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(投稿:by 僻地の産科医)
私も常々、働きながら実感していますo(^-^)o ..。*♡
誰も言ってくれないけれど、就学時の壁っていうのがあって。
突然帰りが早くなるんですよね。
大きくなれば大丈夫なんて、男の発想なんです。
女性外科医が勤務と子育ての両立から感じた問題点と改善策
「激務の科で育児支援システムが確立されれば
女性医師のキャリア展望は広がる」
児玉ひとみ氏
Medical Tribune 2008年5月22日
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0805/080512.html
近年,医学部学生に占める女性の割合が増加していることが指摘されており,外科の勤務医の総数が減少するなか,女性の外科医はむしろ増加している。東京女子医科大学(内分泌外科)の児玉ひとみ氏は,外科医と子育てを両立するなかで実感した問題点や,同大の育児支援システム,勤務医に行ったアンケートなどを紹介し,育児支援の必要性を強調した。
外科医が母親になると
厳格な自己スケジュール管理が必要に
子供を持つ女性医師は,パートナーなど家族のサポートの有無や程度の差にかかわらず,また何科であっても育児と勤務の両立は避けて通れない問題だ。特に職場環境が厳しいと言われる勤務外科医にとっては,より深刻である。児玉氏は,今後の女性外科医の増加を考えれば,「勤務と育児のバランスのよい両立を考えていく必要がある」と言う。第108回日本外科学会(5月15〜17日,長崎市)のシンポジウム「女性外科医にとって働きやすい環境づくりのために」で,同氏は,勤務と育児との両立の経験から,これらの問題点と改善策を提言した。
外科医の立場から直面する問題点としては,長時間に及ぶ手術や緊急対応が多いことが挙げられる。また,外科医に対しては,ベッドサイドにいるべき,担当患者の急変にいつでも駆けつけるべき,術者は病院に泊まるべき,休日も担当患者を診にいくべき,などの観念があり,「外科診療の本質にかかわる大切なことではあるが,勤務時間の定めをあいまいにし,育児との両立の障壁になっている」ことを明らかにした。
また,母親の立場からは,子供を長時間みてくれる預け先がない,病気のとき子供をみてくれる人がいないなどの点が問題になる。また,母親に代わりはいないという固定観念が男女ともに残る部分もあり,子供と一緒にいたい,教育に時間をかけたいという思いを抱くなど,外科医を続けるモチベーションの維持が困難になると指摘する。
同氏は,外科医が母親になると「手術により患者の命を守る責任」,「育児によりわが子の命を守る責任」の2つが生じるとし,両者を両立させるためには,より厳密な自己スケジュールの管理が必要になってくると述べた。
スーパーウーマンでなくても働ける環境づくりを
児玉氏は,「スーパーウーマンでなくてもバランスよく勤務と両立できる職場づくりが必要」とし,育児を行う女性外科医がバランスよく責任を果たせる方法として,次のような改善策を提言した。
(1)勤務医の労働条件を明確化し,超過勤務に対する報酬を支給する
(2)これまでの慣習を見直し,勤務時間内に仕事を終える体制をつくる
(3)職場の意識改革を行い,男性医師の育児休暇取得システムを創設するなどのワーク・ライフバランスの改善を推進する
(4)多様な勤務形態へ対応し,フレックス,当直免除,短時間勤務などを導入する
(5)緊急時の代替要員を確保し,時間外業務は当直医に任せられるようにする
(6)当直明け業務を軽減する
(7)前述の(2)に関連し,不公平が生じないよう勤務形態により報酬に差をつける
(8)育児中の医師は勤務時間内にできる仕事を負担する
(9)マンパワーを確保する。
上記のような改善が行われれば,子供とかかわる時間が確保できるようになると同氏は訴える。
また,母親の立場から当面する問題としては,長時間保育,24時間保育,病児保育,学童保育などの施設の確保であり,施設などハード面の整備が育児と両立できる最低条件だという。
加えて,子育てに理解のあるメンター(助言者)と,ネット上などで情報交換の場をつくることもすべての負担を抱え込むことの解決策になるかもしれないと提案する。
同氏は「母親の立場から権利を主張するだけでなく,支えてもらう職場の仲間,先輩・後輩医師,上司などへの感謝と配慮も忘れてはならいない」と指摘し,そうしたうえで「診療科を離れない努力が必要」と言う。そのためには,医学部でも卒前教育として,特に女性医師に対し「すぐにやめない! 細く長く続ける!」と指導することも重要だという。
東京女子医科大の現況
―未就学児童のサポート体制は万全だが
就学を機に離職する女性外科医も多い
次に,児玉氏は女性医学研究者支援委員会が同大に勤務する全診療科の女性医師に行った勤務と育児の両立に関するアンケートの結果を紹介した。 2006年7月16日に633枚を配布し,同月23日に回収を締め切った。回収数は,200枚(32%)で,そのうち「子供あり」が40%,「子供なし」が60%であった。
