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« 2007年6月24日 - 2007年6月30日 | メイン | 2007年7月8日 - 2007年7月14日 »
わりと的を得ていることが多くて好きなんです..。*♡
救急外来をめぐる僻地議論としては、
結局のところ救急時間外医療をコンビニ化しないこと(※1)
に行き着くと思うのですけれど、住民の意識改革はおいつかないでしょう。
外国のように(※2)かかる手段がなくなって初めて気がつくことも多いと思われます。
なお、こちらもご覧下さい!ぜひ。
全国の救急病院(救急告示施設)が過去5年間で約1割減少し、4644施設になっていることが本紙の調査で分かった。
救急病院が1割も減ったという現象は、一見ショッキングに見える。しかし、数の変化だけにとらわれるべきではない。救急病院の内実は患者には見えにくく、看板倒れのような病院も放置されてきたからだ。今回の調査結果を、患者にも医師にも有益な体制づくりを進めるきっかけにすべきだろう。
救急医療の窮状を象徴する診療科の一つが小児科だ。
「これ以上、医師を殺さないで」。14日の東京地裁。東京都中野区の病院で、激務のためにうつ病を患い自殺した小児科部長代行・中原利郎さん(当時44歳)が「労災」認定されたことを受け、妻(51)は切々と訴えた。
夜間に救急施設を訪れる患者の半数は子どもだ。当直の小児科医が診察に追われ、翌日もそのまま勤務するという状態が続いた結果、疲労した勤務医が病院を離れ、残った医師がさらに過酷な勤務に直面する事態となっている。
この病院では、6人の常勤医が3年間で半分になり、中原さんは1999年に自殺する前の数か月、最高で月8回の当直をこなしていた。
これは小児科だけの問題ではない。2004年度から始まった医師臨床研修の必修化で、約半数の研修医が大学病院から市中の大型病院に移ったため、人手不足となった大学病院が、派遣先の中規模病院から医師を引きあげ、残った勤務医がより厳しい労働条件下で救急を担わざるを得ないケースがあちこちで出現している。とりわけ地方では深刻な状況だ。
さらに、医療事故のリスクの高まりは、勤務医の意欲の低下を招き、勤務医から開業医への転身も増えている。ここ数年は、年間約6000もの診療所が開業する“開業ラッシュ”が続いている。
どうすればいいのか――。
「地域の実情にあった救急システムの構築が急務だ。医師や機能の集約化は解決策の一つ(※3)」と、医療提供体制に詳しい東京医科歯科大大学院の川渕孝一教授(医療経済学)は指摘する。現在は各病院に医師が薄く広く配置されており、診療体制に余裕がない病院が多い。このため、拠点となる病院の医師数を増やし、1人にかかる当直などの負担を軽減するというものだ。
川渕教授は「その際に不可欠なのが、病院勤務を離れた開業医の協力。例えば、午後10時までの時間帯を交代で担当するなど地域医療の担い手としての自覚を求めたい」と強調する。
集約化については、横浜市のケースが一つのモデルケースだ。これまで27の病院が小児救急の当直日を交代で分担してきたが、年間の患者数には1189~78人とバラツキがあった。こうした偏りを解消し、医師の勤務環境の改善を図るため、来年度から小児科医が8人以上常勤する病院を7か所指定し、3年間で11人以上の体制にしていく。当直は2人体制になる。
集約化とは別に、施設の役割分担を徹底することで新システムを作った例もある。
早期新生児などの死亡率が94年に最も高かった宮崎県は、出産の8割を開業医が担い、緊急時には産科医が24時間対応できる6か所の総合病院に運ぶシステムを導入した。病院には3~4人の産科医が常勤しているが、基本的に緊急時の対応に専念する。この体制整備により、04年に死亡率が全国最低になった。
同時に、救急医療の質を向上させることも大切だ。そもそも、すべての救急病院が全診療科で24時間365日の体制をとってきたわけではない。厚生労働省の05年の統計では、救急体制がある全国約5450施設のうち、小児科で深夜の救急対応が「ほぼ毎日可能」なのはわずか16%、内科でも約50%に過ぎない。
「高熱を出して救急病院に駆け込んだのに、当直医はアルバイトの研修医で、オロオロするばかりだった」「腕を複雑骨折して深夜に救急病院に運ばれたが、『ここでは手当てできない』と言われ、別の病院に移された」……。
患者からの不安の声が根強いのは、不十分な救急体制を非常勤の当直医でやりくりしてきた結果とも言えよう。蘇生(そせい)や外傷を扱うための講習を受けたこともない医師が救急病院で当直しているような状況も改めるべきだ。システムづくりと質の向上は、救急医療を改善するための車の両輪。その認識を社会全体で共有したい。
[自治体病院の退潮&病院数削減]
東京日和@元勤務医の日々 2007.03.16
http://blog.m3.com/TL/20070316/5
皆さま御存知、帝王切開決定から1時間16分以内に児を娩出をできないと
裁判にまけるらしいwという判決文について詳細に検討してあります。
↓必見です~ o(^-^)o
もうひとつ。
急性期病院は大赤字になるわけですよ~っ(涙)!!!という話題!
