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産科崩壊特集!(投稿:by 僻地の産科医)
ななしさま、情報ありがとうございましたo(^-^)o..。*♡
今週の読売ウィークリー ――第3弾!!―― 記者さんの大屋敷さまは先月の第8回の大野事件の傍聴にいっていらっしゃったそうです。お隣に座っていたという記者さんは、集材に来てくださったお友達の記者さんだっ(>▽<)!!! 大屋敷英樹 過酷勤務になんとか持ちこたえている産婦人科医たちの緊張の糸がプツンと切れ、お産現場を去るきっかけとなるのが、しばしば「訴訟リスク」だといわれる。その象徴が「大野病院事件」だ。福島県大熊町の県立大野病院で2004年12月、帝王切開手術を受けた産婦(当時29歳)が出血多量で死亡。福島県警は昨年2月、執刀した産婦人科医を業務上過失致死と医師法(異状死の届け出義務)違反で逮捕した。医療事故で担当医が刑事訴追されるという極めて異例の展開をたどっている。 記者は、一連の産科取材で30人以上の医師に会った。その一人は、 捜査当局と医療界の対決 医師たちは逮捕に猛反発 なぜ、このような事態に至ったのか。幡研一福島県産婦人科医会長は、県が05年にまとめた医療事故調査委員会報告書を問題視する。報告書は事故要因について、「癒着胎盤の無理な剥離≒輸血対応の遅れ」など3項目を挙げている。幡会長は、 「産科やめたい症候群」 問題は刑事責任だけではない。医療事故で、患者側が巨額の民事訴訟を起こすケースが増えている。最高裁によると、04年の医療訴訟1110件のうち、産婦人科医を相手取った訴訟は151件(13・6%)。賠償請求も1億円を超すものが多くなり、高額化の傾向にある。産婦人科医師1000人当たりに換算すると12・4件に上り、全診療科平均の3・3倍。産婦人科医が一生のうちに訴えられる確率は3~4割といわれる。訴訟に至らない医療トラブルは、この10倍はあるといわれている。 「安全神話」で苦しむ 医療版「事故調」設置ヘ 制度に一定の限界も 信頼回復のシステムを
発売日・10月29日(月) 2007年11月11日号
http://info.yomiuri.co.jp/mag/yw/
産院「空白」マップ 東京、千葉、栃木
★全国産科医激怒の福島・法廷ルポ
彼女らしいです(笑)。 では、どうぞ..。*♡
訴訟、逮捕が広げる産科砂漠
(読売ウイークリー 2007年11月11日号 p90-94)
止まらぬ産科崩壊ドミノ。前回(10月14日号)は、激務とストレスでお産の現場を去る医師たちを追った。「立ち去り」に拍車をかけているのが巨額の賠償金を要求される医療事故訴訟だ。最悪の場合は刑事責任を問われて逮捕――。医師たちは戦々恐々としている。
「全力を尽くして処置した揚げ句、犯罪者扱いされるのですか」 とぶちまけた。ほぼ全員から反発と憤懣の声を聞いた。いったい、どんな事件なのか。公判を傍聴しに行った。
9月28日、福島地裁1号法廷。傍聴希望者の倍率は3倍強だったが、幸いにも傍聴席に着くことができた。向かって左手に検事、副検事らが9人、右手の被告側には、日本産科婦人科学会の平岩敬一顧問弁護士ら8人がズラリ居並んでいる。
「うわっ、すごい数ね」
東京から傍聴に訪れた別の記者が驚きの声を漏らした。検察、弁護側とも公判資料を机に山積みし、緊張感がみなぎっている。まさしく、捜査当局と医療界の「全面対決」(地元記者)だ。
被告の男性医師(40)はダークスーツ姿で出廷。硬い表情で一礼して着席すると、その後は身じろぎもせずに証人尋問に聞き入った。
今年1月に始まった公判はこの日で8回目。弁護側の要請で死亡した女性の胎盤と子宮を病理鑑定した専門医が証人に立ち、争点の一つである胎盤癒着の程度について、写真や液晶画面を使った細かい尋問が延々10時間近くに及んだ。要は、医師の処置にミスがあったのか、それとも不可抗力だったのかを争っているわけだが、こうした医療裁判で過失の有無を判断するのは非常に難しいとされている。裁判迅速化を図る「公判前整理手続き」も経たのに、判決は来年夏ごろまでかかる長期戦になりそうだという。
