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(投稿:by 僻地の産科医)
第34回 日本産婦人科医会学術集会に参加してきましたo(^-^)o!!!
7日の演題はかなり硬派な社会派演題が続きました。
(こちらを参照にしてくださいませ→ 医療事故の削減に向けて-基本に忠実な診療を-)
というわけで、県立大野病院事件のその後!
大野病院は福島医大のジッツでした。その教授から。その後!です。
県立大野病院事件のその後
産婦人科医逮捕事件について
福島県立医科大学 産婦人科 佐藤章教授
(第34回日本産婦人科医会学術集会 抄録集p47-48)
まず公演に先立ちまして、物心両面からK医師へ全国のみなさまがたから多くのご支援をいたさきましたこと、たいへんありがとうございました。この場を借りて、心から感謝の念を伝えたいとおもっております。ありがとうございました。
さて、事件の概要です。
みなさまご存知だとは思いますが、今回は36週の全前置胎盤の方に対して帝王切開を行いましたが、癒着胎盤がありました。
こちらが手術中の経過です。
胎盤娩出までに約5000mlの出血があったとされていますが、この数字は誰も証言できる人がいません。
胎盤をはがして、止血をして。概要の方にありますとおり、この夫婦は子宮の温存を望まれていました。
硬膜外麻酔
↓
全身麻酔に切り替え
↓
用意してあったMAP5IUを輸血。
↓
さらに10IU輸血追加オーダー後、もう10IU追加オーダー
↓
輸血到着後、子宮摘出にとりかかりまして
子宮摘出を無事終え、もう大丈夫、止血できた。腹壁縫合時に心停止が起こったものです。
こちらが事件後の逮捕から起訴までの概要です。
平成18年2月18日、家宅捜索があることは知らされていたようです。で自宅待機しているように言われたので、自宅待機していたのですが、そのまま警察署で取調べがあるからといわれ、そもまま車に乗せられました。この時点では逮捕されるなんてことは知らされていませんでした。
そして取調室で、突然逮捕された、というわけです。
この頃は私たちもまだ不勉強で、そんなになると思っていませんでした。みなさまに一言、本当に大切なことなんですが、申し上げるとしたら、
『あなたには黙秘権がありますよ』といわれたら、その時点で弁護士を呼んでください。
よくわからないんですが、この『黙秘権がありますよ』は逮捕しますよってことらしいです。というか逮捕される人にしか言わないみたいです。
一般人を含めて、私たちはそんなことまったく知らなかった。
いま考えれば、その時に弁護士を呼ぶべきでした。
逃亡の恐れがあるから、という逮捕の理由にはまったく同意できませんし、その日だって彼は回診に朝いってきた所で、『取調べがあるから~その間の留守番、お願いします』って大学に電話をかけてきたくらいの気楽さで。
こちらもよくわかんないから『はいはい、代務の先生にいってもらいますね』みたいな話だったのに。あんまりにも酷い話なんですけれど。
これが逮捕後の話です。
逮捕から72時間以内に、拘留請求っていうのがされないと、拘留はできないそうです。その辺は淡々と行われて。その後ってのは10日しか自動的には拘留できません。そこで、2月26日に拘留延長の申請が行われました。
この拘留延長だって、正当な理由がないとダメなんですね。その理由は開示されねばなりません。で、3月6日にいわき簡易裁判所で拘留延長の理由が開示されるっていうので、この時私は初めてK医師に会いました。腰縄つけられて、手錠はめられて。まるで犯罪人の扱いです。かわいそうでした。
それで、手順としては検察から、『これこれの理由で拘留を延長していいですか?』と裁判官に尋ねる形式なのかと思っていたんですが、そうじゃないんです。
裁判官がまず、拘留延長理由をいう。
『これでいいですね?』ってまず検察に訊くんです。
『弁護士は意見ありませんね?』みたいな感じで。
あっという間に何も反論できないうちに終わってしまいました。呆気にとられた瞬間でした。裁判官と検察はグルだ、とその時に気がつきました。あの人たちグルですから(笑)。みなさん、本当に気をつけてください。だからこそ、最初に『黙秘権』といわれた時に弁護士を呼んでやらんといけなかった。後悔しています。
もうほとんど、ただの申渡しなんです。
保釈許可の条件がこちらです。
