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(投稿:by 僻地の産科医)
きよさまから、第3弾ですo(^-^)o ..。*♡
大淀事件 証人喚問 助産師さん編 (きよさま)
大淀事件 証人喚問 助産師さん編2 (きよさま)
ずいぶんと間が空いてしまいましたが、
内科医先生の尋問です。
ではどうぞ(>▽<) ..。*♡
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以下、略称
[裁1] O裁判長
[裁2] N裁判官
[裁3] O裁判官
[原弁] 原告ら代理人
[被弁1] 被告ら代理人K氏
[被弁2] 被告ら代理人U氏
[被弁3] 被告医代理人Y氏
[患者] 本件患者
[被告医] 被告産婦人科医
[内科医] 当日の内科当直医
[助産師] 争点時間帯の担当助産師
[師長] 大淀病院産婦人科師長
[看護師] 争点時間帯の担当看護師
■[内科医]主尋問
[被弁1] 乙A7の陳述書は、訴訟開始後に作成されたものですね?
[内科医] はい。
[被弁1] あなたは、医師免許を取得して6年ほど臨床経験がありますね。
[内科医] はい。
[被弁1] 脳卒中はどれくらい見た事がありますか?
[内科医] 脳卒中には脳出血と脳梗塞がありますが・・
[被弁1] 脳出血と脳梗塞?・・まぁ、全体で。
[内科医] 全体で100人位です。
[被弁1] どのような症状ですか?
[内科医] いろいろありますが・・一般的な症状は
脳梗塞ではろれつが回らないとか、脳出血では頭痛や吐き気がします。
[被弁1] 意識障害にはどんな原因がありますか?
[内科医] 内科医ですので、脳はもちろんありますが、脳だけとは限りません。
心疾患や、肺疾患、肝臓などが考えられます。
まずVital signを見ます。
[被弁1] Vital signのうち、何が一番大切ですか?
[内科医] どれも大切です。呼吸では肺疾患、気胸などありますし、
血圧ではショック、出血性ショックでも意識障害はあります。
[被弁1] 瞳孔はどうですか?
[内科医] 瞳孔は、脳神経の異常を見ます。動眼神経。視神経などですね。
[被弁1] H18までの脳卒中の患者さんで、
意識消失で発症開始した例はありますか?
[内科医] ○件くらいあります。
[被弁1] どのような症状でしたか?
[内科医] まず血圧が上昇し、瞳孔は完全に散大していました。
[被弁1] それから、どのような経過となりましたか?
[内科医] 頭部CTを取って、脳外科にお願いしましたが、
手の施しようがなく経過観察となり、
そのまま亡くなりました。
---
脳出血で意識障害が出れば、
その時点で手の施しようがないケースもあると例示。
個人的には、例示も大事とは思いますが、
1例なのか一般例なのか分からない・・
ので数値的なことも知りたかったです。おおざっぱでいいので。
脳内出血の経験数、うち意識障害の出た割合やその予後
(意識回復有、無、死亡)などでしょうか。
---
[被弁1] 当日は、陣痛中に意識障害があったという連絡を受けて
産科病棟に行かれましたね?
[内科医] [被告医]から、陣痛中に意識がなくなったと聞きました。
[被弁1] [被告医]は何をされてましたか?
[内科医] ベッドの横にいた、という事しか覚えていません。
[被弁1] CTGを装着していたかどうか記憶はありますか?
[内科医] 分かりません。
[被弁1] それで[患者]の診察をされましたね。
『瞳孔の散大や○○はなし、対光反射はあり』
などの所見を取っていますが、これは何を診たのですか?
[内科医] 脳に異常があるかどうかを診ました。
[被弁1] 脳の異常を調べるのに、瞳孔の所見は大事ですか?
[内科医] 意識障害の患者さんでは、診察できる事が限られますので、
瞳孔所見は重要です。
[被弁1] 対光反射はペンライトで診ましたか?
[内科医] はい。
[被弁1] この時点では、瞳孔所見に異常がないという事でよろしいですね?
[内科医] はい。
[被弁1] 『顔面に異常がない』とありますが、これはどういう事ですか?
[内科医] 脳神経の1つである顔面神経に異状がなかった、という事です。
[被弁1] 『チアノーゼなし』は?
[内科医] ショック状態がない、という事です。
[被弁1] 『貧血、黄疸なし』は?