ある地元関係者が指摘する。
「あまりに専門的過ぎて特異な裁判。医療の素人である検察官、弁護士が攻防を繰り広げ、医学的知識が豊富だとは思えない裁判官が裁くのが本当に適切なのか疑問です」
記者も実際、弁護士の一人が公判中、
「私たちは正直言って『病理』はまったくわからない」
と話すのをこの耳で聞いた。傍聴していた佐藤章・福島県立医科人教授は、検察側に関し、
「尋問は執拗でしたが、医学的知識が足りないため、意味不明な質問もありました」
と印象を語る。
被告の医師は佐藤教授の教え子だ。事件を機に「周産期医療の崩壊をくい止める会」代表となり、署名や募金を集める支援活動をしている。
「医師に仮にミスがあったとしても、正当な医療行為に業務上過失致死罪を適用するのは、先進国で日本だけではないかと思います。今後のためにも、無罪を勝ち取りたい」
と語気を強めた。
この事件に対する日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会の声明は、「極めて対応が困難な事例。産婦人科医不足という医療体制の問題に根ざしており、医師個人の責任を追及するのはそぐわない」とし、医師のミスの有無以前に逮捕自体を問題視している。町田利正・東京産婦人科医会長は言う。
「母子はへその緒一本でつながれているだけです。どんなに検査技術が発達しても、すべてを把握するのは無理。一定の確率で予測不能の事態が突然起こるのがお産というものです」
「県は、早めにミスを認めて遺族との和解で事態を収拾しようというもくろみだったようですが、この対応はまずく、(医師逮捕という)悪い方向を導きました」
と批判する。報告書の中身は実質3つ程度。県の取るべき再発防止策についても簡単に触れているだけ。
全国の産婦人科医にとって、この事件は「明日は我が身」。それだけに衝撃は大きく、医師たちの間で「産科やめたい症候群」という新語さえ出てきた。実際、神奈川県産科婦人科医会の調査によると、大野病院事件を機に県内の1施設が、お産の取り扱いをやめた。なんと、今後同種の事件が起きれば、29施設が「お産をやめる」と回答している。影響は県外でも大きい。
今回の裁判では直接争点になっていないが、慢性的な医師不足・過酷勤務の現状で、医療の安全をどう確保するかという問題も浮上している。大野病院の産婦人科(現在休診中)の勤務医は当時、刑事被告人となったこの医師の1人だけ。弁護側冒頭陳述によると、医師は同病院に勤務していた1年10か月間で、分娩約350件(うち帝王切開手術約60件)を行っていた。本誌の前回記事で激務ぶりを報告した、同じ福島県の南会津病院の安部宏医師と同様の「過酷な労働条件」に思える。しかし、「マンパワーも財源もない」(県病院局)状況では、事態改善の見通しは立たない。同様な問題は全国各地にある。日本産科婦人科学会の調査によると、05年7月現在、産婦人科の常勤医が1人だけの病院は、全体の14%を占めている。
なぜ、こんなことになったのか。30人以上の産婦人科医たちの話を聞くうちに、意外な構図が浮かんできた。彼らの説明を総合するとこうなる。
「医療の進歩と医師の努力で、妊産婦死亡率は10万人当たり6人程度と、世界トップレベルに到達し、『お産は安全』というイメージが出来上がった。実際にはお産で何か起こるかわからないのに、患者たちは無事出産して当たり前だと思っている」
皮肉にも、この「安全神話」のために医師白身が苦しんでいるというのだ。
ただ、「新しい命の誕生を祝う」はずが、一転して「葬式」ともなれば、遺族感情として医師に結果責任を問いたくなる気持ちもわからないではない。
医療事故に直面した人の願いは、
