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(投稿:by 僻地の産科医)
東京女子医大事件、判決の模様について。
今日のニュースを集めてみました。
どうぞo(^-^)o ..。*♡
控訴審も医師無罪、東京女子医大事件
橋本佳子
So-net M3 2009年03月27日
http://mrkun.m3.com/mrq/top.htm?tc=concierge-header&mkep=concierge-header
3月27日、東京高裁において、東京女子医大事件の刑事裁判の控訴審判決があり、業務上過失致死罪に問われていた佐藤一樹医師は、一審同様に無罪となりました。
判決後に開かれた記者会見の冒頭、佐藤医師は次のように語りました。
「一審の無罪判決後、ブログで主張してきたことがほぼ100%認められた判決。医療事故においては、原因究明と再発防止が非常に重要になってきますが、そこまで踏み込んで判決を書いていただいて、いい判決文だと思っています。裁判長が最後に『医療事故にかかわった一人として、またチーム医療の一員として、この事故を忘れずに今後を考えていただきたい』とおっしゃいました。この再発防止についてはブログでも書いており、また今年10月の日本胸部外科学会の医療安全講習会の講師を私は務めます。院内調査報告書がテーマで、心臓外科医として死因はどうであったか、今後の再発防止にはどうすればいいかを学術的にも発表していきます」
この事故は、2001年3月、東京女子医大の当時の日本心臓血圧研究所(心研)で12歳だった患者が心房中隔欠損症と肺動脈狭窄症の治療目的で手術を受けたものの、脱血不良で脳障害を来し、術後3日目に死亡したというもの。事故が明るみになったのは同年の年末で、心臓疾患の治療では全国でもトップクラスの女子医大でのケースだったために、全国紙をはじめ、様々なメディアで報道されました。
人工心肺装置の操作ミスが脱血不良の原因であるとされ、操作を担当していた佐藤医師が業務上過失致死罪で、また医療事故を隠すためにカルテ等を改ざんしたとして執刀医が証拠隠滅罪で、2002年6月に逮捕、翌7月に起訴されました。執刀医に対しては、2004年3月22日に懲役1年執行猶予3年の有罪判決が言い渡されています(控訴はされず確定)。
一方、佐藤医師については、2005年11月30日に無罪判決が出されています。その控訴審判決でも無罪となったわけです。
佐藤医師の起訴事実の「操作ミス」とは、人工心肺装置を高回転で回したことが脱血不良を招いたというもの。しかし、一審判決では、水滴等の付着による回路内のガスフィルターの閉塞が脱血不良の原因であるとし、それは予見できなかったとして、無罪としています。
今日の控訴審判決では、「無罪判決を言い渡した原判決は結論において正当である」としたものの、その理由は一審とは異なっています。
判決の焦点は、(1)死因は何か、(2)水滴等の付着によるガスフィルターの閉塞が脱血不良につながる機序について、予見できたか、の2点。
(1)で、患者の死因は上大静脈の脱血不良は、フィルターの閉塞ではなく、「脱血カニューレの位置不良」であり、それが原因で循環不全が起こり、頭部がうっ血し、致命的な脳障害が起きたとされました。この「脱血カニューレの位置不良」は、人工心肺装置を操作していた佐藤医師の行為に起因するものではないため、過失はないとされたのです。
刑事事件において、過失は、ごく簡単に言えば、死亡原因と医師等の行為との間に因果関係があるか、因果関係がある場合に「予見できたか」(予見できたのにそれを回避しなかったときに過失が認定)という形で判断されます。
つまり、「そもそも佐藤医師の行為と、患者の死亡との間には因果関係なし」とされたわけです。控訴審判決を受け、主任弁護人の喜田村洋一氏は、「裁判所に『因果関係がない』と判断されるような、誤った起訴を検察がしてしまったことが、本件の最大の問題。無罪になったものの、2002年の逮捕・起訴から、約6年半も経過しています。長い間、被告人という立場に置かれていた。無罪になったものの、依然としてマイナスの状態」などと検察の起訴を問題視、慎重な態度を求めました。
この女子医大の事件は、昨年8月に担当医に無罪判決が出た「福島県立大野病院事件」と類似しています。一つは、「医師逮捕」という形で事件が公になった点。もう一つは「院内の調査委員会報告書」が医療事故が刑事事件化するきっかけとなったという図式です。これらの点と、判決の詳細はまたお届けします。
