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(関連目次)→本日のニュース・おすすめブログ..。*♡ 目次
(投稿:by 僻地の産科医)
代理出産「もういい」、印出国前に女児“祖母”が記者会見
読売新聞 2008年11月1日
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20081101-OYT1T00262.htm?from=navr
【ジャイプール(インド北西部)=永田和男】日本人男性の依頼でインド人女性が7月に代理出産した女児が1日、父親の待つ日本に向け出国することになり、祖母にあたる男性の母親(69)が10月31日、女児を伴って当地で記者会見した。
女児は、出産前に両親が離婚したためインドの法律で男性の親権が認められず、国籍の認定が困難となって出国できない状態が続いた。インド政府は結局、無国籍のまま出国を認める渡航証明書を発行、日本政府は10月27日に査証を発給した。7月以来付き添ってきた祖母は、「日本に帰れるのがうれしい」と安堵(あんど)した表情を見せた。
代理出産については、「(条件の整っている方は)したらいい」と一般論として理解を示す一方、自身の率直な心境としては「(現状では)よその国にお願いしなければならないし、日本でできたとしても、もういい。いやだ」と語った。
印 代理出産の赤ちゃん出国へ
NHK 2008年11月1日
http://www3.nhk.or.jp/news/k10015110981000.html
日本人男性が依頼した代理出産によってインドで産まれた赤ちゃんが、パスポートを取得できずに出国できなくなっていた問題で、男性側はインドで会見を開き、ビザなどの取得が終わったため、1日、日本へ出国することを明らかにしました。
この問題は、日本人男性が依頼した代理出産によって、ことし7月、インドで産まれた赤ちゃんが、卵子の提供者が明らかにされず、出生証明に母親が不明と記されていることから、日本、インドの双方からパスポートを取得できず、出国できなくなっていたものです。これについて、インド政府は男性側の申請に応じて、赤ちゃんに対し、インド国籍の無い人にパスポートの代わりとして発給している「渡航証明書」を発給し、ニューデリーの日本大使館も人道的な理由を配慮して、先月27日、ビザを発給したため、赤ちゃんは日本へ出国できることなりました。これを受けて、インドで赤ちゃんを世話していた男性の母親が北部ジャイプールで会見を開き、「日本に帰ることができてうれしい」としたうえで、赤ちゃんが産まれてから出国のめどがたつまで3か月かかったことについて、「裁判の判決を待つようでつらかった」と述べました。赤ちゃんは1日、インドを出国するということで、男性側は今後、赤ちゃんを養子縁組するなどの対応を弁護士と検討することにしています。
インド代理出産:女児、お父さんのいる日本へ 親権者不在のまま、人道的に渡航許可
毎日新聞 2008年11月1日
http://mainichi.jp/select/science/news/20081101ddm012040093000c.html
◇祖母ときょうにも出発
【ジャイプール(インド北部)栗田慎一】40代の日本人男性がインド人女性に代理出産を依頼し7月に女児が生まれた問題で、約3カ月にわたってジャイプールで女児の世話をしてきた祖母(69)=男性の母親=が31日、現地で記者会見した。女児は依然、親権者不在だが、人道的観点からインド政府が女児に「渡航許可証」を、日本大使館が日本の滞在ビザを発給したことで日本への出国が可能になった。祖母は日印双方の関係者に感謝の念を示した後「さあ、いっしょに(日本へ)帰ろうね」と、腕の中で寝息を立てる女児に語りかけた。女児は誕生時は体重約2800グラムだったが、現在はもう約6キロ。祖母によると「当初は気候の違いからミルクの温度調整に失敗し下痢させてしまった」ものの、その後は元気に育ってきたという。
会見中、女児がむずがって泣き出したが、祖母がゆりかごのように腕を揺らして歌を歌うと安心したように眠った。祖母は「額の辺りが、おじいちゃんとお父さんに似ているの」と目を細めた。また「インドの人々や裁判所、政府、日本大使館などには、この子のために本当によくしていただいた」と感謝。「みんなから優しくしていただいた。だから、みんなに優しくしてあげられる子に育ってほしい」と、女児に語りかけるように話した。
祖母は代理出産について「子供のできない人はやったらいいと思う」としながらも「外国でも、日本でできるようになっても個人的には嫌です」と、複雑な心境をのぞかせた。将来、女児に出生の経緯を伝えるかどうかは「お父さんが考えると思います」とだけ述べた。祖母と女児を定期的に診療してきたインド人小児科医は「祖母は(3カ月の滞在で)体重が10キロほど減った」と打ち明けた。祖母は会見で「通じない言葉、なれない食事には苦労した。毎日不安で、精神的につらかった。でも、この子が元気だったので私も頑張れた」と笑顔を見せた。
会見には地元ジャーナリスト約40人が詰め掛け、インド国内での関心の高さをうかがわせた。祖母と女児は、1日にも日本へ向け出発する予定。
インドの代理母出産女児 11月1日に帰国
IBTimes 2008年11月01日
http://jp.ibtimes.com/article/biznews/081101/23680.html
40代日本人男性がインドの女性に代理出産を依頼して誕生した女児が帰国できなくなった問題で、現地で女児の世話をしている祖母は30日にインド北部ジャイプールで会見を開き、11月1日に日本へ帰国することが決まったと発表した。祖母はインド滞在の間、インド政府と日本大使館が女児に対して寛大な処置を示したことなど、世話になった人々に感謝の意を表した。
祖母は会見の中で「インドの政府、裁判所などのたくさんの人から、この子は優しく良くしていただいた。この優しさをこの子が多くの人にあげられる人になってほしい」と語った。記者が祖母に対して代理母出産の賛否を求めると、祖母は代理出産に関して「賛成だが、異国の地での子育ては大変だった」と語った。
女児が日本へ帰国出来なくなった理由は、女児を代理出産した現時のインド人女性を、親権を持つ母親として書類上提出するはずだったが、女性はそれを拒否。インドの法律では片親では親権が認められておらず、女児はインド国籍も日本国籍も取得できない状態になり、帰国も出来ない状態になった。さらに男性が日本人女性と離婚したことも問題を複雑にした。インド政府は渡航許可を、日本大使館は一年の(査証)ビザを発給した。女児の日本国籍取得に関しては、父親が決める。
(関連目次)→医療を理解するには
(投稿:by 僻地の産科医)
最近「医師アタマ」という本を読んでいます(>▽<)!!!
とっても面白いのです。
医師の思考回路には理路整然とした場合わけ
があるけれど、患者さんはそうではない。
「異文化コミュニケーション」だからすれ違う。
みたいな話で、とても面白いですo(^-^)o ..。*♡
というわけで、異文化コミュニケーションとおもえば
そうなのでしょう。M3からですo(^-^)o!
でもさ。言葉だけの言い換えでは異文化コミニュケーションは無理だと思う。ぼそ。
「病院の言葉」、こう工夫すれば患者も理解!