イヤになりますね。。
それから薬の話、二連発です..。*♡ タミフルとイレッサ。
二つの薬剤の持上げられ方と、はしごの外され方はとても似ていますね..。*♡
マスコミのお得意技かなぁ。
Pubmedにてインフルエンザにおける危険性を検証されている先生も。
最近、大きな話題となったゲフィチニブとドセタキセルの市販後第III相試験結果について、国頭英夫氏(国立がんセンター中央病院肺内科)は札幌で開かれた日本臨床腫瘍学会で、「もともとコンセプトの違う治療を比較する異種格闘技戦であった」とコメントした。
この第III相試験は、ゲフィチニブの承認条件として実施されたもので、ドセタキセルに対するゲフィチニブの非劣性を明らかにすることが目的だった。しかし、非小細胞肺癌患者を対象に行われた試験では、全生存期間に有意差はなかったものの、結果的に非劣性を証明することはできなかった。ただ、副次的エンドポイントでみると、奏効率や長期の無増悪生存期間で、ゲフィチニブの有用性を示す成績が得られており、さらなる検討が必要との見解も示されていた。
その成績を踏まえて、国頭氏は「非劣性が認められなかったことは一つの重要なポイント」とし、「副次的エンドポイントで、ゲフィチニブがドセタキセルに比べて奏効率やQOLで優れているが、その利点をもってしても、優先してゲフィチニブを積極的に選択することは推奨できない」とクギを刺した。
この試験では、全生存期間の中央値がゲフィチニブで11.5カ月、ドセタキセルでは14カ月だったが、生存曲線をみると、投与18カ月付近で交差し、20カ月を超えるとゲフィチニブ群で生存率の高い結果が得られている。その点について国頭氏は、「症例数の設定根拠が甘く、無理がある。クロスオーバーがあるデザインであり、有意にどちらかが負けることは起こりにくい」と試験デザインを批判した。それでも、ゲフィチニブの全生存期間の非劣性を証明できなかった結果は重視すべきだとした。
今回の試験で注目されるのは、奏効率がドセタキセル群の12.8%に対して、ゲフィチニブ群では22.5%と明らかに高かったにもかかわらず、全生存期間の延長はドセタキセル群が勝るという矛盾する結果が得られたことだ。奏効率で劣るドセタキセルが、全生存期間の延長ではゲフィチニブに勝るという結果をどう考えればいいのかが問題となった。
そのカギを握るのが化学療法剤と分子標的薬剤の違いだ。サイトトキシックな作用を発揮する抗癌剤は、おしなべて奏効性を示す。一方、ゲフィチニブに代表される分子標的薬剤の場合は、効く患者と効かない患者が明確に分かれており、同じ抗癌剤でも作用の仕方が全く異なる。
これこそが分子標的治療の特徴でもあり、もともとゲフィチニブとドセタキセルでは、効果と生存期間の現れ方に大きな違いがあったと考えられる。国頭氏は「今回の試験は、コンセプトの違う治療を比較したということだ。そもそもハザード比が経時的に変化するため、コックスの回帰分析になじまない試験であり、本来はこのような臨床試験をやってはいけなかった」と話し、この第III相試験を“異種格闘技戦”だったと総括した。
「産科医の減少は、分娩件数の減少と比例し、分娩件数当たりにすれば産科医数は特に減っていない。産科医療は病院のネットワーク化で効率化すれば十分に対応できるはず」
今年2月7日の衆議院予算委員会での柳澤伯夫厚生労働相の発言に医師は一斉に反発した。産婦人科医1人当たりの出生数は、1990年が95人、2004年が98人と横ばい傾向にあるが、分娩施設数の大幅な減少など産科医療提供体制を考慮していない。産科医の減少は、単に分娩件数の減少に呼応したもので、今後、病院のネットワーク化と医療の効率化で対応することで十分に可能との認識を示したからだ。
福島県立大野病院で04年12月、帝王切開手術ミスで女性(当時29)を死亡させたとして同病院の産婦人科医が業務上過失致死と医師法違反の疑いで逮捕された事件以来、産科医療の危機を浮き彫りにした特集記事が連日紙面をにぎわす。
厚生労働省も手をこまねいて見ているだけではない。現場からの窮状に対し、医師確保対策の費用として、今年度の補正予算と07年度予算合わせて計100億円を計上する大幅な増額が認められた。医療資源の集約化・重点化を進めたり、無過失補償制度や死因究明制度の創設に力を注ぐ。ただ、予算でいくら手厚くして対策を講じようとも即効性がなく決め手がないのが実情だ。08年度の診療報酬改定で産科医療に対する手厚い配分が求められる。
産科医療をめぐっては、訴訟リスクがほかの診療科より高かったり、過酷な勤務などによって、産科医療のひずみが表面化している。体力的・精神的に限界を感じ、見切りをつけて医療現場から離れていく医師は多い。
