福島県立大野病院事件論告求刑公判(0)
ロハス・メディカルブログ 2008年03月21日
http://lohasmedical.jp/blog/2008/03/post_1124.php
本日午後開廷です。
入れるか分かりませんが行って参ります。
福島県立大野病院事件論告求刑公判(1)
ロハス・メディカルブログ 2008年03月21日
http://lohasmedical.jp/blog/2008/03/post_1125.php (現在更新中!)
福島県立大野病院事件◆Vol.9
検察の求刑は禁固1年、罰金10万円
起訴事実通りに事実認定、「医師の過失も、結果も重大」
橋本佳子(m3.com編集長) 2008年03月24日
http://www.m3.com/tools/IryoIshin/080324_1.html
福島地裁で福島県立大野病院事件の論告求刑が3月21日行われ、検察は被告の加藤克彦医師に対して、業務上過失致死罪で禁固1年、医師法第21条違反で罰金10万円をそれぞれ求刑した。検察は「産婦人科医としての基本的注意義務を怠っており、過失の程度は重大。また夫と子供を持つ女性の死亡という結果も重大である」とし、「厳正に対処する必要がある」と述べた。
公判後の記者会見で、主任弁護人の平岩敬一氏は、「禁固1年罰金10万円の求刑は、予想よりはやや厳しいものだが、想定の範囲内。検察は自らの都合のいい事実だけを並べて組み立て、求刑している。次回5月16日の最終弁論では、その一つひとつに対して反論していく」との見解を示した。
論告求刑を端的に形容するなら、「昨年1月の初公判における冒頭陳述をもう一回聞いたようなもの」(公判を傍聴していた人の意見)というのが一番妥当だろう。これまでの計12回の公判で、加藤医師の弁護人は、周産期医療や胎盤病理の専門家の鑑定書を提出し、証人尋問を行い、起訴事実への反論を展開した。しかし、検察は後述するように、これらの鑑定書・供述について、「中立性・正確性が保証されているとはいえず、首是しがたい」などとして、起訴事実にほぼ近い事実認定の下、求刑をした。
「論告要旨」は約160ページに及ぶ
この日、27席の一般傍聴席を求めて並んだのは、171人。初公判時は26席に対して349人が並んだことを考えるとやや少ないものの、報道陣も多数取材に来ており、世間、そして医療界の関心の高さがうかがえた。
論告求刑とあって、報道各社が取材に来ていた。
公判は午後1時30分開廷、途中10分の休憩をはさんで、午後6時20分まで行われた。検察の「論告要旨」は160ページを超すものだった。これを計4人の検察官が交代に読み上げた。
加藤医師は、業務上過失致死罪と医師法第21条違反に問われている。これらに対して、
(1)どのような事実認定をしたか
(2)その事実認定に何の証拠を用いたか――という視点から論告求刑を検証する。
検察による業務上過失致死罪の事実認定は、以下のように要約できる。これは起訴事実と変わっていない。
1.死亡した女性は、帝王切開手術の既往があり、全前置胎盤だった。加藤医師は、手
術前に、超音波検査などを行っており、癒着胎盤のリスクが高いことを予想できた。
遅くても手術開始後、用手的剥離が困難になった時点で、癒着胎盤である認識した
ことが認められる。
2.癒着胎盤は、子宮後壁から前壁にかかる、嵌入(かんにゅう)胎盤である。
3.用手的剥離が困難になった時点で、そのまま剥離を続ければ大量出血の危険性が
あるため、子宮摘出術に切り替えるべきだったが、それを怠った。クーパーによる剥
離を行い、結果的に大量出血を招いた過失がある。
4.死因は大量出血による出血性ショックであり、心室細動に至り、死亡した。死亡結
果と加藤医師の過失と因果関係があることは明らか。
「医療界が抗議している中では中立性が保障できず」
これらの事実認定の根拠としたのは、「入院カルテ中の麻酔記録と、手術経過を記した医師記録」、さらには起訴前に実施された病理鑑定と鑑定、加藤医師をはじめとする関係者に取り調べを行った際の供述調書だ。
【警察・検察が依頼した鑑定】
・病理鑑定医:患者死亡直後の2004年12月末に摘出子宮の組織検査を実施、2005年6
月に富岡警察署(県立大野病院の地元警察署)に鑑定書を提出、2007年1月に同鑑定
に対する検察からの照会に対して回答。
・鑑定医:2005年10月に鑑定書を提出。
【弁護側が依頼した鑑定】
・病理鑑定医:2006年11月に鑑定書、2007年8月に鑑定書追加を提出。
・鑑定医A:2006年12月と2007年9月にそれぞれ鑑定意見書を提出。
・鑑定医B:2006年3月に意見書、2007年1月に鑑定意見書、同10月に
鑑定意見書追加を提出。
公判では弁護側が別途依頼した鑑定書を提出したが、検察は、(1)鑑定に使用した資料(各種診療記録類、病理組織のプレパラートなど)は不十分なものである、(2)2006年2月の逮捕、3月の起訴後に実施したものであり、立場上、被告に不利な内容を書きにくい状況にあった――などの理由から疑問視した。特に、(2)の点について、「日本産科婦人科学会などが、(加藤医師の逮捕・起訴に対して)抗議声明を出している中で、学会に反する結論を導きにくく、過失を認める供述もしにくい。中立性・正確性を期待することはできない」という見解を示した。 さらに加藤医師をはじめ、関係者の公判前の供述調書と、公判での証言が一部異なる点があったが(「公判では検察側に不利な証言続く」などを参照)、「自己の責任を回避している」「被告人を有利に導きたいという考えから、事実に反する証言をした」などとして公判での証言には問題があるとし、供述調書を尊重した。
院長は産科の専門外、要否の判断は本人