国立国語研究所の委員会が中間報告
3類型に分け、「言い換え例」「説明例」提示
m3.com 橋本佳子編集長
http://www.m3.com/tools/IryoIshin/081021_1.html
「合併症」という言葉は国民もよく知っているが、医療で使用する意味と日常で使用する意味が異なるため、混同されやすい。「手術合併症」は、「手術併発症」などと言い換える必要がある――。 こんな提案な提案が盛り込まれた、『「病院の言葉」を分かりやすくする提案(中間報告)』が10月21日、公表された。作成したのは、独立行政法人国立国語研究所の「病院の言葉委員会」(委員長:杉戸清樹・同研究所所長)だ。
委員会の委員の一人、国立国語研究所研究開発部門上席研究員の吉岡泰夫氏は、次のように語る。「以前実施した調査では、4割近い人が、症状や治療について分かりにくい言葉で説明された経験を持ち、8割以上の人が難解な専門用語の言い換えや分かりやすい説明を求めていた。また、よく知られている言葉でも、医療者と患者の文化が違うと、その意味が違う場合もある。真に患者参加の医療を実践するには、分かりやすい言葉で伝えることが重要。どのように言い換えたり、説明すればいいかを医療者も交えて検討した」。
図1 「病院の言葉」を分かりやすくする工夫の類型
中間報告は、図1のように、難解かつ重要性の高い100語について、【言葉が伝わらない原因】を、
(1)患者に言葉が知られていない(そもそも、その言葉を聞いたことがないなど)
(2)患者の理解が不確か(言葉は聞いたことがあるが、意味を正確に理解していないなど)
(3)患者に心理的負担がある(「腫瘍=がん」という思い込みがあり、良性である場合でもそれを知る前に患者が落ち込んでしまう可能性がある言葉など)――の三つに分類。
その上で、【分かりやすく伝える工夫】として、「類型A」=日常語で言い換える、「類型B」=明確に説明する、「類型C」=重要な言葉であるため、新しい概念を普及させる、という3類型に整理した。(3)については、言葉を分かりやすく伝えることに加えて、言葉遣いなどの工夫も必要であるとした。
3類型のうち、代表的な57語については、患者の理解力など、日常診療の場面に応じた説明ができるよう、「まずこれだけは」「少し詳しく」「時間をかけてゆっくりと」の3段階で解説(表1)。そのほか、言葉に応じて「こんな誤解がある」「患者はここが知りたい」「ここに注意」などの形で説明を加えている。一部の言葉では、「Q&A」方式で、患者とのやり取りの場面を再現するなどの工夫をしている。
委員会では現在、同研究所のホームページ上で、医療者、非医療者から中間報告に対する意見を募集している(2008年12月1日まで)。それを踏まえ、来年3月に最終報告をまとめるとともに、「病院の言葉の手引」(仮称)を発行する予定になっている。
100の医療用語について、非医療者1万人に調査
前述の吉岡氏が言及した調査とは、2004年に国立国語研究所が実施した「外来語に関する意識調査II」。 その後、吉岡氏らが、コミュニケーション論に関する研究を進めるとともに、2007年10月に今回の「病院の言葉委員会」を発足させた。メンバーは日本医師会など医療関係団体の代表者、日本医学教育学会や日本プライマリ・ケア学会、臨床の第一線の医師、言語学者、患者の立場の人など、多岐にわたる。
今回対象とした100語は、医療用語全体から、「医療者が患者に理解してもらうのは難しいと感じている言葉」などの視点から絞り込んだ。その上で、インターネットを通じて全国20歳以上の男女を対象に調査を実施。4276人から得られた回答を基に、非医療者の認知度、理解度を類型化した。
実務を担当した、同研究所の研究開発部門言語問題グループ長の田中牧郎氏は、「【言葉が伝わらない原因】を医療者に理解してもらわないと、いくら【分かりやすく伝える工夫】を解説しても、医療者には浸透しない。このため、伝わらない原因(図1)をどう類型化するかに一番苦労した」と語っている。
表1 類型別の工夫例
類型A:日常語で言い換える |
認知率が低く一般に知られていない言葉。 ⇒できるだけ使わないようにし、日常語を使って言い換えることが望まれる。 |
該当語:イレウス、エビデンス、寛解、誤嚥、重篤、浸潤、生検、せん妄、耐性、予後、 ADL、COPD、MRSA(13語) |
言い換え例:イレウス⇒「イレウス」という言葉は使わず、「腸閉塞」などと言い換える。 |
類型B:明確に説明する |
認知率は高く一般に知られているが、理解されていなかったり、知識が不確かだったり、混同されたりする言葉。 ⇒正しい意味が理解され、確かな知識を持ってもらい、混同が起きないように、明確に説明することが望まれる。 |
(1) 正しい意味を明確に説明する 認知率は高く一般に知られているが、理解率との差が大きく、理解されていない言葉。 認知率・理解率ともに高く大体の意味は理解されているが、からだや病気のしくみなど知識が不確かな言葉。 ⇒混同を避けて明確な説明をすることが必要である。 該当例:合併症、ショック、貧血(3語) 言い換え例:合併症⇒ 1. 病気の合併症の場合:「ある病気が原因となって起こる別の病気」と説明。 2. 手術や検査などの合併症の場合: 「合併症」「手術合併症」「検査合併症」は使わない。 「併発症」または「手術併発症」「検査併発症」と言い換え。 |
類型C:重要で新しい概念を普及させる |
認知率が低かったり、理解率が低かったりする言葉の中には、新しく登場したとても重要な概念を表し、今後普及が期待されるものがある。 ⇒重要で新しい概念を普及させる工夫が望まれる。 |
該当語:インフォームドコンセント、セカンドオピニオン、ガイドライン、クリニカルパス、QOL、緩和ケア、プライマリーケア、MRI、PET(9語) |
言い換え例:QOL(クオリティーオブライフ) ・現状では知られていないが、医療や介護の現場で患者が今の生活の満足度を一言で表現するのに最も適切な言葉であるので、普及が望まれる。 ・「その人がこれでいいと思えるような生活の質」などのような分かりやすい言い換えや言い添えを行うことで、「QOL」という語を普及させたい。 |
(関連目次)→本日のニュース・おすすめブログ..。*♡ 目次
(投稿:by 僻地の産科医)
過労、辞めたい、人手不足 コメディカルの視点ニュース ..。*♡
の続編ですo(^-^)o ..。*♡
県立奈良病院、4月に50病床以上休止へ、深刻な看護師不足で
MSN産経ニュース 2009年2月14日
http://sankei.jp.msn.com/politics/local/090214/lcl0902140132000-n1.htm
奈良県の基幹病院の県立奈良病院(奈良市、400病床)が、深刻な看護師不足を理由に今年4月から50病床以上を休止することが13日、分かった。4月の新規採用者などを加えても、なお看護師が約50人不足する見通しで、県は「このままでは病床数を維持できない」としている。同病院での病床休止は昭和52年の開設以来初めて。厚生労働省医政局は「自治体病院で、看護師不足を直接の理由にした病床休止は聞いたことがない」としている。
県によると、県立奈良病院の看護師は現在316人で、定数の352人を大幅に下回っている。さらに3月末までに34人が退職予定で、県は看護師を緊急募集したりパート看護師を雇ったりと対策を講じてきたが、それでも4月1日時点で49人が不足する見通しとなっている。
看護師の負担を減らすため、県は来年度当初予算案に初めて、ホームヘルパー2級の取得者を「看護ヘルパー」として採用する予算約4800万円を計上。60人を採用し、半数以上の31人を県立奈良病院に充てる計画だった。しかし、現状の病床維持に必要な看護シフトを試算した結果、最終的に県は「現状の病床数維持は困難」と判断、一部病床の休止を決めた。休止する病床数は今後確定するが、50病床以上の規模になるのは確実という。県医療管理課は「このまま看護師不足が続けば、奈良病院だけでなく、残る県立2病院にも病床休止が波及する可能性がある」としている。
遅れる地方の看護師不足対策
MSN産経ニュース 2009年2月14日
http://sankei.jp.msn.com/politics/local/090214/lcl0902140133001-n1.htm
介護療養病床の短期集中リハは「マンパワー不足」
キャリアブレイン 2009年1月28日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/20326.html
介護療養病床の半数近くで、短期集中リハビリテーション加算を算定できていない場合があることが、日本慢性期医療協会の調査で分かった。同協会では、マンパワー不足を主な要因として指摘している。
【関連記事】
一般病院の4割超が赤字-福祉医療機構調べ
入院患者、介護病床のみ減少―病院報告(7月分概数)
日本の医療の根幹が崩壊-2008年重大ニュース(5)「進む療養病床削減」
回復期リハビリ病棟、5万床超え
訪問リハステーションの新設目指す―リハ病院・施設協会
調査は、同協会が昨年11月から12月にかけて、介護療養病床を有する105の病院に対して行った。短期集中リハ加算の算定については、89の病院が回答したが、「必要な患者すべてに算定できている」としたのは53.9%(48病院)で、「算定できない場合がある」としたのは46.1%(41病院)だった。
短期集中リハ加算が算定できなかった理由(複数回答)は、「短期集中リハ加算を算定できる期間を超えている」が52.0%で最も多く、次いで「算定要件に必要な個別リハの頻度が実施できなかった」(34.0%)、「リハ専門職の人数が不足している」(32.0%)、「リハマネジメント加算が算定できていない」(28.0%)などが続いている。