昨年、三重県の市立尾鷲総合病院の産科医(55)が市側との契約更新の交渉で決裂した。医師側の条件は5520万円に休日分の上乗せだったが、予算オーバーのため、市側は4800万円を提示した。結局、契約交渉が不成立となった。
05年7月、同病院に医師を送っていた三重大が、付属病院の医師不足を理由に派遣を中止したことを受け、市は独自に探した津市の男性開業医と1年の雇用契約を結んだ。医師は24時間無休で病院に常駐し、夜昼問わずの出産に備えていた。
この産科医は地元紙に対し「150人を超える赤ん坊を問題なく出産させてきたし、休みも年末の2日間だけだった。そんな中での4800万円への減額提示は、医師として許せなかった」と振り返る。
この産科医が提示した5520万円は高いか低いか。一般人だったらその額を聞いて、高いという人の割合は多いだろう。しかし、知り合いの医師に聞いたところ、誰もが口をそろえて「安い」と答えが返ってきた。産科医療体制を産科医1人で担う実態について、金額の問題ではなく、1人では安全・安心な医療が十分に提供できないという。逆に、地域の産科医療を1人で提供することがいかに無謀で危険性が高いと説明を受けた。
厚労省は、産科医不足解消のため、産科の医師を集中し診療機能を充実させる「集約化・重点化」を進める。だが、課題も残る。「産科医療を提供する病院まで2時間かけて通う」「年間降水量が多い地域だと、大雨が降れば道路は通行止めになる」など、集約化されることで患者側に負担がかかる。一方、「公立や民間など経営母体の異なる同規模病院が同じ医療圏で小児医療体制を提供している場合、どちらの病院に医療資源を集中させるか調整が難しい」など病院側の利害関係にも発展して、「集約化・重点化」は一朝一夕にいかない。
産科医療崩壊の危機に直面している医療現場は、医師不足、高い訴訟リスク、過酷な労働環境などさまざまな要因が複雑に絡み合って表面化したものだ。この絡み合った状況をほどくには、患者側、病院側、行政側のそれぞれが抱える事情、思惑を超えて、対応しない限り、産科医療の実態は変わることはないだろう。
保険医協会 「医療も命も削られる」PDF形式
http://hodanren.doc-net.or.jp/kenkou/isi-fusoku.pdf
こちらも参考に!
北海道には180の市町村があるそうですが産科医不足が深刻で、お産ができる市町村は三十七しかないそうです。「産科」に関しては、安上がり政策のせいではないでしょうけれど、僻地医療ということであれば、そのとおりだと思います。
日本全体が緊急事態に陥ってきたことが、まだわからない人間が多すぎます。
マスコミ内部にはまだ偏見を持った上層部が数多く巣食っていると思われます。
厚労省は、国民にとって存在意義が果たしてあるのか?、というレベルです。
安倍政権は、もはや体制維持だけが課題であり、国民のための政治にはほど遠い状態です。
ここで野党が団結してがんばらねばどうするのか、という思いです。同時に、国民もいいかげん真実を見極めてほしいと思います。この安倍政権が、やらずぶったくりサギ病院のようなものだ、と理解して、早く転院することを勧めたいです。
written by Doctor Takechan / 2007.03.27
金沢医大で、誘発したところ子宮破裂になった例のようです。 ぽち→
グラフは、過期妊娠における危険性。 図説産婦人科view36 P11
ま、これでもみて。それから判決を読んでください。
金沢医科大学病院で出産した女性が、生まれた子供に後遺症が残ったとして大学側に損害賠償を求めている裁判で、金沢地方裁判所は原告の訴えを棄却しました。
訴えているのは、金沢医科大学病院に入院していた津幡町の37歳の女性とその家族です。この女性は、2002年5月の出産の際に子宮が破裂して生まれた子供に後遺症が残ったのは、分娩を誘発する薬を担当医が大量に投与したのが原因だとして、大学と担当医に対し、1億8500万円の損害賠償を求めています。
金沢地裁の倉田慎也裁判長は、当時、女性は胎児の死亡率が増加する妊娠41週目で、「リスクを避けるため、分娩誘発の措置は医学的に適切だった」と指摘しました。そして、「薬の大量投与は当時の症状から見ても合理的な理由があり、過失は認められない」として、原告の訴えを棄却しました。原告側は判決内容を検討し、控訴するかしないかを決める考えです。
マンパワーが余っていそうなアメリカでも、やはり心臓関係の発作は、
通常営業時よりも非通常営業時のほうがリスクが高いのですね。
ちょっと安心するとともに、いわんや搬送できなくなる日本をや。
それからお隣韓国でも、日本とおなじような事件がおこっているようですね。(日本よりひどいかな?)
