(関連目次)→妊産婦死亡 真の医療安全のために
(投稿:by 僻地の産科医)
岡崎市民病院で下のような事例があったそうです。
この新聞記事だけでわかることは、
・医師が子宮外妊娠を疑っていたこと
・おそらく最終月経と排卵時期がずれたんだろうと考えたこと
(これってなぜか多いんですよね。)
・でも念のためにhCG定量を行った。
(結果が出るのに1日かかる)
・結果でてみてビックリ!!!
電話かけたけれど通じなかった。
で、裁判長の、
>子宮外妊娠の可能性が高いことや危険性を具体的に伝え、
>できるだけ早く来院するよう勧める責任があった
とありますけれど、それはその通りだと思います。
ただ多分、その電話、産婦人科医が受けていないのよね。。
(忙しいもん!外来中だし、看護師さんだって声かけづらい)
来院したら術前検査一式をして、
点滴ラインとって、忙しいのはわかってる。
オペ出しがすぐできるように見て、
オペ室確保でねじ込むためにも、
早朝そのまま来てもらわないと外来業務が滞る
ことは目に見えています。
なので、電話を取った人間は
産婦人科医ではないと私は考えています。
外妊疑い、腹痛の人間を、
少なくともその日オペじゃなくても、
絶対に病院外においとくわけにいかないです。
あんまり重要性が受付(or 病棟スタッフ)の人には
わからなかったんじゃないかなぁと思うし、
修羅の顔をして外来頑張っているの知ってるから、
「医師→医師」電話でもなかなか取次ぎに時間がかかるのが現状です。
今でも子宮外妊娠での母体死亡はそこそこあり、
判例上でもトラブルになっているケースが多いようです。
子宮外妊娠の女性死亡 愛知・岡崎市に賠償命令
朝日新聞 2012年1月28日
http://www.asahi.com/national/update/0128/NGY201201270050.html
岡崎市民病院(愛知県岡崎市)での受診直後に子宮外妊娠による出血で死亡した同市の女性(当時36)の遺族が、市と医師に7800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が27日、名古屋地裁であった。堀内照美裁判長は、病院側が子宮外妊娠の可能性を伝えなかったため、処置が遅れて死亡したと認定し、市と医師に約6700万円の支払いを命じた。
判決によると、女性は2007年10月3日、妊娠を疑って同病院で検査を受けた。女性が帰った後の同日夕には検査結果が出て、担当した女性医師は子宮外妊娠の可能性に気づいた。翌4日朝に女性から腹痛を訴える電話があり、午前11時に来院することになった。女性が病院に来ないため、病院は何度も女性に電話したが通じず、午後1時に女性から「腹痛で動けない」と電話があった。病院が救急車を呼んだが、女性は自宅で意識を失っていて、5日に出血性ショックで死亡した。
判決は、最初に腹痛を訴える電話があった時点で、女性は危険な状態だったと指摘。子宮外妊娠の可能性が高いことや危険性を具体的に伝え、できるだけ早く来院するよう勧める責任があったと結論づけた。堀内裁判長は「適切に伝えていれば、迅速な手術と治療で救命できた可能性が高かった」と述べた。 同病院は「判決文を見ていないのでコメントは差し控える」としている。
妊婦死亡の医療ミスで賠償命じる 名古屋地裁
中日新聞 2012年1月27日
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2012012790214639.html
妊娠中の妻が死亡したのは岡崎市民病院(愛知県岡崎市)が適切な処置を怠ったためだとして、遺族3人が、岡崎市と担当医に7800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が27日、名古屋地裁であった。堀内照美裁判長は「病院側が適切に対処すれば、命を救える可能性が高かった」として、市と医師に6700万円の支払いを命じた。
判決によると、この妻は2007年10月、妊娠検査薬で陽性反応が出たため同病院を受診。医師は、腹痛を訴えず出血もなかったため、帰宅させた。妻の帰宅後に判明した検査結果で、子宮外妊娠の疑いは持ったが、別の患者の緊急手術を担当したため、連絡しなかった。妻は翌日、自宅で腹痛を訴え、子宮外妊娠による出血性ショックで死亡した。
判決は、妻が翌朝、腹痛を訴えて病院に電話してきた点を挙げ「子宮外妊娠や出血などによる危険性を伝えて再受診させ、迅速に手術や治療をするべきだった」と判断した。
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