同協会では、「算定できなかった場合の理由の多くが、実施頻度不足やセラピストの不足をはじめとした『マンパワー不足』に由来する。今後はマンパワーの整備と併せて、少ない人員でも効率・効果的に実施できるよう努めることが急務だ」としている。
■リハ対象患者、入院継続が7割
同協会では、短期集中リハを実施した患者の要介護度やリハ後の改善状況なども調査した。要介護度では、要介護5が44.9%で最も多く、要介護4(27.2%)、要介護3(17.9%)と続いた。同協会では、「リハ対象患者の重度化がうかがえる」としている。
短期集中リハ実施前後の患者の評価では、FIMの平均が40.9点から43.7点に、BIの平均が20.4点から23.2点になり、共に改善しているが、HDS-Rは11.4点から10.8点と若干低下が見られたことから、「認知機能面へのアプローチの確立も課題」としている。短期集中リハ実施後の転帰先では、入院を継続する患者が72.2%と多数を占め、自宅退院は7.9%、介護老人保健施設への入所は7.4%だった。
岡山県内の病院で看護師不足が深刻化
都市圏に人材流出 「大規模」志向強まる
山陽新聞 2009年1月28日
http://iryo.sanyo.oni.co.jp/news/2009/01/28/20090128123236.html
慢性的といわれる看護師不足が岡山県など地方で深刻化している。2006年4月の診療報酬改定で、手厚く看護師を配置した病院の報酬を増やす「7対1基準」が創設されたのを境に、東京など都市圏の大規模病院に人材が流れるなどしたためだ。看護師も働きやすい環境を求めて大規模病院志向が強まっており、地域の中でも“偏在化”が進んでいる。
岡山県北にある病床数約80の病院。一般・療養病棟合わせて約30人の看護師が働く。一般病棟は患者13人に看護師1人の配置になっている。入院患者の9割近くが65歳以上。病院長(63)は「1人当たりの介護、看護業務量は確実に増え、看護師は足りない」とぼやく。06年の診療報酬改定は看護師の負担軽減が狙い。入院患者7人に看護師1人を配置した病院に、最高ランクの報酬をつけた。だが、体力のある病院が増収をもくろんで人材を囲い込み、結果として中小病院の人手不足に拍車を掛けた。この病院は現状を上回る「10対1」を目標に、4月採用予定の看護師を08年8月と12月に2度募集。隣県の看護学校にも足を運び、ホームページなどでも呼び掛けたが、応募はゼロだった。
しわ寄せ
岡山県内で働く看護師は約1万6600人(06年12月末現在)。10年前の約1・4倍に増えているが、病院間の格差は徐々に顕著となっている。
関係者の話では、診療報酬改定間もない06年秋、東京や大阪の病院関係者が岡山市内に泊まり込み、面接だけで看護学生を大量に採用。医療機関が集中する県南でも人手不足から07年度以降、病床を半減させたり、一部病棟を閉鎖したケースもあるという。岡山県病院協会の土井章弘会長は「100床前後の中小病院にしわ寄せがきている。看護師不足が深刻化すれば医療サービスの低下を招きかねず、経営の根幹にかかわる」と県内格差を指摘する。一方、看護師の現状をよく知る看護関係者は「人手不足は経営だけでなく、現場の看護師に大きな負担を強いている」と言う。
掘り起こし
「超過勤務は当たり前。夜勤の看護師も少なく、いつミスをしないか不安」。50床規模の岡山市内の病院で働く看護師(27)は話す。肉親の介護などを理由に3月末で退職するが、「現状から解放されると思うと、ほっとする」と本音が口をついた。日本看護協会の調査(06年)でも、未就業の看護職員の21・9%が「勤務時間が長い・超過勤務が多い」を離職理由に挙げた。
このため、現場を離れた「潜在看護師」の掘り起こしが重要視され、岡山県も本腰を入れ始めた。08年度から未就業者らを対象に岡山市で毎月、看護技術講習会を開催。県ナースセンターに委託し、意欲がある女性をサポートしている。今後は県北でも開く予定だ。看護師の確保・定着対策を推進する行動計画(06年12月―10年3月)を策定した県看護協会も、各病院の職場環境整備の実態把握へ調査を始めた。
環境整備を
「多様な働き方をどれだけ許容できるかが問われている」。30年のベテラン、児島中央病院(倉敷市児島小川町)の福田正子看護部長(54)は言う。
同病院は子育てしながら働けるよう、約25年前に24時間体制の院内保育所を整備。医師も含めて延べ161人が利用してきた。自身もその1人という福田部長は「看護師が子育てなど家庭と仕事が両立できる環境整備へ、より力を入れたい」と話す。
看護師:「942人不足」 退職後、大半は復職希望--県医師会調査 /福岡
毎日新聞 2009年1月27日
http://mainichi.jp/area/fukuoka/news/20090127ddlk40040562000c.html
県医師会は、看護・介護職員の不足に関するアンケート結果を発表した。県内で942人の看護師・准看護師が不足している一方、出産や育児などを理由に退職した看護師の大半が復職を希望していることが分かった。
日本医師会による看護職員再就業支援モデル事業の一環で、昨年5月に調査した。回答した1806医療機関(回答率46・6%)のうち、26%にあたる469機関が「看護・介護職員が不足している」と回答。病院に限ると「不足」が55%に達した。不足状況は、看護師・准看護師942人▽看護助手207人▽介護福祉士88人▽介護助手57人。県医師会は「県内には約4000の医療機関があり、全体では2000人程度の看護師が不足しているのではないか」とみている。
一方、県内の2看護専門学校を卒業後、退職した看護師らにも意識調査を実施。回答した67人の離職理由(複数回答)は結婚(25人)と妊娠・出産(25人)が多く、67人中57人が復職を望んでいた。希望の雇用形態は、パートなどの短時間勤務が37人、常勤が20人。有給休暇の取得のしやすさや院内保育所の整備など、仕事と育児を両立しやすい環境を希望待遇に挙げる人が多かった。県医師会は「復職支援として復職前の研修を実施し、医療機関には短時間勤務の正職員の導入などを呼びかけたい」と話している。
健やかわかやま:看護師・助産師らアンケ ミス、ニアミス「ある」83% /和歌山
毎日新聞 2009年1月17日
http://mainichi.jp/area/wakayama/news/20090117ddlk30040379000c.html
◇看護師・助産師ら対象のアンケートで、人手不足「危機的」--実行委、知事に要請書提出
県医療労働組合連合会(小浜正孝執行委員長)と県民主医療機関連合会(井戸茂樹会長)でつくる和歌山ナースウエーブ実行委員会が、県内の看護労働実態調査の結果を発表した。調査は06年に続き2回目。前回同様、人員不足による厳しい労働事情が示された。昨年3、4月、入院ベッドがある県内15病院で、看護師や助産師らにアンケート調査した。平均年齢は37歳で、県内の病院で働く看護職員の約1割に当たる682人が回答した。
看護業務の増減や残業時間、残業代の支払いなど27項目。「この3年間にミスやニアミスを起こしたことがあるか」という問いには、83%が「ある」と回答。「十分な看護が提供できているか」は、「できている」が6%、「できていない」が68%だった。県庁で記者会見した小浜執行委員長は「看護職員の人手不足は、危機的状況にあるという実態を広く知ってもらいたい」と語った。
看護師の男性(28)は「人や時間の余裕がなく、ミスや容体急変への不安を常に抱えている。患者が一番大事だが、患者中心の看護ができない」と訴えた。助産師の女性(45)も「ベッドの回転をよくするため入院期間が短くなり、休み明けに病棟へ行くと初めて会う方ばかり。書類の記載ミスなどにつながる」と指摘した。同実行委は、看護師養成施設の確保、院内保育所や職場復帰などの支援充実を求め、仁坂吉伸知事あてに要請書を提出した。
「潜在看護師」7割が復職希望=育児との両立ネックに-日医が15県調査
財経新聞 2009年1月16日
http://www.zaikei.co.jp/article/biznews/090116/31208.html
資格があるのに仕事に就かない「潜在看護師」の7割が復職を希望していることが、日本医師会の調査で16日、分かった。復職時期については、希望者の6割が「分からない」と回答。職場に育児への配慮を求める声が目立ち、育児との両立に頭を悩ませる人が多い実態が浮かんだ。調査は日医が潜在看護師の再就業支援モデル事業の一環として実施。参加した15の県医師会に依頼し、運営する看護師養成所の卒業生らに昨年4月-12月にアンケートを行い、1367人から有効回答を得た。看護師を辞めた理由(複数回答)は「妊娠・出産」が44%で最多。「子育て・家事」(24%)、「結婚」(23%)が続いた。
看護師への復職希望者は、「条件次第で」との回答も含め959人(70%)を占めた。これら復職希望者のうち、希望時期について「分からない」と回答した人は58%に上る一方、具体的に時期を挙げた人は、既に復職先が決まっている人も含め40%にとどまった。
復職希望者の求める勤務形態は短時間勤務が66%、日勤のみが86%。待遇(複数回答)は「有給休暇の取りやすさ」が71%で最多。「駐車場の設置」(45%)のほか、「院内保育所の整備」(42%)、「学童保育への配慮」(41%)と、育児絡みの回答が目立った。
看護師養成所8校、助産師養成所5校が新設
キャリアブレイン 2008年1月5日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/19926.html