あと ssd's Diaryより..。*♡
週末に心臓発作を起こして病院に担ぎ込まれた場合、治療を受けるまで長く待たされたり、あるいは治療が間に合わない確率が平日よりやや高いことが、ロバート・ウッド・ジョンソン医学校(ニュージャージー州ピスカタウェイ)の最新調査で明らかになった。調査結果は医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン最新号に掲載された。AP通信によると、研究チームは、1987年から2002年にかけて州内の病院で初めて心臓病の診察を受けた患者23万1164人の情報を分析した。治療法の大きな進歩はほぼ4年ごとに起きるため、4年単位で患者の病状を追跡調査した。調査期間中、治療法が現在に近い最終の4年間では、発病して来院した患者が1カ月以内に死亡する率は週末の来院者の方が平日より約7.5%高かった。年齢やその他の疾患などを考慮しても、週末患者の死亡率は平日より約5%高いという。血管形成術やバイパス手術などが行われるカテーテル検査室は、週末は休みだったり診療時間を限定している病院が多い。
最終の4年間は、週末に来院した心臓病患者の13%近くが1カ月以内に死亡したのに対し、平日の1カ月死亡率は12%だった。米国では年間約70万人が初めての心臓発作で亡くなっていることを考えると、わずか1ポイントの違いでもかなりの人数になる。週末の1カ月死亡率が平日より高い傾向は、期間中ほぼすべての4年間にも見られたという。
病院の前で倒れた救急患者を病院側が応急処置せず、死亡させたという主張が持ち上がり、物議を醸している。 22日、光州南部警察署によると、21日午後7時4分ごろ、オ某さん(49)は光州南区のA病院前で呼吸困難のために倒れ、近くのB病院に運ばれたものの、結局死亡した。死亡したオさんは、タクシーの中で呼吸困難を起こし、タクシーの運転手が近くのA病院に応急処置を求めたものの、病院側に拒絶され、そのまま病院の前に5分間放置されていたとされている。 オさんは結局、通行人の通報により出動した119救助隊によりB病院に運ばれたが、結局死亡した。
オさんの遺族は「A病院が最小限の応急処置さえしていれば命は助かったはず。A病院の過失などに対し法的に対処する」という立場を明らかにしている。 A病院の関係者は「心肺蘇生(そせい)の装備がなく、タクシーの運転手に近くの大学病院に行くように言った。死亡したオさんが病院の中には入ってこなかったので、法的な責任はない」としている。
浙江テレビ局の記者は尿検査の時に事前に準備した緑茶とすり替え提出。
3月18,19日の2日間で10の病院を回ったところ
6つの病院でお茶の中から白血球と赤血球が検出され、
5つの病院で消炎薬を処方され薬代は1300元(約19,500円)になった。
医師47.9%が「海外移民を希望」
まあ、へえー、そうなんだあ、というしかない系のニュースなんだけどメモ用。
給料は、額面は日本と同じかやや少ないかな。
まあ、でも国の経済水準・購買価平均からすれば、やっぱり相対的に高給取りらしい。
勤務時間は明らかに恵まれていそうだ。あちらは労働争議がかなりシビアらしいし。
ちょっと、面白いのは、海外移民の話かな。
なんかその理由が日本人医師が、へき地勤務を嫌がるのと同じような理屈なのが。
やっぱりいまひとつ、マスコミの考察は甘いなあと思うのは、原因の分析。
結果が原因であるとしていることだ。
医者の観点からは原因は明らかだ。
日本人の医療に対する要求の無分別な要求増大だ。易しく言えば「わがまま」。
医療がユニバーサルサービスであるかのように考え、
救急もいつでも満足な医療サービスを受けられ、
そして、それがかなえられないと騒ぎ立てる。
シリーズ、いってみます。
従来の臨床研修制度では,研修医の7割が大学病院,3割が臨床研修病院で,多くは単一診療科によるストレート研修を行い,出身大学関連での研修が4割程度であった.2年間の臨床研修は努力規定であり研修内容や研修成果の評価が十分でないといった問題や,専門の診療科に偏った研修,研修医への処遇が不十分でアルバイトに追われ研修に専念できないといった問題が指摘され,平成16年度より新たな医師臨床研修制度が施行された.(略)
新制度の導入で専門研修前に幅広いプライマリーケアの研修が可能となり待遇も改善されたが,問題点として,全診療科において平成16~17年度の専門研修者が皆無となり,加えて研修医の大学離れと,都市集中が顕著になったことから,特に地方の大学関連病院での医師不足が急速に進行した.
新制度の1期生が研修終了する平成18年3月に厚生労働省が行った「臨床研修に関する調査」の最終報告〔2年次生3,809人(51.9%),1年次生4,315人(57.3%)が回答〕によると,研修体制への満足度は,臨床研修病院のほうが大学病院よりも高かった(図1-1).
研修体制に満足している理由としては,臨床研修病院では「職場の雰囲気がよい」,「経験が十分に積める」,「指導医が熱心」,「コメディカルとの連携がよい」,大学病院では「指導医が熱心」,「職場の雰囲気がよい」などが挙げられている(図1-2).
満足していない理由としては大学病院での「雑用が多い」「待遇が悪い」「経験が不十分」といった理由が目立つ(図
1-3).
