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(投稿:by 僻地の産科医)
日医ニュースからですo(^-^)o ..。*♡
わざわざ別紙で入っていました。カラーでステキなんですけれど。
おみせできなくって残念なくらいですが、スキャナーに入りませんでした。
刑事訴追からの不安を取り除くための取り組み
―その4―
―新しい死因究明制度に反対する意見に対して―
日本医師会常任理事 木下勝之
日医ニュース 第1117号 平成20年3月20日
Ⅰ はじめに 前回の解説で、第三者機関である医療安全調査委員会(仮称)に届けるべき診療関連死の範囲と捜査機関へ通知する事例を明らかにすることにより、この医療安全調査委員会(仮称)が決して警察へのトンネル機関になるものではない点を強調しました。 Ⅱ 医療安全調査委員会(仮称)設置の意義 現在の医療事故と刑事手続を巡る状況には、様々な問題があります。 <現状> そのための新しい制度の在り方を、医療界は、遺族、弁護士、マスメディア、刑法学者、法務省、警察庁そして厚労省と共に、真剣に、時間をかけて検討してきました。 <改革の方向性> このように国民的同意のもとで、医療界からの委員を中心とした医療安全調査委員会(仮称)の設置により、今日の診療関連死に対する刑事訴追重視の流れを大きく変えることが、可能になるのです。 Ⅲ この新しい制度に反対する方々の主なご意見 昨年10月に発出された厚労省第二次試案において不明確・不正確であった点を明らかにした『死因究明制度等のあり方について』(自民党医療紛争処理のあり方検討会)が昨年12月に提示され、さらに、日本医師会より『刑事訴追からの不安を取り除くための取り組み』と題して、解説や説明をしてきましたが、なお、医療界の一部の方々から、下記のような疑念が提起されています。 1.届けるべき診療関連死の具体的な事例が分からない。すべてを届けることに そこで、現在作成中である厚労省の正式な報告がでる前に検討会での了解事項として、それぞれの疑問に対してお答えいたしたいと存じます。 質問1.届けるべき診療関連死の具体的な事例が分からない ので、全てを届けることになるのではないか。 <回答> 特に救急医療の現場や、高齢者介護の現場、さらに手術室等の現場での死亡例に対して届出るべきなのかどうかの戸惑いがあります。 ここで基準として掲げた届けるべき場合は、あくまでも診療行為の合併症としては合理的な医学的説明ができない、予期しない死亡やその疑いがあるものが想定されます。したがって、救急医療の現場や高齢者介護の現場での死亡で、診療行為の合併症として予期される死亡は含まれないこととなります。 医療安全調査委員会(仮称)への届出の考え方は、医療安全の視点から、当該死亡例の原因究明が、今後、死にという結果を防止・減少させるために制作分析が必要であると医療者自身が考える事例に限られるということです。 また、ここで示された、届出範囲の基準は、決して新しいものではなく、平成16年より(財)日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業で用いられている届出範囲であり、既に3年間の運用実績があります。さらに医療事故の中立的第三者機関の設立と、そこへの届出を初めて提言した平成13年の日本外科学会声明に沿ったものでもありますから、医療現場の医療関係者には、届けるべき事例に関して、ご理解いただけるものと思います。 なお、一層理解を深めるために2月20日に開催された厚労省の第12回「診療行為に関連した死已に係る死因究明等の在り方に開する検討会」においては、上記の考え方に則って、おおよそ想定される事例も提小されたところであります。 質問2.医療安全調査委員会で調査検討された事例の 報告書が捜査機関で使われて、刑事訴追は今より 一層増えるのではないか。 <回答> 一方、委員会の判断に基づき警察に通知が行なわれない事例に関しては、訓告結果が調査報告書として遺族に渡って、遺族が警察へ行き刑事罰を主張しても、捜査機関は、調査委員会の医学的な判断を尊重して、原則として捜査を開始しないことが明文化されています。 したがって、医療安全調査委員会で調査検討された事例の報告書のうち、既に述べた限定された特別な事例のみが、捜査機関で使われるのであって、通知されない事例の調査報告書は刑事訴追には使われませんので、刑事訴追は今より一層限定的になり、少なくなるのです。 