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(投稿:by 僻地の産科医)
年末の日医雑誌です..。*♡
前から気になっていて、
あんまり妊娠とか産婦人科疾患とは
関係ないのですが。
テーマは
「アルコール関連障害の現状と対策」
です(>▽<)!!!
関係ないけれど、私はお酒大好き!
お酒の失敗もそこそこですw。
結構、お酒イコール悪だと思っていたので、
この論文を読んで意外でした!
救急外来では「ねぇちゃん」と酔っ払いにお尻を触られ、
成人の日にはドロドロになった新成人がゴロゴロ担ぎ込まれたり、
消化器を回っていると「もういやんなる!!!」程のお酒ですが
(自分は棚に上げる)死亡率の下がる疾患があるとは驚きです。
アルコール関連障害の疫学
森 満 ※1 中村 智 ※2 伏木康弘 ※3
※1 札幌医科大学医学部公衆衛生学教授
※2 大学院生 ※3 全日研究生
日医雑誌 第140巻 第9号/平成23年12月p1855-1859
■はじめに
IARC(国際がん研究機関)はアルコール飲料中のエタノール(以下,Etと略)を確実な発がん性物質として,Group 1(2011年現在, 107物質)に分類している.そして,過度のEt摂取はいくつかの部位の発がんと関連するのみならず,高血圧,心疾患,脳血管疾患などの循環器疾患,肝炎や腎炎などの消化器疾患,糖尿病などの代謝性疾患,アルコール依存症,うつ病などの気分障害,自殺と関連することが報告されている.
一方,適度のEt摂取は,虚血性心疾患などのリスクを低下させることによって総死亡(すべての死因を含めた死亡)のリスクを低下させる.そのため, Et摂取量を横軸に取り,総死亡率を縦軸に取った散布図はJ字型になることが報告されている.さらに,適度な飲酒はコミュニケーションの促進などによって良い人間関係の形成に役立つとともに,生活の質(QOL)の向上につながることも報じられている.そこで,飲酒を過度の飲酒による健康障害の面からのみ捉えるのではなく,適度な飲酒による健康増進面も加味して評価する必要がある.
■習慣飲酒者の割合
わが国における飲酒習慣がある者(習慣飲酒者)の割合や,多量の飲酒習慣がある者(多量飲酒者)の割合を把握する手段としては,国民健康・栄養調査がある.同調査における習慣飲酒者の定義は週に3回以上, 1回に日本酒換算で1合(Et摂取量23g)以上摂取する者であり,また,多量飲酒者の定義は1回に日本酒換算で3合(Et摂取量69g)以上摂取する者である.同調査による習慣飲酒者の割合の年次推移を図1に示したが,男性では2004年ごろに40%以下に低下し,女性は常に10% 以下で推移している.また,同調査における多量飲酒者の割合は男性では7~8%,女性では1%未満で推移している.
習慣飲酒者の割合が低下している理由は不明であるが,最近の経済的不況による個人収入の減少が関係しているかもしれない.しかし,国民健康・栄養調査への参加率や参加者の回答率が最近低下傾向にあると推測されることから1)これらの値には選択バイアスの影響が入っていて,実際の平均的飲酒量よりも低い値となっている可能性もある.
■飲酒習慣の個人差と関連する要因
1.飲酒習慣に影響する遺伝的要因
Etはアルコール脱水素酵素(ADH)によってアセトアルデヒドに代謝され,アセトアルデヒドはアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって酢酸に代謝されて,体外に排泄される.ミトコンドリアに存在するALDH2がアセトアルデヒドの代謝に最も寄与するが,その酵素の変異型遺伝子を有する者はホモ型ALDH2*2/*2でもヘテロ型ALDH2*2/*2でも,アルデヒドの代謝速度が遅くブラッシング反応(飲酒後の皮膚紅潮)を起こす.なかでもホモ型ALDH2*2/*2を有する者はブラッシング反応が強く,飲酒量もきわめて少ないと報告されている.また,寄与する割合は小さいがADH2遺伝子型もブラッシング反応の出現に寄与しており,ホモ型ADH2*2/*2やヘテロ型ADH2*l/*2の変異型遺伝子を有する者はアセトアルデヒドの生成が迅速でブラッシング反応が強く,飲酒量も少ないと報告されている.
2.飲酒習慣と関係する生活習慣などの要因
飲酒習慣がない者と比べて,適度な飲酒をする習慣を有する者は, 喫煙をしない傾向や運動する頻度が高い傾向にあり,総じて良い生活習慣を維持していることをわれわれは報告した.一方,過度に飲酒をする者は,そうでない者と比べて, Breslowの7つの健康習慣指数(喫煙をしない,週に3回以上運動する,などの7項出が低く,総じて良くない生活習慣に陥っていることが報告されている町そして,過度の飲酒習慣を有する者では,喫煙習慣などの悪い生活習慣が相乗的にアルコール関連疾患のリスクを高めている可能性が示されている.
■アルコール関連障害の疫学
1.総死亡との関係
日本の6つの大規模コホート研究をプールして解析した結果4)飲酒習慣がない者と比べて,男性では1日当たりEt摂取量69g未満の飲酒者は総死亡リスクが0.8程度と有意に低く,女性では1日当たりEt摂取量23g未満の飲酒者は総死亡リスクが0.8程度と有意に低かった.一方,男性では同69g以上,女性では同23g以上の飲酒者の総死亡リスクは1.2程度と高かった.この解析の結果では4)飲酒習慣がない者と比べて,男性では1日当たりEt摂取量69g未満の飲酒者の,女性では1日当たりEt摂取量23g未満の飲酒者の,がん死亡,心疾患死亡,および,脳血管疾患死亡のいずれのリスクも有意に低かった.しかし,それ以上のEt摂取量となると,いずれの疾患のリスクも高かった.