①体にまひがあれば元に戻すなどの「原状回復」
②真相究明
③医師の反省・謝罪
④再発防止
⑤損害賠償
(医療被害防止・救済システムの実現をめざす会」準協会資料より)――の5点だといわれる。
航空・鉄道事故が起きれば、国交省の事故調査委員会が調べて報告書を公表する。海難事故なら海難審判庁が原因究明や再発防止に努める。だが、医療事故の場合、死因究明や臨床経過の分析、再発防止策を検討する専門機関はない。院内独自の調査委員会で原因究明を行う病院も多いが、内部のスタッフで構成する例が多い。①③は別として、患者側が医師の事情説明に納得できない場合、徹底究明などを求めるなら、裁判に訴えるしかないのが現実だ。
そこで、厚労省は早ければ2010年度から、医師や法律家らで組織する医療版「事故調査委員会」を設置する方針だ。
また、子供に脳性まひの障害が残るケースは出産500件に1件の割合といわれ、脳性まひ児を持つ親の経済的負担は非常に重いが、現在は訴訟以外のめぼしい救済手段がない。裁判に訴え、医師や病院の「過失」の認定を得て賠償金を勝ち取るしかないのだ。
そこで、国は日本医師会の提案を受けて、医師の過失の有無に関係なく被害者を救済する「無過失補償制度」を導入することを決定。今年度中の発足を目指している。当面は脳性まひが対象で、数千万円の補償金が支払われる。この二つのシステムで訴訟リスクを減らし、医師の産科離れを少しでも食い止めようというわけだ。
しかし、医療版事故調設置のためのモデル事業運営委員会の委員長を務める樋口範雄・東大大学院教授は、
「事故調査委は、真相究明を図る社会的安全弁という意味で必要です。病理医や臨床医ら専門家の協力も不可欠ですが、ただでさえ医師不足で多忙を極める医師に協力させるのは一定の限界がある。多額の費用もかかります」
と問題点を指摘する。被害者側からは「金を払っておしまいか」「再発防止策が先」などの批判も聞こえる。脳性まひ以外の症例への適用拡大も、今後の課題だ。
国民の医療不信は1999年、点滴ミスにより患者が死亡した都立広尾病院事件、患者取り違えが起きた横浜市立夫病院事件が相次いだことで高まった。病院側の隠ぺい工作も発覚した。世論の後押しを受け、警察がいわば“水戸黄門”となって医療界の体質にメスを入れた側面もある。首都大学東京の前田雅美教授は言う。
「医師だからといって重大な過失があっても免責されるのでは、国民も患者団体も絶対納得しません。動脈と静脈を間違えて注射したとか、刑事責任を問うべき事例はあります。どこで線引きするのかが難しいのですが、医師が安心して働ける枠組みは必要です」
最後に残る問題は、「医師の反省・謝罪」をどうするかだろう。謝罪を何より強く求める患者や遺族は多いが、制度的改革では解決しにくい難問だ。長野県の町立軽井沢病院で03年、当時32歳の女性が帝王切開で出産後、出血性ショックで死亡した医療事故が起きた。遺族は手術ミスがあったとして、町と担当医を相手取り損害賠償を求めて訴訟に踏み切った。今年夏の高裁での和解協議も決裂し、母親は記者会見で、「これは医師不足による事故とは違う。医師にひと言謝ってほしい。それだけです」と涙声で訴えた。現在、最高裁へ上告中だが、患者側が何を求めているのかが思い知らされた裁判だった。
各病院の事故調査委員会の機能強化を図ることに解決の糸口はないだろうか。前出の樋口教授は言う。
「患者にとっての不信感は、医療そのものというより、被害を受けた病院に対する不信です。外部の専門家や法律家、患者の会代表ら第三者を入れて透明性、客観性を強め、究明結果をもとに患者側に誠意をもって対応すれば、解決する事例も多いでしょう。事故調はこうした機関を側面支援すればよいのです」
不毛な裁判で心身共に消耗するより、医師と患者の信頼関係を回復させるシステムを考えることが何より必要だろう。それによって、医師の「お産」現場からの立ち去りを食い止めるための道も見えてくるのではないか。
ちとまて、