「勤務中,お子さんはどのようにしていますか」との質問に対する回答として最も多かった預け先は,「認可保育園」,次いで「両親」,「ベビーシッター」,「配偶者」の順であった。また「配偶者」とほぼ同数で「1人で在宅(させざるをえない)」とする回答もあった。「勤務に当たって育児で問題となったことはなんですか」との質問に対して最も多かった回答は,「子供の急病時の対応」,次いで「子供の感染症」,「保育園での行事」,「学校での行事」,「認可保育園の入所」の順であった。
「充実した仕事を続けるための支障となっているものはなんですか」という質問に対して最も多かった回答は,「労働条件の悪さ」,次いで「育児」,「妊娠・出産」,「自分の能力」,「自分の体力」,「職場の支援のなさ」の順であった(図)。
なお,子供が就学する前までに限れば,同大学には非常に優れた育児支援システムがある。
具体的には,
(1)産後8週から利用可能な24時間開設の院内保育所
(2)同窓生が1973年に創設した大学に隣接した認可保育園が行う7時から22時までの延長保育
(3)1回の利用につき1,500円が支給されるベビーシッター補助制度
(4)専任の看護師1人,保育師2人により1日4人まで受け入れ可能な病児保育室(1日の利用費5,000円)―など充実した支援があり,現在までに177人の女性医師が利用している。同氏は「私の子供も産後8週で院内の保育所に2か月入り,その後院内の保育園で6年間お世話になった」と報告する。
ところが,今年(2008年)4月に子供が小学生になり困ったことが起きた。「区立の学童保育は6時で終わることから,その後の子供の居場所がなくなってしまった」と言う。同氏は「院内では,学童期の子育てに対するサポート体制がなく,せっかく育児支援を利用し復職しても,子供の就学を機に勤務を断念する女性医師が多い」と指摘する。
院内に学童保育施設を設置するなど
学童期の育児支援も必要
児玉氏は,周囲にも同じ問題で困っている育児中の女性医師がいたため,認可保育園利用中の女性医師有志で,院内学童保育施設設置の希望に関するアンケートを行った。
対象は,同大在籍中の50歳以下の医師(男性も含む)817人,同窓会会員200人,同窓会が設立した保育園を利用中の医師42人,医学部2~6年生500人の計1,569人に配布し,383人(男性105人,女性234人)から回答があった(回答率24.4%)。その結果,「院内に学童保育があればすぐに利用したい」と32人が回答し,「今後利用するかもしれない」とした140人と合わせると,院内利用の要望が多いことがわかった。
利用日の希望については,「月~金曜の週5日」46人,「月~土曜の週6日」73人,「月~日曜の週7日」24人であった。利用時間の希望は「19時まで」20人,「20時まで」31人,「21時まで」26人,「22時まで」31人,「朝7〜8時まで」25人であった。
「院内学童保育所に期待すること」としては,長時間の対応,予定変更に対する柔軟な対応,子供の安全確保,しつけや学習習慣付け,食事の提供,習い事,職場から近い,などが挙げられた。また,民間学童施設2社にヒアリングを行い,病院内での学童保育に必要な内容を検討し,女性医師研鑽委員会へ提案を行ったという。
最後に同氏は「女性医師が仕事と育児を両立するためには,幼児期のみならず学童期の育児支援も重要と考えられる。そうした支援により子供の成育環境も守られ,女性医師は長期の展望を持ったキャリア計画が可能となり,離職を防ぐことができる。医師の仕事のなかでも,特に激務と言われる外科において女性医師の育児支援システムが構築されれば,他診療科での両立支援モデルにもなる。また,そのことで若い女性医師は性差を意識せず,自由に診療科を選択し,継続していく希望を持つことができるようになる」とまとめた。
>外科医に対しては,ベッドサイドにいるべき,担当患者の急変にいつでも駆けつけるべき,術者は病院に泊まるべき,休日も担当患者を診にいくべき
はい、そうして当たり前だと刷り込まれて産婦人科の門をくぐりましたし、そのように働いてきました。しかし、実際家庭人となりましたら、かなり無理が生じてきます。
>厳格な自己スケジュール管理
これもまた、おっしゃるとおり。食事の用意も鍋ひとつ掛ける前に、キャベツひとつ切る前に病棟の受け持ち患者がコケそうではないか確認してからでないと取り掛かれません。毎朝、早朝病棟に電話してからでないと朝の家事も初められません。
アホクサと言われるかもしれませんが、家では「先生」ではなく、「かーちゃん」なのです。緊急時に備えて家事をしないなんてことは出来ません。
24時間365日病院と家事で頭と身体がパンクしそうです。
低賃金でお手伝いさんも雇えません。
>子供を長時間みてくれる預け先がない,病気のとき子供をみてくれる人がいない
先日でしたが熱発の我が子を受診させながらひっきりなしの外来をこなし、オペをこなし。寂しそうに医局でぽつねーんと待っている子供、寂しさのあまり泣いて母親を呼んで・・