次に医師法第21条違反について。当時の県立大野病院のマニュアルには、「医療過誤が疑われる場合に、院長が届け出る」となっていた。
大野病院の院長は帝王切開手術後、「過誤はあったのか」と加藤医師に尋ねたが、加藤医師は「ない」と答えている。したがって、
(1)院長は産科の専門外であり、届け出の要否を判断するのは加藤医師である
(2)そもそも本来、異状死の届け出は死体を検案した医師が行うものであり、加藤医師はそのことを知っていた――などと事実認定された。
21条の関連では、弁護側が異状死に詳しい法律家の意見書提出や証人尋問を求めたが、一切認められていない。結果的に、21条については、加藤医師と院長への尋問以外の証拠はない。
「最初から結論ありき」は弁護側か検察か
前述の通り、検察は、医療界が加藤医師の逮捕・起訴に強く抗議している現状にあって、弁護側が提出した鑑定書、手術関係者や鑑定人の公判での証人尋問は信頼性に欠けるとした。「最初から一定の結論を想定して、鑑定を行っている」(検察)。
しかし、この日の論告求刑では、「最初から結論あり」は検察の方であると解釈できる場面があった。その象徴は以下の点である。
検察は、「クーパーで無理に胎盤を無理に剥離したことが、大量出血を招いた」としている。前述のように検察は「麻酔記録」に依拠している。だが、血圧や脈拍の記載は正しいとしながらも、出血状況については、(1)出血→出血の吸収→出血量の計測→報告→麻酔記録への記載という過程を経る、(2)本手術の手術経過から判断しても、麻酔記録の記載と、実際の出血状況は必ずしも対応していない――などの理由から、「必ずしも実際の出血状況を記載しているわけではない」としているのである。
その上で、「用手的剥離を約2分、続いてクーパーで14時40分から約10分間胎盤剥離を行い、クーパー剥離開始時に既に約2000mL(羊水込み)の出血があり、剥離終了後の14時55分ごろまでには約5000mL(羊水込み)に達していた」とし、「クーパーによる剥離開始を境に、1分間当たりの出血量が著しく増加した」と結論付けている。しかし、加藤医師が術後に書いた手術記録に「約15分。約5000mL」との記載があるなど関係すると思われる証拠はあるものの、麻酔記録には14時52分時点での出血量は「約2555mL」と記載されている。
術前の診断から、帝王切開手術、死亡に至るまでの一連の流れで、「誰の意見、何の書類、どんな記載を証拠として採用するか」によって、「いったい何が起こったのか」という事実認定が、つまり加藤医師の過失の有無、および死亡との因果関係の有無が、当然ながら変わり得る。さて裁判所は、何を証拠とし、いかに事実認定するのだろうか――。次回の公判は5月16日で、弁護側の最終弁論が行われる予定になっている。判決は、今夏か秋ごろになる見通しだ。
なお、論告求刑の最後に、検察は「情状関係」を述べ、厳しい対処を求める検察の姿勢がうかがえた。この点については、「被告は医師の社会的信頼を低下させた」で紹介する。
福島県立大野病院事件◆Vol.10
「被告は医師の社会的信頼を低下させた」
検察が“医療崩壊”を加速しかねない論告求刑を展開
橋本佳子(m3.com編集長)
http://www.m3.com/tools/IryoIshin/080324_2.html
福島県立大野病院事件の論告求刑が3月21日に行われたが(詳細は「検察の求刑は禁固1年、罰金10万円」を参照)、その最後の場面で検察は、約15分にわたり、「情状関係」を読み上げた。
被告の加藤克彦医師の2006年2月の逮捕、3月の起訴に対しては、周知の通り、日本産科婦人科学会をはじめ、多くの医療関係団体が抗議声明を出した。しかし、検察にとっては、こうした現状は全く関係ないものだったのだろう。「情状関係」は、“医療崩壊”を加速させかねない内容だが、以下にあえて紹介する。
【3月21日検察の論告求刑「情状関係」】
(※検察が読み上げたものを書き取った内容のため、完全に再現したものではなく、概要であることをご了承ください)
本件は、産婦人科医の被告が、29歳の妊婦の第二子の帝王切開手術において、クーパーで無理に胎盤剥離を行い、大量出血を来して死亡させた業務上過失致死罪と、異状死の届け出をしなかった医師法21条違反の事案である。
産婦人科医としての基本的注意義務を怠っており、過失の程度は重大。胎盤を用手的剥離する際、剥離を継続すれば大量出血し、生命の危険があることを十分に予見しながら、子宮摘出術に切り替える注意義務を怠った。安易にクーパーを用いて無理に剥離を行い、大量出血させ、被害者を死亡させた。
帝王切開の既往がある前置胎盤の症例では、癒着胎盤の確率は24%と高い。被告人は、被害者が帝王切開既往で、全前置胎盤であり、胎盤が前回の切開創に付着していると認識していた。手術時、子宮前壁に血管の怒張があり、超音波検査で、このことを確認していた。さらに臍帯を引いても胎盤がはがれず、用手的剥離の際は、徐々に子宮と胎盤の間に指が入らなくなった。
癒着胎盤については、無理に剥離すると、大量出血、ショックで死亡の原因となること、癒着胎盤を認めた場合には子宮摘出手術に切り替えることは、基本的な産婦人科の教科書などに書いてある知見。先輩医師からも、2万mLほどの大量出血の症例を聞いていた。
産婦人科医としての基本的な知見からも、術前・術中の様々な状況などからも、大量出血の可能性を十分に予見できた。しかし、「手で剥離できない場合でも、剥離を継続しても大量出血しない場合もあり得るだろう」などとして、母体と児の生命の安全を委ねられた産婦人科医としては安易・短絡な判断により、クーパーで無理に剥離を行った。