研修プログラムヘの満足度も,臨床研修病院のほうが大学病院よりも高かった(図2-1).研修プログラムに満足している理由としては,臨床研修病院では「プライマリケア能力の修得」,「全人的医療を学ぶ」が挙げられているが,この2つは大学病院との差が目立ち,満足していない理由をみても同様であった(図2-2,2-3).
また,「複数科の研修が進路決定の参考になる」との理由も満足度を高めているようだが,専門研修に決めた診療科が初期研修前に希望していた診療科と変わったのは35.1%で,62.5%は変わらなかった.変えた理由としては「興味が沸いた」が7割で,「興味がそれた」,「大変だと思った」が計3割であった.
臨床研修後の進路選択としては,大学で研修した医師の72.7%が同じ大学,7.7%が別の大学,9.1%が臨床研修病院を選択し,臨床研修病院で研修した医師の43.8%が同じ病院,2!.6%が別の臨床研修病院,21.1%が大学を選択している(図3-1).進路を決定した理由としては,「専門医取得につながる」,「優れた指導者がいる」,「現在研修している」といった理由が高く,大学での研修医では出身大学であることも要因となっている(図3-2).
診療科を選ぶ理由としては,「学問的に興味がある」「やりがいがある」「その科の対象が好き」「いい指導医がいた」といった理由が高く,このアンケートをみる限りでは,収入や訴訟の問題よりも興味ややりがいのほうを高く評価してい
ることになる(図4-1).
診療科別に理由をみると,産掃人科は「やりがいがある」が全診療科で最も高かった(図4-2).専門診療科を産婦人科に選択したとの回答は専門科が決まっている3,298人
中163人(4.9%)で,単純にこの割合で進路が決定されていれば,全研修医7,344人中360人が産婦人科医になったことになり,新制度となる前と比較してむしろ増加したはずである.しかし,日産婦学会への入会状況の最終報告を待たないと正確には不明だが,実際にはかなりの人数が減少している可能性が高い.産婦人科を選択する研修医は真面目でアンケートに回答する率が非常に高いと考えて喜ぶべきであろうか…….
産婦人科医を増やす方略
1.卒前教育から一貫した卒後研修体制と研修
プログラムの充実
新制度となり,研修医の大学離れが進行しているのは事実であるが,62.5%が研修前に希望していた診療科を選択していること,専門診療科を選択した理由などから考えると,まず卒前教育においてしっかりと産婦人科の学問的魅力とやりがいを伝えることが非常に重要である.卒後臨床研修でも引き続いてこれを伝えるのはもちろんのこと,熱心な指導医が専門研修までつながる指導を行っていると研修医に感じさせることが大切であろう.各研修医の目標を明確にし,希望する経験を十分に積ませることも重要である.
2.指導医の意識改革
現代教育は「教育者中心から学習者中心へ」「疾患指向型から問題解決型へ」,望ましい診療のスタンスは「医師中心から患者中心へ」とパラダイムシフトしていることを意識した教育と診療が必要である.徒弟制度的教育で育った指導医にしてみれば,白らが研修医のころは指導医が中心で,自らが指導医の立場になったら研修医が中心とは……,と嘆く方もいるだろうが,過渡期には必ず献身的な努力を行う者が必要となる.「産婦人科を本気で専攻する者に対しては,そういった努力も厭わないが,産婦人科になる気もない者たちにエネルギーを割くような余裕はない」とか,「教えたい気はやまやまだが,忙しすぎてその暇がない」という気持ちも理解はできるが,3割の研修医は研修期問中に専門診療科の希望を変更し,しかも興味が沸いて変更する者のほうが多いので,すべての研修医に対して産掃人科の魅力を伝え続ける努力が重要なのである.
まずは研修医が楽しいと感じる教育,何でも気軽に聞いたり話ができる雰囲気を構築することを目指す.研修医が重用視する「職場の雰囲気」とは,指導医に何でも聞ける雰囲気,コメディカルや他科との連携がよく仕事しやすい雰囲気といった人間関係が主体のものを指しているようであり,指導医自身のコミュニケーション能力や管理能力によって大きく左右される可能性が高い.(略)
3.専門研修医師や中堅医師の重要性
熱心な指導医から研修医が大きな影響を受けることは明らかであるが,指導医が産婦人科の魅力を語ることに100%の信用は置いていない.まったくの嘘ではないにしろ,1人でも多くの産婦人科医を獲得するための方便とみている向きも少なからずはある.むしろ3年目以降の若い専門研修医師や中堅医師たちが,本当に楽しそうに仕事をしているかをみている.