そんなこんなの連続で「辞めるしかない」と思っておりましたが、声を出して現状を職場の上司や諸先生方に泣く泣く辞めたい心情を吐露したところ、協力いただき始めた段階です。
声に出して現状打破を訴えることが「恥ずかしい、情けない、根性なしなだけでは」と思ってばかりで、挙句の果て「疲れ果てて退散」を選択か・・・・だったのですが、現場に残って頑張ってくださっている同僚医師の為にも、もう少し頑張ってみようかと。
決定的なダメージを受ける前に道を切り開くか、逃げるか。まさに毎日悩んでおります。
心の底ではブレない思いがあります。「かーちゃんと居ると楽しいな~」と子供が笑って育ってくれる家庭が一番私の幸せだと信じております。
長くなりました。いつも僻地の産科医先生のブログには支えられております。先生もご自愛ください。
投稿情報: なつみかん | 2008年5 月24日 (土) 16:05
いつも読ませていただいた勉強しています。
女性医師については、先日、勤務先の臨床研修医の委員会でも厚労省からの指示があったとかで話題になっていました。研修医のうちから女性の仕事をしやすい環境を整えることが、臨床研修指定病院に求められるという内容でした。
私は男性ですが、妻は女医です。仕事場を選んだりする際に、妻の仕事のことも考える必要がありました。別居していたこともあります。
女性医師の仕事環境を整備するときには、育児も大切ですが、伴侶のこととか、高齢化していく親の介護のこととか、いろいろと検討するべきことがあると思います。このあたりはどのように考えられているのでしょうか?
投稿情報: uuchan | 2008年5 月24日 (土) 18:04
産婦人科は早く集約しないと
どんどん家庭崩壊ですね。
集約を急ぎましょう。
男性もつらいでしょうし。
子供の心に、大人になって寂しさが残らないか心配です。
か~ちゃん、いつもいなかったなあ~~
俺が子供だったら絶対嫌だな~~~
投稿情報: kazu | 2008年5 月24日 (土) 19:18
介護はいずれ入ってくるだろうと思っています。その前に燃え尽き症候群で職場離脱をしそうです(;;)。
この論文の
「厳格な自己スケジュール管理が必要」
っていうのもすごくわかります。
でも本当にこれが長くなってくるとつらいです。なんでこんなに時間を気にしてやりくりして、心のどこかに家庭へのプレッシャーと仕事場へのプレッシャー、夜中の呼び出し、休日のやりくり、もういやじゃ~っ(>_<)!!!!!
やめてやる~っ!!!!!!
って感じですが、なんか言語で言うとかわいらしいですけれど、もっと簡潔に心のなかを表すと、「もう疲れた。。。」が本音です。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2008年5 月25日 (日) 00:10
こうした問題の解決には労働基準法を守るだけでいいのは逆に悲しい話です。
投稿情報: 江原朗 | 2008年5 月25日 (日) 08:46
私は医者ではありませんが、フルタイムで働く女です。
もちろん、労働基準法は大切です。
私は協力してくれる親と配偶者に恵まれ、なんとかやっていけています。
ただ、赤の他人の言葉とはいえ、いつも「うーん。」と考え込んでしまうのは、周りの男性の「子供ができても自分の人生は変わらない。」と無邪気に信じきっている言葉だったりします。。
投稿情報: SE | 2008年5 月25日 (日) 21:53
> 男性の「子供ができても自分の人生は変わらない。」と無邪気に信じきっている言葉
そうそう!!!!
それがすべての元凶ですよね(>▽<)!!
嫁さんのことも考えてやれ!!!と小一時間説教してやりたい気分になります。
(が、たぶん、彼らは何をいわれているのかそのものがわからないので、時間の無駄ですけど(笑)。)
投稿情報: 僻地の産科医 | 2008年5 月25日 (日) 22:45
福祉の現場でも、既婚・子持ちの女が働き続けるのはなかなか大変で、労働基準法遵守でも綱渡りですね。勤務交代が頻繁に起こっています。
女も50代に入るあたりで、介護が加わってくるので、ウチの法人では、大抵の人はいったん退職して、日々雇用の形で職場に残ります。そうでないと融通が利きませんから。
定年まで正規職員でいられる人は、独身か二男・三男の嫁さんで、なおかつ実家の両親の介護をしなくてもすむ人です。私の場合、デイ・ショート・ヘルパーをフル活用して石にかじりついても退職金を手に入れるつもりでいますが、果たしてどうなる事やら……
投稿情報: ばあば | 2008年5 月25日 (日) 22:53
児玉氏の子育てに声援を送る者です。支援する立場でもいたいと、考えています。子育ては子どもの年齢が小さいほど、悩みのサイズも(今考えると)小さかったです。年齢が進むと問題は深化します。そして介護問題も起こるかもしれません。
しかし、それでも頑張っている人には必ずサポートがうまれます。
私もそうして30数年フルタイムでやってきました。一緒に頑張りましょう!!
投稿情報: きのこのつぶやき | 2010年5 月29日 (土) 07:27