(関連目次)→医療事故安全調査委員会 各学会の反応
(投稿:by 僻地の産科医)
個人用のパブコメ中間発表の整理を始めてみました。
OCRですので、誤字脱字はお許しください。
あとざっと独断と偏見でまとめを。
↓ 今までの分です
今回は割と典型的な主張が多く、目からうろこというほどのものは
ありませんでした。ちょっと残念。
でも網塚先生すごいっ!、野村先生のパブコメ発見です(笑)!
【136】 50代 医師 p256
刑事処分について
第3次試案に書かれている通り「責任追及を目的としたものではない」ならば、行政処分機関にも捜査機関にも通知すべきではない。責任追及を目的としていないことの制度上の担保がなければ、現場の医療者は安心して診療に当たることはできない。
行政処分について
医師法においてすでに厚労省が医師免許取消・医師の業務停止命令の権限をもつ医療法に基づく医療機関に対する処分権限は都道府県がもっているが(地方分権の流れになる前から、歴史的にも医療は県の行政)、重複して国が処分権限を持たなければならない理由は何か。国に新たな権限を創設するのではなく、県に任せるのが筋ではないか。ひとつの事案について、医療機関に対する処分と、医師(主治医等)への処分とが、両方発動される(厚労省が暴走する・単に処分が二重になるだけ)危険性が高い。
医療死亡事故の届出義務化について
届出範囲を限定するとあるが、法令上の条文を個別ケースに適用するか否かは、法的判断をする者が個別に判断することであり、限定することを約束したことにはならない。委員会の結論が警察、検察に対して拘束力を持たない以上、その結論を尊重するといっても、具体的事件においては無視される可能性が高い。
現に、厚労省は、犯罪等に適用されていた医師法21条を、医療にも拡大して適用した。厚労省が医師法21条の適用範囲を元に戻さない限り、法令の適用を「限定する」と言っても、信用できない。透明性の向上とは何か。医療者が患者・家族に十分説明し、当事者間で話し合うことではないのか。第三者が介入する前に、当事者間の対話を促進するため、院内医療メディエ-ターを置くといった措置が必要である。当事者間で十分対話を行い、それでも患者.家族の納得が得られない場合に、第三者の介入が必要となる。
「医療を受ける立場を代表する者」を入れるのはなぜか。患者・家族の判断・選択は多種多様であり、それを第三者が代表することはできない。ひとりひとりの多様な選択を尊重するためには、当事者である患者・家族本人が、その希望によって参加するか否か選択できるようにするべきである。
≪勝手なまとめ≫
・責任追及期間では無いなら、刑事にも民事にも使用させるべきでない。
・行政処分を2重にも3重にもかせるようにするのはおかしい。
・十分なメディエーターとしっかりとした現場での話し合い、それでダメなら第三者機関
・「医療を受ける立場を代表する者」ではなく、患者の家族が望めば入ればいいし、入らなくてもよい制度としたらいいと思う。
【137】 40代 医療機関管理者 p259
私は、厚労省3次試案が、刑事訴訟や民事訴訟の増加につながり、現在の医療崩壊をさらに進める可能性が高いため、このままの国会上程に反対し、さらに議論検討することをお願い申し上げます。
理由
1.現状において、「軽度な過失」でも処罰されている。「重大な過失」か「軽度な過失」かという判断は、運用によってどのようにでも解釈し得る。
2.悪質か否かも、運用によってどのようにでも解釈し得る。例えば、証拠隠しをしたものに限らず、営利目的、実験的、名声追求の利己目的、説明不足でも、どのようなものでも悪質というレッテルを張られかねない.つまり、運用に歯止めがない。
3.現状において、薬剤や患者の取り違いといった、単純ミスは「重大な過失」とされている。死亡という結果の重大性に着目して「重大な過失」とされ、業務上過失致死罪が適用されている。
4.現状において、刑事司法は結果の重大性に着目しているが、その取り扱いを変更することについて、何の権限もない厚労省の一検討会の意見に過ぎず、警察・検察の公式見解は書かれていない。このことは橋本岳氏や岡本氏の国会質問に対する答弁でも明らかです。
5.第3次試案に書かれている通り「責任追及を目的としたものではない」ならば、行政処分機関にも捜査機関にも通知すべきではない。責任追及を目的としていないことの制度上の担保がなければ、現場の医療者は安心して診療に当たることはできない。
6.調査委員会で改善の余地ありとしただけで、患者側の弁護士がその点を取り上げ、民事訴訟に訴えていく可能性が高い。
≪勝手なまとめ≫
・民事・刑事訴訟をかえって増やすような気がする。
・第三次案での立法化はやめていただきたい。
・過失の定義が曖昧
・運用に歯止めが無い
・薬剤や患者の取り違いといった、単純ミスは「重大な過失」とされている
・厚労省の一検討会の意見に過ぎず、警察・検察の公式見解は書かれていない
・責任追及を目的としていないことの制度上の担保がない
・民事訴訟が増えそう。
【131】 医師 p261
刑事捜査抑制の保障無し―法務省・警察庁は文書を明確に否定 by 野村麻実先生
http://obgy.typepad.jp/blog/2008/04/post-1341-61.html
≪勝手なまとめ≫
・刑事捜査抑制の保障無し
・ADRや民事調停に力を入れるべき
【139】 50代 医師 p264
医療安全調査委員会を設置し、医療事故の原因を究明しそれを再発防止に役立て安全な医療を確保することは極めて重要なことと考えます。
しかし、現時点での案に関しては以下の点で議論がしつくされていない点で改善されることを望みます。従来の厚生省から出され法案化された制度(新臨床研修医制度、年金、後期高齢者医療制度など)を見てもいずれも議論が不十分なまま法令化され種々の社会的問題を引き起こしていることもあり、一端、法案が通れば取り返しのないことも考えられ、今回の試案に関しても急ぐことなく慎重かつ十分な討議が必要と考えます。
1. 大野の産婦人科医の例にあるように、誠意を尽くして医療に従事したものが刑事訴追された事を考えると、この委員会と警察との関連がどうなっているかが問題になるのではないでしょうか。この委員会で述べた言動・記録が警察にそのまま利用されるかどうか?警察庁と話し合いがなされているのかどうか別紙3にはその記載がありません。また、警察がこの機関と独立に動くとすれば、2-(27)にあるように医師は委員会での発言を控えるでしょうし、そうなれば委員会の目的である原因を明らかにしその再発防止に役立てることは難しいことになるでしょう。