最後に、「遺族への思い」を記者から聞かれた佐藤氏のコメントをご紹介します。
「なぜ亡くなったのかを知りたいという思いを、裁判所が示してくれたことは、ご家族への礼儀になったのではないかと思います。女子医大が作成した(事故調査原因に関する)内部報告書は、患者さんの死因を科学的に考えなかった、あるいは根拠なく書いてしまった。その態度を女子医大に反省していただきたい。僕も同じ病気(心房中隔欠損症)だったのであり、子供を亡くす親の気持ちは計り知れないものがあります。せめて今回、死因が分かったということに関してはご家族にもほんの一部ですけれども納得ができたのではないかと思っています」
東京女子医大事件 二審も無罪
ロハス・メディカルブログ 2009年03月27日
http://lohasmedical.jp/blog/2009/03/post_1667.php
無罪判決:100%完勝
紫色の顔の友達を助けたい 2009年3月28日
http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-658a.html
冤罪で断たれた青年医師の夢
紫色の顔の友達を助けたい 2008年5月28日
http://kazu-dai.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/post_f06b.html
女児死亡事故判決 改ざん足かせ 苦渋8年
中日新聞 2009年03月28日
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2009032890070818.html
「医療事故を刑事裁判で問う難しさを痛感した」。東京女子医大病院で、心臓手術を受けた小学六年平柳明香さん=当時(12)=が死亡した事故で、佐藤一樹医師(45)を再び無罪とした控訴審判決。困難な事実認定。遺族は落胆の表情を示した。 (<1>面参照)
東京高裁の中山隆夫裁判長は「大学から遺族に情報が正確に伝えられず、司法解剖もされなかった。死因をはじめ事実認定に困難が生じ、医療事故の教訓を残した」と異例の説諭をした。
明香さんの父利明さん(58)は、判決後の記者会見で「(説諭は)裁判長が一番言いたかったことだと思って聞いていた。しっかり受け止めたいと思った」と語った。
事故から八年。判決は「人工心肺装置のトラブルが原因」とした東京地裁判決を否定し、チームを組んでいた執刀医のミスが事故につながった可能性に言及した。真相を知りたいと願う遺族は一、二審で異なる事実を示された形になった。自身も医療界に身を置く歯科医師の利明さんは「医療過誤を刑事事件として立証することは、非常に難しいことだと判決を聞きあらためて思いました」と静かな口調で語った。
執刀医が記録を改ざんしたことが裁判長期化の背景にあった。「お互い推論をぶつけあうだけになり真相究明を遠くする。空疎な裁判になった」と大学側を批判。専門家で構成する第三者機関による調査の必要性を訴えた。一方、無罪判決を受けた佐藤医師は「主張してきたことがほぼ百パーセント認められた。遺族は、なぜ女児が亡くなったのかを知りたい。それを高裁が示してくれた」。
「遺族に情報を伝えるために、死亡原因は何かを明確に判断しないといけないのに、医大は心臓外科医を外して、原因を求めようとした」と大学の姿勢を批判。「脳波の検査を執刀医に求めたが、許されなかった。医局の上下関係でできなかった」と振り返った。
■初期対応捜査側にも不手際
<解説>
東京女子医大の医療ミス事件で、弁護側の主張を全面的に認めた二十七日の東京高裁判決は、死亡の原因が執刀医側にあったことを示唆し、同大側の初期対応の問題点や捜査の不手際を事実上批判した。
医療事故が起きた直後、女児の脳波を調べず、医療過誤を想定した司法解剖の依頼もしなかった。執刀医は看護師らに証拠隠滅も指示し、死亡原因の特定を妨げた。大学は事故の後、装置の操作に原因があったなどとする報告書をまとめた。警視庁や東京地検はその構図に沿って立件に踏み切り、人工心肺装置を担当していた被告が逮捕、起訴された。弁護人は「報告書に依拠しすぎた。時間があったのに、きちんと調べなかった。検察の読み違いによって真相が明らかにならなかった」と批判する。割りばしがのどに刺さって死亡した男児の事件や、出産後に母親が死亡した福島県の「大野病院事件」など、医療事故で無罪判決が続いている。医療過誤事件は、高度な専門性が必要とされるなど、医師個人の責任を追及する刑事事件として立件するのにそぐわないという声は、医療界だけでなく検察など捜査機関にもある。
