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(投稿:by 僻地の産科医)
今日はお休み(私は働いております(;;)。)なので、ニュースはお休み!
楽しんでください(>▽<)!!!
協働して「安全・安心・納得」再構築を
ささえあい医療人権センターCOML理事長
辻本好子
朝日新聞 2008年9月22日
http://www.asahi.com/health/essay/TKY200809160195.html
患者が自立し、主体的に医療に参加することを目指し、1990年から18年間、「賢い患者になりましょう」と呼びかけてきました。
患者と医療者が対立するのではなく、互いに協働して信頼関係を築いていきたいというのが、私たち「COML」の願いです。この18年、患者を取り巻く医療環境はめまぐるしく変化しました。情報はあふれんばかりに入手できる時代になり、患者の意識や要求も目を見張る勢いで高まってきました。 COMLの日常の活動の柱は電話相談です。これまで18年間に届いた相談件数は4万4千件を超え、いまも月200件前後の相談が全国各地から届きます。
■大きく変わった患者の意識
COMLがスタートした当初から考えると、相談内容もずいぶんと様変わりしました。特に1999年を境に、医療不信が急激に高まり、相談が急増しました。
きっかけは、99年1月に起こった横浜市立大学病院の患者取り違え事件、同年2月に起こった東京都立広尾病院の点滴誤薬投与事件です。これを機に、医療ミス・事故の報道が一気に増えたことが患者の不安を煽(あお)りました。一般の患者・市民にとって、情報を入手する手段のほとんどはメディアです。その後もヒートアップする医療事故・ミスの報道で、不信感の目を光らせて医療機関に足を踏み入れる患者・家族の漠然とした不平・不満がどんどん募りました。
しかし一方で、華々しい最先端の医療も報道されます。「病院に行けば治してくれるはず」という過度の期待が高まり、納得できない結果になれば深い不信感という、一見矛盾する「期待」と「不信」という二律背反する患者心理がつくりあげられていきました。
2007年にCOMLに届いた電話相談の傾向を見てみると、
(1)「ドクターへの苦情」(26%)
(2)「ドクターの説明不足」(22%)
(3)「医療不信」(19%)
(4)「法的解決や示談交渉を希望」(14%)
(5)「薬にまつわること」(10%)
(6)「医療費」(9%)
の順になっています。2003~04年をピークに高まりを見せた漠然とした医療不信は、年々割合が減っています。
■相談は医療ミスより、コミュニケーション問題に
最近、医療ミス・事故の報道が少なくなり、改めて医療現場における患者と医療者のコミュニケーションの必要性が浮上してきました。
同時に「医療崩壊」「医師不足」「救急医療の危機」が注目されるようになり、マスメディアに煽られた漠然とした医療不信や「訴えたい」という相談者は減る傾向にあり、相談の内容にも変化が表れ始めています。もちろん、「納得できない結果になった」「医療者の心ない言葉に傷ついた」という相談はまだまだ主流を占めています。そして、無理難題や過剰な権利の主張や要求をする人の声の高まりも否めません。
しかし、やみくもに不信感をあらわに対立したのでは関係も築けず、納得できる医療が提供されないという患者側の危機感も芽生え始めたような気がします。
医療の危機的状況が社会問題にもなり、医療現場がある種、被害・防衛的になり、萎縮(いしゅく)している姿も目立ち始めました。入院を休止したり、診療科を閉鎖したりする病院が増えているという報道も後を絶ちません。このままでは最終的に困るのは患者自身です。医療崩壊や医師不足は、国の医療政策や卒後研修のあり方などが原因として取りあげられています。
でも、一方の要因としてあげられるのが、「コンビニ受診」や「過剰な要求」といった患者の受診行動です。もちろん医療現場も患者との情報共有をいま以上に努力してもらわねばなりませんが、崩壊を食い止め、医療に「信頼」を取り戻す早道には、何よりも私たち患者の意識改革が必要だと私は思っています。医療現場にいま何が起こっているのかを冷静に受け止め、権利の主張をするだけではなく、医療の半分の担い手として責務を引き受ける覚悟も必要です。