2. 2-(8)にあるように、機関の設置箇所に関しては厚生省以外の場所に設置すべきであり、厚生省の管轄からは切り離してもうけるべきであると思います。
3, 2-(20)での届け出で義務の届け出で範囲について、(塾"誤った医療を行ったことは明らかでないが、行った医療に起因して、患者が死亡した事案"とありますが、それが合併症かどうか判断のつかないことも多々あるのではないか、また、遺族からのこの委員会への依頼(2-(25))を考えると、いったい年間どのくらいの症例が検討されるのか不明であります。ただでさえ、法医学の医師をはじめとした解剖担当医の業務が過重になるおそれがあるのではないかと危倶されます。この試案が法令化される前に、どの程度の症例があげられるかを全国の実際の病院で調査し試算してみることは必要と考えます。
≪勝手なまとめ≫
・厚生省から出され法案化された制度(新臨床研修医制度、年金、後期高齢者医療制度など)いずれも議論が不十分なまま法令化され種々の社会的問題を引き起こしている
・警察との十分な話合いが行間から感じられない
・厚労省以外での設置を
・法医学、病理学の解剖学者が追いつかない可能性が高い
【140】 50代 医師 p266
私は、地方の公立病院に勤務する小児科医師で、第3次試案に反対です。
反対の理由は、第3次試案が、世界保健機関WHO の患者安全ガイドライン案と全く異なっており、世界標準とかけ離れた案だからです.WHOのガイドライン案(2005年)は以下に掲載されています。
「WHO Draft Guidelines for Adverse Event Reporting and Learning Systems
(患者安全のための世界協調有害事象の報告とそれに学ぶシステムについてのWHOガイドライン案)」
http://www.who.int/patientsafety/events/05/Reporting_Guidelines.pdf
WHOガイドライン案の第6章には医療安全システムの調査委員会がきちんと成立するための7つの条件が示されていますので、以下に7つの条件を引用します。
(1)Non-punitive:報告によって自分や他人が処罰や報復を受けるという恐れを、報告者が持たないようにする。
(2)Confidential:患者、報告者、医療機関の個別情報は絶対に明らかにしない。
(3) Independent:報告システムは、報告者や医療機関の処罰権限を持つ当局から独立している。
(4)Expertanalysis:医療環境を理解し、根底にあるシステム上の原因まで認識できるよう訓練された専門家が、報告を分析する。
(5)Timely:報告は速やかに分析し、勧告は速やかに関係機関に周知する。特に、重大な有害事象の時は迅速に行う。
(6)Systems-oriented:勧告は、個人の能力ではなく、システムや過程や成果をどう変えていくのかに焦点をあてる。
(7)Responsive:報告を受けた機関が勧告を周知させる能力を持つ。関係機関は勧告の実現に責任をもつ。
残念ながら第3次試案は、この7つの条件を全く満たしておらず、第3次試案を元に第4次試案を作っても、WHOガイドライン案に逆行するものしかできません。また第3次試案が現実の法案になれば、産婦人科医・救急医・小児科医・外科医などを含め勤務医全体の減少を招き、日本の医療崩壊を促進することになるでしょう。救急医療を一生懸命がんばっている医師が逮捕・起訴される事態は遅かれ早かれ起こるでしょうし、救急医療の瓦解も近づくと思われます。こんな事態を招かないために、第3次試案は是非取りやめて下さい。今後はWHOガイドライン案をたたき台に、別委員会・別メンバーで新たに医療安全システムについて検討されることを提案します。
≪勝手なまとめ≫
・WHOをたたき台に新たなる医療安全システムを構築することを希望する
【141】 40代 医師 p268
1)ヒューマンエラーを個人の責任追及にばかりとらわれていては、原因究明・再発防止に役立たない。また、警察の介入は個人の責任追及が目的である。そのため、医療事故調査の原因究明・再発防止を本当に考えるならば、調査が終了するまで、.警察の介入はあってはならない。また、システム上の問題が指摘された場合には、そのシステムを改善するため命令を出す権限と改善されてかを確認する業務が必要である。ただし、システム上の問題とされた場合、個人に対する責任は司法上免責される必要がある。また司法はその結果を尊重しなければいけない。(事故調査の専門性を司法が認めるなら当然である。)
2)厚生労働省内に医療事故調を設置する能力が厚労省にはない。現在の医療崩壊の原因は厚労省の医療に対する認識の甘さからなっている。医師の労働基準法での当直業務等を指針を出しておきながら、実際の病院において救急を行うために必要な勤務医の数すら把握できていないため、当直という名の救急外来業務を行った翌日も通常勤務するという事態が起こっており、また、その改善のためにどれくらいの医師数が必要なのかの目標もない。
事故調は厚労省に対しても医療システムの改善命令を出し、その改善を確認できるよう厚労省とは別に設置すべきである。
3)現在産科領域で無過失保障制度が導入されようとしてい・るが、本来脳性麻痺が生まれた場合、過失の有無を事故調が判断して、その結果過失がなければ(過失とは日本の80%程度の医療機関の総意として過失を言うもので、高度専門機関のみが行える状態にないことは過失ではない)保障される制度にすればよい。また、その他一般の医療においても、保障制度の導入を行い、その保障のための費用は医療費に加えるべきである。過失がない場合、医療費より保障費用が払われるために、民事訴訟にならないように制度を作るか、または、民事訴訟になった場合、保障費より低額しか賠償責任がないように医療訴訟の上限を決めるべきである。これは、医療全体のシステムとして、厚労省から独立した事故調しかできない。
以上。
≪勝手なまとめ≫
・厚労省から独立した組織であるべき
・事故調の調査中に警察が乗り込んでくるようではダメだ
・医療訴訟額の上限を
・被害を受けた人への救済策を
【142】 60代 医師 p270
まず今回の第3次試案で示された医療安全調査委員会(名前は事故調査委員会でよい)についてはまだ問題点が多く、このまま法律化には断固反対である。