[内科医] 黄疸は、肝障害による肝性昏睡がないことで、
貧血はショック状態にないこと、
チアノーゼや血圧と合わせてですね。
[被弁1] 『発汗なし』は?
[内科医] これもショック状態にない事です。
[被弁1] これらの所見を総合して、心因性の意識障害と判断されましたが
どういう理由ですか?
[内科医] 診察の結果、特に脳の異常がなかったことと、年齢が若く、
血圧も大丈夫の範囲だったことです。
[被弁1] 陳述書には書いていませんが、他に注意する事はありますか?
何か検査をされましたか?
[内科医] 腕の落下試験というのをしましたが、
不慣れでしたので参考程度ということで・・
あの、腕を顔の上に挙げてパッと離すと、
普通はこう手を払いのけようとするのですが、
脳に障害があるとそのままストンと、こう顔の上に落ちるんですが、
この時は[患者]は払いのけるような動作をしたので、
脳ではないと、思いますが、これは参考程度としました。
---
さすがお医者様。これは何々の診断、あれは何々の診断って、
迷いもなく出てくるんですね。
最後の腕落下試験については、「不慣れ」を強調していらっしゃいました。
他の診察結果と同レベルに扱われることを知らんぷりできない、
正直さを感じました。
ともあれ、0:14意識消失直後、多方面の診察をした上で
総合的に心因性と判断した事は適切と訴えることはできたと思います。
---
[被弁1] それで、経過観察を助言されましたが、
どのくらいの時間のつもりでしたか?
[内科医] 具体的には言ってないですが、30分位と。
心因性なら今までの経験では30分程度で収まるので、
30分位を考えていましたが、
私も他の患者さんの診察をしていましたので。
[被弁1] その場にいらっしゃった人は、[被告医]の他にどなたかいましたか?
[内科医] 覚えていません。
[被弁1] [患者]の病室に呼ばれてからの滞在時間はどの程度ですか?
[内科医] 10分位です。
[被弁1] 0:30位に呼ばれて、10分位ということは、
0:30~0:40位ということですね。
[内科医] はい。
---
[内科医]先生は「心因性であれば30分程度で意識が回復する」という趣旨で、
30分程度の経過観察を考えていたけれど、具体的な指示は出さず、
30分後に様子を確認することもなかった。
つか、他の患者さんの診察されてるし・・お疲れ様です。
裁判官の方々は、今回の経緯の中で、
この「経過観察」の時間がひっかかったようです。
後に出てきますが、裁判官からの質問はこの部分に集中しています。
---
[被弁1] その後、1:50、看護師から
「意識が改善せず、ケイレン発作があるので来てほしい」
との連絡があって、もう一度行きましたね?
[内科医] はい。
[被弁1] ケイレン発作を実際に見ましたか?
[内科医] その時は起こっていませんでした。
[被弁1] 瞳孔は見ましたか?
[内科医] 見ました。
[被弁1] 『血圧、呼吸状態は安定している』とあるのは、どういう状態ですか?
[内科医] 0:30のときと比べて、著変がない、ということです。
[被弁1] この時、瞳孔は『散大』で間違いないですか?
[内科医] はい。
[被弁1] 『右の対光反射は消失、左はわずかに認めるのみ』とは、
左はわずかに残っていたのか、ほとんどなかったけれど
右に比べるとあったのか、どちらですか?
[内科医] 左は光に対してわずかに縮瞳した、ということです。
[被弁1] 瞳孔に左右差はありましたか?
[内科医] なかったです。
[被弁1] 1:50 に呼ばれたとき、[被告医]はいらっしゃいましたか?
[内科医] はい。
[被弁1] 「脳の異常かもしれない」と[被告医]に伝えましたか?
[内科医] その時は、既に[被告医]が転送しようと判断されていたので・・
[被弁1] 1:50に先生が呼ばれて診察をする前に、
[被告医]は転送を決めていた、ということですか?
[内科医] そうです。
[被弁1] [被告医]が転送を決めていたことを、どう思いましたか?
[内科医] 正しい判断だと思いました。
[被弁1] 『脳に異常』とありますが、
その時、具体的にその原因を考えましたか?
[内科医] 脳梗塞か脳出血、可能性は脳出血が大きいと思いました。
[被弁1] 『2時ごろ、CTを進言したが、
[被告医]が「動かしてはいけない」と言った』とありますが、
なぜCTを勧めたのですか?