厚生労働省はこのほど、今年4月1日に開校を予定している看護師等養成所など、指定や定員変更などを承認した「看護師等の養成所一覧」を発表した。今年4月1日に新設される予定の看護師等養成所は8校、助産師養成所は5校だった。
【関連記事】
チーム医療と看護教育の在り方でヒアリング
大学化するということ―特集・看護基礎教育(2)
インドネシア人看護師、受け入れ後の支援が課題
看護師養成所など4校が4月開設
助産師確保へ、定時制を初指定
4月1日に新設される看護師養成所(3年課程)は、▽北海道医薬専門学校・看護学科(北海道)▽駒沢看護保育福祉専門学校・看護第1科(同)▽首都医校・看護学科I、Ⅱ(東京都)▽長野看護専門学校(長野)▽堺看護専門学校(大阪)▽関西学研医療福祉学院(奈良)▽熊本駅前看護リハビリテーション学院(熊本)▽九州中央リハビリテーション学院(同)。
また、「保健師・看護師統合カリキュラム4年」として、首都医校・看護保健学科(東京)。
一方、全日制の助産師養成所は、▽あびこ助産師専門学校(千葉)▽京都府医師会看護専門学校(京都)▽藤華医療技術専門学校(大分)▽都城洋香看護専門学校(宮崎)―の4校。
定時制の助産師養成所は、中林病院助産師学院(東京)のみ。定時制の助産師養成所は、産科医不足に対応するため、昨年から指定を開始しており、高崎市医師会立高崎助産師学院(群馬県)と、母子保健研修センター助産師学校(東京)の2校が既に指定されている。
詳しくは、厚労省のホームページで。http://www.mhlw.go.jp/topics/2008/12/tp1226-1.html
隠岐島前病院 「採用決定」36万円/島根
読売新聞 2008年12月28日
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shimane/news/20081228-OYT8T00571.htm
西ノ島町(隠岐諸島)の公立隠岐島前病院の看護師や作業療法士などの医療従事者を確保するため、島前町村組合が採用者に就業一時金として36万円を支給することを決めた。1月1日から実施する。
同病院には夜勤可能な看護師が21人いるが、来年3月末までに2人が退職予定。このままでは1人当たりの夜勤時間が基準をオーバーし、診療報酬が加算されなくなる。作業療法士も1人しかおらず、病院業務に加えた島前の3町村での訪問リハビリが不可能な状況が続いているという。このため看護師、作業(理学)療法士、薬剤師などを新たに採用する際、同病院で3年以上勤務することを条件に、一時金として36万円のほか、引っ越し費用に上限15万円を支給する。3年以内に退職する場合は一部を返してもらう。
島前町村組合の担当者は「これまで再三、県に看護師などの派遣をお願いしてきたが、かなわなかった。少しでもよそと違うことをやって目立ち、医療従事者にうちの病院へ目を向けてもらうことができれば」と話している。
人手不足看護師ら“悲鳴”/和歌山
読売新聞 2008年12月25日
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/wakayama/news/20081224-OYT8T00849.htm
「十分仕事出来ない」7割 県に復帰支援、学校設立など要望 労働実態アンケート
県医療労働組合連合会と県民主医療機関連合会でつくる「和歌山ナースウエーブ実行委員会」は、県内の看護職員を対象にした労働実態に関するアンケートの結果を発表した。約7割が業務量が増えたと答え、患者に十分な看護が出来ていないと答えた人も約7割いた。理由に慢性的な人員不足を挙げる人が目立ち、現場からは、激務や疲労からくる医療ミスを心配する声も聞かれた。
調査は今年3~4月、県内15か所の病院で働く看護職員を対象に、男女682人が回答。平均年齢は37歳だった。
「十分な看護ができていない」と答えた人は68%で、理由を複数回答で挙げてもらったところ、「人員が少なすぎる」が291人と最多。「業務が過密になっている」(218人)、「看護以外の業務が多すぎる」(98人)、「退職や異動で職場のメンバーが頻繁に代わり、看護の蓄積がない」(76人)の順に続いた。
労働時間に関する問いでは、29%が日勤始業時間の30~40分前から仕事を始めており、1日平均30分以上残業している人は64%に上った。深夜勤務の際、38%が休憩が全く取れない、またはほとんど取れていないと答えている。同委員会は、過重労働や医療費抑制政策の影響で現場に不満が蓄積していると指摘。県に対し、病院内保育所の整備支援や、結婚や出産などで退職した看護師の職場復帰への促進、紀中地方に看護学校を設立することなどを要望した。
発表に立ち会った和歌山市内の病院で働く看護師(26)は「仕事にやりがいを感じているが、業務に追われ、一人ひとりの患者さんとかかわる時間が少なくなっている」と話し、人員確保の必要性を訴えていた。
離島で働く看護師確保の修学資金貸与再開へ 県医療圏組合
長崎新聞 2008年12月25日
http://www.nagasaki-np.co.jp/kiji/20081225/01.shtml
県離島医療圏組合(会長・金子知事)は二十四日、長崎市内で開いた定例会で、二〇〇六年度に募集を停止した離島で働く看護師確保の修学資金貸与制度を再開する方針を示した。同組合の各病院が希望すれば、それぞれの来年度予算に盛り込む考え。一方で、これまで同制度は県と病院所在地の各市町が財源を全額支援していたため「病院の負担が大きい。県や市町にも支援を求めるべきだ」との指摘も出た。
同組合によると、貸与制度は一九八九年度に開始。医療技術学校などを卒業後、組合の病院で働くことを条件に▽入学金▽授業料▽教科書購入費(年額五万円)▽生活費(月額五万円)を貸与。貸付期間の二倍勤務すれば、返還は全額免除となる。これまで百二十七人に貸与し、百十三人を採用。現在も七十二人が勤務している。しかし、看護師確保が進み、貸与希望者も年々減少。〇四、〇五年度に応募者がゼロとなったため募集を停止した。しかし、その後、状況は一転。全国で看護師不足が問題化。同組合の新上五島町病院は、既に本年度から同病院の補正予算で貸与制度を再開。現在、薬剤師と看護師希望の学生二人に貸与している。
同組合は、今後十年間で全九病院の看護師のうち約百人が定年退職を迎え「確保が極めて厳しくなる」と説明。来年一月からの来年度予算編成ヒアリングで、貸与制度を盛り込むか全病院に調査する。一方で、議員からは「病院の財政状況は厳しい。県や市町の支援が必要では」との指摘もあった。
同組合は「県や市町に協力は呼び掛けていく」としている。
看護職員の7割が「十分な看護できない」
紀伊民報 2008年12月22日
http://www.agara.co.jp/modules/dailynews/article.php?storyid=159235
和歌山県内の看護職員の7割が「十分な看護ができていない」と感じていることが「和歌山ナースウエーブ実行委員会」(県医療労働組合連合会、県民主医療機関連合会)の調査で分かった。人員不足による過重労働が主な理由。ミスやニアミスを起こしたことのある職員は8割を超えた。実行委は「根本的な改善策が必要」と話している。「看護労働実態調査」は、県内の入院機能を持つ15病院を対象に3、4月に実施。病院勤務の看護職員の約1割に当たる682人が回答した。2年前にも実施しているが、職員の絶対数に変化がないため、前回の課題が改善されていないという。
「患者さんに十分な看護が提供できているか」の問いには「できていない」が68%。「できている」はわずか6%にとどまった。「この3年間でミスやニアミスを起こしたことがあるか」では「ある」が83%を占めた。理由は「人員不足」と「業務の過密化」が大半。「退職や異動でメンバーが変わり、看護経験の蓄積がない」「看護以外の業務が多すぎる」などの声も目立った。
「業務量が変化したか」の問いには「大幅」「若干」を合わせ「増えた」が72%。夜勤の休憩は準夜(夕方~深夜)で6割、深夜(深夜~早朝)でも4割が「取れていない」としている。夜勤は月8回程度あり、10回を超える職員も少なくないという。有給休暇の年間取得も0~4日が25%。9日までが3分の2を占めている。一方で会議や研修は勤務時間外が多い。回答者の平均年齢は37歳だが、6割が健康に不安を感じ、7割が疲労を抱えたまま働いている実態が浮き彫りになった。
実行委の女性看護師(26)は「信頼を築くためにも、一人一人の患者さんにもっとかかわりたいが、時間が足りない。充足率が高まれば、できることはもっと増える」と訴えている。実行委は22日までに、看護師確保対策の充実を求め要請書を県に提出。養成所の設置や病院内保育所の支援、潜在看護師復帰の研修充実などを求めている。特に離職期間が長いほど、復帰が困難になるため「早期復帰のためにも保育所支援が重要」と主張した。県医務課は「職場環境を改善し離職防止や復帰を支援したい。看護師を目指す学生が減少しているので、若者に看護の魅力を伝える事業も充実させたい」と話している。
津和野共存病院:来月下旬から1病棟休止 「看護師不足で」 /島根
毎日新聞 2008年12月19日
http://mainichi.jp/area/shimane/news/20081219ddlk32040525000c.html
石西厚生農業協同組合連合会(石西厚生連)の破産を受け、医療法人「橘井堂(きっせいどう)」が新たな指定管理者になる予定の津和野共存病院=津和野町森村=が、来年1月下旬からの予定で現在の2病棟のうち1病棟を休止することが18日、分かった。現在は2階の一般病棟(50床)と3階の療養病棟(49床)からなるが、来年1月下旬から療養病棟を休止する。同町によると病院側は、破産前から看護師が不足していたが、新たな産休などで限界に達し、やむをえず一時的に休止することにしたと説明している。