1捜査機関への通知について第3次試案で「捜査機関への通知の対象」となっているのは、故意、または重大な過失、または悪質なものとなっている。そして捜査機関は委員会からの通知がない限りは捜査活動をしない(患者が告訴しない限りというQ&Aがあるが)ということになっている。日医の担当理事はちゃんと話はついていると強調されるが、一方国会答弁ではそのような約束はしていないと警察検察の方からの回答があったとのことである。もしも日医や厚労省が単なる口約束ではなく警察検察も公式に了解しているというならば、警察検察庁からの公式見解を発表するか法文に明記していただきたい。
通知対象の定義についても「誰がみても明らかに標準から逸脱した医療行為を重大な過失とする」というふうに非常にあやふやな表現になっており、これではいずれ解釈にてどうにでも変わってしまうかもしれないという懸念がある。
また委員会での質問に対して回答者はいやな場合は答えるのを拒否できると明記されているが、これには二つの問題がある。一つは証言拒否が隠蔽と解釈され、悪質だからという理由付けをされて警察へ通知されるかもしれないという心配と、二つ目の問題は、質問に対して証言しなくてもよいならこの委員会の究極の目的である事故原因の究明など出来はしないことになるという根本的な欠陥をはらんでいる。
第3次試案に書かれている通り「責任追及を目的としたものではない」ならば、警察検察などの捜査機関にも委員会からは通知すべきではない。個人の責任追及を目的としていないことの制度上の担保がなければ、現場の医療者は安心して診療に当たることも事故原因の究朗に協力することもできない。委員会はただ、審議の結果解明した事故の原因とそれを今後回避するための方策へのとるべき施策を報告書の形で公開するだけでよい。調査での供述書などはもちろん公表する必要はない。委員会の審議状態について医療を受ける側の理解を得るためには必要ならば審議の場に有識者がオブザ-バ-として参加してもらえばよい。もちろん守秘義務を課した上で参加する。科学的に審議し、結論を得るためには感情論などを排除するために、審議はあくまで専門家のみで行うこと、そしてその出した結論に対してはその専門家が責任を持つことが大切である。
早急に審議して、出来るだけ早い時期に委員会の報告書は公開するが、内容は事故原因とその対策に限定する。とくに捜査機関への通報や民事への関与は委員会としては一切しない。民事にせよ、刑事にせよ遺族らがその気になれば告訴するであろうがそれを拒否することはできないし、このことは今までと変わりはない。
2 医師法21条について
そもそもの発端はこの法律が10年ほど前に法医学会の声明を契機に過大解釈されるようになったことから、医療に関係した死亡が直接警察に届けられるようになり、その結果真筆に治療したにもかかわらず結果がよくなかった場合に刑事責任を問われる事例が頻発するようになったことにある。そしてこの21条を廃棄することが困難であることから事故調査委員会の構想が現実化したという経緯がある。まずはこの医師法21条の本来の目的である自殺や他殺を推定させる異状死のみの報告義務に解釈変更をすることが大切である。解釈の変更であるので過去に起こったことの逆をすればいいだけなので不可能とは思えない。その上でこの事故究明委員会が事故原因について科学的に判断し再発防止の対策を立てればよい。
3 事故調査委員会(医療安全調査委員会)案について
屋上屋を重ねた委員会構想で、事務局もさることながらこれに関与する病理医や臨床医なども膨大なマンパワーと当然鹿大な予算を必要とする.この医療費削減と医師不足から医療崩壊が各方面で現実に起こってきているこの時期にこのような予算を取ることの困難、そしてさらに必要なところへの医療費の不足、無駄遣い、など得られる効果よりもマイナスがはるかに大きいことは火を見るより明らかであり、今一度構想自体を見直した方がよいと考える。
もっと費用対効果のよい施策をじっくりと議論して悔いのないようにするべきである.最近の厚労省の施策は、研修制度にしても介護保険や介護病床削減にしても後期高齢者保険にしても、特定検診制度にしても拙速に事を運んで結局は大きなマイナス効果を作り出している。また、日医も厚労省の代弁ばかりせずに、会員である医師とくに医療死亡事故に関連の深い病院勤務医の声にももっと真筆に耳を傾けるべきではないか。
≪勝手なまとめ≫
・届出、過失の定義があやふや
・刑事との関係を明文化すべき
・証言しなくてよいことになっているが、原因究明などできない
そのうえ悪質だと取られたら最悪だ。
・責任追及を旨としていないならば、通知すべきではない
・医師法21条の拡大解釈をやめるべき
・膨大な資金が必要と考えられるが、医療崩壊のさなか、ほかの事にもっとお金を使った方がよい。
【143】 40代 医師 p272 網塚貴介先生と思われます!
【地方委員会による調査】
(27)?
※これらの評価・検討の際には、医学的観点からの死因究明とシステムエラーの観点を含む医療事故の発生に至った根本原因の分析を行う。に関して:ここに書かれている「システムエラー」とは、当該施設内における診療体制を指していると思われますが、現場の医療は医師不足.看護師不足、医療費抑制政策、保険診療上の制約、その他制度上の不備など、様々な制約の中で行わざるを得ないのが実情です。
一例を挙げますと、私は去る4月12日に開かれた「医療現場の危梯打開と再建をめざす国会議員連盟」シンポジウムにおいて、新生児医療の現場において看護師があまりに多忙であるため新生児の授乳時に抱っこして授乳させることができず、「一人飲み」をさせざるを得ない実態があることを報告しました。これは病院に入院している新生児に対して、保育所の乳児における児童福祉法に相当する法律がないことが元凶と考えられます。抱っこして授乳したくてもできないような多忙な環境を放置しながら、安全対策を考えるなど全くのナンセンスであることは明白であり、本質的な検証.分析が行われてこなかったことが、このような現状を野放しにしている原因であると考えられます。
つまりこれらの制約を無視した分析から導き出された事故の再発防止策では根本的解決策にはなりえず、結果的に国民に対する安全な医療供給への障害となっています。特に医療費抑制政策は確実に患者のリスクを増加させており、この点が無視されてしまっては、この先、どれほど医療費が削減されようとも「建前上」は十¥分な安全対策がなされれば安全な医療を提供できることになってしまいます。よって、ここに書かれているrシステムエラー」にはこうした医療を取り巻く制約事項も含まれるべきであると考えられ、また、もしこれらも含まれているのであれば、試案内に明記されるべきであると考えます。
【地方委員会による調査】
(27) ?