したがってこの世代に対しても,指導医はしっかりと愛情を注ぎ続けることが重要で,釣った魚にはえさをやらない感性でいると,せっかく釣った魚に逃げられたうえに,まったく魚が釣れなくなる.愛情を注ぎ続けて育てると魚は活き活きと泳ぎ,そうした場所に次の魚も集まってくるのである(若手医師の皆さん,魚にたとえてすみません).(略)
4.産婦人科医の労働環境改善
過重労働に苦しむ産掃人科医の姿を直接研修医にさらけ出す結果,さらに志望者が減少する悪循環に陥っている可能性は否定できない.産婦人科医の過重労働からの解放,労働に見合った待遇改善,訴訟問題,女性医師復帰支援など,現在懸案となっている重大な問題の解決も,研修医が卒後臨床研修を通じて産婦人科に魅力を感じるかどう
かに多大な影響を与えることになる.国や地方白治体がようやく危機的な状況を理解してきたこの機会を逃さず,学会や医会を中心に産帰人科医自身の労働環境の改善をはかる努力を怠ってはならない.しかし,これが改善されない限り研修医の指導などできないという意識があれば研修医達にも伝わり,そういった科での専門研修に魅力を感じることはないであろう.
信州大学の卒後臨床研修センターは全診療科からの委員で構成され,毎月1回のセンター会議で各科の研修状況や問題点を病院全体で共有することで,よりよい研修体制を築く努力を行っている.また,各研修医に1人のセンター委員がチューターとなり,適宜面談して研修状況の確認や相談役に当たっている.病院全体として研修に魅力がなければ,初期研修医が少なくなり,直接産婦人科の魅力を伝える機会も減ってしまうので,病院全体で取り組む姿勢が重要であろう.
また,大学教育支援プログラムに申請した『地域医療等社会的二一ズに対応した質の高い医療人養成推進プログラム』が採択されたので産婦人科関連の一部を紹介する.卒前教育では「生命誕生の喜び」体験実習として,医学部1・2年生の希望者が,妊娠初期から分娩,産褥に至るまで,担当妊婦さんに寄り添い,産科診療の魅力を体験する.卒後臨床研修としては,研修コーディネーターを配置して密度の濃い研修を実現し,毎月の周産期カンファレンスを,県内の研修病院にインターネットを利用して配信する.産婦人科を希望する研修医に対し,国内外での学会出席,研究発表への支援を行う.
医療訴訟問題による産婦人科の敬遠を避けるため,医療問題に関する教育特任教授を配置し,医療トラブルの予防研修を行う.さらに,信州医療ワールド夏期セミナーと称して,全国の研修医と医学生を対象に信州での専門研修の説明会とICLSコースの同時開催や,ICLSコースと小
児,産科,麻酔医療研修を組み合わせたセミナーを企画し,産婦人科のすばらしさをアピールする,以上のような内容である.
おわりに
卒前教育一卒後臨床研修一専門研修一生涯研修が,
一貫して魅力あるものでなければ,産婦人科医の
増加に結実しない.卒後臨床研修から産婦人科医
を増やすためには,研修医へいかに産婦人科の魅
力とやりがいを伝えることができるかに尽きる.
文献
1)厚生労働科学研究費補助金研究「新医師臨床研修制
度の評価に関する調査研究」班.平成17年度「臨床
研修に関する調査」報告.2006.8.31
独立のエントリーとして紹介する事にしました..。*♡ ぽち→
ぜひぜひ、もともとのブログを読んでください!
>07年度からの5年間で国と地方を合わせ1.6兆円を削減する全体像が決まっている
という記載を見れば、医療崩壊などどこ吹く風で、ますます締め付けを強化してくることは間違いなかろう。
もはや、安倍総理にも経済財政諮問会議にも国民の苦しみは全く見えていないことは明らかだ。国民が元気に明るく生きていけない国が発展するなど、幻想なのに....。
経済財政諮問会議には、医療や教育にまで勝手な口出しをすることをやめさなければならない。前の議長、オリックスの宮内は、改革のための規制緩和と称して、規制緩和を自社の発展に徹底的に利用した。現議長のキャノン御手洗は、パート労働者の正規雇用問題で姑息な手を打とうと狙って非難を受けており、どうやらご立派な宮内後継者のようだ。
安倍首相が、また言いたい放題を言っております。本当に脱力であります。日本の医療が、高コストだって?一体どこが高コストなのですか?診察券をICカード化するって、とりあえずIC関連産業が儲けるだけではないですか?このお方、結局、現実を自分の目でみて考える力がないということのようです。
医療の崩壊により、一番痛みを感じさせられるのは、社会的な弱者です。政治家・官僚は、地域医療を破壊し、在宅医療を中心に据えるつもりです。地域に、家庭に、その受け皿はあるのでしょうか。
まずこの記事に取り上げられている要点は、
1.医療・介護分野は高コスト構造である。
2.高コスト構造是正計画は、二〇一一年度までの社会保障費の伸びを予想より一兆一千億円減らす。
3.内閣府が可能な範囲で数値目標を設定する。
4.柳沢厚労相は同じ病気に一定額の診療報酬を支払う「包括払い」の導入や、健康保険証のICカード化などコスト削減に向けた具体策を提示。
