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(投稿:by 僻地の産科医)
かなりいい内容だと思います(>▽<)!!!!
医師会も頑張ってるな~とおもってみています。
頑張ってくださいね~。
壊れる日本の医療 愛知県医師会第154回(臨時)代議員会報告 調査室担当理事の伊藤です。それではスライドをお願いします。これは代議員の先生方もかなりの方がご覧になったと思いますが、映画「シッコ」のポスターです(図1略)。この中でマイケル・ムーア監督は制度としてのアメリカの医療の問題点を、お隣のカナダやフランス、イギリス、社会主義国のキューバとの対比も交えて浮き彫りにしています。市場化された医療制度が生み出す様々な問題をどのように解決へ向かわせたらよいのか、答えを出すのはかなり難しいに違いありません。翻って、では日本の医療の問題点は何なのか、細かい話は置いてざっくりと切れば、この制度を維持していくための資金の不足と人員の不足と言ってもよいと思います。従って日本のほうがその解決の方向性はよりはっきりしているといえるでしょうが、それをやらない、むしろ逆のことをやってしまうというところに大きな課題があるわけです。 では何が日本の医療の資金不足とか人員の不足をもたらしたのか、今までも再三触れてきたことですので詳細は繰り返しませんが、少し数字を振り返ってみますと、これはよく出てくるOECDヘルスデータの国別総医療費の対GDP比率です。これは2005年版で日本は8%でG7の先進諸国のなかでは最低で、OECD平均よりも更に1%低くなっています。政府や財界は国際競争力を維持するためにある程度の社会保障抑制は必要だと言いますが、何のことはない、日本企業が一番その点で条件がよくなっています。
理事 伊藤 宣夫
(愛知医報 平成20年2月1日号 第1823号 p6-11)
ここではその対GDPの数字についてですが、一番多い米国は15%強で大体日本の1.8倍くらいとよく言われています。もうひとつの数字はあまり話されないのですが、一人あたりの平均医療費のドル購買力平価(PPP)で換算した倍率です。このスライド(図2)は2004年-のものですが、これから見ると最大の米国は6,000ドルで日本の2.5倍と差は拡大していきます。
1960年以降の主要国の医療費推移を対GDP比率でみたものでこれもよくご覧になると思いまずが、昇カーブが日本では2001年から勾配が水平になってしまいます。他の国は皆上昇しています。このときからが日本では小泉内閣の時代に入るわけです。
日本の各地の医療機関は窮地に陥っていきます。特に地域医療の中核を担う自治体病院の多くは、資金はもちろん、医師や看護師など医療を遂行する上での中核的人材の不足に直撃されます。いずれについても取るべき方向とは逆の政策が行われたからで、誰もが予期せぬことがおきたというよりも懸念していたとおりになってきたわけです。1週間前の毎日新聞の記事から拾った自治体病院の都道府県別累積赤字のワースト10です(表1)。 愛知県は悪いほうから4番目で、愛知の経済の好評さがメディアで宣伝されている陰で、その社会の安心の基盤の病院が、まさかここまで悪い状態にあるとは愛知県民は余り感じていないのではないでしょうか。日本病院団体協議会の「病院経営の現況調査」ではこの2年の間に全ての規模の病院で黒字病院は減り、赤字病院は増えています(表2)。
うまくいかない時には、甘いことを囁く商売に乗せられやすい危険がありますが、政府や主要メディアが大いに旗を振っただけに始末が悪い例がPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)で、株式会社の医療経営の途中段階というようなものです。ここでは元々黒字経営をしていた近江八幡の市立病院が、ゼネコンの大林組とのPFIで立派な病院に建て替えたものの減価償却や諸々のコストがうんと高くなってしまい、病院の収益状態にかかわらず病院運営を請け負った大林組の特殊目的会社に対して、はじめに契約したかなり高い一定金額をこの先ずっと支払わねばならず、結局ものの1年で経営難に陥ってしまい、市自体の財政状態も危なくしているという話で、直近の日経ビジネスに出ています。先に鳴り物入りでスタートした高知医療センターも高知新聞にあるように全く同じ構図、同じ状態で、こちらは相手がオリックスですが、PFIの伝道師のようだった瀬戸山前院長が汚職で逮捕されるというおまけまで出て散々な有様になっています。いずれも請け負った企業は儲かるようにできていて、県民や市民が最後に自治体が大損した分のつけを支払わせられるという構図になっております。考えればすぐわかることなのに、変わったことをやれば何故うまくいくと錯覚してしまうのかが不思議です。