国は医療版の事故調査委員会の設立に向け動いているが、東京女子医大のように医療機関が証拠隠滅を図れば設立されたとしても「絵に描いたもち」になるだろう。「医療事故の教訓を残した」とした裁判長の異例の説諭は、医療機関側に猛省を促している。
東京女子医大女児死亡事故―医師の過失立証難しく 「刑事司法なじまぬ」声も
日本経済新聞 2009/03/28
福島県立大野病院の妊婦死亡事件と、東京・杉並でのどに割りばしが刺さった男児の死亡事件で昨年、相次いで医師の無罪が確定したのに加え、東京女子医大の事件でも無罪が言い渡された。医師の判断や治療技術に刑事責任を問う難しさが改めて浮き彫りになった。
二十七日の東京高裁判決は一審同様に予見可能性を否定したほか、人工心肺装置の操作と死亡との因果関係も否定、検察側主張をほぼ全面的に退けた。
判決後、佐藤一樹医師が記者会見で「罪の追及で事故の再発防止を図るのは不適切」と述べたように、医療界からは「多職種がかかわる複雑な現代医療に、個人責任を問う刑事司法はなじまない」との声があがっている。
警察に届けられる医療事故は最近では年二百件前後で推移、十年前の四―五倍の水準だ。だが医療従事者が起訴されたのは二〇〇二年の埼玉医大病院事件、〇三年の慈恵医大青戸病院事件など一部で、大半は略式起訴や不起訴処分。立証の難しさから捜査機関側も立件には慎重だ。
ただ被害者側には「捜査で初めて明らかになる事実もある」との声がある。カルテ改ざんなど真相究明を妨げる不誠実な対応が生んだ不信感を払拭(ふっしょく)するのは容易ではない。
厚生労働省は昨年六月、事故原因を調べる第三者機関「医療版事故調査委員会」の設置法案を公表。司法ではなく医療の専門家が真相究明と再発防止を担う仕組みづくりに乗り出した。だが事故調が警察に通報する余地を残し、医療界からは「警察の介入を招く」との拒絶反応が強く、議論は混迷している。
中山隆夫裁判長は判決読み上げ後、佐藤医師に「解剖もなく、証言は分かれ、事実認定は困難だった」と指摘。「万一(同様なことが)起きた場合、このような対応がないように改めて考えなければならない」とし、適切な事故調査の必要性に言及した。
[解説]東京女子医大事件2審も無罪、医療ミスの立証困難
読売新聞 2009年03月28日
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090328-OYT8T00410.htm
専門家も見解割れる
東京女子医大病院で2001年3月、心臓手術を受けた平柳明香さん(当時12歳)が死亡した事件で、東京高裁は27日、業務上過失致死罪に問われた同病院元循環器小児外科助手・佐藤一樹被告(45)に対し、1審に続いて無罪を言い渡した。専門性の高い医療分野における刑事責任追及の問題点が浮き彫りになった。
■事故原因は?
この日の判決はまず、明香さんの死因を、1審と同様、手術中に起きた「重い脳障害」と認定した。その発生原因について、1審は「人工心肺の回路内のフィルターが水滴で詰まり、うまく血液が抜き取れない『脱血不能』状態になったため」と判断した。これに対し2審は、〈1〉脱血は、人工心肺による血液の体外循環を開始した当初からあまり良くなかった〈2〉人工心肺が原因なら、その影響は全身に及ぶはずだが、被害者の下半身には障害が発生していない――ことなどから、「手術中、血を抜くために血管に挿入する管の位置不良が原因」と結論づけた。
手術の際、管を挿入したのは別の医師。2審の結論だと、人工心肺の担当医だった佐藤被告は「事件に無関係」ということになる。ある検察幹部は「2審の判決は、犯人は別にいると言いたいのか……」と驚き、別の幹部は「医療行為は専門家の間でも多様な見方が可能で、立証が非常に難しい」と話した。
■深まる混迷
そもそも、この事件では、病院側と専門学会の調査でも、異なる結果が出るという異例の経過をたどった。
東京女子医大病院が事故後に設置した調査委員会は、01年10月、「人工心肺装置の血液吸引ポンプを高回転にしたまま装置を作動させたことが主な原因」とする報告書をまとめ、病院が明香さんの両親に謝罪。佐藤被告は02年7月、この報告書の内容に沿う形で起訴された。これに危機感を募らせた心臓外科などの専門3学会の合同委員会は02年8月から、独自の原因究明を開始し、「ポンプの回転数が高かったためではなく、フィルターの目詰まりが原因だった」と、病院とは異なる見解の報告書を作成した。