※また、評価を行う際には、事案発生時点の状況下を考慮した医学的評価を行うに関して:これも同様に、「事案発生時点の状況」には、多忙、睡眠不足、医療費の制約等、医療行為を行う上での様々な制約事項も考慮されるべきであると考えます。
【中央に設置する委員会による再発防止のための提言等】
(37)調査報告書を踏まえた再発防止のための対応として、中央に設置する委員会は、全国の医療機関に向けた再発防止策の提言を行う。この際には、関連する各種学術団体と協働していく必要がある。
医療機関における安全管理の基準の見直しなど、医療の安全の確保のために講ずべき施策について、関係行政機関に対して勧告・建言義を行う.
一口に「再発防止のための提言」と言いますが、医療は人的・経済的.時間的等あらゆる制約の中で行われるものです。よってここで提言される再発防止策は医療現場で実現可能なものではなくてはなりません。
例えばある症状に対してある検査・治療を行っていないことによる事故が生じた場合、同等の症状の全ての患者に対して、その検査・治療を行うだけの人的・経済的・時間的な余裕が全国の医療機関にあるのか?、または、ある事故防止策を提言した場合、その経済的根拠はあるのか?等、これらの点に関する考慮は必須であると考えます。よって、これらの提言を行う場合には、その実行可能性に関する検証が必要であると考えます。
【捜査機関への通知】
(40)に関して:ここで述べられている「事例」とは、恐らく医療機関または担当医等の医療従事者が対象として想定されているものと考えられます。しかし医療事故の原因は当事者のみならず、その背景要因を作り出した行政等に存在する可能性は否定できません。つまり医療上の制約事項による、広い意味での「システムエラー」がその当該事故の根本的原因であると判断され、なおかつ、その危険性が関係者によって以前より指摘されていたにも関わらず放置されていたようなケースの場合には、行政による悪質な不作為としてこの委員会により告発されるべきであると考えます。よって「事例」によっては、捜査機関への通知対象は当該医療機関や医療従事者だけではなく、それに該当する行政官もその通知対象として含まれるべきであると考えます。
【別紙3 捜査機関との関係について】
問2 遺族が警察に相談した場合や、遺族が告訴した場合に、捜査機関の対応はどうなるの
か?に関して:4月22日、決算行政監視委員会第四分科会において橋本岳議員が、第三次試案について国会質疑を行いました。その中で、厚生労働省と警察庁あるいは法務省の問で交わされたはずの刑事介入の謙抑性に関する「文書」がないことが判明しました。この中で刑事局長の答弁にもあるように、現行法下では遺族の申し出がある限り捜査せざるを得ない旨が述べられています。もし遺族から刑事告発された場合に、これを遺族側の権利として認めざるを得ないのであれば、「捜査に当たっては、委員会の専門的な判断を尊重し、委員会の調査の結果や委員会からの通知の有無を十分に踏まえて対応する」などと言う暖味な対応ではなく、その刑事捜査をこの委員会に全て任させるべきであると考えますD医療事故の捜査に関して、警察は全くの素人であり、中立な第三者による真に医学的な見地からの分析に優る捜査が行えるはずがありません。それならば、この委員会による調査結果と判断があらゆる点で最優先されるべきであると考えます。また遺族の申し立て以前に、この委員会による調査が行われていない場合に関しても、捜査としては、この委員会にhSkD4ニ:SrDL$8SF9TSo$lSkSヤS-SGS〝skSH9MS(S〈$9(文字化け)
≪勝手なまとめ≫
・人手不足当のシステムエラーからきた事故の場合、どのように処理をしてくれるのか。
・再発防止のための提言を行われても実行可能性があるものとは限らない。
・当該事故の根本的原因であると判断され、なおかつ、その危険性が関係者によって以前より指摘されていたにも関わらず放置されていたようなケースの場合には、行政による悪質な不作為としてこの委員会により告発されるべきであると考えます。よって「事例」によっては、捜査機関への通知対象は当該医療機関や医療従事者だけではなく、それに該当する行政官もその通知対象として含まれるべきであると考えます。
・刑事捜査をこの委員会に全て任させるしくみとすべき 約束とは曖昧に過ぎる
【144】 40代 医療機関管理者 p275
■刑事処分について
1.現状において「軽度な過失」でも処罰が行われている。「重大な過失」か「軽度な過失」か、という判断は、運用によってどのようにでも解釈し得る。つまり、実際の運用をされる関係者や患者さんやご家族の意思や思惑によって、いかようにでも「判断」できる。
2、悪質か否かも、運用によってどのようにでも解釈し得る。例えば、証拠隠しをしたものに限らず、営利目的、実験的、名声追求の利己目的、説明不足でも、どのようなものでも「悪質」というレッテルを張られかねない。実際の運用には明確な歯止めがない。
3.現状において、薬剤や患者の取り違いといった、単純ミスは「重大な過失」とされている。死亡という結果の重大性に特に着目して「重大な過失」とされ、業務上過失致死罪が適用されている。
4.現状において、刑事司法は「結果の重大性」に着目している。その取り扱いを変更すると述べている意見は、何の権限もない厚労省の一検討会の意見に過ぎず、警察・検察の公式見解は書かれていない。
5.第3次試案に書かれている通り「責任追及を目的としたものではない」のであれば、行政処分機関にも捜査機関にも通知すべきではない。責任追及を目的としていないことの制度上の担保や言明がなければ、真相は明らかになってこない。一方で予防的・萎縮医療は益々進行する。
(参考)
・刑事司法が再び“暴走”する危険はないのか
http://www.m3.com/tools/IryoIshin/080214_1.html
・単純ミスはr重大な過失」か
http://www.m3.com/tools/IryoIshin/080115_1.html
■医療死亡事故の届出義務化について
1.届出範囲を限定するとあるが、法令上の条文を個別ケースに適用するか否かは、法的判断をする者が個別に「判断する」ことであり、限定することを約束したことにはならない。委員会の結論が警察、検察に対して拘束力を持たない以上、その結論を尊重するといっても、具体的事件においては無視される可能性がある。