>首都大学東京の前田雅美教授は言う。
> 「医師だからといって重大な過失があっても免責されるのでは、国民も患者団体も絶対納得しません。動脈と静脈を間違えて注射したとか
動脈と静脈を間違えて刺したら、刑事罰なのかよ(www。
血腫作って窒息とか、出血性ショックだったら、問題なのは誤穿刺した後の対応だろ。
刑事法が専門だそうだけど、こういう発言をするから、医療者から信用されないんだよ。
投稿情報: ssd | 2007年10 月29日 (月) 13:02
比較的良い記事だと思います。気になったのが、首都大学東京の前田教授の言葉です。「動脈と静脈を間違えて注射したとか、刑事責任を問うべき事例はあります」ってのは、具体的にどのような医療行為を指しているのでしょうかねえ。中心静脈カテーテル挿入時などの誤穿刺がまず思い当たりますが、いくらエコー等で確認するようになったとは言え、動脈穿刺を100%避ける自信は私にはありません。これで刑事責任を問われるようなら、今後は中心静脈はとれなくなってしまいます。
検索してみると、前田教授は、医療事故の原因について中立的立場で究明する新たな組織創設を目指している厚生労働省の検討会の座長で、専門が刑事法だそうです。報道フィルターで情報が捻じ曲がったのではなく、本気で上記のような意味で前田教授が仰ったのであれば、法律家と医師の相互理解は果てしなく遠いと言わざるを得ませんね。
投稿情報: NATROM | 2007年10 月29日 (月) 13:42
前田先生、座長です(>▽<)!!!!
あ、メンバー紹介し忘れてたかも。
夜にでも落ち着いて探してみます。
しかもOCR間違ってますね。。。ああ、やっつけ仕事だ。正しくは前田雅英先生 首都大学ってなんだろう。。。
検討会では、「とにかく厚労省案へ、みんなの暴動なく導く役割」を多分言い含められています。
だから発言にずっこけますけどね。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2007年10 月29日 (月) 14:57
前田雅美教授には動脈は赤く静脈は青く見えているののかもしれませんね
そして体外からでもハッキリくっきりとわかるのでしょう
そうでもなければこんな事は言えないはずです
投稿情報: 戦う人間発電所チェルノブ | 2007年10 月29日 (月) 17:09
首都大学東京って、都立大学をリストラして、まとめた大学。
都立病院も、首都病院東京にしたらいいのに。
投稿情報: ssd666 | 2007年10 月29日 (月) 18:07
「読売ウィークリー」も今日発売だったんですね。
私は今日発売の「週刊東洋経済」を読んで、ぞーっとしました。
ちょうど医療特集で、産科のことも載っていて、なんと「予約したい一心で月経日を偽る妊婦」とか「分娩料金は払わないのに手にはヴィトンのかばん」とか「前の出産が帝王切開や逆子だったのに妊婦健診を未受診」とか...。
怖すぎです...。
投稿情報: トロ | 2007年10 月29日 (月) 18:12
<「これは医師不足による事故とは違う。医師にひと言謝ってほしい。それだけです」>
またまた心にもないことを(笑)
投稿情報: 開業やぶ医 | 2007年10 月29日 (月) 21:00
<「これは医師不足による事故とは違う。医師にひと言謝ってほしい。それだけです」>
この10年間、その考えに則って「まず謝罪」をしてきたのですが、その結果が、今の「医療不信」「医療界への国民・司法の理不尽な攻撃」に繋がっています。間違いなく。
自分が悪くも無いけど謝罪するというのは日本では美談に例えられますけど、グローバルスタンダードでは絶対してはいけないこと。今日本は急速にグローバルスタンダードに近づいています。悪いと思わなければ絶対に謝罪してはいけませんね。
投稿情報: 暇人28号 | 2007年10 月30日 (火) 08:16