[内科医] 瞳孔が散大していたので、脳の問題を診断するのに
CTを撮った方がよいと思いました。
[被弁1] [被告医]に「動かしてはいけない」と言われてどう思いましたか?
[内科医] 産科の患者さんなので、[被告医]の指示に従おうと思いました。
[被弁1] 「それでも、CTを撮った方がいい」と言いましたか?
[内科医] 言っていません。
[被弁1] もう転送が決まっていたので、[被告医]の指示に従おうと思って
それ程強く言わなかったということですか?
[内科医] そうです。
[被弁1] 除脳硬直を診た事がありますか?
[内科医] あります。
[被弁1] どのような姿勢になりますか?
[内科医] 両腕を伸展して、こんな風に。
[被弁1] 下肢はどうですか?
[内科医] 下肢も伸展します。
[被弁1] この姿勢はずっと続くのでしょうか、それとも断続的に、
こうなったり直ったりしますか?
どういう時にこういう姿勢になるのですか?
[内科医] 一般的には、刺激を加えた時になると思います。
(メモ抜け)
[被弁1] 子癇発作の経験はありますか?
[内科医] ありません。
[被弁1] 文献などの知識はありますか?
[内科医] 文献で見た事はありますが、細かいところまでは分かりません。
[被弁1] 『2:00~3:00頃、除脳硬直』とありますが、
この時点で出現したのでしょうか、
[内科医] 観察していた間、起きたり収まったり、
ずっと断続的に発生していたと思いますが・・
[被弁1] [患者]のベッドサイドにいつまでいましたか?
[内科医] 搬送までいました。
[被弁1] その間、ずっと起こっていたのですか?
[内科医] よく覚えていません。
[被弁1] CTを進言されましたが、CTを撮って、
その後具体的にどうしようと思ったのですか?
[内科医] 特にありません。Vital、呼吸とか循環状態とかも大切なので、
必ずしもCTを撮らなくてもいいと思います。
---
1:37のケイレン発作の後、CTを撮る必要があったかどうか。
ケイレン発作が子癇であったか除脳硬直であったかには、
ここでは深入りせず、CTを撮っても状況が変わるわけではなかった
という主張だと思いますが。
・[内科医]は子癇の経験はなく知識のみなので、
子癇の可能性を考えなかったのであり、
妊婦の疾患対応は、産科医の決定に従うのが正しい
・仮にこの時点で脳内出血が発生しており、
CTで診断できたとしても、大淀病院では
脳内出血に対してできる処置はない
・CT撮影自体にもリスクはある
・既に高次機関への転送は決めていたので、
大淀病院でできることはVital的な管理のみである
(呼吸が落ちたら挿管する、等)であれば、
大淀病院ではVitalのチェックだけで十分で、
CTは処置ができる転送先で行えばよい
(リスクを冒してまでCTを撮るのが最善とはいえない)
・仮に脳内出血が発生していたとしても、陣痛を迎えた妊婦である限り、
産科小児科は必須なので、転送先探しに違いが出たとは言えない
こう、話をまとめてポイントを強調すべく誘導するのは、
代理人の腕の見せ所かと思うのですが・・
素人的には、淡々と経過を追っているだけで、
主張したいことが今一つ伝わってきませんでした。
私の印象では、ここはまだ裁判官を納得させることができた、
とは言えない状態なので、
もっと大げさにしつこく主張してくれた方がよかったです。
[原弁]みたいに、重要なところは同じ質問を2,3回繰り返す、とか、
要旨をまとめる、とか。
・・・もしかして、裁判官の方には、
そういうパフォーマンスは不要なのかもしれませんね。
---
[被弁1] 大淀病院における転送について、転送先やどういうシステムで
転送するかに関する知識はありましたか?
[内科医] 産科についてはありません。
[被弁1] 内科の患者の場合、どうやって転送先を決定していますか?
[内科医] 症例によって対応できる病院に、医師が電話をします。
[被弁1] それぞれの病院に、医師自身が連絡を取るという事ですね。
産科についてはご存じないと。
[内科医] 知りません。
■[内科医]主尋問 [被弁3]から補足
[被弁3] 看護師の記録に、先生が
『肩の関節を動かしていた、全身を触っていた』とありますが
肩は、先ほどの腕の落下試験のことですか。
では、全身というのは何をしていましたか?
[内科医] 四肢に麻痺がないかを調べました。
[被弁3] 異常はありましたか?