1審判決は、専門学会の報告書の考え方を採用した形だが、今回の控訴審判決はそれも覆し、病院とも学会とも違う「第三の説」を提示したことになる。判決後、明香さんの両親は記者会見で「一つの解釈が出ただけで、それが事実とは思えない。判決を聞いて、むなしかった」と述べ、困惑した表情を浮かべた。
■相次ぐ無罪
医療事故を巡っては、帝王切開手術の際に妊婦が死亡した福島県立大野病院での事故で、福島地裁が昨年8月、産科医に無罪を言い渡し、確定した。また、杏林大付属病院(東京)で割りばしがのどに刺さった男児(当時4歳)が死亡した事故でも、昨年11月、東京高裁で1審に続いて無罪が言い渡された(確定)。
医療事故の刑事裁判では、患者の死亡と医療行為との因果関係が問題になり、因果関係があるとされた場合でも、当時の医療水準に照らして、事故を予見できたかどうかや、結果を回避できたかどうかが問われる。無罪が相次ぐ背景には、こうした立証の難しさに加え、医療の専門性の高さや医師の裁量の大きさなどがある。
医療事件を担当したことのある刑事裁判官は無罪が続いていることについて、「病院側がミスを認めていたことなどから、捜査機関が『過失あり』との心証を抱いて突っ走ってしまい、医師の裁量を逸脱したミスがあったかどうか見極めがおろそかになったのではないか」と分析する。この日の判決は、「生体のメカニズムについて未解明な部分が多く、解剖も行われていないため、死因についても様々な見解がある」と、事件の特殊性を指摘したが、検察幹部からは「原因の究明や被害者が納得する説明を担う機関ができれば、刑事司法が出ていく場面は少なくなる」との声も出ている。
「中立的調査機関が必要」
今回の事件では、明香さんが亡くなってから、この日の控訴審判決まで約8年を要している。杏林大付属病院で1999年、のどに綿あめの割りばしが刺さった当時4歳の男児が死亡した事故で、業務上過失致死罪に問われた担当医のケースも、昨年12月に2審の無罪が確定するまで、約9年5か月かかった。
現在、都内の病院で働く佐藤被告は控訴審判決を前にした取材で、「無罪になっても、今さら大学病院の心臓外科医には戻れない」と語っている。医療過誤を巡る刑事裁判は、遺族だけでなく、無罪になった医師の人生にも取り返しのつかない影響を与える。
今回の事件では、病院と学会が別個に調査を行って異なる結論を出したことが混乱の一因となっており、改めて早い段階で中立的な専門家を集めて、原因の究明に当たる必要性が浮かび上がった。
厚生労働省は現在、医療事故の第三者機関「医療安全調査委員会」(医療版事故調)の創設を検討中だが、医学界の反対で法案提出がストップし、実現のめどは立っていない。東京・港区の愛育病院で新生児科部長を務める加部一彦医師は「医療事故が起きた場合、患者も医療界も『本当は何が起きたのか』『どうすれば良かったのか』を知りたい。そのためにも、事故調のような機関を早期につくる必要がある」と指摘している。
手術死、2審も医師無罪…東京女子医大事件 別の医師ミス示唆
読売新聞 2009年03月28日
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090328-OYT8T00389.htm
東京女子医大病院(東京都新宿区)で2001年、心臓手術中に人工心肺装置の操作を誤り、平柳明香さん(当時12歳)を死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた同病院元循環器小児外科助手・佐藤一樹被告(45)の控訴審判決が27日、東京高裁であった。
中山隆夫裁判長は、1審・東京地裁判決と同様に無罪を言い渡したが、死亡の原因については、佐藤被告とは別の執刀医のミスを示唆するなど、1審とは異なる判断を示した。検察、地裁、高裁がばらばらの原因を指摘したことになり、医療事故を刑事司法の世界で裁くことの難しさを改めて印象づける結果となった。佐藤被告は01年3月、明香さんの手術の際、同装置の吸引ポンプを高回転にした過失により回路のフィルターを水滴で詰まらせ、血液がうまく抜き取れない「脱血不良」状態を招き、脳障害で明香さんを死亡させたとして、起訴された。
05年11月の1審判決は、フィルターの目詰まりという装置の不具合が原因で脱血不良となったとした上で、目詰まりについて「当時の医療水準では危険性を予測できなかった」として無罪を言い渡したため、検察側が控訴していた。
この日の判決は、「佐藤被告とは別の執刀医が血管に挿入した管の位置が悪かったことで、脱血不良が続き、致命的な脳障害を招いた」と1審とは異なる原因を認定。「人工心肺装置の問題が原因になったとは言えない」と佐藤被告の責任を否定した。