その結果、広範囲から湧き出るような出血となり、午後2時55分ごろには約5000mLもの大量出血になった。最終的な出血量は約2万445mL。午後2時55分ごろには、血圧は上が約50、下は約30まで下がり、出血性ショックになった。これは基本的注意義務に著しく違反した悪質な行為であることは明らかであり、被告の過失の程度は重大である。
本件の結果も重大である。被害者は、夫と3歳の子供を持つ29歳の女性。第二子の誕生を心待ちにしていた。出産後、対面して、「小さい手だね」と声をかけた。しかし、その後、予期せず死亡し、最後に夫や子供に声をかけることもできなかった。今後、長い将来のあったはずの女性であり、何物にも代えがたい生命を奪った結果は重大であり、被害者の無念が察せられる。
遺族との示談などは行われていない。被告人は公判で、自己の手技について、適切な行為であると主張している現状では、その見込みも乏しい。
被害者の遺族は、手術開始から4時間経過して初めて、蘇生措置が行われていることを知らされた。さらに出血死した現実をいきなり突きつけされ、深い悲しみを抱き、被害者感情は厳しい。「まさか亡くなるとは思わなかった。今、蘇生しているとの言葉を聞き、衝撃を受けた」「子供たちが不憫で、母親を奪った被告人は絶対に許せない。厳重な処罰を望む」などしている。突然、被害者を失った遺族が、こうした感情を抱くのは当然。
被告人は、自己の責任回避のため、供述を変えるなどしており、遺族に対して、真摯な反省をしているとは認められない。例えば、用手的剥離が困難になった状況、クーパーの使用目的、剥離中の出血や血圧低下の状況などについて、捜査段階の供述、手術当日の遺族への説明や手術記録などから変えており、信用できない弁解に終始している。こうした責任回避の行為は、本件の遺族だけでなく、わが国の患者全員に医師への信頼を失わせ、医療の発展を阻害する行為であり、非難に値する。
被告は被害者を自ら検案し、その異状を認識していたが、医師法に基づく届け出も怠った。警察が本件を知ったのは、約3カ月後の2005年3月31日に、事故調査委員会の調査結果が公表され、報道されたのがきっかけである。24時間以内に届け出が行われなかったために、手術関係者の記憶は曖昧になり、胎盤もなくなるなど証拠も散逸、捜査に支障を来した。
医療は侵襲行為を伴うもので、産婦人科手術は母体と児の生命に対する危険性を内包し、産婦人科医には高度の注意義務が課せられる。医師は社会的信頼を負うもので、患者の生命・身体の安全を全面的に委ねられる存在であり、その行為には重い責任が課せられる。しかし、被告人は安易な判断により、産婦人科医としての基本的な注意義務に違反し、医師に対する社会的な信頼を失わせた。
さらに、術前のインフォームド・コンセントは不十分であるとされた。大量出血の状況などの報告も遅れたため、元気な姿を待ちわびていた遺族に最悪の事態を伝えることになり、遺族感情を厳しいものにした。この行動も医師の社会的信頼を低下させた。
大量出血に至り、家族への説明の余裕がない状況になったものの、院長らが応援医師を依頼するかとの話があったが、必要がないと断った。これは不可解であり、専門家として重い社会的信頼を負う立場であるという認識を持っていたのが疑問だ。以上から、大野病院の産科医長として地域医療の大きな一端を担ってきたことなどを考慮しても、厳正に対処する必要がある。
帝王切開手術ミスで死亡、産婦人科医に禁固1年求刑…福島
2008年3月21日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080321-OYT1T00534.htm?from=main3
福島県立大野病院で2004年、帝王切開手術のミスから女性(当時29歳)を失血死させたなどとして、業務上過失致死と医師法(異状死体の届け出義務)違反の罪に問われた産婦人科医加藤克彦被告(40)の論告求刑が21日、福島地裁(鈴木信行裁判長)であった。検察側は「基本的注意義務に著しく反し、過失の程度は重大」として禁固1年・罰金10万円を求刑した。
論告などによると、加藤被告は04年12月17日、同県内の女性に対する帝王切開手術で、子宮に癒着した女性の胎盤をはがして大量出血させ、約4時間後に失血死させたとされる。また、死体検案で異状を認めたにもかかわらず、24時間以内に警察に届け出なかった。
検察側は、胎盤が子宮に癒着してはがれにくく大量出血を招く危険性があることについて、「加藤被告は遅くとも胎盤を手ではがした時点で認識していた」と主張。「癒着を認識した時点で胎盤をはがす行為を中止し、子宮摘出に移る義務があった」と指摘した。弁護側は「胎盤を最後まではがした方が子宮の収縮による止血が期待でき、適切な処置だった」などとして無罪を主張している。弁護側の最終弁論は、5月16日に行われる。
日本産科婦人科学会や日本医師会などは、加藤被告が逮捕されたことに相次いで抗議声明を発表。もともと訴訟リスクの高い産婦人科医離れを加速させたとの指摘もあり、司法判断が注目されている。
帝王切開手術中死亡、産科医師に禁固1年求刑 福島地裁
朝日新聞 2008年03月21日
http://www.asahi.com/national/update/0321/TKY200803210335.html
福島県立大野病院で04年、女性(当時29)が帝王切開の手術中に死亡した事件で、業務上過失致死と医師法(異状死体の届け出義務)違反の罪に問われた産科医加藤克彦被告(40)の論告求刑公判が21日、福島地裁(鈴木信行裁判長)であった。検察側は「産婦人科医としての基礎的な注意義務に違反し、医師への信頼を失わせた」などとして、加藤被告に禁固1年と罰金10万円を求刑した。 検察側の冒頭陳述などによると、加藤被告は胎児を取り上げた後に胎盤をはがしたが、胎盤が子宮に癒着していたためなかなかはがれず、大量出血が起きたとされる。 検察側は、加藤被告は事前に胎盤癒着の可能性が高いと診断しており、無理にはがすと大量出血の危険性があることを専門書で知っていたと指摘。胎盤をはがすのが難しいと判断した時点で、加藤被告には、子宮摘出に移る義務があったと主張している。