そして、医療の限界と不確実性を受け止め、自らの病と医療に何が期待できるのかを知る努力。そのうえで主体的に医療参加し、成熟した判断能力を身につける、そうした患者として自立する高いハードルを乗り越える「行動変容」が必要です。
■患者が求める医療への安心と納得
患者が基本的に医療に求めることは、安全に医療を受け、「この人に出会えてよかった!」と思える医療者とのコミュニケーションのもとで、安心と納得が得られることです。その実現のためには、分かったふりをせずに説明を求める患者の勇気や努力が必要なことは言うまでもありません。受け身のまま期待するだけでは何も解決しません。患者自らが権利と義務の主体として受診行動を見直し、「理解と納得」のための努力をすることが患者の果たすべき役割です。
「モンスターペイシェント」や「クレーマー」といった困った存在として語られることも多くなってきた患者。でも恐らく、そのような無理難題や過剰な要求をする人はほんの一部だと思います。多くの相談に耳を傾けていると、医療側の説明不足、患者側の思い込みや質問・確認の足りなさ、といったコミュニケーションギャップがトラブルの原因になっていることを思い知らされます。
医療現場だけに通ずる特別なコミュニケーション能力やコツはありません。まずは私たち一人ひとりが自らの対人関係の癖や会話の仕方などを見直し、日常のコミュニケーションを豊かにすることが、上級編・応用編とも言える医療現場でのコミュニケーションがうまく機能することにもつながるでしょう。COMLの活動の一環で、患者の行動を支援する企画として、「患者のためのコミュニケーション講座」を開き、小冊子『医者にかかる10箇条』の普及に努力しています。 患者・医療者双方がコミュニケーション能力を高め、互いの立場を認め合い、協働して医療の「安全・安心・納得」を再構築すること。“ピンチ“である今こそ、逆に患者にとっても“チャンス“ではないかと思っています。
NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル・Consumer Organization for Medicine & Law) 1990年9月にスタート。「いのちの主人公」「からだの責任者」である患者・市民が中心になって、専門家の支援を得ながら主体的医療参加の支援活動を展開中。合言葉は「賢い患者になりましょう」。活動は、会報誌「COML」の発行、電話や手紙による医療相談、ミニセミナー「患者塾」、SPグループ(SP:Simulated Patient;模擬患者――SPによるコミュニケーショントレーニング)、病院探検隊など、医療現場との交流を図り、患者の「生の声」を医療現場に積極的に届けている。
◇
辻本好子(つじもと・よしこ) 1948年、愛知県生まれ。82年、医療問題の市民グループに参加。「いのち」をめぐる問題に関心を持つ。「インフォームド・コンセント」「患者の自己決定」の問題に、患者が主体的に参加することの必要性を痛感。NPOささえあい医療人権センターCOML理事長。
勤務医です。
医師は診療をするにしても学会発表をするにしても医学的な根拠やきちんとした調査を元にしておこなっています。
医師という職業を選ぶことで、根拠のない判断をしない訓練を受けていますが、「恐らく、そのような無理難題や過剰な要求をする人はほんの一部だと思います」という言葉の根拠は感覚ではないかと思われ、違和感を感じます。
医療は社会活動の一部にしか過ぎませんから、教育現場や企業活動、生活の中で比較するべきではないでしょうか。
企業、特に食品関係では無理難題や過剰な要求をする方の増加が指摘され、対策がマニュアル化され法曹関係者も介入しています。
教育関係では大都市で養育に問題のある世帯の増加と過剰な要求をする親が問題になっています。
批判するものは、言葉の重みを感じる必要があります。
投稿情報: 近森正昭 | 2008年9 月24日 (水) 17:20