地裁資料を閲覧してきました。
資料の整理部の方々には、お時間過ぎまで
粘ってしまって申し訳ありませんでした。
尚、この事件は既に控訴が決まり、
高裁での審議がそのうちに始まるとのことです。
亡くなられた患者さまと、関わった病院関係者の方々に、
心から無念の意を表したいと思います。
さて、驚いたことにこの裁判は、
原告(患者家族)が代理人(弁護士)を立てない
本人訴訟でした。
という訳で、証人尋問がなんと
患者さんの夫にされるワケでかなりツライ(>_<)!!!
ちょっと書面を見て泣きました。
2-3時間に及ぶ閲覧になりましたが、
ちょっと全部は見切れず、
間違いがありましたらすみません。
ご存知の方がありましたら閲覧に再度行き、
訂正しますのでコメント欄にお願いします。
事件は平成19年です。
やはり病理結果で「間質部妊娠」でした。
子宮外妊娠の中でも2%の確率で、
救命がもっとも難しいとされる卵管妊娠です。
病院側の反論によりますと、
平成19年における子宮外妊娠死亡率は0.0002%だそうです。
ちなみにこの時の岡崎市民病院産婦人科は
4人態勢であったとの事でした。
事実経過:
初診は平成19年8月
その時の主訴は不妊だが、他院への紹介状取りに来ず
平成19年10月3日
12:40 外来診察
0経妊0経産 最終月経8/23→ 5週6日相当
基礎体温表はなし。
カルテ記載によると、
・子宮内に胎嚢らしきものあるがpseudo GSか?
・右卵管周囲にあやしいmassあり
・左卵巣正常
・ダグラス窩にエコーフリースペース少量あり
(1cm程度、右附属器周囲にはなし)
・出血や腹痛なし
子宮外妊娠の可能性と腹痛や出血時の説明あり。
「子宮外妊娠が否定できないので、
出血や腹痛等があればいつでも早めの受診を」
と説明している。
流産の可能性のみカルテ記載にないが、
・正常妊娠の可能性(排卵が遅れた)
・流産の可能性
・子宮外妊娠の可能性と対処
についてこの時点で説明したものと裁判所は認定している。
尿中hCGを測定に出したが、
3-4時間かかるために帰宅をさせた。
「何かあれば電話連絡を入れる」とその際説明している。
その後、医師はほぼ休みなく外来を行い、
検査結果が異常でも知らせてくれるシステムがないため
時々、患者さんのカルテを見ながら診察をすすめていた。
16:03 尿中hCG 25290mIU/mlの記載
(16:30まで外来続いていた)
この時点で子宮外妊娠の可能性を念頭においた。
その時双胎児間輸血症候群の搬送あり、
他の産婦人科医師はオペ中。
患者さんと連絡を取ることを考えたが、
もし来院してもらっても産婦人科で
患者対応できる医師がいないために、
この搬送患者さんにかかりきりになってしまった。
そのままオペ段取りして終わった時点で10時過ぎ。
「電話をかけるには非常識な時間である上に、
今まで腹痛の連絡もないから明日連絡を入れよう」
と考え、 この日は連絡を入れなかった。
10月4日
9:30頃 本人から「腹痛」の電話が入る。
外来看護主任が電話に対応。
カルテコピーはみたものの、hCG値は見なかったと。
患 「腹痛がするんですが」
Ns 「症状が出て、強くなるようなら受診を」
患 「昨日受診したばかりでよくわからなかったから、
今日受診しても同じですよね」
Ns 「(カルテの子宮外妊娠の記載目に入る?)
子宮外妊娠であれば手術する場合もあるし
早めに受診してください」
患 「もう少し様子を見ます」
Ns 「何かあったら電話してください」
その頃、担当医は外来クラークに患者さんに電話を
いれて来院してもらうように指示をしていた。
ちょうど電話があったころで、
「それなら先ほど電話があった人です」
と担当医に伝えた。
担当医はもう一度電話、すぐ受診するよう指示。
外来クラークは電話をし、通じた。
「11時が外来受付締切りなので、
それまでに来院できますか?」
「大丈夫です」との返事あり。
(この頃の時間は9時40分以降10時くらい?)
前後して患者さんは実母と電話で話している。
その時間が10時頃で、
「病院にいく話は聞かなかった。
痛みはあるけれど車なら会社にいける」
と話をしている。
11時になっても患者は来院せず、
担当医は何度かクラークさんに尋ねている。
12時になっても来院せず、
12:20(この時間も正確ではない)-13:00に
携帯や自宅番号に5回以上電話を
入れたがつながらなかった。
(あとの状況を見るとシャワーで聞こえなかったのかも)
13:00頃 患者さん自宅電話より電話。
患 「お腹が痛い 動けない」
ク 「救急車を呼んでください!」
患 「救急車を自分で呼ぶ自信がない」
ク 「この電話で119かけてください!」
患 「やってみます」
13:26 救急車の入電も来院もなく
外来主任助産師が手が空いたので救急隊要請。
13:40 救急隊現地到着。心肺停止状態。
シャワーを浴びたか着替えの途中で全裸で倒れていた。
14:05 病院着。心肺停止状態。
14:40 蘇生し心拍再開。
16:19 右卵管切除手術(病理結果;右間質部妊娠)
10月5日 17:03 死亡確認。
鑑定医;(裁判所選定)
金沢医科大学産婦人科 牧野田 知 教授
患者さんが「様子を見る」などと返事をしているので
病院側に過失はない。
争点;
1)外来受診時
ア)外妊 確定診断の可否
イ)入院管理下におかなかった過失の有無
ウ)説明義務違反の有無
2)尿中hCG値判明時
ア)子宮外妊娠確定の有無
イ)連絡を取り再受診を促さなかった過失の有無
3)翌日早い時点で再受診を促さなかった過失の有無
4)電話を受けた外来主任助産師の過失の有無
5)損害について
裁判所の判断;
1)いずれも裁判所は説明義務違反等認めていない
2)時間が遅くなった・症状がない等過失認定せず
3)クラークに電話を入れさせたことで
正確に情報が伝わらなかった可能性あり
医師の説明義務違反。
4)外来主任助産師の判断ではなく、医師にかわり
説明すべきだったので医師の説明義務違反。
判決;
報じられている金額どおり約6700万円です。
病院と被告医師とで共同して(割合は決められていない)
支払うようにとの事でした。
【ざっとみての感想】
・刑事告発を考えたのか、一応届出をしたためなのか、
岡崎警察署から市民病院への質問回答書が証拠の中に
ありました。
・これは同じ産婦人科医としてですが、
真夜中でも危ないと思ったら電話すべきだなぁ・・・
と思いました。卵管膨大部妊娠なら違う結果なので
前日受診も不運だし、間質部妊娠も不運です。
・すべての電話に医師が出られる状態ではありません。
・普通に外来やっていて16時半までかかる状況では
事故がいつ起こっても不思議ではありません。
余裕がない状況だからこそ、医療安全が損なわれた例
ではないかと思います。
・患者さんが奥ゆかしすぎるほど危険になる時も。。。
(逆もあります。)
【参考裁判資料】
青森里帰り妊婦OHSS訴訟
http://htn.to/cEd3jG
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