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(投稿:by 僻地の産科医)
日本医師会雑誌 2012年3月
140巻 第12号からですo(^-^)o..。*♡
内容は、
「医師の倫理・資質向上に向けて」
今日は愛知県医師会の取り組みについてです。
ちなみに
愛知県医師会医療安全 支援センター
(苦情相談センター)
052-241-4163
受付時間 月曜日~金曜日
( 祝日・年末年始除く)午前9時~12時
とのことで、地道に活動しているようです。
愛知県医師会における
患者の苦情情報に基づく倫理問題への取り組み
大輪芳裕 宮治 眞 妹尾淑郎
(日医雑誌第140巻・第12号 p2550-2554)
●はじめに
愛知県医師会は2003年,厚生労働省医療安全対策検討会議により発表された医療安全推進総合対策に則って愛知県医師会医療安全支援センター(苦情相談センター)を設立した1)この医療安全支援センターは医療事故の判定や責任の所在を判断するものではなく,患者・家族などと医療機関の当事者間において,問題解決に向けた取り組みを支援する活動を行うものである.各医会から推薦された医師の先生方に専門委員という立場で実際の相談業務を担っていただく仕組みである.また,多職種の外部委員,オブザーバーの支援を受けて,広い視野から中立的な立場で愛知県医師会医療安全支援センター委員会を開催し,苦情事例の検討を行っている.相談結果や内容について,種々の方法で会員およびその職員のみならず,広く県民に向けて情報提供を行っている.また事例によっては,個別的に当該医療機関に自律的に注意喚起を行っている2
本稿ではこの医療安全支援センターにおける活動内容を中心に愛知県医師会の倫理問題への取り組みを報告する.
1)相談方法
愛知県医師会内に専任2名,兼任4名の相談員を配置し,相談の方法は面談も可であるが,ほとんどの事例が電話で行われている.相談員が対応できない医学的な専門知識を要する相談については, 各医会から推薦された各専門科の医師(内科3名,外科1名,産婦人科2名,整形外科3名,精神科2名,小児科1名,眼科2名,皮膚科1名,耳鼻咽喉科1名,泌尿器科1名,専門科による事例数に応じて複数名に依頼)が相談に対応する.専門委員は原則として匿名での相談には対応しないが,内部告発など医療者側の法令違反が疑われる場合には対応する.
相談経路は直接患者からや各地区医師会の紹介が主となるが,愛知県内の医療安全支援センターにおいて医師が直接苦情相談を行うのは当センターだけである.そのため医師の相談が必要な事例に関しては,行政の設置した医療安全支援センターや保健所,警察署などからも紹介される.行政との情報共有は,当センターの委員会への行政の担当者の出席のほか,愛知県が主催する愛知県医療安全推進協議会で実施されている(図1).
当センターは前述の専門委員17名のほかに愛知県医師会役員4名, 名古屋市医師会医療安全担当理事1名,外部委員として学識経験者4名,市民団体代表2名,弁護±1名に委員を委嘱し,オブザーバーとして愛知県などの行政の担当者に出席を要請している.月に1回開催される委員会においては,専門委員から担当した相談事例の内容やその対応結果の報告がなされる.また委員会が大きくなりすぎたために委員会の運営方針や問題事例に対する委員会の見解などをより詳細に検討するための小委員会(構成メンバー5~6名選出)を適宜開催して委員会へ提言し,表1のごとく了承を得て実行に移している.
2)相談実績
2003年度には相談回数335回,症例数298例であったが,相談件数は毎年増加の一途をたどり,2009年度は相談回数1,272回,症例数1,058例に達した.患者が相談内容に納得せず,医療者に金銭等の要求があり,医事紛争と判断されて医療安全対策委員会へ送付された症例は,当初,相談症例数の5%ほどであったが,2009年度は1,058例申23例(2.2%)と減少傾向となった4.(表2).
2009年度の相談事例における苦情相談の転帰を検討すると,苦情相談1,272回中,専門委員対応となった事例が188回,県医師会理事対応となった事例が32回で,医師が対応したものは合計220回に上った.そのうち,当該医療機関に直接,専門委員あるいは県医師会理事より連絡したものは139回で,苦情内容の医療機関への事実確認だけではなく,問題解決や今後の再発予防に向けた助言が医療機関へ行われた.また,専門委員が対応したIO例と相談員が対応した13例の合計23例が,補償を求める医事紛争となって愛知県医師会医療安全対策委員会へ付託されている(図2).