一方、弁護側は、癒着胎盤はすべてはがしきるのが臨床の現場では主流であり、胎盤をはがすことによって止血も期待でき、加藤被告の医療行為は適切だったなどとして無罪を主張している。
公判は、5月16日に弁護側の最終弁論で結審し、今夏ごろに判決が言い渡される見通しだ。
加藤被告に禁固1年罰金10万円を求刑 大野病院事件公判
福島民友ニュース 2008年3月21日
http://www.minyu-net.com/news/news/0321/news14.html
福島県大熊町の県立大野病院医療過誤事件で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた大熊町下野、産婦人科医加藤克彦被告(40)の論告求刑公判は21日、福島地裁(鈴木信行裁判長)で開かれた。検察側は禁固1年罰金10万円を求刑した。
公判では癒着胎盤という稀少な症例に対する手術中の措置が大きな争点になっている。検察側鑑定医が「胎盤はく離が困難になった時点で中止すべき」としたのに対し、弁護側鑑定医は「はく離は完了すべき」とするなど12回に及んだ公判では検察、弁護側が真っ向から対立していた。
また、多くの医療団体が強制捜査に踏み切った捜査手法などに抗議するなど全国的な注目を集めたほか、医師法21条の異状死についても事件をきっかけに学問的な議論が生じている。
起訴状によると、加藤被告は平成16年12月17日、楢葉町の女性=当時(29)=の出産で帝王切開手術を執刀し、癒着した胎盤をはがし大量出血で女性を死亡させた。女性が異状死だったのに24時間以内に警察署に届けなかった。
大野病院医療事件、加藤被告に禁固1年求刑
2008年3月21日 福島民友ニュース
http://www.minyu-net.com/news/news/0321/news14.html
大熊町の県立大野病院で2004(平成16)年12月、帝王切開で出産した女性=当時(29)=が手術中に死亡した医療事件で、業務上過失致死と医師法違反(異状死の届け出義務違反)の罪に問われた産婦人科医加藤克彦被告(40)の論告求刑公判は21日、福島地裁(鈴木信行裁判長)で開かれ、検察側は禁固1年、罰金10万円を求刑した。
弁護側の最終弁論は5月16日午後1時30分から、同地裁で開かれ、結審する。
これまで開かれた12回の公判で、検察側は加藤被告は手術による大量出血を予見し胎盤のはく離を中止する義務があったとして、加藤被告の過失により女性が死亡したと主張。一方、加藤被告側は「手術にミスはなかった」と起訴事実を全面否認、無罪を主張している。
帝王切開で死亡事故 医師に禁固1年を求刑
News24 2008/3/22
http://www.news24.jp/105625.html
福島・大熊町の県立大野病院で04年、帝王切開の手術を受けた女性が死亡した事件で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われている産婦人科の医師の論告求刑公判が21日、福島地裁で開かれ、検察側は医師に禁固1年、罰金10万円を求刑した。
起訴状によると、大野病院の産婦人科医・加藤克彦被告(40)は04年、女性(29)の帝王切開の手術をした際、無理に癒着した胎盤を引きはがして死亡させたとされている。
論告で、検察側は「癒着した胎盤を無理にはがした行為は、安易かつ短絡的な判断。大量出血を招いて患者を死亡させた過失は重大」として、加藤被告に禁固1年、罰金10万円を求刑した。
公判後、弁護側は会見し、「検察の主張は、実際の診療行為を理解していない証拠」と反論した。
大野病院医療事故:「注意義務に違反」検察が厳しく非難 地裁で禁固1年求刑 /福島
毎日新聞 2008年3月22日
http://mainichi.jp/area/fukushima/news/20080322ddlk07040281000c.html
県立大野病院の医療事故を巡る公判で21日、検察側は「基礎的な知見による基本的な注意義務に著しく違反した悪質なもの」と、同病院の産婦人科医、加藤克彦被告(40)の医療行為を厳しく非難した。弁護側は公判後に「検察側の都合の良いところだけを文章化した」と論告を批判し、双方の対立はさらに明確になった。
加藤被告は、帝王切開手術中に女性を死亡させた業務上過失致死と医師法違反の罪に問われている。この日午後1時半から、福島地裁(鈴木信行裁判長)で第13回公判が開廷。検察側は途中約10分の休憩をはさみ、165ページに及ぶ論告を、午後6時20分ごろまで朗読した。加藤被告は用意されたいすに座り、検察側から提供された紙に目を落として耳を傾け、「禁固1年、罰金10万円」の求刑が述べられた際も、微動だにしなかった。
検察側は、開腹時に子宮の血管が浮き出ていたことなどを挙げ、加藤被告が「術中には癒着胎盤と認識した」と指摘。その上で、加藤被告が「指より細いクーパー(手術用はさみ)なら、胎盤と子宮内壁の間に差し込むことができるだろう」「はく離を継続しても大量出血しない場合もあるだろう」などと考えたとして、「実に安易かつ短絡的な判断により、大量出血を生じさせた」と批判した。