質問3.調査委員会から捜査機関へ通知される事例が、 『重大な過失』では、かえって通知範囲が広がり、 刑事訴追が増えるのではないか。 質問4.医療安全調査委員会は、医学的に問題があるか ないかを判断するだけでよいのであって、 『重大な過失』の有無を判断すべきでないのではないか。 <3,4に対する回答> 今回の死因究明制度の最も重要なことは、刑事司法の専門家ではなく、医療安全調査委員会の委員である医療の専門家がこの「重大な過失」かどうかを判断することです。 これからは、刑事司法の専門家ではなくて、医療の専門家が原因調査を行うことによって、今の水準からどれだけ逸脱しているかを判断するのであって、わずかに下手だったとか、わずかに判断ミスをしたとか、そういうものが刑事罰の対象になることはあり得ないのです。 また、医療の専門家が調査することにより、例えば、死亡の原因の背景や中身を吟味し、その医療機関の県境では、システムエラーやチーム医療の観点にむしろ問題があり、最終行為者としての主治医や看護師に事故の原因を帰すのは不適切という判断もありえるでしょう。 このような新たな仕組みを考えた背景には、今までの誤った刑事司法重視の流れが定着することによる萎縮医療や、若手医師が外科系、産科系診療科や救急医療の現場を敬遠するという、医療界の危機があります。 質問5.刑事訴追に代わる行政処分では、 やはり責任追及の形が変わるだけではないのか。 <回答> そこで、今検討している医療安全調査委員会で調査した事例は、全て医療行為に関するものですから、医療行為に関するものである限り、一次的には医療安全に資するための行政処分でなければなりません。すなわち、医療安全に資するための行政処分とは、制裁して済ますこと、言い換えれば単に免許停止.や、取消し等で処分することではなく、問題とされた医師が同様の事故を繰り返すことがないよう支援するための処分でなければなりません。それは再教育が原則であり、それに付加される処分があってもそれは戒告にとどまるのを原則とするべきです。 医療機関に対する行政処分を導入する点も、規制の強化というようにとらえるのではなく、医療事故の原因を1人の医師や看護師に帰すのではなく、機関全休のシステムエラーの問題としてとらえるべき場合にはそのようにしようとする考えから出てきたものと理解するべきです。 Ⅳ これからの課題 既に述べた通り、医師法第21条を端緒とする刑事訴追の方向性は、この医療安全調査委員会(仮称)の設置により明らかに変わります。たとえこの法律が本国会を通過しても、その法律が施行されるまでには7くとも、さらに2年は必要であると思われます。その間に、法案の趣旨を実現するために下記のような、整備すべき具体的事項があります。 ① 直接、死因究明を行なう医師を中心とした調査チームと、全国8箇所に各地方の医療安全調査委員会を、そして、中央医療安全訓告委員会を作る準備作業を済ませなければなりません。 医療界にとって、画期的である本法案の成立は、特に、外科や産婦人科、救命救急部等のリスクの高い診療科や救急医療の現場で、日々診療している医師が、安心して診療を行なうために絶対に不可欠なのです。 Ⅴ おわりに 新しい死因究明制度の中で、医療安全調査委員会(仮称)の意義やこれからの課題、また聞こえてくるご意見に対して、厚労省の検討会の議論を踏まえて、ご説明いたしました。 また、これまでの議論のなかで痛切に感じることは、医師だけに通じるどんな理想像を掲げても、刑事司法の専門家や、遺族の代表、マスメディアの方々には通じませんし、現行の医師法第21条問題を解決する我々の医療安全調査委員会設置案の代案にはならないということです。 新しい仕組みを実現するためには、医療安全調査委員会設置法案(仮称)を、政府が国会に提出し、法案が可決されることが必要です。今日の、ねじれ国会のなかでは法案成立には、なお一層厳しい状況が予想されますが、この医療安全調査委員会設置法案を会期内に絶対に成立させるために、病院の勤務医も、診療所医師も、全ての医師が一致団結して、日本医師会、日本医学会、病院団体の取り組みにご支援をいただきたく心よりお願い致します。
その後、厚労省の第11及び12回「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会]が開催され、そこでの議論から上記の点はさらに明確化されました。