18日現在で30人いる3階の入院患者は1月22日までを目標に、家族や本人の了解を得て2階や介護老人保健施設「せせらぎ」=同町枕瀬=などに移ってもらうという。取材に応じた同町の松浦秀信副町長は「入院患者に十分説明し、納得して協力してもらえるように努力してほしいと伝えた。できるだけ早く橘井堂がスタッフを集め、2病棟に戻してほしい」と話している。一方、石西厚生連労組は同日、破産管財人に対して、職員の給与、退職金などの労働債権の確保やすべての職員の雇用確保などを求める申し入れ書を提出した。
県医師会調査で看護師不足が加速している実態が明らかに
下野新聞 2008年12月14日
http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20081213/85995
県内の病院と診療所の23%は「看護師が足りない」と答え、不足している看護師の総人数も計四百八十六人に上っていることが、十三日までに県医師会がまとめた「看護師職員需給調査」で分かった。二〇〇三年の第一回調査に比べ「不足している」と答えた医療機関は4ポイント上昇、不足人数も前回の百七十六人から二・七倍強に急増した。県や県看護協会は学生の確保や離職した有資格者の就労支援などの対策に努めているが、地域医療の崩壊につながりかねない看護師不足の現状が浮き彫りになった。
調査は県内の病院百十二と診療所千百四十三の計千二百五十五施設を対象に実施。八月に調査票を郵送し、十一月末までに七百七十七施設(病院七十五、診療所七百二)が答えた。回答率は62%。まとめによると、全体の23%に当たる百七十施設は「看護師が不足している」と答え、前回調査の19%から増えた。調査に未回答の病院や診療所も四割あるため、不足を訴える医療機関の割合や不足人数の実数は今回の結果をさらに上回るとみられている。 施設別の不足人数は病院三百三人、診療所百八十三人。病院側が不足を訴える人数は、前回調査時に比べ二百七人も急増した点が顕著になっている。
看護師不足の主な要因は、結婚や病気による退職を挙げた施設が九十七、産休・育休などが五十三施設。診療報酬の改定に伴い、看護師を増やす「施設基準」を理由にした施設も二十三あった。県や県看護協会は養成機関への補助制度やベテラン看護師による電話相談事業、ナースバンクを通じた有資格者の掘り起こしなどの対策を講じているが、打開策を見いだせないのが実情だ。
県医師会の村山直樹常任理事(看護職員担当)は「看護師を目指す学生の減少や新卒者の県内定着率の低さのほか、医師不足などによる負担増も離職の要因になっている。養成機関への助成制度や看護師に対する福利厚生の充実などが急務だ」と関係機関に協力を求める方針だ。
県立奈良病院:深刻な看護師不足、来春49人 病床一部休止検討も /奈良
毎日新聞 2008年12月5日
http://mainichi.jp/area/nara/news/20081205ddlk29040512000c.html
◇県立3病院で94人、介護士など臨時職員導入も
県立奈良病院の看護師が、来年4月の段階で約50人不足することが4日、明らかになった。このまま推移すると、奈良病院は病床の一部休止を検討せざるを得ない危機的状況にある。県によると、県立3病院(奈良、三室、五條)で706人の看護師が必要と定めているが、来年4月に94人不足する見通しという。
特に奈良病院は、定数352人だが、このままでは49人が不足する計算になる。いずれも、例年に比べて新規採用数が落ち込んだため。奈良病院の来春の採用予定者は12人にとどまる。看護師の離職を防ごうと県は、奈良病院での夜間保育の実施に向けて動いているという。看護師不足を補うため、介護士などの臨時職員の導入も検討している。
県は、3病院の来年4月の看護師と助産師の採用試験を10日まで受付中。計70人程度を募集。勤務地は希望によって決まる。試験日は12月15日。問い合わせは県福祉部県立病院管理係(0742・27・8647)。
上対馬病院 療養病棟を一時休止 スタッフ不足 医師過重労働
上五島も「限界」 離島に医療不安広がる
西日本新聞 2008年12月4日
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/63481
対馬市上対馬町比田勝で県離島医療圏組合が運営する上対馬病院が、看護職員不足のため、主に長期療養が必要な入院患者を収容する療養病棟を今月から一時休止した。同病院だけでなく、県内の離島へき地にある病院は同様にスタッフ不足や医師の過重労働が深刻化。現状のままでは医療態勢の悪化につながりかねず、地域住民にも不安の声が広がっている。
上対馬病院の看護職員は11月までは一般病棟(60床)に31人、療養病棟(24床)に15人を配置していた。しかし、一般病棟の5人が出産や病気で長期休暇に入り、夜勤態勢が組めなくなったため、療養病棟のスタッフ10人を一般病棟に回し、療養病棟を休止することを決めたという。また、今月下旬から来年3月末にかけて6人の看護職員が退職を予定しているが、新年度採用見込みは今のところ2人しかいない。離島の中でも過疎が進んだ地域にある病院での勤務が敬遠されているため、スタッフ不足は深刻化。同病院は近隣の医療機関からの看護職員派遣について協議を始めているという。
対馬市内には県離島医療圏組合運営の公立総合病院が上対馬、中対馬、厳原の3カ所にあるが、上対馬から中対馬、厳原へ車で1時間半から2時間もかかる。上対馬町内の30代の主婦は「小さい子どもを持つ親として、万が一のことがあったときに困る。病院には今の態勢を維持してほしい」と不安を漏らした。
同じ離島へき地にある新上五島町の上五島病院も同様に医療スタッフ不足に悩む。医師の1人は「医者が1人でも倒れたら破たんしてしまう状態。限界に近い」と訴える。
県と離島4市町で構成し9病院を運営する県離島医療圏組合は五島市と対馬市、新上五島町に各3カ所ある病院を各市町1カ所の基幹病院に集約し、他の病院を診療所などに縮小する方向で検討を進めている。県の矢野右人病院事業管理者は「国に離島の特殊性を考慮した財源措置をしてもらわなければ厳しい状況だ」と話している。
看護師確保の指針、来年1月中旬めどに
キャリアブレイン 2008年11月28日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/19384.html
「看護の質の向上と確保に関する懇談会」(座長=田中滋・慶大大学院経営管理研究科教授)の初会合が11月27日に開かれ、看護職員の確保や新人看護職員の質の向上のための方策などを話し合った。冒頭、あいさつした舛添要一厚生労働相は、「積極的に検討していただいた上で、来年1月中旬をめどにまとめて、直ちに政策に移したい」と述べ、関係者からのヒアリングや意見交換を経て、短期間で看護職員確保などの指針を決める意向を示した。
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同懇談会は、舛添厚労相が19日の衆院厚生労働委員会で、急きょ設置することを明らかにしていた。主な検討課題は、▽看護職員の確保▽新人看護職員の質の向上▽チーム医療の推進▽看護基礎教育の体制や期間などの見直しといった看護教育の在り方―の4点。厚労省によると、看護職員確保などの方針を決めるもので、予算措置は伴わない。
27日の初会合では、病院関係者や大学教授ら14人の構成員が、看護師に求められる今後の役割や、教育の在り方などについて意見を述べた。
中山洋子構成員(福島県立医科大看護学部長)は、「看護職が普通の仕事になってきた。職業教育か、一般教養としての看護かというジレンマが、特に大学の先生たちの間にあると思う。どのくらいをプロフェッショナルとして、どのくらいを普通の看護師として育てるのか。その区分けが必要だと思う」と述べた。
一方、吉田松雄構成員(吉田学園理事長)は、「今、3年制があまりにも多い。3年制の養成校を4年制にするのは本当に大変。少子化の時代に、大学も養成校も4年制となれば、質の確保より看護師の確保の方が大変になるのではないか」と懸念を示した。
また、太田秀樹構成員(おやま城北クリニック院長)は、「在宅医療の主役はナース。しっかりした生活さえナースが維持してくれれば、(患者は)急変しない。生活も含めた視点で管理できるのは、ナース以外にエキスパートはいない」と、在宅医療における看護師の重要性を強調した。
次回の会合では、看護職員の確保と新人職員の質の向上について、関係者などからヒアリングを行う予定。
看護師確保探る/茨城で農村医学会【関東】
日本農業新聞 2008年11月14日
http://www.nougyou-shimbun.ne.jp/modules/bulletin7/article.php?storyid=1396
第57回日本農村医学会学術総会が13日、「農村医学の使命」をテーマに2日間の日程で茨城県つくば市で始まった。全国のJA厚生連の医師や看護師ら約900人が参加。シンポジウムのほか産科救急や訪問看護など7つのワークショップ、ポスター発表を通し、医師不足などの課題を抱える中、どう農村住民の健康を守るかを探る。
初日は深刻な看護師不足の解決に向け、看護職の継続教育でワークショップ(体験型講座)が開かれた。離職を防ぐには「病院が仕事を正しく評価する仕組みを作り、看護師一人一人の質を向上させることが重要」との指摘があった。
(関連目次)→医療を理解するには
