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(投稿:by 僻地の産科医)
妊娠中の放射線被爆についてちょっと話題に上がってたので(>▽<)!
っていうか、この文献読みにくい。。。
日本の日常生活で、被爆といえば基本的には医療被曝。
一番、多いのが妊娠に気がついていないくらいでのX線検査ですね。
腹部レントゲンの2-3枚なら、
本当のところ、あまり影響はありません。
もちろん、先天奇形っていうのは、どんな人にも起こりえますし、あとから「あの検査のせいかな」とか思うのイヤだから、妊娠の可能性がある人は気をつけていただくほうがいいでしょうけれど。
CTでも骨盤部でなければよっぽどOKです。
骨盤部でも、慎重なお話はしますけれど、よっぽど大丈夫ですo(^-^)o..。*♡
この文献読んでも一般の方にはわかんないとおもいます。
医師でも寝ちゃうかも。。。ぐ~(-_-)。。。zzZ
ま、表だけでも見て眺めるくらいかな。。。
放射線被曝と先天異常 東北大学医学部保健学科教授 高林俊文 障害の主なものは以下の3つです。 問 先天異常とは何ですか
問 被曝線量、またそのしきい値とは何ですか 問 妊娠時期と発生する先天異常としきい値の関係はどうなっていますか 1.流産(胎芽・胎児死亡) 2.奇形(外表・内臓奇形) 3.発育遅延 4.精神遅延 5.悪性新生物 6.遺伝的影響 問 女性の職業被曝についてはどれくらいまで許されるのでしょうか 問 放射線治療後あるいは高線量被曝後の妊娠はどれくらい期間をあければよいでしょうか 問 妊娠中または妊娠と知らずに放射線被曝したときの対応はどうすればよいのでしょうか
(平成16年2月1日 日本産婦人科医会報 p10-11)
問 妊娠中に放射線被曝すると胎児にどのような悪影響があるのですか
答 胎児の発育に対する障害が考えられています。このような障害は被爆線量と被曝時期の発育段階により左右されます。線量率も大切な要因で、胚に対する障害は線量を下げることにより有意に減少します。
1.致死作用:胚が子宮壁に着床する前後から母体内発育期を通じ、また線量が多くなれば死亡は出生前にも後(新生児死亡)にも起こります。
2.奇形:身体の主な諸器官が形成される器官形成期、とくに各器官で細胞増殖が最も盛んな時期での被曝に特徴的に出現します。
3.発育遅延:奇形を伴わず、母体内発育の全期間を通じ起こり得ます。妊娠後期にとくに見られます。
答 障害の原因が胎内またはそれ以前に求められるものとされています。放射線照射を受けずともすべての動物で自然にも発生し、とくに発生頻度はそれを検査する時期により大きく変わります。新生児期に診断される先天奇形は、心・腎・脊椎などを含めると5%以上ですが、大きな子供ではその2倍近くになります。
答 被爆線量の単位はGy(グレイ)を用います。妊婦がX線検査を受けた際の胎児被曝線量を表1に示しました。単純撮影では胸部X線検査での胎児被曝線量は0.01mGy以下で、腰椎、骨盤部ではそれぞれ1.7、1.1mGyです。 CTでは骨盤部が線量が最も多く25mGyです。なお、最大線量も参考のため()内に示しています。一般に妊婦の腹部表面の約半分が胎児の被曝総量と考えてよく、照射部位が子宮から遠いほど胎児被爆線量は急激に減少します。しきい値とはそれ以上の線量で障害を発生させる値を言います。同じことですが、この値未満ではどの時期でも異常は起こりません。
答 妊娠中の被爆した時期により先天異常の種類が異なり、表2に示したようになります。
着床前期での被曝に最も多く、この時期では発育遅延あるいは奇形は発生しません。動物によると胚のLD50(50%が死亡する線量)は着床前期初期での被曝が最も低く、この特期に胚が死亡すると吸収されますが、胚が生存すると正常に発育、成長します。また器官形成期では、障害の程度により子宮内死亡あるいは新生児死亡となります。この時期を過ぎるとLD50は次第に高くなり胎児の終わりには成人のものに近づきます。しきい値は100mGy以上です。
胎児が器官形成期に被爆したときに最も多く出現します。動物実験で見られるものと異なり、ヒトでは中枢神経系の異常以外は非常に稀です。これは胎内被曝した日本人生存者にも言えることで、小頭症が多く、医療用放射線で治療を受けた患者でも同様に報告されています。受精8週以前の被爆では脳内の細胞が殺傷されますが、その後細胞移動により修復され、精神遅滞は伴いません,しかし小頭症は発生します。そのしきい値は100~200mGyです。