2.届出を行うかどうかの範囲は、例にあるような明らかなものだけではない。実際には届出を行うかどうかのグレーゾーンがかなり混じるようになろう。医療機関長は処分を恐れて、拡大解釈をし、多くのケースが届出になることが予測される。内科学会が中心となった検討会の例をみても、1つの症例の検討にはかなりのマンパワーが必要になる。この制度を仮に運用した場合、増加していく検討症例を十分検討できるだけの「標準的な見解を述べることができる」マンパワーが得られるのかも疑問である。
3.「制度化」は「義務化」を意味することは、西島英利議員の発言からも明らかである。
4.透明性の向上とは何か。医療者が患者・家族に十分説明し、当事者間で話し合うことではないか。第三者が介入する前に、当事者間の対話を促進するため、院内医療メディエーターを置くといった措置が必要である。当事者間で十分対話を行い、それでも患者・家族の納得が得られない場合に、第三者の介入が必要となる。
(参考)
・井上清成弁護士「4つの原因究明」一一死因究明制度・厚労省第二次試案の法的「目
的」は?- MRlCメルマガhttp://mric.tanaka.md/2007/12/25/voE66,htrnl
・元東京地検特捜部長河上和雄弁護士医療事故調に対する見解 MRICメルマガ
http://mric.tanaka.md/2008/03/26/_vol_33.html
・現場からの医療改革推進協議会医師法21条の歴史と矛盾
http://expres.umin.jp/genba/kaisetsu01.html
・西島英利議員インタビュー〝医療事故調〝の自民党案と厚労省案は別
ソネット・エムスリー聞き手・橋本佳子
http://www.m3.com/tools/IryoIshin/071219_2.html
http://www.m3.com/tools/IryoIshin/071219_3.html
■医療安全調査委員会(仮称)について
1.そもそも真相に最も近く、原因究明を行うべき主体は、当事者である医療者であり、当事者の前に第三者が介入することは、原因究明を阻害する.まず当事者である医療者が医学的.科学的な真相究明を行い、患者・家族に十分説明し、当事者間の対話を十分に行ったうえで、それでも患者・家族の納得が得られない場合に、第三者の介入が必要となる。
2.責任追及を目的としないと明記したことは評価できるが、制度上の担保は何も示されていない。委員会は、責任追及の機能をもつ。
3.「法律関係者」、「法律家」を入れるのはなぜか。法的判断つまり責任追及をするためであろう。
4.「医療を受ける立場を代表する者」を入れるのはなぜか。患者.家族の判断・選択は多種多様であり、それを第三者が代表することはできない。また「医療を受ける立場を代表する者」が、過去に医療において不快な気持ちを抱いている方であれば、はじめから色眼鏡で医療者をみる傾向にもなるのではないか。
5.委員会のメンバーに医療者が入っても十分ではない。医療者の立場により、同じ症例への「見解」は異なる。専門家は大家であるほど、専門的なことを「常識」と断じる傾向にある。一方、すべての医師が「すべての領域の」専門家ではない。したがって、その疾患について標準的な見解を述べるためには、非専門医であり、他の意見に左右されない標準的な見解を述べることができるメンバーに入る必要があるのではないか。
6.実際に「その場」の「診療」を行い、「雰囲気や空気」をみてきた当事者を、調査から排除するならば、真実から遠ざかり、医学的.科学的な真相究明は不可能となる。
(参考)
・井上清成弁護士「4つの原因究明」-死因究明制度・厚労省第二次試案の法的「的」は?- MRlCメルマガhttp://mric.tanaka.md/2007/12/25/voL66.html
■今後の危険について
1.「医療の安全の確保に向けた医療事故による死亡の原因究明・再発防止等の在り方に関する試案」のように、真相究明だけではなく、医師の処分を念頭においた案が通れば、大事になることをおそれるため、今後の医療は益々「予防的」になり、検査は「医師の判断」ではなく「患者や家族の言いなり」になるであろう。そしてかかる医療費は益々増大することになる。たとえば、頭痛で受診した患者。病歴や身体所見からほぼ単純性の頭痛と判断されても、患者や家族が頭部検査を求めたとき自信を持って「要らない」といえる医師がどれだけいるのであろうか。医療は100%ではないため、稀にはその判断が間違っていることがあるからである。結果的に間違って判断し、たまたま患者が死亡したとき、家族による告訴があり、そして「可能性」があったのに検査をしなかった医師が犯罪者となる、このような事例が見られるため、頭痛患者にはほとんどの病院で(患者の安心のためだけの)検査が行われることになっている。この傾向は今後益々強くなり、一人の患者さんにかかる医療費は増大を続け、医療資源の枯渇が生じることになるであろう。
2.処分を恐れる傾向から、医療は抑制的になる。少しでもリスクがあればすぐにより大きな病院へ患者が集中する傾向が強くなる。そして、「患者さんの死」と隣り合わせの基幹病院の医師は、日々処分や告訴のストレスにさらされ、最終的には病院からの「逃避傾向」が強くなると思う。一生を棒に振る危険が高く、処分されるリスクが高い、医療行為を好んで行う医師がどれくらいいるのであろうか。
3.現在、たとえば急性虫垂炎や心筋梗塞、脳梗塞,.がんになって、医療を受けられない国民はまずいない。しかし、萎縮・抑制的医療が進む結果、これからは医療を受けるために順番待ちをする時代がやってくると思われる。その結果、最も不利益を受けるのは国民である。すでに救急や産科でそのような状況が生まれてきているのではないか。どんな医療も不確実である。そのときそのときは「最善の判断」と思ってみても、後で振り返れば「反省点」が生じるものである。この「反省」が医療を進歩させてきた。100%間違いなく、ただ一直線にできる医療など「漫画の世界」だけである。後だしジャンケンのように結果を知っている者が、その「反省点」を「過誤」だと突っついて処分をしているのが現状である。法曹関係者までが参加するこの委員会案は、その体裁を体よく整えただけではないかという懸念が払拭できない。
≪勝手なまとめ≫
・現状において、刑事司法は「結果の重大性」に着目している。その取り扱いを変更すると述べている意見は、何の権限もない厚労省の一検討会の意見に過ぎない
・過失、悪質等の定義が曖昧
・制度化された場合、マンパワーが確保できるとは思えない
・届出規定が曖昧 病院長がとどけまくる危険性がある