判決は、1審判決の認定通りフィルターの目詰まりが原因だった場合に、佐藤被告の責任が問えるかについても検討。当時、目詰まりの危険性について指摘した論文がないことから、「被告に予見可能性があったとは言えない」と述べた。この事故では、カルテを改ざんした同病院元循環器小児外科講師(53)が証拠隠滅罪に問われ、04年3月に懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を受け、確定している。渡辺恵一・東京高検次席検事の話「検察側の主張が認められず、遺憾である。判決内容を精査して、今後の対応を決めたい」
「医療チームの過誤は事実」
判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見した佐藤一樹被告は、無罪の結論にも笑顔はなく、「私の主張をすべて認めていただいた。裁判所としては、どういう原因で亡くなったのかを、必ず知らせなければならないと考えたのだと思う」と、静かに話した。この日の法廷で、中山隆夫裁判長は、「手術チームによる過誤で明香さんが亡くなったことは事実で、正面から受け止めてほしい」と述べた。この点について、佐藤被告は「自分も子どものころ(明香さんと)同じ病気だったので、ご家族の気持ちはよく分かる。私もチーム医療の一員であったということを重く受け止め、今後は学会などで、再発防止に向けた発言をしていきたい」と話した。
一方、明香さんの両親も会見し、父の平柳利明さん(58)は「今日まで非常に長かった。1審と2審で結果が違い、改めて医療過誤を刑事で立件するのは難しいと思いました」と沈んだ声で話した。ただ、中山裁判長の言葉については、「私たちが本当に言いたかったこと。あの言葉で十分だったとも思う」と話した。
東京女子医大 操作担当医 二審も無罪 女児事故高裁判決死因 執刀医ミス示唆
東京新聞 2009年03月28日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009032802000056.html
東京女子医大病院(東京都新宿区)で心臓手術を受けた小学六年の平柳明香さん=当時(12)=が死亡した事件で、血液を循環させる人工心肺装置を担当し、業務上過失致死罪に問われた元同病院医師佐藤一樹被告(45)の控訴審判決で、東京高裁は二十七日、一審東京地裁の無罪判決に続き無罪(求刑禁固一年六月)とし、検察側の控訴を棄却した。別の医師のミスが原因との見方を示す異例の言及をした。
中山隆夫裁判長は「佐藤医師の人工心肺装置の操作は原因ではない」と認定。弁護側の「責任者の執刀医(53)らが装置に付属する(血液を体外に出す)脱血管の取り付けを誤った」とする主張を全面的に認めた。その上で「手術中に明香さんの体から人工心肺装置に血液が十分流れなくなり、頭部にうっ血が生じた可能性が高い」として、執刀医のミスが原因になった可能性が高いとの見方を示した。
一審で「脱血管の位置に問題はなかった」と証言した執刀医について、中山裁判長は「証言は不自然。ほかの医師の証言とも異なっている」と信用性を否定した。一審判決は「人工心肺装置のフィルターが水滴でつまり、血液循環ができなくなり脳障害が起きた」と認定し、水滴で詰まることは予見できなかったとして無罪を言い渡した。高裁の中山裁判長は「(仮にフィルターがつまったことが原因としても)当時の医療水準では予測できなかった」と指摘した。
判決後、中山裁判長は「遺族に情報が正確に伝えられず、司法解剖もされなかった。そのため、死因の認定も困難が生じた。医療事故を起こした場合の教訓を残した。(佐藤医師も)チームの一人で、女児が亡くなった事実を正面から受け止めご冥福を祈ってほしい」と異例の説諭をした。
東京高検の渡辺恵一次席検事の話
検察側の主張が認められず、遺憾である。判決内容を精査して、今後の対応を決めたい。
東京女子医大病院の永井厚志病院長の話
平柳明香さんのご冥福を心からお祈りします。事件発生後、改革をしてきたが一層、安全で高度の医療を提供する大学病院として責務と使命を自覚し、努力を傾注していく。
<東京女子医大病院の医療ミス事件> 群馬県高崎市の小学6年生平柳明香さんが2001年3月、東京女子医大で先天性心疾患の手術を受けた際に、重度の脳障害になり3日後、死亡した。遺族の告訴を受け、警視庁は02年6月、業務上過失致死容疑で佐藤一樹医師を逮捕。脳障害が起きていたことを示す診療記録を改ざんした証拠隠滅容疑で手術のチームリーダーだった執刀医=懲役1年、執行猶予3年の有罪判決確定=を逮捕した。