(投稿:by 僻地の産科医)
同意に欠かせぬ患者の理解
コロンビア大学肝小腸外科部長
加藤友朗
朝日新聞 2008年10月27日
http://www.asahi.com/health/essay/TKY200810210131.html
インフォームド・コンセントという言葉が最近ではかなりよく使われるようになり、少なくとも医療関係者の間では日本でもだいぶ浸透してきたと思う。
インフォームド・コンセントという言葉はよく「説明を受けた上での同意」と訳される。インフォーム(情報を与える、説明する)という動詞の意味から「説明を受けた」という訳になったのだろう。確かに「説明を受けた上での同意」でも間違っているとはいえないのだが、「説明を受けた」(医者側からすれば「説明した」)という一方通行のニュアンスが、インフォームド・コンセントの概念を間違った形で伝えているような気が僕にはするのだ。
■理解がカギ
インフォームド(Informed)という英語は「知識を持っている」「インフォーメーションを持っている」ということであって、「説明を受けた」という受身のニュアンスではない。「説明を受けた」からといって中身がわかっていなければインフォームドではないし、説明を受けていなくてもわかっていればインフォームドなのである。 そういう意味でインフォームド・コンセントは「理解したうえでの同意」と訳すべきだと思う。患者さんに内容を理解してもらうには、当然説明が必要で、説明をすることは「インフォームド」になってもらうためにとても重要な要素である。しかし、説明をしただけでは、本当の意味でインフォームド・コンセントを得ることにはならない。
インターーネットで買い物をしたり、ネット上で何かの会員になったりするときに、長々と規約が書かれたページが出てきて、その下にある「同意する」をクリックしないと先に進めないようになっていることがよくある。
皆さんはこんなとき書いてある内容をどれだけ読むだろうか。僕はほとんど読んだことがない。おそらく読んでもあまりわからないだろうし、時間もない。契約をしようとしている会社がちゃんとした会社であれば、きっとちゃんとしたことが書いてあるのだろうと思って「同意する」をクリックすることになる。 このとき僕は「同意する」をクリックすることによって形の上ではインフォームド・コンセントをしたことになる。でもこれは真の意味でのインフォームド・コンセントではない。僕が内容を理解していないからだ。
自分や自分の家族の生死にかかわる医療の現場ではネット上の契約より患者さんははるかに真剣だと思う。でも、果たして日本の医療現場で本当の意味でのインフォームド・コンセントが行われていると言えるだろうか。インフォームド・コンセントは患者参加型医療の根幹を成す。医師と患者がお互い理解し納得した上で治療に進むとき、医師・患者の信頼関係はとても強いものになる。たとえ説明を聞いていても、同意書にサインしていても、内容を理解して納得できていない場合、その後の医師・患者の関係はもろい。
■医師側から質問促す
ではどうすれば、患者さんに理解・納得してもらえるのか。これがなかなか難しい。
患者さんに理解・納得してもらうには、まず第一に患者さんが理解しているかどうかを知らなければならない。そのための鍵は、患者さんに質問してもらうことだと僕は思っている。患者さんに自分の言葉で質問をしてもらう中で、医師への希望、治療に望むことなどが見えてくる。
何かの病気にかかって病院に行くとき、いまどきはかなりの人がインターネットで病気のことを調べてから病院に行く。病院にいって説明を受けたとき、インターネットで読んだ治療法を医師が説明してくれなかったとしたらどうだろうか。きっと医師に聞いてみたいと思うに違いない。でも多くの患者さんは忙しそうにしている医師に質問しにくいと感じている。
そんな時、医師の側から「何か質問はありませんか」と聞いてもらえれば患者さんはその治療法のことを聞くと思う。そして、その治療法を話しあうことをきっかけに、患者さんが本当に望んでいることが見えてくる。結果的に、はじめに説明したとおりの治療をしたとしても、医師の側に患者の考えが見えてくるようになるし、患者側も話ができたことではるかに納得して治療に向かうことができるのである。
では一方で、医師の側から質問があるか聞いてもらえず、質問をしないままに治療に向かったとしよう。結果がよければおそらく問題はない。しかし結果がうまくいかなかったらどうだろうか。
「あの時インターネットに書いてあった治療のことを聞いておけばよかった」「もしかしたらあの治療ならうまくいったのではないか」……。そんな疑問が必ず生まれてくる。こうなると医師と患者の信頼関係は崩れてしまう。
このように医師と患者が理解しあっていないとき、信頼関係はとてももろいのである。インフォームド・コンセントが「説明を受けた上での同意」から「理解し納得したうえでの同意」になるとき、本当の意味での患者参加型医療が始まるのではないかと僕は思う。
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加藤友朗(かとう・ともあき)1963年東京生まれ。東京大学薬学部、大阪大学医学部を卒業し、マイアミ大学移植外科教授などを経て、2008年に現職。著書に「移植病棟24時」(集英社)、「移植病棟24時 赤ちゃんを救え(集英社)」がある。
(関連目次)→真の医療安全のために 目次
(投稿:by 僻地の産科医)
MMJ2008年10月号からo(^-^)o ..。*♡
医療の質を向上する方策 一実効性は? ①
沖縄県立中部病院内科
金城 紀与史
(MMJ October 2008 VOI.4 N0.10 p880)
従来の“出来高払い制”の医療保険では、医療の質向上やコスト抑制の効果には限界があると言われてきた。予防すべき合併症にも支払いがされるため、合併症予防のインセンティブは低い。高額な検査や治療で医師や医療機関は儲かるので適応か弱い症例にも施行しがちになる。
自然、コストは爆発的に増大するというわけである。一方、予防医学ヤ|隻性疾患の管理に対しての支払いが少なく、米国のプライマリケア医の多くが幻滅していることは前回(8月号)紹介した。米国では出来高払いの弱点を是正すべく、病院の医療成績の公表ならびに、金銭的インセンティブと成績を連動させたPay for performanceがいろいろな形で導入された。今回と次回では、これらの試みと実効性を紹介しようと思う。
病院や医師の成績を公表すれば医療の質が向上する。患者は成績のよい所に集まり、成績の悪い医師や病院は改善の努力をする。成績がよくならないところは市場原理で淘汰される、というわけである。 1989年以降、ニューヨーク州では病院と外科医ごとの冠動脈バイパス術の手術成績を、患者リスクを調整して発表するようになった。公表開始当初、成績のわるい病院がマスコミ報道されるなどし、州の保健当局の調査も行われた。いくつかの病院では心臓外科手術を一時中止して改善策を講じ、病院によっては心臓血管外科部長以下の新チームをリクルートしたり、年間手術件数の少ない外科医がバイパス術から撤退したりした。その結果、州全体のUスク調整術後死亡率は1989年から92年の問で41%低下したという。
このように、印象的な改善が達成された理由は何であろうか。手術件数が少ない外科医や病院は概して成績が悪かった。たまにしか手術を行わない外科医やそれを支えるチームは、件数が少ないために上達しにくい。症例が集まるところは径験に裏打ちされた実力が付きやすいし、チームワークがとりやすいというわけだ。実際1998年にニューヨーク州では、バイパス術全体の約70%以上が、年間500例以上手術件数のある病院で行われたという。ただし患者が成績のよい病院だけを選ぶようになったわけでもないようで、自宅からの近さや、「かかりつけである」などの理由で選ぶ部分が依然犬きいのだろうと推定されている。
改善されたのを冷ややかにみる意見もある。外科医や病院加害者のリスクを犬げさに報告することで、成績を見かけ上よくしたのではないか。手術成績を下げるような高リスク患者を忌避して、簡単で安全な症例ばかり手術するようになったのではないか。本当に手術を必要とする重症患者が手術を受けられない、逆説的現象を生んでいる、という批判もある。
ニューヨーク州での成果には色々な解釈があるものの、医療の質向上の画期的サクセスストーリ一として紹介されることが多い。州の循環器医師や心臓外科医のりーダーたちを巻き込んで構想されたこと、保健当局の政治的強い意志と支持があったことなどが、現在まで継続できている理由であるという指摘もある。ニューヨーク州以外でも手術成績を公表することを義務付ける、心筋梗塞・心不全・市中肺炎の入院治療の適切さを公表するなど、成績の公開という手法は広がってきている。医療の成績公開によって医療の質が本当に改善するのか、それとも単に医師や病院がデータを賢く公表するようになるだけなのか、今後も詳しい検討が必要となりそうだ。
参考
1.The Pitfalls of Linking DoctorsI Pay to Performance,
Sandeep Jauhar, New York Timesオンライン版9月8日
2.Achieving and Sustaining Improved Quality: Lessons From
New York State and Cardiac Surgery, Mark R. Chassin.
Health Affairs 2002; 21(4): 40.
(関連目次)→産前・産後にまつわる社会的問題 目次
(投稿:by 僻地の産科医)
助産雑誌2008年09月号 ( Vol.62 No.9)から!