・制度化=義務化
・萎縮医療はますます進行する
・まずは当事者間の十分な話し合いが必要
・委員会は責任追及の役目を持つ
・責任逃れのため患者さんの言いなりに検査し、どんどん医療費が高くなることが懸念される。
・今後勤務医離れがますます広がるだろう
【145】 50代 医療機関管理者 p280
該当条文2.(7)
そもそも医療事故が刑事罰の対象となり得る根拠についてもう一度制度的な点から十分な検討が必要です。
過失に対して責任を問う現在の裁判の仕組みは医療にはなじみません。もし医療に刑事罰を与えるとしたら現在とは別の枠組みを考える必要があります。わたしはもともと医療には悪意で行った治療による死亡などの被害以外は刑事罰は問えないものとすべきだと考えています。
現在の医療事故を刑事罰で裁く法的な根拠は「過失-ミス」が認定されるかどうかというところにありますが、日常の医療の仕事には多くの過失が繰り返されています。そのうちあるものは全く患者に影響を与えず、あるものは患者にダメージを与えたとしても簡単に回復され、残念ながら一定のものが患者に強いダメージを与えます。過失をOにすることが不可能である以上一定の確率で今後も深刻な結果が発生するものと考えねばなりません。このような背景を考えるとたまたまあるミスが重大な結果をもたらすことはミスを起こした当人の慣わねばならない責任を本当に発生させているのかという点です。
似た注射器で使用されたために異なった薬剤を異なった目的に使用した看護師の誤りなどが典型的です。これは当の看護師を罰することでなくシステムを改善することが再発防止になります。
事故調査委員会は原因究明-犯人捜しとならぬよう配慮する一方で、事故に潜
むシステムの欠陥を究明することが重要だと考える次第です。
≪勝手なまとめ≫
・医療は不確実で、人間なので間違いも起こる
・善意の医療行為は刑事罰にはなじまない
【146】 60代 医師 p282
刑事処分について「重大な過失」か「軽度な過失」かという判断は困難で運用に歯止めがない。また、単純ミスも「重大な過失」とされているが医療という本来は善意に基づいた行為における単純ミス(いくら注意してもある確率では必ず発生する)に刑事処分をすることは不適切と考える。真剣に行われた医療での結果的な過誤に刑事罰を与えることは、例えば裁判で後日誤審が明らかになったら裁判官(や検事)が刑事処分されるようなものです。
厚労省は行政処分を行うよりも「国民のためのよりよい医療を行う」という本来の立場に立って行政して欲しい。財務省の言いなりのようだし、また一部の機関や団体の意見に流されやすいという印象がある。
意見をまとめる際にも実際に最近では現場に出たことも無いような、学識者と呼ばれる老人の意見が重用されるようです。現場で医療や問題に直面している人たちの意見を聞いて、より現実的で国民にも分かりやすい、現場の医療を改善する力のある方策を打ち出して欲しい。
最近の方策は厚労省にとっては保身的であっても、現場の力を削ぐ方向に行っているような感じがしています。日本臨床(僻地の産科医注:「綜合臨牀 2007年12月号」でしたo(^-^)o ..。*♡)の昨年の12月号「日本の医療制度を考える」の特集にもよい記事が出ていますので参考にしていただければと思います。厚労省は何と言っても頼りにせざるを得ないし、頑張って欲しい。
≪勝手なまとめ≫
・善意の医療に刑事罰はそぐわない
・厚労省は行政処分を行うよりも「国民のためのよりよい医療を行う」という本来の立場に立って行政して欲しい。財務省の言いなりのようだし、また一部の機関や団体の意見に流されやすいという印象がある。
【147】 40代 医師 p283
第3次試案に対する意見を述べさせて頂きます.
結論から先に述べさせて頂きますが,第3次案のままでは「医療死亡事故の原因究明・再発防止」という目的は達成できないものと考えられます.従ってこの案そのものには反対を表明します
.
(1)P9に示されている「重大な過失」の定義は甚だあいまいであり,客観的な内容が全く示されておりません.このままでは慈意的に運用されればどのような線引きでも可能です.そもそも「故意」以外の過失を「刑事事件」として扱うことはWHOのreporting guidelineなどに示される国際的な方向性に逆行するものです.本当に「原因究明・再発防止」が目的であるなら「故意」以外は「刑事免責」とするべきであり,そうでなければ当事者が真実を語らなくなり本来の目的を達成することが困難となります.「隠さない,逃げない,ごまかさない」が成り立つためには,そのことによって責任追及がなされないことが必要条件です.
また,調査委員会の資料が警察・検察に渡されるのであれば「黙秘権」が問題となります.これは現在の航空機事故調でも問題になっています.ここの所がきっちりしていなければ調査委員会を作る意味が無くなります.
(2)このシステムが動けば別紙1に示されるくく現在>>の状況はなくなる(抑制される)ように説明されていますが,医療安全調査委員会に関しての警察庁・米田刑事局長の衆院厚生労働委員会での答弁では「刑法上の業務上過失はそのままであり,患者や遺族からの訴えがあれば捜査せざるを得ない」とされています.このことは別紙3問2に対する答2にも書かれています.これでは全く現状の改善がないことになります.警察が調査委員会と並行して捜査すれば調査委委員会で必要とされる資料類も警察に押収されることになり,原因究明が困難になります.この答弁は裏を返せば「刑法や刑事訴訟法の改正」が必要であることを示しています.実際にこのことを指摘しておられる弁護士の方もおられます.医療安全調査委員会が適切に機能するためには,関連する法律をまとめて改正することが必要であり,そういったことも「案として盛り込んだ上で審議」して頂くことが必須であると考えます.
なお別紙3の捜査機関との関係で「2医療事故についてこうした対応が適切に行われることになれば、刑事手続については、委員会の専門的な判断を尊重し、委員会からの通知の有無や行政処分の実施状況等を踏まえつつ、対応することになる。」と書かれていますが,衆院決算行政監視委員会分科会での橋本蓑員の質問に対する法務省・大野刑事局長および警察庁・米田刑事局長の答弁では,この点に関する覚書き等の文書は存在しないと回答されています.きちんと「明文化」された書類がなければ別紙3の記述には全く裏打ちがないことになります.「法律」,「文書」として作り上げられないことには我々医師は安心して医療に専念できません.