3)苦情情報に基づく会員への
情報提供と注意喚起
重大な問題を含む苦情相談事例,たとえば医師の重大な瑕疵が疑われる場合や今後の再発予防の検討が必要と思われる事例は,さらに詳細に協議される.苦情発生の原因やその背景因子,対応等の経過,今後の発生防止に向けた取り組みについて,委員会で話し合われるだけでなく,小委員会を開いて十分に時間を尽くして討議し,委員会としての見解を明らかにしている.事例によっては当該医療機関に専門委員や県医師会理事から個別に注意喚起を促す.会員全体への周知は,苦情相談関係医師等事例検討会(2009年度までは指導講習会と命名)での事例報告を年3回開催し,出席を要請している.また,県医師会報である『愛知医報』に苦情相談関係医師等事例検討会の概略や相談事例の要点などを報告し,.また苦情相談事例報告集を発行して全会員に配付するなど,会員に広く情報提供を行っている.問題の内容によっては. 会員全体にとどまらず,個別的な注意喚起も実施している.
4)総括
当センターは, 2003年の開設以来,愛知県の委託事業として患者,医療者間の中立的立場で多くの苦情情報を取り扱ってきた.多くの事例は,インフォームドコンセントの不足や医師や医療従事者の些細な態度や言動の問題が背景にあり,専門委員の献身的な対応により解決されてきた.当該医療機関にはこれらの苦情の背景などの情報が個別的にフィードバックされ,全会員への種々の情報提供と共に医療機関のスキルアップに寄与してきたと考えられた.しかし,医療者側に大きな問題が含まれる事例もあり,医師会内にある当センターが会員への注意喚起や指導などの自律作用を発揮できるかが焦点となる.
中立性を担保するため,当センターは発足時より,委員長も含めて第三者(医療者以外あるいは学識経験者)に委員として,さらに行政にオブザーバーとして出席していただき,事例の検討を行ってきた.また,2010年9月からは増加する医療者側からの相談を,会員の福祉を目的とした会員相談窓口として別へ移し,当センターは患者からの苦情相談の中立的な対応だけとした.
医療機関への自律的な注意喚起は当センター専門委員や県医師会理事,医療安全対策委員会,社会保険指導委員会から文書あるいは口頭で連絡するほか,事例によっては当該医療機関に対して県医師会館への来館を要請して自律的対応を図っている.
専門委員からの注意喚起は,同一診療科の医師からの指導や注意喚起のため,その診療科における特性や慣習に配慮することが可能であり,早期改善につながると考えられる.また,専門委員は各医会からの推薦を受けているため,専門委員だけでは対応が難しい場合においても,各医会長から注意喚起が促されることにより,高い自律効果が期待できる.
医療安全対策委員会からの注意喚起は,医療事故を繰り返すリピーター医師や明らかな医師の過失が疑われる場合で,必要に応じて医療安全対策委員会へ当該医師の呼び出しを行い,委員から事情の聴取や再発防止に向けた助言,指導が行われる.診療報酬請求に関わる事例では,社会保険指導委員会で協議したうえで必要と認めたときは,委員が当該医師を呼び出し指導している.いずれも日々医事紛争の有責性の審査や保険請求審査に従事する第一線の医師会会員による具体的かつ専門性の高い指導と考えられる.
専門的な医療内容とは関係のない事例,たとえば医師の倫理的問題(言動や性格の問題,認知の問題等)や関係法令違反,医師の精神疾患や認知症に関わる場合などは,当センター担当理事が注意喚起を行っている.関係法令違反だけではなく,診療報酬請求の問題や医療事故など多岐にわたる問題の可能性があり,県医師会から関係機関と多角的な連携を重視して指導を行っているのが現況といえる.
本稿で述べた事柄がまだ不十分な点が多々あることも認識しておく必要があると留意している.苦情相談関係医師等事例検討会では,検討会の内容等について受講者にアンケート調査を行って結果を分析し,今後の当センターや事例検討会の改善の参考にするなど,日々より良い形でのバージョンアップに心掛けてセンターの運営を行っている.
■おわりに
当センターでは,重大な問題が含まれると思われる事例に対し,各医会および愛知県医師会の各部署と連携して対応を図ることで,愛知県医師会としての自律作用を活性化させている.最後に当センターを日々支えていただいている委員の各先生方と職員の方々,医師会の関係諸方面の方々に心より御礼申し上げて本稿を終わりとしたい.
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