また胎盤はく離の状況やクーパーの使用方法などで、加藤被告の供述が捜査段階と公判段階で変遷しているとし、「責任を回避するため信用できない弁解に終始し、真摯(しんし)な反省や謝罪の態度は見られない。我が国の患者全員に対し医師への信頼を失わせる行為」と指摘した。加藤被告の処置を妥当とした弁護側鑑定には、「資料を十分に検討せず、被告の主張を肯定する結論ありきのもの」とした。一方、平岩敬一主任弁護人は公判後に県庁で会見し、「検察側鑑定医は周産期医療の専門家ですらなく、もっと大きな弱点がある。次回の最終弁論で逐一厳しく反論していきたい」と話した。
産科医に禁固1年求刑/大野病院医療過誤
福島放送 2008年03月22日
http://www.kfb.co.jp/news/index.cgi?n=200803220
大熊町の県立大野病院医療過誤事件で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた大熊町下野上、産婦人科医加藤克彦被告(40)の論告求刑公判は21日、福島地裁(鈴木信行裁判長)で開かれた。
検察側は「被害者の大量出血による生命の危険を十分に予見可能だったのにもかかわらず、産婦人科医として基本的な注意義務に違反し、安易で短絡的な判断により無理に胎盤をはく離した。被害者の無念は察するに余りある」として禁固1年、罰金10万円を求刑した。
全国の注目を集めた裁判は5月16日午後1時半から最終弁論を行い、結審する。
大野病院失血死、禁固1年など求刑
2008年3月22日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/fukushima/news/20080321-OYT8T00831.htm
大熊町の県立大野病院で2004年、帝王切開手術で妊婦が失血死した事件で、執刀した産婦人科医の加藤克彦被告(40)に福島地裁で禁固1年・罰金10万円を求刑した検察側。約4時間半に及んだ論告で、無罪主張を裏付ける弁護側の鑑定の信用性や客観性に疑問を呈したうえで、「安易な判断をして専門医としての信頼を害した」と加藤被告を非難した。
最大の争点は、「癒着胎盤」という特殊な疾患を巡る処置の妥当性。「子宮を摘出せずに胎盤を無理にはがしたのは判断ミス」とする検察側に対し、弁護側は「胎盤を最後まではがした方が、子宮の収縮による止血が期待でき、適切な処置」などと主張している。
検察側はまず、争点の一つである癒着の程度と部位について、検察側証人の県立医大の病理医による鑑定結果を踏まえ、「子宮の後壁(背中側)から前壁にかけて癒着し、胎盤が子宮の筋層に2分の1ほど侵入していた」と指摘。通常1、2分で終えるはく離に約12分かかったことなどからも、弁護側が主張するよりも範囲が広く、程度が重大だとした。
さらに、癒着胎盤の予見可能性について、加藤被告が手術前に女性と夫、看護師らに子宮摘出の可能性を伝えていたことや緊急時に備えて双葉町の産婦人科医に応援要請をしていたことなどを挙げ、「手術前から癒着胎盤の可能性を認識していた」と判断。帝王切開をして胎児を取り出した後に胎盤を手ではがす際、胎盤と子宮の間に指が入らなくなったことなどから、「遅くとも胎盤を手ではがしている最中には、癒着を認識していた」とした。そのうえで加藤被告方から押収した医学書などに「大量出血の可能性が高いため、子宮を摘出する」などの記述があることなどに触れ、無理に胎盤をはがす処置を回避し子宮を摘出する義務があったと指摘した。
検察側は、加藤被告の処置を評価する鑑定書など弁護側に有利に働くとみられる証拠についても反論。弁護側から提示された事実をもとに鑑定されているなどとして、「結論ありき」と批判した。医師法違反についても「手術用ハサミを使って無理に胎盤をはがしており、異状死は明らか」と述べた。加藤被告は、これまでの公判と同様、グレーのスーツ姿。論告が読み上げられる間、机の上の書面に目を落とし、じっと聞いていた。閉廷後、主任弁護人の平岩敬一弁護士は「検察側の都合のいいところだけ文章にした論告だ。最終弁論では、検察側の主張に逐一反論する」と語った。
産科医に禁固1年求刑 「出血予見できた」 大野病院事件
河北新報 2008年03月22日土曜日
http://www.kahoku.co.jp/news/2008/03/20080322t63027.htm
福島県立大野病院(大熊町)で2004年、帝王切開中に子宮に癒着した胎盤を剥離(はくり)した判断の誤りから女性患者=当時(29)=を失血死させたとして、業務上過失致死罪などに問われた産婦人科医加藤克彦被告(40)の論告求刑公判が21日、福島地裁(鈴木信行裁判長)であった。検察側は「母子の生命を一手に委ねられている産科医として、安易な判断により、幼い子どもを残して被害者を死亡させた過失は重大」と述べ、禁固1年、罰金10万円を求刑した。
論告で検察側は、最大の争点となっている剥離を続けた判断の正否について「手で胎盤を剥離できない時点で癒着胎盤を認識していた。継続すれば生命に危険が及ぶ状況でも漫然と剥離を続けた」と過失を指摘。加藤被告が手術前に子宮摘出の可能性を考えていたことからも、大量出血を十分予見できたと述べた。
冒頭陳述で「大量出血の原因」と指摘していた胎盤剥離でのクーパー(医療用はさみ)使用では「使ったことが過失ではない」と主張を変えながらも、「クーパーを使わなければならないほど癒着した状況だった」と、直ちに子宮摘出に移行すべきだったことを示す根拠の1つに挙げた。
過失なしと結論づけた周産期医療学会の重鎮らによる弁護側鑑定を「胎盤剥離の危険性に目をつむり、剥離に止血効果があるとの一般論で押し通した」「結論が先行し、検討分析が不十分」と厳しく批判。過失ありとした検察側の鑑定医については「一般の医師が行った手術なので必ずしも大家が鑑定する必要はない」として、十分な鑑定能力があったと強調した。
弁護側は5月16日に最終弁論を行う。判決は夏以降の見込み。