(3)この事故調査委員会はモデル事業を参考にしていると聞いております.私は個人的に2例のモデル事業に関わりましたが,いずれも報告までの時間が掛かり過ぎ,遺族の方々はその点にかなりの不満をお持ちでした.今回の事故調査員会はもっと規模の大きなものになりますが,そのための人員や予算を想定してシステム構造を考慮しなければ法案が成立しても「実際には役に立たないもの」になってしまい現状の改善が行なえないことも考えられます.例えば解剖を必須とした場合,全国的な病理医・法医の不足はシステムを硬直させてしまう事も予想されます.ある程度現状を踏まえた上で運用可能なシステムが構築されることを願います.
医療事故調査員会の目的である「医療死亡事故の原因究明・再発防止」には「故意を除く通常の医療行為に対する刑事免責」は必要条件であると考えられます.併せて昨今の医療崩壊を防ぎ,医療再生を促すには民事裁判における医療事故に対する適切な(医学的)判断が重要です.「医療事故調査委員会」の検討結果が民事裁判において(もちろん裁判ではなくADR等での解決が望ましいのですが)尊重されなければなりません.結果からみたのではなく経時的に考慮して大きな問題のある医療行為をしていなければ可と判断されなければ医療は成り立ちません,「刑事」のことが前面にだされた結果「民事」のことが隠れてしまっているように見受けられます,民事裁判における「医療事散調査委員会」の役割も重要であると思われます.その点につきましても議論が不足していると思われます.
いずれにしましても,第3次試案のままでは第2第3の「大野事件」は避けられないものと考えられます.拙速に結論を出すことは医療に致命傷を与えることに成りかねません.医療事故調査委員会という組織を作る必要性は誰もが認めるものですが,その内容に関しましては慎重に議論を重ね,多くの医療者,非医療者にその内容を広く知らせてそれらの納得を得た上で案にまとめることが必要であると考えられます.(p12.の「おわりに」に書かれている通りだと思います.)
≪勝手なまとめ≫
・第3次案のままでは「医療死亡事故の原因究明・再発防止」という目的は達成できない
・重大な過失の定義が曖昧
・WHOのガイドラインとまったく違う
・別紙3について裏打ちとなる法案化を
・このままでは第二の大野事件が起きかねない
【150】 40代 医師 p286
刑事処分について:
現状において、薬剤や患者の取り違いといった、単純ミスであったとしても、重大な結果につながれば「重大な過失」とされている。逆に大きなミスであっても、重大な結果につながりさえしなければ、過失の有無すら問われない。
生物である"ヒト"に対して、死亡(に準じた)という結果の重大性のみに着目して「重大な過失」とされ、業務上過失致死罪が適用されていることに、違和感を禁じえません。現場においては"トカゲの尻尾きり"にすぎません。このことは医療以外においてもいえると思います(先日の管制官についてなど)。
医療死亡事故の届出義務化について:
届出範囲を限定するとあるが、法令上の条文を個別ケースに適用するか否かは、法的判断をする者が個別に判断することであり、限定することを約束したことにはならない。委員会の結論が警察、検察に対して拘束力を持たない以上、その結論を尊重するといっても、具体的事件においては無視される可能性が高い。
医療安全調査委員会(仮称)について:
医学的.科学的な真相究明を目的とし、複数の多様な委員会が、多様な医療専門家による多様な「正しさ」の判断を示せる制度とすべきである。多様な専門家による多様な選択が存在することを、患者・家族が知ることも、納得を得るために重要なプロセスである。
頑なに"信用しない"一点張りの人間(結果的に処罰感情にあふれてしまった方)に対して、それなりの権威を示すのには、厚労省中心では自ずと限界があると思います。
≪勝手なまとめ≫
・現実では単純ミスでも重大な結果につながれば「重大な過失」とされている
・届出に関しては現状の試案では限定することを約束したことにはならない
・厚労省ではない機関で
【151】 40代 医師 p287
■刑事処分について
医師会の説明では刑事処分に歯止めをかけるとされているけれど、この試案は全くその機能を持たないと思われる。現状において、刑事司法は結果の重大性に着日しているが、その
取り扱いを変更することについて、何の権限もない厚労省の一検討会の意見に過ぎず、警察.検察の公式見解は書かれていない。
・第3次試案に書かれている通り「責任追及を目的としたものではない」ならば、行政処分機関にも捜査機関にも通知すべきではない。責任追及を目的としていないことの制度上の担保がなければ、現場の医療者は安心して診療に当たることはできない。
■ 医療死亡事故の届出義務化について
警察、検察に対して拘束力を持たない以上、意味がない。その結論を尊重するといっても、何
の根拠もない。法的判断つまり責任追及をするためがこの試案の目的だと明言すれば医師達の反発は必至であろう。
≪勝手なまとめ≫
・医師会の説明では刑事処分に歯止めをかけるとされているけれど、この試案は全くその機能を持たないと思われる
・結果を通知すべきではない
・警察、検察に対して拘束力を持たない以上、委員会への届出には意味がない。
【153】 40代 医療機関管理者 p288
現状について
現在の医療状況について、医師法21条が厚生労働省により拡大解釈され、異常死のなかに医療関連死を含むようになり、それとともに医師の逮捕・起訴の件数が増えてきている。さらには、警察の捜査が加わることで、それまでは築かれていた医師一患者・家族の信頼関係を損ね、民事紛争も増加している。
今後の方向
法曹関係者が指摘するように、医師法21条の通達を改めるよう、指示をだす。そのうえで、今までどおり、病院などの事故調査委員会を通じて、医療関係者の重大な過失や違法行為があれば、警察に通報することにする。患者・家族への説明も今までどおりとなる。
医療安全調査委員会は、国の費用を用いて、診療者に不利な情報をあつめることができる。真相の究明は科学的に行うべきで、さらに事故の分析と再発防止の観点から罰則を設けないことで医療関係者が不利な証言をできるようにすべきである。その意味からも法曹関係者や遺族・患者の立場の人間などが入るべきではない。またその報告は、あくまでも医療事故防止につなげるために、存在するのであって、医療関係者以外にもらすべきではない。医師と患者側の和解のためには、別の機関をもうけるべきである。
そもそも、前文に医師を罰することを目的としていないとされているが、この医療安全調査会の設立の目的は医師を罰することにあるのは明白である。断じて、医療安全調査会の法案を許すべきではない。
≪勝手なまとめ≫
・医師法21条を改正して拡大解釈をやめるようにすべき
・真相解明が目的であるならば、その結果は何人にも漏らすべきではない
