療者側が隠蔽を全くしない場合に、医学的な見地からの原因究明に、この委員会が役立つかどうか?これも当事者が質問に対して答えることを強制されないことから、限界があると感じます。また専門的な内容を分析できる委員をちゃんとそろえることはかなり困難が予想されますし、法律関係者や医療を受ける立場を代表するものなどの非専門家の意見が反映されるとなると、純粋に医学的な分析にそぐわない委員会と考えられます。
2)医療安全に役立つか?
事故事例を集めて、今後の再発予防、安全確保に役立てるためには、ハイムリッヒの法則(1件の重大事故奥には、30件の軽い事故と300件のヒヤリハットがある)に従い、あらゆるヒヤリハットを集めて分析する必要があります。その観点から考えて死亡事例だけを分析する委員会は医療安全には、あまり役立たないと考えられます。
またモデル事業がうまくいっておらずt失敗に終わったことからみても、この委員会があまり役立たないことは容易に推測できます。
3) 医療紛争解決に役立つか?
医療紛争は、医療ミスがあるものよりもノ患者-医療者の対話不足でおきているものの方がはるかに多いのです。そのような医療紛争は、基本的にはきちんと向き合って対話をすることによって解決するのが妥当です。また実際に大多数の医療紛争は院内の対話によって解決可能です。(以下のアドレス参照)
http://www,confHct-management.jp/journaLcont/20080312J11.htm
もしこのような委員会ができると、患者はこの委員会を利用しようとして、今まで院内で円満解決していた事例がたくさんでてきて、収拾がつかなくなってくる危険があります。
患者と医療者が対話する場合には客観的な事実や専門家の意見があると、それをもとに対話しやすい場合がありますので、一部の医師(日本医師会や胸部外科学会の幹部など)は、この委員会の報告をもとに患者を説得すれば、紛争が解決するのではという考えを持ってみえるのだろうと思います。しかし、現場で毎日医療紛争を対応している立場からみると、その考えはとても甘いものに思えます。
もし委員会に紛争事例を提出して、1ケ月くらいその結果を待っていると、対話は中断して、紛争は激化する可能性が高いと思います。医療者側と患者側が一緒になって事実をみつめて対話するというプロセスがないからです。また委員会の報告をみて、患者は民事訴訟を起こすかどうか決めるでしょうから、民事訴訟は間違いなく増加するでしょう。
つまり、期待に反して医療紛争の解決にはあまり役立たないと考えます。
4) 医療の刑事事件化の抑制に役立つか?
多くの法律関係者が指摘しているように、警察や検察は法律にしたがって動きますので、いくらこの委貴会がリップサービスをしても何の意味もありません。医師法第21条や、業務上過失致死の医療への適応についての法律を改定しなくては根本的な解決にはならないでしょう。
結局、今検討されている医療安全委員会は、つくってもほとんど役立たないものだろうと感じます。そして間違いなく医療崩壊を加速させます。
医療を守るために、根本的な再検討をしていただく必要があると考えます。
≪勝手なまとめ≫
・原因究明 医療安全の確保 医療紛争の解決 医療の刑事事件化の抑制
いずれにも役立たない。
今日はここまでo(^-^)o ..。*♡ 明日はp171 【73】から!
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