2.循環器疾患との関係
上記の解析結果では4)飲酒習慣がない者と比べて,男性では1日当たりEt摂取量69g未満の飲酒者の,女性では1日当たりEt摂取量23g未満の飲酒者の,心疾患死亡,特に虚血性心疾患死亡,および脳血管疾患死亡,特に脳梗塞死亡,のいずれのリスクも有意に低かった.これは,適度のEt摂取によるHDLコレステロールの増加,血小板凝集の抑制,あるいは精神的ストレスの軽減などが関与していると考えられている.それ以上のEt摂取量になると,いずれの疾患のリスクも高かった.それに対して,循環器疾患のなかでも,高血圧症罹患5)脳出血死亡6)およびくも膜下出血死亡6)との関係では,男性において1日当たりのEt摂取量23g未満という比較的少量の習慣的飲酒から用量反応関係に従ってリスクの上昇があることが報告されている.
3.がんとの関係
いくつかの部位のがん発生のリスクは, Et摂取によって有意に上昇する.そのような部位のがんとしては,上部消化管のがん(口腔がん7)咽頭がん7)食道がん),肝がん8)結腸がん9)直腸がん9)が挙げられる.これらの発がんには,飲酒習慣と喫煙習慣が相乗的に作用するという報告がみられるが, Et自体の発がん性のほかに, Etの代謝物であるアセトアルデヒドの発がん性が関与していることも考えられる.
アセトアルデヒドの代謝活性が低いALDH2の遺伝子型を有し,かつ, 1日当たりのEt摂取量が30g以上の者では豚がんリスクが高く,その代謝活性が高いALDH2の遺伝子型を有する者では飲酒習慣があっても膵がんリスクが高くなかったことから,膵管細胞へのアセトアルデヒドの曝露が眸がんのリスクを高める可能性が示唆されている.飲酒が乳がんのリスクを高めるとする報告もあるが,そのような関連性はないとする報告もある.
4.肝疾患,膵疾患,その他の消化器疾患との関係
図2に, 1985年日本人モデル人口を基準人口として直接法で計算したアルコール性肝疾患の年齢調整死亡率の年次推移を示したが,男女とも上昇傾向にある.特に女性では最近15年間一貫して上昇している. Etの過度の摂取によって,脂肪肝,アルコール性肝炎,肝線維症,肝硬変,あるいは肝がんという病態が起こりうる.急性腎炎や慢性腎炎の40~50%はEtの過剰摂取が原因であると報告されている.消化管においては,マロリー・ワイス症候群,食道炎,胃潰瘍,十二指腸潰瘍,小腸の消化吸収不良症候群,大腸腺腫,痔核とEtの過度の摂取との関連性が報告されている.
5.糖尿病との関係
耐糖能異常や糖尿病のリスクに関しては,男性で1日当たりのEt摂取量23g以上46g未満の者のリスクが最も低く,それを基準にすると,全く飲酒しない者や1日当たりのEt摂取量69g以上の多量飲酒者のリスクがそれぞれ1.5と1.4で有意に高かったと報告されている.そして,適度な飲酒はインスリン感受性を高め,インスリン抵抗性を低下させる可能性が示唆されている.
6.アルコール依存症との関係
図3に1985年日本人モデル人口を基準人口として直接法で計算したアルコール性精神障害の年齢調整死亡率の年次推移を示したが,男女とも低下傾向にある.しかし,死亡として報告されるアルコール性精神障害は,罹患数や有病数に比べるとごく一部であると考えられるので,アルコール性精神障害の患者数が減少しているかどうかは不明である.一方, 1984年に一般集団に対して行われた簡易質問票KASTによるアルコール依存症スクリーニング検査陽性と判断される2点以上の割合は男性7.1%,女性0.6%であった.そして,同じく一般集団に対して2003年に行われたスクリ-ニングにおけるKAST 2点以上の割合は男性7.1%,女性1.4%であった12)このように,男性ではアルコール依存陽性の割合に変化はないが,女性では陽性者の割合が上昇していた.
7.うつ病などの気分障害や自殺との関係
日本のコホート研究の結果から^ふ時々飲酒する者を基準にすると,全く飲酒しない者の自殺のリスクは 2.3と有意に高く,また, Et摂取量が週に414g (1日当たり約60g)以上という多量飲酒者おける自殺のリスクも2.3と有意に高かったと報じられている.適度の飲酒はコミュニケーションの促進などによって,良い人間関係の形成に役立つとともに精神的ストレスの低減にもつながることが報じられている.
したがって,全く飲酒習慣がない者と比べて,適度の飲酒習慣がある者では,うつ病などの気分障害や自殺のリスクは低いと考えられる.一方、過度の飲酒習慣は気分障害のリスクも高く,結果的に,自殺のリスクも高くなると考えられる.
■おわりに
日本人を対象とした疫学的研究の成果をまとめると.男性では1日当たり69g以上という過度のEt摂取をすると,総死亡, 心疾患死亡,脳梗塞死亡,がん死亡,消化器疾患罹患,糖尿病罹患.アルコール依存症,気分障害,自殺などのリスクが上昇する.一方,男性では1日当たり46g未満,女性では1日当たり23g未満という適度のEt摂取をすると,全く飲酒しない者と比べて総死亡,虚血性心疾患死亡,および脳梗塞のリスクが低下する.しかし,適度のEt摂取でも,高血圧症罹患,脳出血死亡,およびくも膜下出血死亡のリスクは上昇する.
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