特集は 産後も頼られる助産師になろう
「こうのとりのゆりかご」で有名な慈恵病院からの論文です。
産前・産後の支援に取組むというのはこういうことをいうのでしょうね。
もっとやれることはたくさんあるのに、時間と人員がありません(;;)。
出産・育児に悩む女性を支える
医療法人聖粒会慈恵病院 看護部長
田尻由貴子
(助産雑誌vol.62 no.9 September 2008 p782-787)
慈恵病院では,出産前から育児まで継続したかかわりを持ち,母子をサポートしている。「こうのとりのゆりかご」をシンボルとして,親と子のいのちを守り,育て,支援していくさまざまな取り組みを紹介し,専門職である助産師が果たすことのできる役割について考える。
慈恵病院のなりたち
1888年、マリアの宣教者フランシスコ修道会によって待老院(ハンセン病療養施設)が開設され,一般病院,老人ホーム,愛児園(乳児院・養護施設),幼稚園,看護学校などが経営されてきました。慈恵病院は1952年に一般病院として設立され、地域社会に貢絃してきました。そのような変遷を経て,1978年より医療法人聖粒会慈恵病院として運営されています。当院の概要を表1に示します。
地域支援室の経緯
少子化,核家族化がすすむなか、母子保健を取り巻く環境は厳しく,子育ての問題が多発しています。当院ではそのような社会の変化を察知し,2001年より「地域支援室」を設置し,妊娠中からの母子支援に力をいれてきました。表2に示す経緯で取り組みを行ない,現在図1のような「母性ケアシステム」が確立しています。
妊産褥婦へのかかわり
システム全休は妊娠中・入院中(産褥)・退院後の大きく3つの期間に分類することができます。個々の状況や希望に合わせて必要なケアを組み合わせ,継続的に母親,そして家族とかかわっていきます。
妊娠中のかかわり
従来の母親学級を家族の誰もが参加できる教室「エンゼルクラス」と名称変更し、妊娠中から育児を意識した教室としました。今ではご主人はもちろん,家族での参加が増加しています。
入院中のかかわり
集団および個別指導を行ない,母子同室など,それぞれのニーズに沿ったケアを提供しています。
退院後のかかわり
退院後1週間程経過したあと,助産を担当した助産師が自宅へ電話訪問をし,様子を聞きます。そして本人の希望,あるいはEPDS(日本版エジンバラ楽後うつ病自己評価票)の数値が高かった場合,助産師の判断により出産後2週間から1か月以内に家庭訪問を行なっています。また,担当助産師は常時専用携帯を待ち,24時間体制で育児相談を受けていますが,当院での育児サークル(さくら会,エンゼル広場;図2)などもご紹介し、子育て支援をしています。地域に連携が必要なケースは必ず市町村へ文書,または電話で連絡をし,地域でのフォローも依頼しています。
さらに育児の不慣れや不安、疲れ,母乳のトラブル,人間関係の悩みなどに直面し戸惑っている母子を対象に、完全予約制で「日帰りケア」を行なっています。くつろいだ雰囲気のなかで日頃抱えている悩みや不安について助産師がかかわって解決していきます。図3の「ケアシート」を記入してもらうことで有効なかかわりができています。
SOS 赤ちゃんとお母さんの電話相談窓口
「こうのとりのゆりかご」の開設にあたり相談窓口を充実させるため,従来の「SOS妊娠かっとう電話相談」を24時間対応のフリーダイヤルにし、ホームページに公開しました。その結果,件数は10倍に増え全国から相談が寄せられています。内容は「思いがけない妊娠」が多く,女性の無防備さ,男性の無責任さがうかがえます(図4~6)。また,「思いがけない妊娠」のなかでも,「育てられない」「謹にも話そない」「誰も助けてくれない」「1人で悩んでいる」「産まれそう」などの深刻な相談が寄せられています(表3)。
相談事例から考えさせられる思い
公的機関と連携し母子を保護したケース
子どもを連れ,着の身着のままで「ゆりかごに預けたい」と来院されたケースです。住所は不定で,15歳で家出をし,風俗店で働いていました。実家との交流はないとのことで,面談後,熊本県女性相談センターと連携し,母子は一時保護措置を受けました。母親は子どもと一倍に暮らしたいと希望したため,4日後に母親の出身地の児童相談所と連携し,母子寮で自立支援を受けることになりました。
出産後のケア:出産し育てたケース
ホームレス状態で当院に駆け込み,5日後に出産されたケースです。カウンセリング,家族への連絡,家族関係の修復を図り,産後5日目に自宅に戻リました(当院職員が同行)。市の保護課や保健センターの保健師と連携をとりながら,現在立派に子育てされています。
若年者の妊娠
中学生同士で妊娠したケースです。妊娠25週の時に,女の子の友人からの知らせによって両親は妊娠の事実を知ったそうです。女の子は志望校である全日制高校への進学を断念し,世間を気にしながら出産。その後,家族の支えにより子育てをしています。男性側は卒業後も素知らぬ態度で,自分の志望校に進学しています。
特別養子縁組希望者へのケア
当院の相談員が次に示すようなかかわりを行なっています。
【妊娠期】出産まで妊婦健診ごとに面談,安産教室,エンゼルクラスヘの参加,入院の準備(時期・物品)
【分娩期】分娩時の立ち会い
【産褥期】書類作成(出生届,特別養子縁組承諾書など),こころのケア(聖堂で祈ることを含む),
退院指導:①産後の身体の変化,②性教育(STD ・家族計画など),退院時の配慮,退院後の電話訪問,産後1か月健診
その後も電話相談によるフォローを継続しています。
養子縁組をする際,養親も児と同じく5日間ほど入院し,出産した方と同じように育児指導を実施しています。分娩予定者が入院するとただちに連絡をし,米院され待機し,出産を待ちます。
産声を聞いた瞬間の感動はひとしおで,夫婦とも涙を流しながら,どちらが先に抱っこするか,お互い譲り合い写真を撮ったり,我が子を抱いたりといった幸せそうな姿は,ほかのご家族と何ら変わりはありません。
滞在中の主な指導内容を下記に示します。
①面会し抱っこ,母子同室
②休浴指導(個別・集団)見学,実施
③育児指導(個別・集団)
④調乳指導
⑤育児ビデオ視聴
⑥退院時の配慮
(遠方の方へは荷物の配送手配など)
退院後も電話相談などによるフォローを継続しています。養親からときおり,感謝の手祇や写真が送られてくることがあります。
以上,実践例とそのかかわりをご紹介しましたが、この1年間で,「育てられない,預かってほしい」「ゆりかごに預けたい」と初回相談ではっきりと言われた方は15%に上リました。
元来,妊娠・出産は周りの人たちに大きな喜びをもって迎えられてきたものです。しかし,社会の変化に伴い、そうではない方もいるのだということを私たちは認識しなければなりません。「この子(妊娠している我が子)を殺して,私も死のうと考えていました。慈恵病院があったおかげで今の自分があります。お腹の赤ちゃんも救うことができました」と,涙ながらに語られた方もあります。妊娠がもたらす悲劇を拡大してはならないと改めて考える時でもあります。
平成19年度の総相談件数501件のうち「思いがけない妊娠」「中絶に関すること」「出産不安・産後うつ」の相談が232件(46.3%)。そして相談の結果,現在も相談継続中の方もいますが「自分で育てる」と決めた人が36人(16%),「特別養子縁組」をした人が25人(11%),「乳児院」に頂けることとなったケースが5件(2%)でした。
「SOS赤ちゃんとお母さんの相談窓口」では,相談員3名が交替で24時間対応をしていますが,いつも心掛けていることは相良者に寄り添うことです。寄り添って話を聞き,より良い解決策を考え,赤ちゃんもお母さんも幸せになれる方法を探します。初回,匿名で電話相談を受けても,話しているうちに実名化し,来所につながるケースも少なくありません。「事前相談こそが『こうのとりのゆリかご』の本来の目的である」と言い続けたことが実現していると実感しています。
今後の課題
この1年間,出産・育児に悩む女性の相談を受けて浮かび上がった課題は,
●相談窓口を知らない(啓発活動の強化)
●公的機関の限界(時間・マンパワー不足)
●関係機関の連携の希薄さ(育てにくい子など,出生後の連携)
●いのちの教育の充実
(幼・小・中・高校への出張講座,産後の育児指導・家族計画)
●特別養子縁組制度の利用と理解啓もうなどがあります。
この課題は一施設だけで解決できることではありませんが、相談窓口を各々の地域で設け,専門職である肋蛮師ができることから実践していくことが大切であると考えます。
今後,助産師に求められる役割と課題として,周産期のかかわりだけでなく,女性の一生(ライフサイクル)に合わせた伴走者であって欲しいと願っています。出産を迎える家族には、生命誕生という神秘で厳粛な場面で最大の喜びを感じて欲しい,そのために私たちは,今後も妊娠・出産が感動を味わう瞬間として提供できるよう,日々努力して参リたいと思います。
(関連目次)→医療危機と新聞報道 目次
(投稿:by 僻地の産科医)
医療の「テレビドラマ」は増えてます。
でも、「報道」が日本医療をダメにしている?