5.民間議員は、地方の公立病院が医師確保の目的で国立や民間病院より高く設定している人件費の削減を提案。
要点を読んでもらえればわかると思うのですが、経済在世諮問会議は医療・介護分野は問答無用で高コスト構造とまず定義しています。残念ながら議事録はありませんし、第5回会議の会議結果に公表されている資料を読んでも、既に大前提として医療・介護は高コスト構造であるとなっており、どういう根拠を持ってのものかは不明です。こういう時にはこの手の連中が大好きな国際比較が出てきそうなものですが、先週延々と噛み付いた医師の需給に関する検討会報告書と同様に、まず指標にすべきと考えられるOECD諸国との比較は完全に棚の上です。
安倍首相は平成19年3月16日に開かれた経済財政諮問会議で、社会保障分野のコスト削減策について「具体的な改革項目と数値目標を盛り込んでほしい」と、臨時議員として出席していた柳沢厚生労働相に指示したようだ。
現場の医師・看護師不足の現状の中で、現場を見ずに数値目標でさらに医療費を削減することが、どのような悪い影響を与えるのか安部総理は分かっていない。
安倍首相は16日、経済財政諮問会議で、社会保障分野のコスト削減策について「具体的な改革項目と数値目標を盛り込んでほしい」と、臨時議員として出席していた柳沢厚生労働相に指示した。
社会保障は昨年の「骨太の方針」で、07年度からの5年間で国と地方を合わせ1.6兆円を削減する全体像が決まっている。だが、厚労省は診療報酬や薬価の見直しなど個々の政策について、削減金額を盛り込んだ具体案作りには慎重だった。
これに対し、諮問会議の民間議員らは数値目標が伴わないと削減の実効性に欠けるなどと主張。柳沢厚労相も16日の会議で「諮問会議として参考試算として出したらどうか」などと容認する考えを示した。この日の会議で大田経済財政相も試算に必要なデータを厚労省が提供するよう求めた。
安部晋三首相は十六日の経済財政諮問会議で、医療・介護分野の「高コスト構造是正計画」の策定にあたり、コスト削減額など数値目標を設定するよう指示した。柳沢伯夫厚生労働相は幅広い項目での目標設定に難色を示したが、結局、内閣府と厚労省が協議して目標設定することになった。
高コスト構造是正計画は、二〇一一年度までの社会保障費の伸びを予想より一兆一千億円減らすとした政府目標の実現に向けた具体策。今夏までに政府が策定する「骨太の方針」に盛り込む。
安部首相は会議で「医療分野の高コスト構造是正は非常に大事。数値目標や項目を使ったプログラムを作ってほしい」と指示。柳沢厚労相は「実行する立場で目標設定は設定しづらい」と述べたため、内閣府が可能な範囲で数値目標を設定することに落ち着いた。
このほか柳沢厚労相は同じ病気に一定額の診療報酬を支払う「包括払い」の導入や、健康保険証のICカード化などコスト削減に向けた具体策を提示。民間議員は、地方の公立病院が医師確保の目的で国立や民間病院より高く設定している人件費の削減を提案した。
シリーズ、いってみます。なかなか厳しい状況です。
はじめに(略)
平成14~16年にわたって実施された厚生労働科学研究『小児科産科若手医師の確保・育成に関する研究』のなかで、横浜市立大学附属病院ならびに教育指導病院における卒後3年から15年目の医師を対象とした常勤医師の勤務実態を調べたところ、当直を含む病院での勤務時間(以下、病院勤務時間)は、1人1週間当たり73.3±17.3時間であった。(図1)
これは月間労働時間に換算して314時間となり。1ヶ月当たり140時間以上の所定労働時間外の労働が日常化していることを意味しており。長時間労働が常態化している現状が明らかになった。
さらに、病院勤務時間の内訳を検討したところ、患者に対して診療を行う時間(以下、直接診療時間)は1人1週間当たり51.5±13.6時間であり、病院勤務時間の70.3%を占めた(図2)。
これを月間労働時間に換算すると221時間である。直接診療時間のみで1ヶ月当たり約50時間以上の時間外労働を行い、そのうえ、さらに超過した時間で実習指導・自己研鑽・研究・会議出席、などの諸活動を行っていることになる。したがって、とりわけ急増している育児、家事を担う女性医師達にとってはきわめて大きな負担となる実態が存在する。(※2)
『当直』という名の終夜勤務
一方。当直業務については。週当たりの平均『当直』勤務時間は27.7±11.5時間であった。このうち実際に診療行為をしている時間は23.7±10.9時間であり、当直勤務時間の約86%が直接診療時間に費やされていた(図3)。
これは、産婦人科の『当直』が実質的には終夜連続勤務であり、仮眠時間は2~3時間、またはほとんどない状態であり、最近は特に未受診(非合法滞在外国人含)者の飛び込み分娩、常時満床ゆえに連日の救急要請に対する受け入れ先の捜索、斡旋(数時間に及ぶ関東一円の各医療機関への要請依頼)などが拍車をかけている。