受精2週での被爆から胎児期で認められ、動物では胎児期の照射により種々の障害が造血系、肝および腎にも起こります。生殖線発育に対しても形態的、機能的障害が証明されています。不妊を来すには1,000mGy以上の線量が必要です。
受精8~15週での被曝で最も発現し、15週でも起こります。これは脳内の機能部位でのある程度以下の細胞の死と移動障害によると考えられています。危険率の最も高いのは脳皮質が形成される時期です。しきい値は120mGyとされ、100mGy以下ではIQの低下は臨床的には認められていません。国際放射線防護委員会(ICRP、1991)では8~15週で1,000mGyを被曝するとIQが30ポイント下がり、重篤な精神遅滞は40%発生するとしてます。15~25週になると発生率は約4分の1に下がります。
器官形成期から胎児期全般の期間で起こりそのしきい値は50mGy以上であり、白血病、甲状腺癌、乳癌、肺癌、骨腫瘍、皮膚癌などが主なものです。Oxford調査によれば15歳までの癌、主として白血病の危険率と胎内での診断的X線被爆との間に関係があるとされています。双胎の研究では一卵性・二卵性双胎ともに白血病および小児癌が非被曝児に比べ明らかに多く発生しており、これらは診断目的というより双胎であるためにX線診断を受けていることが原因と考えられています。低線量を胎内で被曝したときに生後10~15年の癌罹患率は1.5~2倍になると推定されています。胎内被曝をした日本人生存者は、その後40年以上経て成人癌が多々発生しています。これらの結果から胚および胎児は放射線発癌に感受性が高いと考えられています。
高線量照射による遺伝的影響は動物実験では認められますが、ヒトの疫学調査では統計上有意差が認められていません。放射線による障害は突然変異の発生率を増加させ、遺伝子の突然変異や染色体の異常を引き起こすと考えられています。ヒトの倍加線量(自然突然変異の発生率を倍にするのに要する線型)は自然発生率に等しい突然変異を引き起こすに必要な線量と言えます。マウスでの実験結果からヒトの倍加線量は1,000mGyと推測されています。ヒトの放射線誘発遺伝障害はマウスより感受性が低く、しきい値は原子力放射線影響に関する国際科学委員会(UNCER、2000)では1,000~1,500mGyと推測しています。
答 全妊娠期間を通じ、母親の職業被曝による胎児の最大許容線量は5 mSV (シーベルト、また月間被曝量では0.5mSVを超えてはならないと国立評議会(NCRP)の勧告があります。なお、SVは母体の発癌の危険率を主眼においた値(推定値)です。胎児がとくに放射線に感受性が良いことから先天異常の発生、とくに白血病危険率が高いことに基づくものであります。妊娠が確定した場含、放射線従事者の業務上の被爆線量は、この値を超えないことが大切です。
答 放射線事故のように大線量を急性被曝したときには、妊娠するのを遅らせることにより有害な影響は大部分避けることができます。男性では精祖細胞は一次精母細胞、二次精母細胞、精子細胞そして最後に精子となります。ヒトだとその期間は約10週です。この精子の成育期間から男性ではその期間は2ヵ月で十分であると考えられています。一方、女性では全く不明で男性より長いとされています。成熟生殖細胞の産生が男性とは異なる時間経過をとることによります。卵祖細胞は胎生期に一次卵母細胞へと進み、休止期に入り細胞分裂がみられなくなります。男性、女性とも安全を期して被曝後から妊娠までは長めの期間か勧められるべきで、遺伝的影響による異常という障害を少なくするためにも放射線被曝後少なくとも6ヵ月は妊娠を遅らせた方が賢明です。
答 これまで述べてきたことを基本として
①妊娠週数の確認
②胎児被曝線量の正確な推定
③先天異常発生危険率の算出
④先天異常の自然発生率との比較
なとから医学的危険率を算定し妊婦および夫を含め家族に説明し理解していただくことが大切です。その他に
⑤妊婦における妊娠継続の害
⑥今後の妊娠の可能性
⑦未来の両親がまだ生まれていない児をどれくらい望むか
⑧障害の可能性に対する知識水準
⑨宗族の人種的および宗数的背景など、社会的、個人的要因や条件なども判断材料として大切で、①~⑨それぞれについて検討の後で総合的に判断し慎重かつ柔軟な対応が必要です。一般に胎児をあきらめるかどうかの線量は、感受性の高い妊娠2~25週で100mGy以上とする場合が多いようです。
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