帝国データバンクの医療機関の倒産件数のデータです(図4)。 倒産は医療機関の悪い形での終末像です。それが今年は途中段階で昨年までの年総数をかなり上回っています。ボーナスなど年末にかけて支払いが増えてくると、更に経営危機が顕在化して、倒産件数の増加が加速してくるかもしれません。
中医協に出された医療経済実態調査での診療所の収支分布を表だったものがグラフ化されたものです(図5)。よく開業医の1年の収支差額が2,500万円で勤務医はもっと低いので、開業医に手厚くなっている診療報酬を下げてもいいという議論がおきますが、何でいつもいつも同じ手を使われるのかこれも不思議です。この実態調査はその為にやっているようなものです。 年に2,500万円というと月に200~250万円のこの部分に入るわけですが、全休のほとんどはこれより下のほうに集まっています。これより上は少数です。科目でも異なるでしょう。平均でそれだけの数字が出るということは非常に年収の多い診療所をそこそこに混ぜてあるということです。月に1,000万円を越すところが少しだけ多くなっています。
が、この内容はわかりません。少しでも実態に近く表現しようと思ったら平均値なんかで表すべきではないでしょう。中央値はもっとずっと低いわけです。50~100万円くらいではないでしょうか。大多数の診療所で実際は医療収益が少ないのに、こんなところの技術料を下げてしまえばやってゆけなくなるでしょう。
この背景は骨太方針2006に出た社会保障から毎年2,200億円を5年間にわたって削減するという話で、財政健全化の時間軸と目標として「2011年に国・地方の基礎的財政収支を確実に黒字化する」というのが国の経済財政運営の大原則となったわけで、そのためには社会保障にも大いに切り込むという政策の方向性が決められているわけです。やらなくてはいけないことも、金がないと言えばやらなくて済ませる口実ができます。10年前の橋本内閣の時も同様に財政健全化を錦の御旗にして緊縮政策を採った末に日本を大不況にしてしまい政権交代したのですが、その時の財政構造改革五原則がこれです(図6)。
ここでの財政健全化目標として閣議決定されたのは、財政赤字対GDP比3パーセント、赤字国債発行ゼロということで、必ずしも小泉内閣以来の基礎的財政収支の黒字化とは限らず一定範囲の赤字も許容する他の指標でもよいわけです。これは欧州委員会の資料ですが、EUが新規加盟国に求めている財政基準も同様に財政赤字3パーセントを採用しています。
年々増える社会保障費をまかなう恒久的財源として消費税のことが話題にされますが、消費税でまかなっている分が丁度法人税率が下がって減収になっている分に相当すると言われているわけですが、このスライドは法人税がいかに下げられてきたかを示している、政府税調で出された資料です(図7)。
課税ベースの話で、非課税になっている部分の全容はわかりませんが、同じ政府税調の資料で企業関係租税特別措置による減収額の内訳というのが示されていますが、平成19年度ベースで平成14年度ベースより約7,000億円以上増えています。医療で2,200億円の財源を捻出する為に大騒ぎしているのとは全く大違いで、企業減税の方が余程聖域と言うにふさわしい領域になっています。昨年度の国の予算を分解してみたこの図(図8) は以前にもこの代議員会で出しておりますが、こちらも特別会計は毎年20兆円以上翌年に繰り越して、なおかつ余った1兆何千億円かの中で、電源開発関係でずさんな使い方をして会計検査院に指摘されたという話をその時の日経新聞の記事を引用して話しておりますが、予算の使途について国会の審議を受けるのが一部で、すり抜ける方の割合がはるかに大きいという状況になっているわけです。新聞にはいつも聖域と書かれる医療や社会保障の分野はと言えば、必ず最初に削減の対象としてむしりとられるターゲットにされております。
産業の利益処分の推移を見ると、2006年度と2001年度を較べると内部留保も配当金もいずれも大幅な上昇をきたしています(図9)。 四半期ごとの雇用者数の推移を見ると2001年から2004年の上半期までは正規雇用者を対前年比で大幅に減らしており、その分を非正規雇用者でまかなっていることがわかります。 2005年になってわずかではありますがようやく正規雇用が対前年比でプラスに転じます(図10)。