また多くの施設では、『当直』の翌日は休日・祝日でないかぎりは通常勤務である。すなわち、『当直』明けを休みにできるほどの人員的余裕がなく、診療規模も過負担であることがその最大の理由である。さらに、この『当直』明けのまま勤務に入った日(当直の翌日)の平均離院時刻は19時32分であった。すなわち、ほぼ不眠不休の『当直』業務の翌朝からは、「ふらふら」になりながら通常の外来、さらにはがんの根治手術などをこなして、そのまま夜まで勤務しているのが実態である(※4)。これらの深刻な状況に理解を示す病院設置者のなかには。本給よりも多い勤務手当、分娩手当を付与するケースも出てきている。
宿日直・当直勤務とは
本来、『宿日直』勤務とは、『所定、引き労働時間外または休日における勤務の一態様であり、当該労働者にとって本来業務は処理せず、構内巡視、文書・電話の収受または非常事態に備えて待機するものなどであって常態としてほとんど労働する必要のない勤務』であり、医療者にとっては『原則として診療行為を行わない休日および夜間勤務』を指している(※3)。この定義からすれば、産婦人科医の勤務実態はまさに終夜勤務であり、決して当直などではない。
法的コンプライアンスが各業界でこれだけ騒がれ、マスメディアからも、法違反が大きく報道されるなか、なぜか産婦人科医(医師全般においても)の違法(を強いられる)労働従事ぶりはほとんど報じられない。それよりもむしろこの異常すぎる勤務環境から『病院引き上げ』をすれば、厳し糾弾を受けるのが現状である。医師で労基法に即した労働条件が守られているのは初期研修医のみであり、皮肉なことに、初期研修医が厳重に護られる分、上司の医師へのしわ寄せと負担がかかる結果となる。まことに珍妙な労働実態がそこには存在する。
厳しい勤務環境のなかで身を削る医師たち
表1は一般労働者に適応される労基法の条項であるが、これに比べると、通年で緊急対応をしている地域中核病院で部長以下2名までが指導医で、ほかが専門医取得間もないトレーニング中の医師と専門医取得前の実地研修中の医師5名で支えている病院では、勤務時間を積算すると頻繁なセカンドコールでの就労を含めて、その勤務時間は月369.6時間に及び、『当直』ではない終夜労働を入れると実に労基法を超えた所定労働時間外勤務は164.6時間という無法地帯である(※4)。同様になおいっそう過酷な地方の常勤3名で支えている多忙極まりない地域中核病院となると、月の勤務時間は合計月471.6時間となり、労基法基準を超えた違法労働時間は実に266.6時間に及ぶことになる。
長時間労働は、労働衛生上の問題のみならず、医療安全上の問題とも関連する。すでに夜間勤務において眠気が発生しやすい時刻、勤務開始時刻と覚醒状態・作業能力との関係、仮眠の効果などついては多くの報告がある。今回の調査期間中には幸いにして医療事故の発生はなかったが、細かいインシデントとの関係の検討は急かれる課題である。
厳しい労働条件で支えられる日本の医療水準
先進国のなかでもきわめて低い医療コストで世界1低い新生児死亡率、長寿トップを築き遂げたのは、家族をも巻き込み自己犠牲をいとわぬ医療者がいたからにほかならない。近年、この低コストはさらに緊縮され、一方で国民の医療に対するクオリティの要求度。医療万能の思い込みは増大する一方である。低コストかつ限られた人的資源ではできないものはできない。あたかも、全国均一のカプセルホテルの料金で高級ホテルのサービスが当然のように求められているのが医療の現場である。
この理不尽さに対しては、今の若い医師たちをみる限り科及的避けて通る傾向が著名であり、この改善を進めない限り、産科医療への若い人材が集まってくることはないであろう。
産科勤務へ深刻な影響を及ぼす刑事案件、医療訴訟
近年は、ハイリスク妊娠は中核病院へ集中し、熱心に産科救急に取り組む医師ほど現在の産科学では避け得ない不幸な結果に接することになる。人員不足のなか、誠実に不眠不休でふらふらになって努力しても医事紛争として対応せざるを得なくなったり、不幸な結果に直面して“医師逮捕”の言葉さえ思い浮かべなくてはならない医師が急増している。結果はこのような労働環境からの離脱である。離脱する医師の補充ができる間はまだ“悪循環”でとどまるが、もはや今の産婦人科医にはこの悪循環にとどめることのできる代替医師すらいない。これらの医師が燃え尽きて次々と離脱していくなか、緊急対応に耐える人的資源の集約化、無過失賠償制度など、医事紛争などへの適正な対応制度の制定は緊急の課題である。
おわりに(略)
(※1)平原史樹他 産科医師の勤務環境に関する研究
厚生労働科学研究平成16年度「小児科産科若手医師の確保・
育成に関する研究」報告書 pp353-356.2005
(※2)奥田美加 衆議院厚生労働委員会議事録(参考人発言)
2006年4月25日官報第1類7号 厚生労働委員会会議録17号2006衆議院事務局
(※3)平成14年3月19日都道府県労働局長宛通達:医療機関における休日及び夜間勤務の適正化について、2002
(※4)平原史樹:産科医不足の現状とその解決にむけて―シンポジウム“お産ができるところが急激に減っている”報告集。日本産科婦人科学会神奈川地方部会誌43:29-36、2006
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