[内科医] ないです。
[被弁3] 脳出血について、右側被殻出血とされていますが、
この場合片一方に障害がでると思います。
そういうアンバランスなことはありましたか?
[内科医] 左右対称でした。
[被弁3] 瞳孔を見たとき、ケイレン発作はありましたか?
[内科医] ありませんでした。
■[内科医]反対尋問
[原弁] 乙A2カルテP2の中から上にあるサインはあなたのものですか?
[内科医] はい。
[原弁] それ以外にあなたのカルテ記載はありますか?
[内科医] ないです。
[原弁] これは、いつの診察のものですか?
[内科医] (メモ抜け)
[原弁] 何時ごろですか?意識消失の後ですか?
[内科医] 後です。
[原弁] 乙A7陳述書には、『0:30前に、看護師から呼ばれて産科病棟に行く』
とありますが、0:30頃というのは、意識消失の後ですね?
[内科医] はい。
[原弁] 滞在時間は、先ほどの話しでは15分くらいと。
[内科医] 10分くらいです。
[原弁] 10分。0:30前から10分位の記録、ということですね。
[内科医] はい。
[原弁] 『瞳孔丸く、左右差なし』とありますが、
『丸く』というのはどういうことですか?
[内科医] 正常、という意味です。
[原弁] 正常?拡大したり縮んだりしていない、ということですか?
[内科医] そうです。
[原弁] 『胸部異常なし』というのは、何を確認したのですか?
[内科医] 気胸がないかどうかです。
[原弁] この時点では意識消失があったのですね?
[内科医] ありました。
[原弁] 『JCS100ないし200』というのはどういう状態ですか?
[内科医] 刺激があっても覚醒しない状態です。
[原弁] JCSというのは、3桁で、300が完全な昏睡状態ですね。
[内科医] はい。
[原弁] 『100ないし200』というとどのくらいですか?
[内科医] 刺激で開眼はしないが体動はある、ということです。
[原弁] 助産師の記録の『痛み刺激で体動がある』と同じことですか?
[内科医] はい。
[原弁] 痛み刺激というのは、何かしたのですか?
[内科医] 多分つねったと思います。
[原弁] [患者]は妊婦ですから、陣痛がありましたね。
この陣痛刺激への反応はありましたか?
[内科医] 陣痛刺激の反応かどうかは分かりません。
[原弁] あなたが与えた刺激への反応があった、ということですか?
[内科医] そうです。
[原弁] 2:00~3:00の間、除脳姿勢が続いていましたね。
[内科医] はい。
[原弁] 除脳硬直は持続的にありましたか、それとも間欠的でしたか?
[内科医] 間欠的でした。
[原弁] 先ほど「刺激を与えたとき」とおっしゃいましたが、
刺激を与えたから除脳硬直が起きる
ということですか?刺激を与えないと起きないと?
[内科医] 刺激を与えたら起きやすい、ということです。
(この辺メモ抜け)
---
JCSの測定時に「痛み刺激で反応した」というのを、
その後の「除脳姿勢」に流用しています。
それも「あなたの話では~」みたいな振り方で少しずつ
言葉を変えながら質問を繰り返し、混乱をさそって、
誘導しやすくしている・・・というのは穿ちすぎでしょうか?
---
[原弁] 除脳硬直である、ということは、当時から分かっていましたか?
[内科医] はい。
[原弁] 脳に異常があると思ったのは、[患者]のどういう状態からですか?
[内科医] 瞳孔が散大したことと、意識消失が改善しないことからです。
[原弁] それはいつからですか?
[内科医] 2回目の診察の時です。
[原弁] 1:50ですね?
[内科医] はい。
[原弁] 0:30頃の意識消失の時は、心因性反応と見立てられましたね。
[内科医] はい。
[原弁] それが1:50の所見で変更になったのですね。
[内科医] はい。
[原弁] 心因性反応とは違うのではないかと、[被告医]に話しましたね?
[内科医] CTを撮ってはどうか、とは話しました。
[原弁] 結果的にCTは撮らなかったわけですが、
客観的に見て、当時CTは撮れたんですか?
大淀病院でできたのか、どこか他の施設に運ぶんでしょうか?
[内科医] 大淀病院でできます。
[原弁] 当時、CTを撮ろうと思ってから実際に撮るまでに、
どのくらいの時間がかかりますか?
