(関連目次)→なぜ産科医は減っているのか
(投稿:by 僻地の産科医)
ジャミックジャーナルの9月号からです!!!
●【特集】医局はどう変わるのか―医師737人のアンケート
でも今日は産科のお話!
『 医療制度を考える 』シリーズの第6回目です。
きゃーんっ!!!田中啓一先生だっ(>▽<)!!!
いつもお世話になりっぱなしです ..。*♡
私が今度異動するかもしれない、という噂の病院も、
もうすでに2人の退職が決まっているようです(;;)。
また、神奈川で頑張っていたお友達も、3人が二人に減って、
分娩制限等などの処置をとってくれないために死にそうになっていて、
今度、辞めるって決定をした模様です。
どんどん人が減っていく。。。。。。(/_ ;)
医療制度を考える
現状・考
産科における職場環境改善
(JAMIC JOURNAL 2008.9 p22-23)
産科勤務医は2000年からの6年間で約11%減少しており、医師不足に伴って産婦人科の廃止や分娩取り扱い中止に追い込まれる医療施設が急増している。現役産科医師の高齢化に加え、産科を志望する若手医師の数も減っているが、その要因として、過酷な労働条件や医療訴訟率の高さが指摘されている。
お産はいつ始まりいつ終わるかわからないため、産科医は、24時間体制下の不規則な勤務を強いられる。また日本産婦人科医会の全国調査によると、06年度の産婦人科勤務医の当直回数は6年前に比べて約30%増の6・3回。しかも9割の施設では当直明けの医師が翌日も通常勤務に就いている実態が報告されている。
近年急増している医療訴訟のなかでも産婦人科関連の訴訟は約3割にのぼり、特に04年12月、福島県立大野病院で帝王切開手術を受けた女性が死亡し、医師が逮捕・起訴された大野病院事件は現場の医師に多大な衝撃を与え、その離職に拍車をかけたと言われる。訴訟リスクの軽減と医師・患者双方の救済を目的として、09年1月から産科医療の無過失補償制度が導入されるが補償の対象範囲が限定されることや補償金額が低い(3000万円)ことなどから、同制度が医事紛争の減少や産科医不足の解消につながるのか、疑問視する声もあがっている。41歳以下の若い世代では、産婦人科医の5割以上を女性が占め、産休・育休からの復帰支援策をはじめ、女性医師の継続的就労支援も課題となっている。
こうした現状を踏まえて、日本産科婦人科学会・産婦人科医療提供体制検討委員会では、現場医師の労働条件改善と待遇の適正化を目指して「産科医療体制関連アクションプラン」を策定。政府・厚生労働省、地方行政および全国の分娩取り扱い病院に対し、「分娩手当や時間外勤務手当の支給」「当直翌日の勤務緩和」「女性医師の継続的就労支援」等の推進を要請している。
一方、厚生労働省は、08年1月に実施した産科医療機関調査の結果を踏まえ、今後の対策として、左表に示したような施策を進めていく方針だ。
インタビュー
分娩費の適正化を柱に再生産可能なシステムを
嵯峨嵐山・田中クリニック院長田中啓一氏
法学の分野で十数年間、研究職に従事していましたが、30代後半から医師の道を志し、産婦人科医・精神科医として東京、北海道、関西各地の病院で経験を積んできました。04年に京都市内に産婦人科・精神科のクリニックを開設し、院長として産科医療に携わるとともに、07年1月「日本のお産を守る会」を設立し、医師と助産師以外の者の内診を保助看法違反とする厚労省通知の見直しを求める活動を行っています。また同年6月より日本産婦人科医会医療対策委員会委員を務めています。こうした立場から、産科の勤務環境改善について、私の考えをお話ししたいと思います。
分娩費の引き上げで経営基盤の安定を
産科医療の現場における慢性的な人員不足と過重労働の改善を図り、産婦人科医再生産の仕組みを構築するには、第一に、分娩費を適正な水準に引き上げることが必要不可欠と考えます。
具体的な金額については、群馬県高崎市の佐藤病院の計算式をモデルとして、「一分娩あたり60~70万円」が一つの基準になるでしょう。現在、長崎大学や三重大学の分娩費は約50万円となっていますが、多くの産科施設では分娩費の設定が低すぎるために人員の補充もままならず、仕事の量とリスクに見合った待遇の得られない就労環境のもとで医師が疲弊し、退職者の増加を招くという悪循環に陥っています。
このような現状を打開するには、どうしても原資が必要です。分娩費を値上げして初めて、1人医師の施設でも2人目の医師や助産師を雇える。それをしない限り、何をやっても抜本的な解決にはつながらないと思います。
分娩費の増額は、国や行政の指導任せにせず、現場の医師や産科施設運営者自身が強く要求し、実行する勇気を待つべきです。その結果、産科医療施設の人員に余裕ができ、報酬が適正化され過重労働が軽減されれば、医師の勤労意欲や能力もいっそう高まり、産科を志望する若手医師も増えていくでしょう。
出産に携わる喜びを後進に伝えるために
第二に、若手医師の産科離れの要因ともなっている訴訟問題への対策です。
まず、大野病院事件に象徴されるように、医療過誤と断定することが難しい医療事故に対しては、刑法211条の業務上過失致死傷罪に例外規定を設けるべきと考えます。
また来年から導入される「無過失補償制度」の補償金額も段階的に増額し、最終的に1億円まで引き上げるのが望ましい。特に刑法211条の改正については、法学研究に携わってきた経験も踏まえ、微力ながら、今後、各方面へ働きかけていきたいと思っています。
第三に、国公立病院勤務医の兼業禁止規定を撤廃し、地域の開業医と国公立病院の医師の提携・交流を進めることです。現状ではこの規定が足かせとなって、公的病院や私立の産科クリニックが国公立病院勤務医の応援を要請できず、患者のニーズに応えられないケースが多々起こっています。これが実現すれば、難しい患者の受け入れが困難な状況も、ある程度打開できるのではないでしょうか。医師の兼業解禁は、事務系公務員から不公平との批判を受ける可能性もありますが、所得に2倍3倍の大差がつくわけではありませんし、感覚的な平等論よりも国民の利益に配慮したフレキシブルな施策が求められていると思います。
最後に、産科医療の再生産を機能させるには、労働環境の改善とともに、産科ならではの仕事の喜びを取り戻す必要があります。日本の産科はこれまで、分娩介助は助産師、新生児診療は小児科医へと職分を他にどんどん委譲していくことで、きつい労働条件になんとか対処してきたことも事実です。しかし、その過程で、産科医として本来、最もやりがいを感じられるはずの部分が切り捨てられ、現在ではお産というダイナミックな過程の醍醐味を経験する機会が狭まりつつあります。
再び原点に立ち帰り、産科医が分娩経過中からもっとお産に関与していく。さらには、宮崎大学の産婦人科医養成プログラムのように周産期医療に幅広く携わる仕組みをつくり、学生や若い医師にその魅力を伝えていく努力が大切だと思います。
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