起訴状によると、加藤被告は04年12月17日、女性の帝王切開手術で胎盤と子宮の癒着を確認し剥離を開始。継続すれば大量出血すると予見できる状況になっても剥離を続け、女性を失血死させた。
産科医に禁固1年求刑=検察「過失は重大」-帝王切開女性死亡・福島地裁
時事通信社 2008年3月21日
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2008032100848
福島県立大野病院で2004年、帝王切開を受けて出産した女性=当時(29)=が大量出血して死亡した事故で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた産婦人科医加藤克彦被告(40)の論告求刑公判が21日、福島地裁(鈴木信行裁判長)で開かれた。検察側は「産婦人科医師としての基本的注意義務違反に当たり過失は重大」として禁固1年、罰金10万円を求刑した。
論告で検察側は、女性のように以前にも帝王切開を受けたことがあり、前置胎盤の場合には「癒着胎盤の頻度が高くなることは医学書に必ず記載されている」と指摘。胎盤剥離(はくり)を続ければ生命に危険が及ぶ恐れがあると予見でき、子宮摘出などの手術に移るべきだったのに、「被告は漫然と剥離を継続した」と述べた。
産科医に禁固1年求刑 福島県立病院の患者死亡
東京新聞 2008年3月21日
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008032101000900.html
福島県大熊町の県立大野病院で2004年、帝王切開手術を受けた女性=当時(29)=が死亡した事故で、業務上過失致死などの罪に問われた産婦人科医加藤克彦被告(40)の論告求刑公判が21日、福島地裁(鈴木信行裁判長)であり、検察側は「安易な判断で医師への社会的信頼を害した」として禁固1年、罰金10万円を求刑した。
弁護側は無罪を主張しており、5月16日に最終弁論をして結審する。
検察側は論告で、大量出血は十分に予見できたと結論付け「胎盤を子宮からはがす『はく離』が困難になったと認識した時点で、子宮摘出に移行すべきだった」と指摘。「『はく離に器具を用いたことはよくなかったかも』と捜査段階で述べるなど異状死を未必的に認識しながら、警察に届けなかった」と主張した。(共同)
大野病院の裁判 禁固1年罰金10万円求刑
福島中央テレビ 2008年03月21日
http://www.fct.co.jp/news/#200803215192527
大熊町の県立大野病院で帝王切開の手術を受けた女性が死亡し、産婦人科の医師が逮捕、起訴された事件の公判で、検察側は被告の医師に禁固1年、罰金10万円を求刑しました。
医師法違反などの罪に問われているのは、県立大野病院の産婦人科医、加藤克彦被告です。
加藤被告は、2004年に、当時29歳の女性の帝王切開の手術をした際、無理にゆ着した胎盤を引き剥がして死亡させたとされています。
きょうの公判で、検察側は「大量出血しているのに胎盤をはがし続けた」と述べ、「明らかな過失がある」と指摘して、被告の医師に禁固1年、罰金10万円を求刑しました。
この裁判、5月には、弁護側が最終弁論を行い、改めて無罪を主張するとみられます。
県立大野病院の医師に求刑
NHK 2008年3月21日
http://www.nhk.or.jp/fukushima/lnews/01.html
4年前、福島県の県立病院で、産婦人科の医師が帝王切開の手術で女性を死亡させたとして業務上過失致死などの罪に問われた裁判で、検察側は、「産婦人科医としての基本的な注意義務を怠った刑事責任は重大だ」と指摘してこの医師に禁固1年、罰金10万円を求刑しました。
福島県大熊町にある県立大野病院の産婦人科の医師の、加藤克彦被告(40歳)は、平成16年12月、帝王切開の手術の際に女性の胎盤を無理にはがし、大量出血を引き起こして死亡させたとして、業務上過失致死などの罪に問われています。これに対し加藤医師は、「手術にミスはなかった」として無罪を主張しています。
福島地方裁判所で開かれた裁判で、検察側は、「加藤医師が大量出血の危険性を認識しながら、手術用のはさみを使って子宮から胎盤を無理にはがし続けたことは過失にあたる」と述べました。そのうえで検察側は、「産婦人科医としての基本的な注意義務を怠っており刑事責任は重大だ。
幼い子どもや夫を残したまま突然、命を絶たれた被害者の無念さは察するに余りある」と指摘し、加藤医師に禁固1年、罰金10万円を求刑しました。
次の裁判は5月16日に開かれ、弁護側が最終弁論を行います。
産科医に禁固1年求刑 福島の患者医療過誤訴訟
産経新聞 2008.3.21
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080321/trl0803211935010-n1.htm
福島県大熊町の県立大野病院で平成16年、帝王切開手術を受けた女性=(29)=が死亡した医療事故で、業務上過失致死と医師法違反(異状死の届け出義務)の罪に問われた産婦人科医、加藤克彦被告(40)の論告求刑公判が21日、福島地裁(鈴木信行裁判長)で開かれ、検察側は禁固1年、罰金10万円を求刑した。検察側は「責任回避に終始する被告の態度は患者と医師の信頼を崩し日本の医療の発展を阻害するもの。幼い子供を残し死亡した被害者の無念は察するに余りある」と指摘した。裁判では、
▽子宮に癒着した胎盤の剥離を継続したことの是非
▽剥離時に手術用ハサミ「クーパー」を使用したことの妥当性
▽剥離に伴う大量出血の予見可能性-などをめぐり、検察側と弁護側が全面的に対立している。
弁護側は「判断に誤りはなく、措置は適切だった。医師法違反については、異状死の定義が不明確な上、被告は当時異状死と認識していなかった」などと無罪を主張している。