次いでこれらのまとめのようなグラフですが、配当金が著しい上昇を続けていくのに反比例して労働分配率は低下し続けています(図11)。所得が家計から企業へ、労働者から株主へ猛烈に移動している実態を表していると言えます。医療の資金不足 を、一部負担率の増額という形で疲弊していく家計部門に肩代わりさせる政策は方向がまちがっていると感じます。
次は厚生労働省の08年度診療報酬に関する個別改定方針(図12) で、多分先回の社会保障審議会の医療部会で示されたものだったと思いますが、この中では開業医の初・再診料引き下げが日医から出ている委員の猛反対で書かれませんでした。先にも言いましたが普通の開業医の収入には収益源になるところは今やないので、唯一それらしいところを切ってしまえばやってゆけなくなるところが多く出るわけです。わかってやっているとしたら、あるいはわかってなくてやっているとしても、厚労省には大きな問題があると思います。
そうしたひどい医療政策が実行されないように我々がやるべきことは、政府の審議会で止めたり、与党内に政府案が待ち込まれたりした時にそれを阻止してくれる応援団をつくるよう日頃から政治家に対して我々の医療政策への考えや要望を日常的に話をする中で理解をしてもらわねばなりません。
これは朝日新聞に出たべた記事で、読んだ人はいないでしょうが、自民党古賀選対委員長の来名時に、自民党愛知県連が指摘した 内容として、診療報酬などで従来の自民党支持団体が離れかねないと書かれています。ここで県連のこういう認識がわかったわけです。次のスライドは自民党県連と県内厚生関係団体との政策懇話会での県医師連盟の要望内容で、毎年医師連盟が他の団体に先がけて冒頭で話します。今年は妹尾会長と私が出席して以下のように要望を読み上げました。要望というよりも、政策の転換を迫るような強い調子の内容で、左側が昨年の要望で、こちらはあくまでも要望的な書き方です(図13)。県,連幹部は冷ややかな空気を感じたに違いありません。それが古賀選対委員長への愛知県連としての指摘につながるものがあったかもしれません。
次は県連会長で、愛知13区の大村衆議院議員が委員長をつとめる自民党医療委員会での動きです。大村議員が先頭を切ってプラス改定に向かっている様子がわかります。次は英語で申し訳ありませんが、この夏ごろのニューイングランドジャーナルオブメディシンに載った大統鎖選挙に関係しての米国医療関連業界のロビー費用に関するものです。セクター全休としてはヘルスは金融・不動産などに次いで僅差の2位で、個別でも米国医師会や米国病院協会は上位に入っております。少し前の米国のロビーウォッチという民間非営利団体の調べで各々上位10位以内に入っております(表3)。米国医師会のこの全額からすると、日本医師連盟の予算額と比べますと、米国医師会のぼうが少し多いというくらいの比較になります。
病院での医師確保問題と関連しますが、これは「診療行為に関連した死亡の死因究明などの在り方に関する第2次試案」(以下「試案」)です。こちらが全体の流れを示すイメージ図です(図14)。第3者委員会に報告しなければペナルティーを科すとか、調査書は結局刑事手続きでも民事手続きでも行政処分でも使えるようになっていることから、主として勤務医から強い反対の声が上がっています。日医の担当理事の木下常任理事は言い訳の文書を各都道府県に流してきましたが、これから検討やら合意を得るというのが多く、あまり説得力のある内容ではないように感じました。「医療崩壊」を書いた小松医師と検討会の前田座長の各々の読売新聞へのコメントでスタンスの達いがよく出ています(図15)。
小松医師が自分のブログでこれを受け入れた日医を激しく攻撃したことから、これに同調する勤務医たちが勤務医を中心とした別の医師会設立に動くなどの混乱がおきています。医師確保の視点から大きな問題です。この問題を扱う自民党の検討会の座長も大村議員ですが、かなり2次試案に筆は入れましたが、基本の骨格は残して来年の通常国会へ出そうとしています。
現場の医師への強いプレッシャーは続きそうで、医師の自殺者数の推移も高止まり状態です(表4)。医療事故関係届出等の年別立件送致数も急増し(図16)、医療関 係訴訟事件の処理も数は増えても今は早く審理を終える傾向があり、未済事件の数は減っています(表5)。
時津風部屋の力士急死事件で死因究明制度の未整備な状況がメディアを通じて一般に知られるところとなり、更に米国のLAタイムズで大きく報道されたことから世界にも広く知られるに至りました。この事件はこれから大きな広がりをみせる可能性があります。時間とのことですので、この話題は残してこれで話を終わらせていただきます。今までの話で何か質問があればお願いします。
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