[内科医] 50分程度です。
---
[原弁]としては当然、除脳硬直の前提で話を進め、
CTを勧められたのに撮らなかったことを匂わせてきます。
[内科医]先生もこの時点で脳内出血を考えてCT撮った方がよいと
思っていらっしゃった訳で、主尋問ではあまり深入りしませんでしたが、
反対尋問が妙にスムーズです・・・(涙)
---
[原弁] 陳述書によると、4:00位まで[患者]の側にいたということですが、
この時のあなたの役割は何ですか?
[内科医] 循環状態、呼吸状態を観察することです。
[原弁] 乙A7P2によると、転送間際『4:00頃呼吸状態が悪くなった』
とあります。具体的に、どうなったのですか?
[内科医] サチュレーションが弱くなりました。
[原弁] 呼吸の仕方に、何か病的なものはありましたか?
[内科医] 舌根沈下があり、いびき様の呼吸が大きくなりました。
[原弁] バイトブロックをしていましたね?
[内科医] はい。
[原弁] それで舌根沈下はどうして起こるのですか?
[内科医] (メモ抜け)
[原弁] そこで『気管内挿管をした』とありますが、
その道具はどうしましたか?
[内科医] [看護師]に頼んで持ってきてもらいました。
[原弁] 室内にはなかったということですか?
[内科医] なかったと思いますが・・
[原弁] [看護師]の記録には、気管内挿管の準備はしてあったとあるのですが、
『舌根沈下を見て、気管内挿管の道具を持ってくるように頼んだ』
というのは間違いありませんか?
[内科医] よく分かりません。
[原弁] それで、挿管をして[患者]の呼吸状態は回復しましたか?
[内科医] はい。
[原弁] (メモ抜け)
[内科医] 気道確保したら自発呼吸が回復しました。
[原弁] その状態で搬送となったんですね?
[内科医] はい。
[原弁] 4:00過ぎに舌根沈下があって気管内挿管が必要になったというのは
脳の病変としてはどういう意味があるのですか?
[内科医] 呼吸中枢に問題があるということです。
[原弁] それまでは特に問題がなかった、ということですね?
[内科医] そうです。
---
このあたり脳内出血が徐々に進行した、と訴えているように読めます。
---
■[内科医]尋問 [被弁2]から補足
[被弁2] 乙A7の陳述書にあります『JCS100~200、痛み刺激に反応』について
先ほど除脳硬直とかCTを撮るべきかの話をされたと思いますが
この記述は、0:30頃最初の意識消失時に診察された時の記録ですね?
[内科医] そうです。
[被弁2] この裁判では、0:14の意識消失の時点でCTを撮るべきだったかが
争点となっていますが、この時点でCTを撮った方がよい、
といったことを言われましたか?
[内科医] 言っていません。
---
[原弁]が、0:14 意識消失時の『痛み刺激に反応』と
1:37 以降の『ケイレン発作』を(多分意図的に)混乱させて
除脳硬直として扱っていたのをとがめ、
『痛み刺激に反応』の時は[内科医]先生も心因性と診断したことを
確認しています。
できることなら、その場で異議を唱えたかったんじゃないでしょうか。
---
■[内科医]尋問 裁判官から質問
[裁3] あなたと[被告医]の関係ですが、
大淀病院の勤務以外に何かありますか?
[内科医] 特にありません。
[裁3] 階級の上下などはありますか?[被告医]は上司に当たりますか?
[内科医] まぁ、上司と言えば・・まぁ、そうです。
[裁3] 大淀病院以外で一緒に勤務することはよくありましたか?
[内科医] 病院内だけです。
---
何訊いてんの?常識ないの?と思いましたが(裁判官様ごめんなさい)
「上司」は、年齢的に予想しての質問だと思いますが、
ご自分だったら、例えば年上の家裁の裁判官とか書記官のことを
「あなたの上司ですか?」
と質問されたら、本人の前で
「年次的に先輩だけど上司じゃありません」とか答えられる?
・・・
若いし、そういうこと分からないかも。
・・・
裁判官としては、自分の予想だけで推論を進めちゃいけないってのも
あるのでしょうか。
・・・
でも、いかにも
『上司に「CT撮らない」って言われたから、
それ以上勧められなかったんじゃないですか?』
っていう意図が透けて見える質問で。
---
[裁3] 0:14に[患者]が意識消失して診察した時、
[被告医]から「頭の中は大丈夫か」などの
質問がありましたか?
[内科医] 多分あったと思います。
[裁3] [被告医]からそう聞かれて、
「今はVitalもいいので様子を見ましょう」と答えたんですね?
