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(投稿:by 僻地の産科医)
青森県からの報告ですo(^-^)o..。*♡
いろんなことが書いてあります。
現状を県としては、かなり正確に捉えているんじゃないか、とおもう。
以前、産婦人科の学会に行ったときに、厚労省の方に、
「分娩の助産師へのシフトは、確実に産科医療の低下に
結びついているという自覚が厚労省にはおありですか?」
とお尋ねしたのですけれど、
一瞬呆気に撮られて、答えに窮して苦笑され
「資格がある、というものを活用していく、ということです」
とお答えになっていました。
住民に対して、産科、(いえ婦人科・癌・良性手術をも含めて)
人員不足のために、確実に医療レベルが低下していて、
もうフォローし切れていない、卵巣嚢腫とか筋腫では、
手術だって3カ月待ちですよ?
一部地域では、初診自体だって完全予約制の1ヶ月待ちですよ?
とか説明責任があるのではないか、と思うのですけれど。。
10年前は140人程度でやっていた仕事が
90人程度ですから。。。(;;)。もう仕方ないですよね?
(青森県として、頑張ってくださることを期待しています)
青森県に、自覚があるなら、それも致し方なしという気がします。
ただし、相当の覚悟が県民にも必要です!
頑張ってくださいね。ではどうぞ。
青森県産科医療体制の将来ビジョン
登録更新日:2007/11/9
http://www5.pref.aomori.lg.jp/iryo/36144/cpub.html
本県の産科医療体制における課題を明らかにし、課題解決に向けた基本方針と対策を定めるため、「産科医療体制の将来ビジョン」を策定しましたので、お知らせします。
産科医療体制の将来ビジョン
~安心・安全な出産のために~
平成19年11月 青 森 県
http://www5.pref.aomori.lg.jp/iryo/36144/attach00001.pdf
Ⅰ.産科医療体制の将来ビジョンの策定にあたって
【ビジョンの性格と役割】
本県においては、産科医や産科医療施設の不足などの産科医療の現状を踏まえながら、限られたマンパワーの中で、安心かつ安全に、妊娠・出産ができる環境の整備が求められています。
そこで、本県の産科医療体制における課題を明らかにし、課題解決に向けた基本方針と対策を定めるため、「産科医療体制の将来ビジョン」を策定するものです。
【策定の目的】
1.ビジョンに定める短期的、中・長期的対策については、青森県周産期医療協議会において具体的に定めることとしており、この際に、併せて、評価指標を定めます。
2.短期的な対策期間の最終年度である平成20年度終了後に、ビジョンの評価を行い、対策の見直しを検討します。
【評価】
1.ビジョンは、将来にわたって、県民が安心かつ安全に、妊娠・出産ができる環境の整備を進めるための基本方針と短期的、中・長期的に実施すべき対策を定めたものです。
2.ビジョンは、対策を行う主体となる、行政(国、県、市町村)、医療機関、医師や助産師、看護師などの医療関係者、関係機関、県民などが、取組みを進める上での指針となるものです。
3.県は、各対策を行う主体との連携と役割分担のもとに、ビジョンの実現に向けて取組みを進めます。
分娩実施施設数の推移(医療施設調査より抜粋)
Ⅱ.本県の産科医療の現状
1.産科医療体制の弱体化
(1)産科医療施設数の減少
出産を取り扱う産科医療施設は減少傾向にあり、住民においては、産科医療施設へのアクセスについて不便が生じているほか、産科医においては、分娩の集中による、勤務環境の悪化が問題となっています。
また、産科を標榜する医療機関のうち、実際に出産を取り扱っている施設は、病院13、診療所21(平成19年4月1日現在。医療薬務課調査)となっています。時間外の出産への対応、訴訟リスク、産婦人科医の高齢化などの理由によって、出産を取り扱わない産科診療所が増加しています。
(2)勤務環境の悪化による産科医の疲弊
産科医療においては、出産の進行状況に個人差があること、状態の急変も珍しくないことなどから、即時の医療対応が求められています。このため、少ない医師数で対応する病院、概ね1人の医師が診療を担う診療所のいずれにおいても、産科医の勤務状況は厳しいものとなっています。