・医師と患者側の和解のためには、別の機関をもうけるべき
・断じて、医療安全調査会の法案を許すべきではない。
【154】 40代 医師 p290
第三次試案に反対します。
第三次試案は、文言上、医療の安全向上を目的としていますが、どうみても実質的には責任追及になっています。医療安全を目的とするのであれば世界基準に準じるべきだと思いす。
WHOが推奨している安全のための医療事故報告制度と、第三次試案とはかけ離れています。第三次試案は安全向上のための報告制度としては、世界基準に照らして、明らかに不適切です。
旧思考:
「過失により人に傷害を与えたり死に至らせたりすることは、個人の罪であり、個人への応報はそれ自体が価値である。また、処罰により事故が防止され、社会の安全が向上する」
新思考:
「人間は間違いを犯しやすい性質を持っており、その性質を変えることはできない。人間の間違えやすいという性質を受け入れて、間違いが起こることを前提に、間違いを起こせない、あるいは、間違いがあってもどこかで修正できるようにシステムを構築する。そのためには、広く事故情報を収集して過去の失敗に学ぶ必要がある」
05年WHOの「World Alliance forPatient Safety WHO Draft Guidelines for Adverse Event Reporting and Learning Systems(患者安全のための世界協調 有害事象の報告とそれに学ぶシステムについてのWHOガイドライン草案)」によく表れている。この冊子の存在は「ななのつぶやき」というブログへのコメントで知った。この草案の第6章には報告制度を成功に導くための7つの条件が提示されている。これはあらためて指摘されるまでもなく、医療安全に関わる専門家の常識である。
7つの条件
1 Non-punitive
報告者や関係者が、報告の結果、処罰を受ける恐れを持たないようにすべきである。
2 Confidential
患者、報告者、病院の個別情報は決して明かされてはならない。
3 Independent
報告制度は、処罰権限を持つ当局から独立していなければならない。
4 Expert analysis
報告は、医療がおかれた環境を熟知し、背後にあるシステムの問題を理解できるよう訓練された専門家によって分析されなければならない。
5 Timely
報告は即座に分析され、勧告は迅速に関係機関に周知されなければならない。特に、重大なリスクが発見されたときは迅速性が重要である。
6 Systems-oriented
勧告は、個人の能力ではなく、システム、プロセス、最終結果がどのように変えられるかに焦点をあてるべきである。
7 Responsive
報告を受けた機関は勧告を周知させる能力がないといけない。周知された関係機関は勧告の実現を責務としなければならない。
上記を参考にして試案を再度根本から作成し直すべきと思います。
その他、医療界に広く提言されている以下の考え方についても、十分参考の上で試案を根本から作り直すべきだと思います。
1刑事処分について
・現状において、刑事司法は結果の重大性に着目しているが、その取り扱いを変更することについて、何の権限もない厚労省の一検討会の意見に過ぎず、警察・検察の公式見解は書かれていない。
・最近の国会答弁では、医療安全調査委員会ができたとしても、警察はそれとは独自に調査処罰をすると明言している。刑法上も警察の発言は正しいと思われる。医療界だけ刑事を免れるというのはあり得ない話である。厚生労働省の見解は甘いし信用できない.
・第3次試案に書かれている通り「責任追及を目的としたものではない」ならば、行政処分機関にも捜査機関にも通知すべきではない。責任追及を目的としていないことの制度上の担保がなければ、現場の医療者は安心して診喝に当たることはできない。
■行政処分について
・厚労省は、管理者に対する新たな行政処分を設けようとしているが(医療法)、既に存在する行政処分について、十分説明すべきである。
○医師法
厚労省が医師免許取消・医師の業務停止命令の権限をもつ
・医療法に基づく医療機関に対する処分権限は都道府県がもっているが(地方分権の流れになる前から、歴史的にも医療は県の行政)、重複して国が処分権限を持たなければならない理由は何か。国に新たな権限を創設するのではなく、県に任せるのが筋ではないか。ひとつの事案について、医療機関に対する処分と、医師(主治医等)への処分とが、両方発動される(厚労省が暴走する・単に処分が二重になるだけ)危険性が高い。
・現に、厚労省は、保険医取り消しの行政処分と、医業停止の行政処分を二重に行っている。医療機関や管理者に対する行政処分権限を創設すれば、医師(主治医等)に対する行政処分がなくなるわけではない。従って、「個人に対する行政処分については抑制する」保証はない。
■ 医療死亡事故の届出義務化について
・届出範囲を限定するとあるが、法令上の条文を個別ケースに適用するか否かは、法的判断をする者が個別に判断することでありー限定することを約束したことにはならない。委員会の結論が警察、検察に対して拘束力を持たない以上、その結論を尊重するといっても、具体的事件においては無視される可能性が高い。
・現に、厚労省は、犯罪等に適用されていた医師法21条を、医療にも拡大して適用した。厚労省が医師法21条の適用範囲を元に戻さない限り、法令の適用を「限定する」と言っても、信用できない。
・第3次試案の21条改正案では、医療機関が委員会へ届出なかった場合は、医師法21条に基づく警察への届出義務があるため、死亡事例すべて届出とならざるを得ない。上記の届け出範囲を「限定する」制度上の担保は存在しない。
■医療安全調査委員会(仮称)について
・そもそも真相に最も近く、原因究明を行うべき主体は、当事者である医療者であり、当事者の前に第三者が介入することは、むしろ原因究明を阻害する。まず当事者である医療者が医学的,科学的な真相究明を行い、患者・家族に十分説明し、当事者間の対話を十分に行ったうえで、それでも患者・家族の納得が得られない場合に、第三者の介入が必要となる。
・ひとつの組織が2つの目的を持ち、いずれも達成されない可能性が高い。
以上です。再考の程、よろしくお願い致します。
≪勝手なまとめ≫
・WHOの規準を遵守すべきである
・刑事処分を抑制する手立てを持たず、厚労省の見通しは甘いといわざるを得ない
・すでに厚労省は十分な行政処罰の手段をもっており、二重に処断される恐れあり
・届出しなかった場合について罪に問われない担保がない
・当事者同士でしっかり話し合った上で、どうにもならない場合に第三者の介入を。
・ひとつの組織が2つの目的を持ち、いずれも達成されない可能性が高い。
今日はここまで!明日はp293 【155】から!!!
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