[内科医] はい、そうです。
[裁3] この後、1:50に呼ばれるまでは、一度も[患者]を見ていませんか?
[内科医] 見ていません。
[裁3] 1時間半くらい意識消失が続いていますが、
意識消失するには長いと思いましたか?
[内科医] はい。
[裁3] 心因性で意識消失する場合、
普通どれくらいの時間と考えられますか?
[内科医] これまで10例くらい経験した中では、30分位です。
[裁3] そういう趣旨で、経過観察の目安を30分と考えられたのですね?
[内科医] そうです。
---
上に書いた通り、経過観察の長さを気にされています。
次の[裁2][裁1]両氏からも指摘が入ります。
---
[裁3] 1:50に呼び出されてCTを進言したが、
[被告医]に「動かしてはいけないので撮らない」
と言われたのですね。
[内科医] はい。
[裁3] [被告医]から「子癇を疑っている」という説明はありましたか?
[内科医] 「大淀病院では手に負えない」
ということのみ聞きました。
[裁3] 具体的な理由は何も聞いていませんか?
[内科医] 理由は聞いていません。
---
1:50以降にCTを撮らなかったことについても、
問題ないとは判断してくれていないようです。
脳の病変を疑っているのに、
「動かしてはいけない」の一言で引き下がるなんて?
と思われているのでしょうか・・・
「CT撮影にもメリットとデメリットがあり、
どちらが大きいか?で判断するべき」
という考え方から出てくる質問ではない、
つまり、被告側がそれを十分訴えられていないようです。
---
[裁3] CTを撮るのに4~50分かかるのは、どういう理由ですか?
[内科医] 機械を立ち上げて、CTの装置は技師さんしか分からないので、
技師さんに連絡します。ですので、機械を起動して、
それから患者さんを撮影室まで運ぶのに時間がかかります。
[裁3] 陣痛室からCT撮影室までの距離は、遠いのですか?
[内科医] 5~10分くらいです。移動もゆっくりしないといけないので。
---
○時に疑って、○時にCT撮って、○時に搬送して・・の足し算、
裁判官の方々もされるんですね。
この足し算は、どういう心証を持って、
どういう方針で行うかで結果が変わるのですが、
原告にとっては、厳密に踏み込むと無理が露呈する、
諸刃なところだと思うので、被告側としてはしっかり
自分のスタンスを主張しておいた方が良いと思います。
提出証拠で訴えられているはずと思いますが、
それを裏付けてくれる鑑定がほしいですね。
---
[裁2] 裁判官のNからお尋ねします。
0:30頃、[患者]の意識消失を心因性と診断して
経過観察を助言されていますが、
経過観察では、何を見るのですか?、
[内科医] 心因性か脳卒中かを判別します。
[裁2] 30分で回復しなければ脳卒中の可能性が高くなるのですか?
[内科医] 経験上はそうです。
[裁2] 30分経過したらどうする、等の指示をしましたか?
[内科医] 普通何も言いませんが、看護師から連絡が来るようになっています。
[裁2] 「様子を見てください」程度の指示だったのですね?
[内科医] はい。
[裁2] 30分ほど経っても連絡が何もなかったのですが、
証人からどうなっているか確認はしませんでしたか?
[内科医] 私も他の患者さんを見たりしていたので、特に確認はしていません。
[裁2] もう1点、1:50頃の診察で、脳出血を考えられたということですが、
具体的にどういう症状から脳出血と考えられたのですか?
[内科医] 意識消失とその前の頭痛、後は瞳孔の散大です。
[裁2] 30分意識消失が回復しないことは重要なポイントとなりますか?
[内科医] そう思います。
[裁1] 裁判長のOから1点
心因性の意識消失の目安が30分とのことですが、今から考えると、
30分くらい経過した時点で動くべきだったと思いますか?