参考:「青森県における産科医療の現状と将来展望に関する調査研究」より
(本県及び秋田県北の公的・私的病院17機関とそこに勤務する全産婦人科医52 名に対するアンケート調査実施)
1.弘前大学を除く13 公的病院のうち、産婦人科医定員数に達しているのは5 病院。うち3 病院で産休の医師が発生し、実質的に定員を満たしているのは2 病院。
2.月間勤務時間は概ね200 時間から300 時間で、月間の時間外労働は、24 時間~124時間
3.労働環境状況についての医師アンケートでは、施設の医師数を不足と感じている割合が85%を占めており、当宅直の現状を過重と感じている割合が50%を超えている。医師不足感と過重感のある当直のため、自分自身の仕事量を過重と感じている産婦人科医は60%を超えている。
(3)産科医の高齢化
本県の産婦人科医の年齢構成をみると、60代以上の占める割合が37%であるのに対し、20代、30代は18%となっています。産科医志望者が減少しているなか、今後、産科医の高齢化が進むことで、ますます産科医療を支える人的資源が減少することが考えられます。
2.県民の不安・負担
産科医療施設までの距離が遠くなったことにより、妊婦とその家族には、妊婦健診や出産ための入院などの際に身体的・経済的な負担が生じているほか、状態が急変した際に、速やかに医療機関へ受診できるだろうかといった精神的な負担も生じています。
また、妊娠や出産に直面していない県民の間にも、安心して出産できなくなるのではないかという漠然とした不安が生まれることが懸念されます。
参考:『公立野辺地病院産科休診に係る妊婦や乳児の母親に対する意識調査』
調査期間:平成17 年9 月~平成18 年3 月
対 象:①妊娠届出をした妊婦に対して調査用紙の記入を依頼、その場で回収
②4 ヶ月児健診案内に調査用紙を同封し、同健診時に回収
調査目的:町内に産科医療機関がない中での、町民の支援やフォローについて検討していくための「町民の声」を把握する。
妊婦健診や出産の際に困ったことや不便だったこと(4 ヶ月児の母親の結果)
3.産科医療を取り巻く環境の変化
(1)社会情勢の変化
少子化の進行により、出生数自体は減少していますが、高度な医学的管理を要す
るハイリスク妊娠や低出生体重児の割合は高まっています。
【参考】
1.低出生体重児の割合の推移(人口動態調査から)出生数における2500グラム未満児の割合
(2)特徴ある産科医療への対応
・ 一般に、出産は病気ではなく、自然で安全なものと認識されていますが、正常から異常へ急激に変化する側面をもっており、出産が終わってはじめて、正常であるか否かの結果が判断できると言えます。
・ 出産の進行状況は個人によって多様であり、管理不可能な側面があるため、出産を扱う医療機関では、常に、診療応需の体制をとることが必要となります。
・ 保健師助産師看護師法第三条において、助産師は「厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じょく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子」と定められており、助産を行うことができます。
・ 出産においては、母体と胎児、二つの命への対応が必要であり、新生児の治療を行う小児科医、手術中の全身管理を行う麻酔科医との連携が重要です。
産科医の減少
・ 勤務環境が厳しいため、志望者が減少しています。
・ 女性医師が適任というイメージが増大し、男性の志望者が減少しています。
・ 臨床研修の義務化により、研修医が自由に、研修指定病院を選択することが可能となったため、大学附属病院で研修する医師が減少しています。
・ 開業医の高齢化に伴い、産科医不足は深刻さを増すことが懸念されます。
・ 産科医における女性の割合が高まっており、女性医師の働きやすい環境づくりが重要となっています。
将来展望
医療訴訟、起訴の割合の増加
・ 乳児死亡率等が改善され、一般的に出産は安全なものという認識が広まる一方で、高齢出産や低出生体重児の割合は高まっており、リスクの高い妊娠が増えています。
・ 一方、社会的には、医療訴訟、起訴などにより、医師の責任を追及する動きが高まっており、特に産科についてはその傾向が強くなっています。
基本方針Ⅰ.
現状の産科医療資源のなかで、安心・安全な出産環境の整備を図ります。
基本方針Ⅱ.