この医療安全調査委員会(仮称)が、今日の医療界にとって刑事訴追からの不安を取り除くためにこれまでより数段進歩し改善された望ましい役割を担う組織であって、決して刑事訴追が増える仕組みではないことを、ここで繰り返しご説明致します。
そして、新しい死因究明制度への主な疑問に対してお答えしたいと思います。
1.診療関連死が発生すると、医師法弟21条により警察に届出ることとなり、我々
医師を刑事事件の被疑者として、捜査が開始される。
2.捜査の過程で、医療の専門家の意見を開く仕組みはない。
3.捜査は、個人の責任追及の目的で行われ、医療の質・安全の向上には役立だない。
4.医療事故の場合、行政処分ではなく、最終手段としての刑事処分がいきなり発動
される仕組みとなっている。(例えば、交通違反の場合、まずは減点・反則全の
支払(行政処分)があり、著しく悪質なケースについてのみ刑事罰が適用される。
一般には、行政処分、刑事処分の順に処分が行われる。)
5.結果として、医療への刑事介入が過剰となっており、我々医師が安心して医療を
提供できる環境にない。
といった問題であり、これを抜本的に改める必要があります。
その結果、以下のような改革の方向性が明らかとなりました。
① 医師法第21条に基づいて警察に届け出るのではなく、第三者機関としての医療安全訓告委員会(仮称)に届け出る。このため、医師法第21条を改正する。
② 医療安全調査委員会(仮称)は、警察官・検察官ではなく、医療の専門家を中心に組織する。
③ 医療安全調査委員会(仮称)は、責任追及の観点ではなく、原因究明・再発防止の観点からの訓告を行い、明日の医療の質・安全の向上に役立つ議論を行う。
④ 医療の内容に問題がある場合であっても、個人の責任追及を目的とした刑事
処分がいきなり発動される仕組みではなく、医療安全のための行政処分かまず適用される。
⑤ 行政処分については、システムエラーの改善のための計画書を作成するなど医療機関に対するものを創設するとともに、個人に対する処分が必要な場合でも、免許の停止などではなく再教育を中心とした医療の質・安全の向上を目指したものに重点を移す。
⑥ 刑事手続にあたっては、故意や重大な過失のある事例その他悪質な事例に対象を限定する。また、捜査当局は、捜査及び処分にあたっては、医療の専門
家を中心に組織される医療安全調査委員会(仮称)の判断を尊重し、その通知の有無を踏まえて対応する。
⑦ 捜査機関へ通知すべき「重大な過失」かどうかの判断は、刑事司法の専門家ではなく、我々医療の専門家に任される。なぜなら、「重大な過失」とは、「死亡」という結果の重大性に着目したものではなく、標準的な医療から著しく逸脱した医療であると、委員会が認めるものをいい、この判断はあくまで医療の専門家を中心とした委員会による医学的な判断であるためである。
なるのではないか。
2.医療安全調査委員会で調査検討された事例の報告書が捜査機関へ使われて刑
事訴追は今より一層増えるのではないか。
3.調査委員会から捜査機関へ通知される事例が、「重大な過失]では、かえっ
て通知範囲が広がり、刑事訴追が増えるのではないか。
4.医療安全調査委員会は、医学的に問題があるかないかを判断するだけでよいのであって、過失の有無を判断すべきでないと思う。
5.刑事訴追に代わる行政処分では、やはり責任追及の形が変わるだけではない
のか。
厚労省における第10・11・12回「診療行為に開運した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」で提示されたように、調査委員会に届けるべき事例として、2つのケースが掲げられ、そのうちの第1番目「誤った医療を行ったことが明らかであり、その行った医療に起因して、患者が死亡した事案」に関しては、どなたも了解されます。
問題は、「誤った医療を行ったことが明らかではないが、行った医療に起因して、あるいは、そのような疑いのある場合も含めて、患者が予期せず死亡した事案」の場合であります。
もとより、今度の調査委員会についても、医療機関における死亡を全て届け出るものではありませんし、救急現場や、手術に関連した死亡を全て届け出るものでもありません。