論告によると、加藤被告は16年12月17日、子宮から胎盤を無理に剥離すれば大量出血の恐れがあると知りながら、子宮摘出など適切な措置を取らず、クーパーを使って剥離を続け、大量出血で女性を死亡させた。また大量出血による異状死と認識していたにもかかわらず、24時間以内に警察署に届けなかった。
弁護側の最終弁論は、5月16日に予定されている。
大野病院失血死きょう求刑 帝王切開手術中の判断争点
2008年3月21日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/fukushima/news/20080320-OYT8T00764.htm
大熊町の県立大野病院で2004年12月、帝王切開手術で楢葉町の女性(当時29歳)を失血死させたなどとして、業務上過失致死と医師法(異状死体の届け出義務)違反の罪に問われている産婦人科医、加藤克彦被告(40)の論告求刑公判が21日、福島地裁で開かれる。
女性は、胎盤が子宮に癒着してはがれにくい特殊な疾患で、これまで12回の公判では、手術中の判断を巡り、判断ミスとする検察側と適切な処置だとして無罪を求める弁護側の主張が真っ向から対立した。
最大の争点は、癒着を認識した時点で、大量出血を招く恐れがあるとみて子宮から胎盤をはがすことを中止し、子宮摘出に移る義務があったかどうか。公判では、検察側証人の鑑定医が「はく離が困難になった時点で、直ちに摘出に移るべきだった」と述べる一方、弁護側証人の鑑定医2人は「はく離を完了したほうが(子宮の収縮により)止血が期待できる」などと加藤被告の処置を支持し、専門家の意見も分かれた。このほか、癒着の程度や部位、はく離の際にクーパーと呼ばれる手術用ハサミを使用した妥当性なども争点になっており、検察側はこれまでの立証を踏まえて加藤被告の過失を厳しく指摘するとみられる。加藤被告は被告人質問で、「精いっぱいのことをした」などと述べ、過失を否定している。
大野病院医療過誤裁判、21日に求刑公判
福島民報 2008年3月20日
http://www.minpo.jp/view.php?pageId=4107&mode=0&classId=&blockId=628602&newsMode=article
大熊町の県立大野病院医療過誤事件で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた大熊町下野上、産婦人科医加藤克彦被告(40)の論告求刑公判は21日午後一時半から、福島地裁(鈴木信行裁判長)で開かれる。
公判は昨年1月から12回にわたり開かれ、癒着胎盤という産科の希少症例に対する適切な処置などを争点に、検察側と無罪主張の弁護側が真っ向から争った。
中でも検察側鑑定医1人と弁護側鑑定医2人がそれぞれ臨床の観点から鑑定書を作成。検察側は「胎盤はく離が困難になった時点ではく離を中止すべき」、弁護側は「はく離は完了すべき」と相反する結果となった。
論告では、検察側がこれらの証拠調べを踏まえ、弁護側鑑定書の信用性を否定するとともにあらためて有罪を主張するとみられる。
産婦人科医に禁固1年、罰金10万円を求刑
大野病院事件、業務上過失致死と医師法21条違反で
オーマイニュース 軸丸 靖子 2008-03-22
http://www.ohmynews.co.jp/news/20080321/22400
福島県立大野病院産婦人科で2004年12月、帝王切開手術を受けた女性が出血多量で死亡し、執刀した同院産婦人科医の加藤克彦医師が業務上過失致死と医師法21条違反(異状死の届け出義務)に問われた事件で21日、論告求刑があり、検察は「産婦人科医として基礎的な注意義務を怠った執刀医の責任は極めて重い」として、禁固1年、罰金10万円を求刑した。
検察は、帝王切開の既往があった女性の癒着胎盤は予見可能だったにも関わらず、加藤医師が十分な医療体制を取らずに手術を行ったこと、癒着が分かった時点で速やかに子宮摘出に移るべきだったのに無理なクーパー使用を続けて大量出血を起こさせたこと――などを医師の過失として起訴。一方の弁護側は、「ミスはなかった」と医師の過失を全面否定し、争っている。論告で、検察は、加藤医師がこれまで法廷で行った証言は、警察や検察の取り調べでの任意供述とは変わっており、信用できないと重ねて主張。また、弁護側証人は同事件に抗議声明を出している医学界の意向を強く受けており、中立性や信頼性に欠けることを指摘した。
その上で、求刑の理由として、
「(用手剥離の)手指が入らないほど強い癒着胎盤だったのに、クーパーを使って無理な胎盤はく離を10分以上にわたって続け、次々とわき出るような出血を起こさせたのは、医師として基礎的な注意義務違反である」
「癒着胎盤の無理な剥離には大量出血のリスクがあるので、直ちに子宮摘出すべきというのは産婦人科医として基本的な知識。大量出血を予見する事情は多数存在したのに、回避しなかったのは、被告は医師として安易な判断をしたといえる」と、加藤医師の判断ミスを断定した。
さらに、これまでの公判では触れなかったが、加藤医師が廊下で待っていた女性の家族に説明をしていなかったことについても触れ、
「出産の喜びを期待して廊下で待っていた家族を、手術開始から4時間、何の説明もなく待たせ、いきなり『すみません、亡くなりました』と最悪の現実を突き付けた。それが遺族の厳しい感情を呼び起した」と、医師の説明不足が患者家族の不安と怒りをあおったと糾弾。
「被告は、公判が始まって以降、自分の責任を回避するために、クーパー使用にいたった供述を変遷させた。なりふり構わず、事実をねじ曲げようとする被告人の言動からは、遺族に対する真摯な態度はうかがわれず、厳しく追及されるべきである」と結論付けた。