将来にわたる産科医療体制の維持・充実を図ります。
基本方針Ⅲ.
県民の不安・負担の軽減を図ります。
Ⅲ.産科医療提供体制の充実のための基本方針
現状を生み出した要因
基本方針Ⅰ 短期的な対策(19~20 年度の取組み)
1.青森県周産期医療システムに基づく、周産期医療体制の充実を図ります。
①青森県周産期医療システムに基づく、周産期医療体制の充実を図るため、各保健医療圏において、医療機関、市町村、保健所、搬送機関、住民等による連絡会を開催し、病病連携、病診連携のあり方や搬送体制について協議を行います。
②現在の医療資源を踏まえ、産科医の適正な配置、及び産科医療施設の集約化・重点化について検討を行います。なお、産科医療施設の集約化・重点化は、小児科と併せて、検討を行います。
③安全な出産環境の確保を図るため、産科医療施設における麻酔科医の確保を図ります。
④母体・胎児、新生児救急搬送マニュアルに基づき、ヘリ搬送を含む緊急搬送体制の強化を図ります。
2.産科医をはじめ、周産期医療に携わる医師の勤務環境を改善し、産科医として働き続けられる環境を整備します。
⑤周産期医療に携わる医師の勤務環境の改善を図るため、勤務時間、休暇、手当等の改善を図ります。
なお、分娩手当の創設など、産科医療の提供に伴う医療機関の収益が、産科医へ還元される給与体系について検討します。
⑥女性医師が継続的に就労できる環境づくりを推進します。
3.助産師の活用を図ります。
⑦本県における助産師の活用のあり方について、教育・研修のあり方も含め、検討を行い基本的な方針を定めます。
中・長期的な対策(~24 年度の取組み)
①各地域において、一次医療、二次医療、三次医療の役割分担を踏まえた、病病連携、病診連携体制の見直しを行います。
②各地域の実情を踏まえ、自宅から産科医療施設(高次施設への転送を含む)までの安全な搬送体制を構築します。
③総合周産期センターの機能の充実を図り、周産期医療に携わる人材育成と教育、情報発信を行います。
④助産師活用のあり方についての検討結果を踏まえて、院内助産所や助産師外来の具体化を検討します。
基本方針Ⅱ
1.将来にわたる産科医療提供体制の維持・充実を図ります。
短期的な対策(19~20 年度の取組み)
①産科医の増加を図るため、医学生に対する産科医療のやりがいの周知、奨学金等による誘導措置などに取り組みます。
②オープンシステム、院内助産所などの新たな産科医療体制の構築について検討を行います。
③周産期医療に対する正当な評価を進め、産科医療の果たす役割に見合った診療報酬や出産手当金の引上げを求めます。
④産科医の知識、技能の向上を図るため、教育体制を確立するとともに、勤務医が学会や研究に参加しやすい環境を整えます。
中・長期的な対策(~24 年度の取組み)
①国に対して、特定診療科の医師不足解消について、抜本的な対策を求めていきます。
②オープンシステム、院内助産所など、新たな産科医療体制の具体化に取り組みます。
1.産科医療の現状に係る県民の理解を深めるとともに、妊娠・出産に関する知識の普及を図ります。
基本方針Ⅲ 短期的な対策(19~20 年度の取組み)
①県民の理解を促進するための講演会開催やパンフレット作成を行います。
②報道機関との協働により、県民に対し、適切な情報提供を行います。
2.県民の精神的・肉体的・経済的負担の軽減に取り組みます。
③産科医療施設が遠くなることによる、県民の負担を軽減するため、妊婦等待機宿泊施設の設置を検討します。
④通院交通費などの付随費用軽減の可能性も含めて、妊婦健診に係る費用負担の軽減に取り組みます。
⑤市町村や保健所の保健師、助産師等、地域における保健医療資源を活用し、医療機関との連携を進めながら、妊婦に対する支援体制の充実を図ります。
中・長期的な対策(~24 年度の取組み)
①産科医療施設が遠くなることによる、県民の精神的・肉体的・経済的負担の軽減策の具体化に取り組みます。
②産科医師がある程度充足された場合には、妊婦健診が地元で行える体制づくりを目指します。
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