東京女子医大・手術事故:元助手、2審も無罪 心肺装置操作、関係認めず
毎日新聞 2009年03月28日
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090328ddm041040248000c.html
01年に東京女子医大病院(東京都新宿区)で心臓手術を受けた平柳明香(あきか)さん(当時12歳)が死亡した事故を巡り、業務上過失致死罪に問われた医師、佐藤一樹被告(45)の控訴審判決で、東京高裁(中山隆夫裁判長)は27日、1審の無罪判決を支持し、検察側の控訴を棄却した。
佐藤医師は、助手として立ち会った平柳さんの手術で人工心肺装置の操作を誤って重度の脳障害を生じさせ、死亡させたとして起訴された。1審・東京地裁は「被告が装置の危険な構造に気付かなかったことを責めるのは酷」と予見可能性を否定し、無罪を言い渡した。控訴審判決は「執刀医が装置の管を挿入した位置が悪かったことが原因で脳障害が生じた可能性が高く、被告の装置操作と死亡との因果関係はない」と判断、別の医師のミスが死亡につながったとの見方を示した。
判決言い渡し後、中山裁判長は佐藤医師に対し「明香さんの死を正面から受け止め、冥福を祈ってほしい。このような悲劇が二度と起こらないよう努めてください」と諭した。事故を巡っては、手術チームリーダー(53)が隠ぺい目的で診療記録を改ざんしたとして証拠隠滅罪に問われ、執行猶予付き有罪判決が確定している。
佐藤医師は判決後に会見し「主張してきたことが100%認められた」と語り、喜田村洋一弁護士は「検察は原因究明をきちんとしないまま誤った起訴をした」と批判した。一方、平柳さんの父、利明さん(58)は「カルテの改ざんなどで、客観的事実が分からないまま出された判決。聞いていてもむなしかった」と落胆した。
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■解説
◇医師の間でも見解には相違
1審に続き佐藤医師に無罪を言い渡した27日の東京高裁判決は、検察側の主張を信じて真相解明を求めてきた遺族にとっては酷な結果となった。検察側は病院の内部調査委員会の報告に基づき、佐藤医師を起訴したが、弁護側はこの報告を否定する日本胸部外科学会などの検証結果を証拠提出した。法廷で証言した医師らの意見も分かれ、判決は「医師の間でも見解の相違があり、死因についてもさまざまな見方がある」と指摘。医療事故を刑事事件として扱う難しさを改めて示した。
一方で、診療記録を改ざんした別の医師の有罪は確定しており、今回の無罪判決が病院側の不誠実な対応を帳消しにするわけではない。「一般に難易度が低い」(1審判決)手術で尊い命が奪われ、遺族がいまだに納得できないのも当然だ。医療界は改めて襟を正し、患者本位の医療に尽くさなければならない。
女児死亡で2審も医師無罪 東京女子医大の心臓手術
中国新聞 2009年03月27日
http://www.chugoku-np.co.jp/NewsPack/CN2009032701000548_National.html
東京女子医大病院(東京都新宿区)で2001年、心臓手術中のミスで群馬県高崎市の小学6年生、平柳明香さん=当時(12)=を死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた医師佐藤一樹被告(45)の控訴審判決で、東京高裁は27日、被告の同僚医師のミスが原因と認定、1審東京地裁に続き無罪(求刑禁固1年6月)とし、検察側の控訴を棄却した。
出産後の女性が死亡した「大野病院事件」での福島地裁判決(昨年8月)や、割りばしがのどに刺さり死亡した保育園児の治療をめぐる東京高裁判決(昨年11月)などに次ぐ医師の無罪判決で、医療行為に対する刑事責任追及の在り方があらためて問われそうだ。
1審判決は人工心肺装置のフィルターの目詰まりが死亡原因と認定したが、中山隆夫裁判長は「静脈から血液を抜き人工心肺へ送り出す管の挿入位置が悪く、血液循環が長時間悪化し、脳障害により死亡した可能性が高い」とし、管を挿入した執刀医らのミスが原因との判断を示した。
その上で「人工心肺装置を担当した被告の操作と死亡との因果関係はない」と起訴内容を否定。フィルターの目詰まりについても「当時の医療水準を基準として、被告に予見可能性があったとはいえない」と指摘した。
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