また、書面審理のみだった医師法21条違反に関しては、
(1)癒着胎盤自体で妊婦が死亡するわけではなく、被告の過失による失血死なのだから「異状死」にあてはまるのは明らか
(2)被告は自分の無理な胎盤はく離によって大量出血が起きたことを認識していた。死亡後の検案も自ら行っており、失血が死亡原因であることを認識していた
(3)被告は手術直後、「クーパーを使ったのが良くなかったのでは」と考えていたが、病院長に過失の有無を問われたときは「ミスはなかった」と答えた。病院長は産婦人科は専門外なため、被告の回答を信用して異状死の届け出はしなくていいと判断した
(4)医師法21条は憲法38条(自己に不利益な供述は強要されない)に違反するとの意見があるが、過去の最高裁判決に照らして違憲ではない
――などの理由を挙げ、業務上過失致死とともに医師法21条違反も成立すると主張した。
「法廷での被告の証言は信用できない」
論告で、検察が再三強調したのは、加藤医師がこれまでに法廷で行った証言の任意性の欠如と、警察・検察が取った同被告の供述調書の信頼性だ。加藤医師は、法廷でこれまで、警察・検察の取り調べのあいだは「長時間の取り調べで頭がぼーっとしたこともある」「訂正すると取調官が不機嫌になった」「違うところも訂正してもらえなかった」と、供述調書はすべてが事実ではないと主張していた。これに対し検察は、「被告は供述調書の読み上げを受け、サインもしている」「取り調べ中に長時間で疲れたなどの不満はなかった」「被告は弁護人との接見も行っており、弁護人から供述に関するアドバイスも受けていた」として、供述調書には任意性が認められると反論。
特に、公判開始以降、加藤医師が「そうは言っていない」と否定した胎盤剥離の際の描写、『胎盤をはがそうと指3本を入れたが、徐々に入らなくなり指2本に、やがて2本も入らなくなり、指1本も入らなくなった』という表現について(第7回公判参照)、「被告は、供述と公判では発言を変遷させている。自己の責任回避のための事実のねじまげで、信頼できない」
と、繰り返し言及し、法廷での証言よりも、取り調べでの供述の方が信頼性が高いとした。
「抗議声明出した団体の会員の証言は任意性に劣る」
もう1つ、検察が攻めたのは、弁護側が立てた証人の中立性だ。弁護側はこれまでの公判で、周産期医療や胎盤病理の専門家にカルテや麻酔記録、胎盤の顕微標本などの鑑定を依頼し、「加藤医師の医療行為は妥当だった」とする証言を得てきた。これに対し、検察側は、「この事件に関しては日本産婦人科学会など多数の学会が抗議声明を出している。それらの団体に所属する医師の証言には、一定方向の力が働いている。結果ありきで任意性に劣る」と主張。
・大阪府立母子保健総合医療センター検査科の中山雅弘主任部長が行った鑑定について
「証人は、わずか4時間弱で、子宮片や顕微標本の観察、標本の写真撮影という多くの作業を行っている。撮影した写真をプリントアウトしたものを元にした鑑定では、写真の資料価値は限定的。試料の吟味に十分な時間が持てないまま、結果を優先させた鑑定に過ぎない」
・東北大学の岡村州博教授(周産期医学)が行った鑑定について
「実際の事実関係に即した鑑定結果とはいえない。証言内容はことさらに被告に肩入れする内容で、被告人の過失を否定する立場から書かれている」
・宮崎大学医学部産婦人科の池ノ上克教授が行った証言について
「胎盤はく離をいったん始めたら完遂するという証言だったが、本件がそれに当てはまるかについては明言していない」
などと、証人1人ひとり発言内容を細かく否定した。
◇
医師不足や救急医療の崩壊に拍車をかけたとして全国的な注目を集めた同事件の求刑とあって、この日は27の傍聴席を求めて171人の傍聴希望者が並んだ。検察の論告は160ページにわたり、4人の検察官が順番に5時間がかりで読み上げた。
帝王切開:手術中に死亡、産婦人科医に禁固1年求刑
毎日新聞 2008年3月21日
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080322k0000m040079000c.html
福島県立大野病院(同県大熊町)で04年、帝王切開手術中に女性(当時29歳)が死亡した医療事故で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた同病院の産婦人科医、加藤克彦被告(40)の論告求刑公判が21日、福島地裁(鈴木信行裁判長)であった。検察側は「癒着胎盤の危険性を過小評価し、安易にクーパー(手術用はさみ)を使ってはく離を継続し、大量出血を招いた」として禁固1年、罰金10万円を求刑した。
5月16日に弁護側が最終弁論を行い、結審する見通し。
検察側は論告で、加藤被告が手で胎盤を子宮壁からはく離できなかった時点までに「癒着胎盤」を認識していたとし、「大量出血で生命に危険が及ぶことを予見できた」と指摘。そのうえで「産科医の基本的注意義務に違反し、過失は重大。医師への社会的信頼も失わせた」と述べた。閉廷後に会見した弁護側は、「検察側は現実の診療行為をまったく理解していない。検察側の鑑定医も(自分たちが執刀した手術では)癒着胎盤をはく離させている。胎盤はく離を中断した他の事例を(検察側は)公判で明らかにしていない」と反論した。
起訴状によると、加藤被告は04年12月17日、帝王切開手術中、「癒着胎盤」と認識しながら子宮摘出手術などに移行せず、クーパーで胎盤をはがし患者を失血死させた。また、医師法が規定する24時間以内の警察署への異状死体の届け出をしなかった。
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