また、届けるべき事例かどうかは、医療安全調査委員会(仮称)や患者遺族が行なうのではなく、あくまで「医療機関において」判断すると明記されています。したがって、院長が届出範囲に該当しないと判断している事例に関しては、届出義務違反とされることはありません。
臨床医を中心とした調査委員会での原因究明は、あくまで医学的視点から問題があるかないかの調査になります。
すでにお伝えしているように、調査した結果、故意や重大な過失のある事例あるいは、悪質な事例(いわゆるリピーターやカルテの改ざん・隠蔽)だけは、委員会は捜査機関へ通知しなければなりませんが、「捜査機関は、捜査及び処分に当たっては、委員会の通知の有無を十分踏まえること」(自民党)とされています。
「重大」という意味は、過失本体の大きさを意味し、予見可能性の程度や基準行為からの逸脱の範囲が大きいということであり、「死亡」という結果の重大性をいうものではありません。これは、刑法の基本的な知識です。
このように、医療現場の感覚、チーム医療の感覚を入れて考えていくことになりますから、システムエラーやチーム医療の観点からのミスと判断される事例は除き、どう考えても、個人の責任を問わざるを得ないひどい過失、特に医療者として医道に大きくもとる怠慢に起因する過失だけが重大なものとして絞り込まれることになって、刑事訴追される範囲は、今までより当然狭くなることになります。
上記のような例外的な「重大な過失」を除けば、ミスを犯した人に、再度立ち直るチャンスを与えるための再教育を中心とした「制裁ではない支援型の」行政処分で対応することで、さらに一層刑事司法は後ろに引いた運用を目指しているのです。
したがって、繰り返すまでも無く、医療関係者を中心とする調査委員会から捜査機関へ通知される事例は、極めて限定的な「重大な過失」事例だけであり、通知されない事案には、原則として捜査機関は関与しないことが明記されている通り、刑事訴追は、増えるどころか、明らかに滅るのです。
行政処分の意味は、法権家が考えているものと、一般の人が考えているものとで違います。法律家的には国民の権利義務に関する行政の行為はすべて行政処分であって、医師免許を与えることも行政処分であり、医療機関の開設許可を出すのも行政処分なのです。しかし、一一般には単純に「行政府が、処分する」という悪い意味しか連想しません。
したがって、一般的な考え方を前提とすれば、診療関連他の刑事訴追に代わる行政処分というだけでは、確かに誤解を招くことになります。
もちろん同じような事故を何度も繰り返すようであれば、免許停止や取消しもやむをえません。
医療機関のシステムエラーや、医療チームとしての対応の問題が主要な原因であるならば、医療機関に対して、医療安全の視点からの業務改善勧皆、指導、それでも十分でなければ改善命令等の行政処分で対応することとなります。
ここでも決して責任追及と制裁のためではない(?)のです。
繰り返しますが、ここで言う行政処分は、第一には、医療安全に役立てるためということで、良き方向への指導・助言を意床し、決して制裁を意味するものではありません。
この点をより明確にするには、診療関連死について医師と医療機関への行政処分は、問題となった医師と医療機関が再発防止策をとって同じような事故を繰り返さないための処分、すなわち、医師の場合なら再教育、医療機関については勧告が原則的な措置になることを予め明確に示すことが考えられます。
厚労省が示すであろう第三次試案ではそのような点も明確化するよう努力していく所存です(繰り返しますが、厚労省自身も、決して制裁中心の行政処分強化を考えているわけではないので、この点は十分に実現可能です)。
② 診療関連死の事例があった場合に医療機関からの相談に応じる窓口を設ける必要があります。
③ 従来の、刑事訴追を受けた後の行政処分ではなく、今回の新しい仕組みの一つとして、刑事罰に代わる再教育を中心とした行政処分の方向性を明確にするために実際の行政処分内容を決定する、医学会、医師会、法曹界からの代表を中心とした、分科会を、医道審議会の下に、作るということの議論も必要になります。
④ 診療関連死の原因究明は解剖を前提としていますが、小児の事例等では解剖の同意は得られにくいこともあり、死亡時画像病理診断(Ai)という新しい手法も原因究明のために、導入することの議論も必要になります。
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