[内科医] 看護師からの連絡がないと、動きようがないと思います。
[裁1] ありがとうございます。
---
[裁1]はストレートです。
[内科医]先生にとっては「心因性であれば30分程度で意識が回復する」
という経験上の前提で、30分しても意識が回復しなければ、
普通は看護師ないし助産師から連絡があるはずと思っていたので
わざわざ指示も出さなかった。
一方、この[助産師]さんは、妊婦さんの意識消失の経験がなかった
ということで、
「心因性ならば普通30分ぐらいで意識回復するはずだから、
それを超えても意識が戻らないとか、
○○が悪化している、などがあれば、医師に報告するべき」
という、お医者様にとっての『常識(なんですよね?)』
も認識していなかったようです。
で、「意識は回復しないが、悪化もないので問題ない」と判断して
1時間程度経過観察を続け、さらに、1:16には
「ずっと見ている必要がなさそう」と、詰所に戻られています。
この認識のズレは明白で、
『看護師から連絡がないと動けない』という回答では、
経過観察の時間や内容の具体的指示も出さずに、
看護師・助産師に責任転嫁している
と受け取られかねない気がします。
しかし、実は、[助産師]さんの尋問の間、
[内科医]先生は外に出ていらっしゃったので、
この認識のズレに気がついていらっしゃらないんですね。
[内科医]先生は、裁判官が何故ここをこれだけ気にしているか分からず、
ご不快だったでしょう。
ここは、代理人の方から、それとなく教えてあげてほしかったです。
そもそも、何で[助産師]さんの尋問の間、外に出てもらったんだろう?
他の人の尋問も聞いておく方が、手の内も分かりやすいと思うんですが。
医療も法律も素人の勝手な意見ですが。
ここは
「助産師には、経過観察の具体的な指示を出すべきであった」
「30分程経過観察して意識が戻らない時点で、
脳の異常を予想して何らかの処置をすべきであった」
という形で過失認定される恐れがあると思います。
なので、次に主張すべきは、
「30分経過観察して意識が戻らない時点で、脳の異常を予想」して
動き始めたしたとしても、結果が良くなったとは言えないということ。
・子癇の可能性も高い状態でもあり、移動を含めてCT撮影にはリスクがある。
今回の経過では、CT撮影中にケイレン発作が起こる恐れもあった。
・30分の経過観察後にCT撮影すると、
結果が出るのは早くて1:30過ぎであるので、
搬送決定の時刻は実際の経過と変わらない、
つまり、やっぱり間に合わなかった。
ってことを、できる限り、主張してほしかったのですが・・
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[被弁1] 裁判官の方から、[被告医]と[内科医]の間に
上下関係があるかという質問で
「上司」という話が出ましたが、科が違いますので、
それぞれの責任で意見を言われると思いますので、
そういう意味で対等であると考えて良いですか?
[内科医] はい、対等と思います。
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上司と言えば上司と言えるし、対等と言えば対等。ものは言いよう、です。
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全体を通して、原告の主張は明確です。
病気の進行は
0:00の頭痛~0:14の意識消失の頃に脳内出血が発生 ←普通の頭痛ではない
脳内出血は徐々に進行 ←最初は瞳孔も散大せず、意識は消失しても安定的
4時頃致命的になった ←4時頃になって呼吸に問題が出た
で、あるべき対応は
0:14頃 脳の病変を疑い、CT用意
1:00頃 CT撮影、脳内出血を診断し、脳外科のある病院へ転送決定
2:00頃 搬送先決定(脳外科だけなら近くの病院がすぐ見つかる)
3:00前 搬送先に到着
4:00前 手術開始
Yosyan先生初め医師の方々のご指摘の通り、突っ込みどころは満載ですが、
原告、というより、原 告 代 理 人 は、そんなのは百も承知で、
筋書きの妥当性より、印象的に訴えることに注力しています。
妥当なストーリーづくりにこだわりすぎると、
「やっぱり助からなかったかも」となってしまう。
それより、「素人なので」を免罪符に、
無理が散在することには目をつぶって、
形式上、助かるストーリーをひととおり提示できればよい。
後は、簡単に却下される事が明白な難癖もちりばめて、
印象に残るようなジャブを数打っておけば、
被告側が反駁しそびれた2,3割のポイントを、
裁判官がつなぎ合わせて、幾ばくかの「救命可能性」を作り出してくれる
こんな思惑があるのではないでしょうか。
昨夏、最初に傍聴に行った時、原告代理人が、原告支援者たちに
「裁判は、けんかですからね」と言っていたのが思い起こされます。
これに対して、被告側は、淡々と自分のストーリーを提示して
終わっている感があります。
難癖を1つ1つ論駁して、被告側の主張に無理があることを印象づけ、
実現可能性のあるどんなストーリーでも、
実際の経過より救命可能性を高めることはできなかった
ことを、もっと訴えかけてほしかったです。
とはいえ、今後、鑑定以外に主張を訴えられる場ってあるのでしょうか…
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