困ったのは、3番の『福島県立大野病院関係者とは連絡してはいけない』項目です。私自身が関係者なのかどうかよくわからない。なんとかしてやらんといかん、とにかく連絡取りたい、だけど『お前は関係者だ』ともし検察に言われてしまったら、もうそれでおしまいなんです。また拘留生活に彼が戻ってしまいます。だから誰と連絡を取れるのか、結局、彼のために周囲は何も連絡をつけることができませんでした。
起訴状と起訴理由です。
医師法違反のほうは、病院マニュアルでは病院長が届出をすることになっていたんですけれど、法律上では検案した医師が届出をすることになっていました。だからここが争点になっています。
大野病院事件の裁判経過です。
第1回公判 1月26日 冒頭陳述
第2回公判 2月23日 検事側証人 近隣の産婦人科医 前立ちの外科医
第3回公判 3月16日 手術室にいた助産師と麻酔科医
第4回公判 4月27日 手術室にいた看護師 院長
第5回公判 5月25日 子宮の病理鑑定をした医師
第6回公判 7月20日 事件の鑑定をした医師
第7回公判 8月31日 加藤医師本人に対する尋問
第8回公判 9月28日 中山雅弘先生(胎盤病理の専門家)
第9回公判 10月26日 岡村州博東北大教授(産婦人科)
第10回公判11月30日 池ノ上克宮崎大教授(産婦人科)
第11回公判12月21日 樋口範雄東大教授(法学政治学)
これで中山先生のところまでやっと終わりました。
この前も3時間程度という約束でしたのに、延々6時間かかりました。検察って言うのは嫌がらせみたいなもんで、私たちが提出した証拠、たとえば『胎盤剥離にはクーパーを用いるべき』というような一文の掲載されている文献を証拠提出したとします。
ところがこれを認めてくれない。認めてくれないと、裁判官の目には届きません。
それでは裁判がすすまないから、再度『証拠採用してくれ』と粘ります。で、『胎盤剥離にはクーパーを用いる』ところだけが黒塗りの戦前の教科書みたいにして裁判官に提出されることになります。それでは何の意味もない!
それで延々、証人として教授陣に出廷してもらっているわけです。
でも何も医学的には知らない検察の人に、証人はまるで手取り足取り、講義というかレクチャーしているみたいにどうしてもなってしまいます。たぶん、検察には面子丸つぶれなんでしょうが、もうほとんどイチャモンつけみたいに子どもみたいに何回もおんなじ質問を繰り返します。
池ノ上教授は今日、ご出席されていますね。申し訳ありませんけれど、本当に何時間も何時間も拘束されて不愉快な気分になることを覚悟の上でお越しください。ご迷惑おかけします(笑)。
この前の病理鑑定なんてひどくって、この胎盤の癒着程度だって争点なんですが、検察側の証人はひどいんですよ。同じ切片からではなくって、一番厚いところの子宮の厚さと比較して1/2の浸潤なんていってるんですが、もうみなさん産科医だから重々ご承知でしょうけど、子宮の収縮を考えていない!特に頸管近くは薄っぺらくなってますよね?だから同じ切片上で探さなきゃナンセンス極まりない!!!なのに一番分厚いところの子宮壁と比べられたって、仕方がないってことさえわかっていない。
でも裁判ってそんなくだらないものなんです。
これが胎盤の絵を僕が描いたものです。
みなさん専門家だから、僕は写真をプレゼンしたかったんです。でもダメだっていわれました。弁護士に。一応患者さんのプライバシーになるからって。原告のモノなのだそうです。
分葉胎盤が前壁にペロッとかかっていて、癒着部分はこの欠損部だけです。でも前壁に癒着があると未だに検察は主張しています。
今回の事件は、医師にとってはもちろんのこと、
国民にとっても大きな事件でした。
報道の方々にはこの事件、およびそれによってもたらされた周産期医療の混乱についてもっと訴えてほしいし、我々はもっとアピールしていかねばなりません。
最後にお願いです。
私たちの抗議の声をもっとよく裁判官に知ってもらうために、下記の住所に郵送なりなんなり、各学会、個人でもかまいません。抗議文を送ってくださると嬉しいです。ひとつひとつの声が大事です。
よろしくお願いいたします。
〒960-8512
福島市花園町5-45 福島地方裁判所 刑事部殿
抗議文送りましょう!ぜひ。どうして患者さんを救おうとした医師を拘留して、産科医療を崩壊させるのか?これは日本の検察の暴走です!
投稿情報: skyteam | 2007年10 月10日 (水) 00:07
ひどい話です。裁判ってこわいですね。
抗議文送ります。
投稿情報: 一般人です。 | 2007年10 月10日 (水) 00:46
×拘留
○勾留
両者は意味が違う言葉です。
------
> 『あなたには黙秘権がありますよ』といわれたら、その時点で弁護士を呼んでください
それでは遅いと思います。
警察から呼び出しが来て、参考人ならよいですが、被疑者の立場で呼ばれたのなら、
出頭 前に 弁護士に相談し、出頭要請に応じるかどうかも含めて検討してください。
本件では、「家宅捜索の予告」を受けたことで、被疑者とされていることは明白でした。もし仮に、その時点で弁護士に相談したとしても、正直、逮捕まで予測できなかったかもしれませんが、取り調べにどう対処するかのアドバイスは役に立つはずです。
投稿情報: YUNYUN(弁護士) | 2007年10 月10日 (水) 02:43
YUNYUN先生(>▽<)!!!!
ありがとうございます。
てっきり漢字が間違っているのかと思っていました。直さなきゃ。
早めに弁護士呼ばせていただきます~。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2007年10 月10日 (水) 07:08
ミャンマー、北朝鮮の人権侵害は確かに酷い。
日本に於いても同様な人権侵害がある。
それは当に、大野病院加藤先生の不当逮捕、不当起訴事件のことだ。
こんな酷い仕打ちをする犬札に医療に介入させてはならない。医療行為に関して刑事責任免責を要求する。これがなければ、全国の産科医の先生は一斉に産科医療から撤退して下さい。政治家は産科医療が焼け野原にならない限り絶対に動きません。仕方ありません。
投稿情報: 1医師 | 2007年10 月10日 (水) 13:01
真実よりも検察の面子の方が大事なのかと言いたくなります。
こんな不当な裁判の挙句、有罪ということになったら、
産婦人科医を続ける気力がなくなりそうです。。。
投稿情報: y-gami | 2007年10 月10日 (水) 20:09
佐藤教授は刑事手続きについてはあまりご存じないようで、誤解がありますので、
こちらの解説をご参照ください。
◆元検弁護士のつぶやき
福島県立大野病院産科医療過誤事件
No.131 psq法曹 さんのコメント
http://www.yabelab.net/blog/2006/10/13-230902.php#c88751
黙秘権は身柄拘束の有無とは関係なく、被疑者として取り調べをされる場合は、必ず告知されます。「黙秘権」という言葉は使わずに、「言いたくないことは言わなくていいです」というような説明をされるかもしれません。
投稿情報: YUNYUN | 2007年10 月11日 (木) 00:29
初めまして。
突然お邪魔させていただきます。
しがない保育士をしている者です。
今回、初めての妊娠&出産で、持病(喘息)があるので、総合病院の産婦人科と呼吸器科でお世話になっております。
現在、マイコプラズマに感染し、職場を休んでいます。
「ジーン・ワルツ」という映画の公開で(まだ見ていませんが)、大野病院のことを知り、こちらのサイトにお邪魔させていただきました。
医療のことは全く分かりませんが、医療現場で働く方たちの苦労が伝わってきました。
そして、ニュースなどでは知っているつもりでしたが、産科医が年々減り続けている現状を目の当たりにしました。
私は今、28週ですが、喘息とマイコプラズマ以外何の問題もなく順調に育ってきていて、ありがたく思います。
職場では初めての出産を迎えるので、「体を大切に」「重いもの持たないように」と気を使ってくださいます。が、現実、なかなかそうはいかず、無理をして、夕方には必ずお腹が張りました。
でも、何事もなくここまでこれて良かったです。
恵まれた状態での妊娠ですので、妊娠に伴う病気等は「どうしてそうなるんだろう?過去に何かあったのかしら」と無神経な感情しか起こりませんでした。
医療現場では、細部に渉るまで注意を払って患者と向き合っているんですね。
私たちは命を扱われることに当然のように、主張をして、何か問題があると今までの医療行為を無にして抗議してきます。
命にかかわることなら、当事者になれば感情的になる気持ちも分かりますが、ひとつひとつを見直せたらと思います。
投稿情報: ミヤ | 2011年2 月 6日 (日) 09:06