日経ビジネス オンライン 2008年10月30日
(1)http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20081027/175232/
(2)http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20081027/175232/?P=2
脳内出血を起こした東京都内の妊婦が、緊急時の受け入れ先になっている7つの病院をたらい回しにされて出産後に死亡した問題は、東京でも深刻な“産科医不足”が、起きていることを浮き彫りにしました。
■東京都内、7つの病院をたらい回しにされて死んだ
この“産科医不足”は、今の日本の医療制度が抱える大きな問題点を象徴しています。昼夜を問わぬ分娩に立ち会わねばならない産婦人科医の労働条件は非常に過酷です。激務のうえに高い訴訟率、少ない診療報酬、医学生の産婦人科離れなどの要因が重なり、慢性的な医師不足に陥っているのが現状です。
■圧倒的に足りないのに訴訟が多い産婦人科医
産科医師数は医師全体の約5%であるにもかかわらず、訴訟件数は約12%を占めています。示談・民事の損害賠償額は高額で、医師賠償責任保険を圧迫していると言われていて、病院内で起きた事故の賠償については、病院の責任において保険金で支払うことになりますが、個人の医師が訴えられることもあります。
帝王切開手術中に妊婦を死亡させたとして、手術を執刀した医師が業務上過失致死の疑いで2006年に逮捕された“福島県立大野病院産科医逮捕事件”は今年無罪判決が出ましたが、 地域に“新幹線の駅があっても分娩施設が無い”という現状で、産婦人科医不在地域の予備軍は現在も沢山あり、この事件の影響で産科医が逃げ出してしまうという事態はさらに深刻化しました。
小児科でも医師不足は深刻です。診療報酬が低く、若いうちからローリスク・ハイリターンを求める傾向にある若手医師から小児科は敬遠される傾向があり、医師総数は右肩上がりに増加している中で、小児科医師の割合は減少し、小児科のある病院数も減少してきています。
■小児救急医療のコンビニ化
小児科開業医師の職住分離が進み、夜間時間外は診てもらえないことが多いため、大学病院に、夜間に救急の患者さんが押し寄せてきている“小児救急医療のコンビニ化(24時間、気楽に受診できる)”が急速に進み、重症患者の診療に支障を来したり、過重労働から辞めていく小児科医が増加するという深刻な事態を引き起こしています。いわゆる、“燃え尽き症候群”に陥った小児科医は開業するか、小児救急の無い施設に転出し、残った医師の負担がさらに増えるという悪循環を引き起こしています。
このような現状を引き起こした原因のひとつが、2004年4月から国が導入した医師臨床研修制度だと言われています。以前は医師資格を得た後、2年間研修を積むことが努力義務だったものが、義務化したもので、幅広い分野の基本的臨床能力を習得することを目的とし、内科、外科、救急部門など研修を実施することを必修化しました。簡単に言うと自分が希望する科だけでなく、その他の全般的な診療ができるように、様々な科の研修を受けることが求められるようになったということです。
また、それまで新卒医師は、主に大学病院で研修していましたが、新制度で研修病院を選べるようになった結果、都会の民間病院などに人気が集中し、2年間新人医師が入って来なくなった大学病院では医師が不足して地域の病院から医師を引き揚げざるを得なくなり、医師派遣の役割を担えなくなってしまいました。これが、今非常に大きな問題になっている地域医療の“無医村問題”の原因にもなっています。
■正しく報道している?
このような、私たちの日々の暮らしにとても密接に関係する医療問題の本質については、メディアも正しく報道していく必要があると思うのですが、例えば“福島県立大野病院産科医逮捕事件”についての新聞の見出しは、以下のようなものでした。
「帝王切開のミスで死亡、医師逮捕 福島の県立病院」(産経新聞)
今年出た判決によると、医師側に過失は無く“帝王切開のミス”ではなかったということになります。2006年に逮捕された時点では“帝王切開のミス”の可能性はあったかもしれませんが、この断定的な見出しからするとそれは“誤報”ということになります。
そして、この“誤報”が社会にもたらす大きな影響をメディアは認識していたのでしょうか?この事件の報道のトーンにより多くの医学生に、産婦人科は非常にリスクが高いとのイメージを持たせてしまった可能性は大いにあります。実際に、この年の産科医の志望者は4割も減りました。
■正義の味方になりたがってないですか
また、この事件がきっかけで多くの病院で、重篤患者に対する“たらい回し”が起こる傾向が強まり、今回の脳内出血を起こした東京都内の妊婦の死亡問題に繋がっているとも考えられます。
医療現場における事故を、個人の責任に帰着させるようなメディアの報道姿勢は確かに“医療ミス”としてスキャンダルが大好きな読者、視聴者の関心を煽るには効果的かもしれません。“悪徳医師を断罪する正義の味方”になりたがるのが、日本のメディアの本質でもあります。しかし、その一方で、現場で必死に頑張っている医療従事者の方々に、医療事故のリスクを必要以上に恐怖訴求することになり、結果、人材不足、施設不足などを引き起こし、最後に不利益を被るのは我々国民一人ひとりなのです。 また、患者側も医療が高度化し、患者側の選択肢が増えている以上、インフォームドコンセントに基づき、患者自身、その家族はきちんと説明を受けて納得したうえで治療を受けることが必要となってきています。
■スキャンダルは要らないです
ワイドショーでスキャンダラスに騒ぎ立てるのでななく、“事件の本質は何だったのか? その事件が起こった背景は何だったのか?”をつき詰めて、正しい情報を提供していくことこそが、メディアの役割として重要なのです。
今医療現場で重大な問題になっている“モンスターペイシェント”もメディアが医療事故を大きく扱うようになり、患者の権利が声高に叫ばれ、病院で患者が“患者様”と呼ばれるようになった時期から増え始めたと言われています。
このような患者の存在が、過酷な労働環境の下、疲弊している医師をさらに追い詰め、結果として医師偏在や医師不足の原因となっていることを患者は認識すべきであり、患者サイドとしては求める医療サービスの限界を知る節度と、医療機関を選ぶ知恵が求められていることを知るべきです。
■「チーム・バチスタの栄光」「小児救命」「風のガーデン」
医療という公共性の高い領域では、メディアの果たす役割は非常に大きいと言わざるを得ません。そんな中で最近非常に気になるのが、病院を舞台としたテレビドラマが増えているという現象です。この秋のクールでも「チーム・バチスタの栄光」「小児救命」「風のガーデン」と3つもあります。夏のクールも「コード・ブルー―ドクターヘリ緊急救命」「Tomorrow」がありいずれも高視聴率でした。
中でもこのクールの「小児救命」は、小西真奈美扮する小児科医・青山宇宙が24時間体制の“青空こどもクリニック”を開業する物語で、番組のHPでも今の小児科医不足の現状を訴えています。しかし、このドラマが、視聴者にどんな影響を与えるかは未知数です。
例えばこのドラマを見た医学生が“やっぱり小児科は大変だからやめておこう”と考えるのか“こんな深刻な状況を自分が変えてやろう!”と思うのかは分かりません。小さい子供を持つお母さんたちの“24時間開いてる病院はやっぱり便利よね”という安易な期待が高まってしまう可能性もあるでしょう。
ドラマという領域では、マスメディアであるテレビの持つ大きな影響力は、まだまだ健在です。そんな中今まさに医療の分野におけるマスメディアが果たすべき本来の役割を考える時期にきています。
(関連目次)→本日のニュース・おすすめブログ..。*♡ 目次
(投稿:by 僻地の産科医)
周産期センターが綱渡りなのは、ずっと前からの常識です。
社会が始めて気付きだしただけで。。。(;;)。
ただ、このせいで24時間365日当直体制を当然とされますと、
産科崩壊は間違いなく一斉に訪れます。報道の仕方を考えてください!
現在だっていっぱいいっぱいなのですから(>_<)!!!!!
あと、看護師さんの過労死裁判、「村上裁判」とかいう変な略し方、
とても気になります。やめてください!
日経新聞が見出しに
「病院の赤字」と「診療報酬」をあげてくださったのはGJです(>▽<)!
斜陽
ロハス・メディカルブログ 2008年10月29日
http://lohasmedical.jp/blog/2008/10/post_1453.php
周産期医療センター認定病院:産科医24時間常駐、半数以下の5カ所 /宮城
毎日新聞 2008年10月30日
http://mainichi.jp/area/miyagi/news/20081030ddlk04040175000c.html
◇夜間・休日の複数当直ゼロ
脳内出血を起こした東京都の妊婦が8病院に受け入れを断られた後に死亡した問題で、県内12カ所の「周産期母子医療センター」認定病院のうち、産科医が24時間体制で常駐している病院は半数以下の5カ所にとどまっていることが29日、毎日新聞のまとめで分かった。夜間・休日の当直を複数の産科医が務める病院はゼロだった。病院からは「医者の数が足りず、いつまで24時間体制を維持できるか分からない」との声も上がり、妊婦と新生児を取り巻く厳しい環境が浮き彫りとなった。
周産期とは、妊婦が出産する前後の時期を指す言葉。周産期母子医療センターは、高度な医療の提供や、平日と夜間・休日の機能の格差解消などを目的に整備が進められており、中核的な役割を担う「総合周産期母子医療センター」と、地域の医療機関のサポートに力点を置く「地域周産期母子医療センター」の2種類ある。国の指針は「総合」病院について、「24時間体制で産科を担当する複数の医師が勤務していること」が望ましいとしている。
東京都の問題では、最初に受け入れを断った都立墨東病院は「総合」に認定されていたが、同病院は当初、「土曜日で1人当直なので受け入れられない」と拒否していた。県内で「総合」に認定されているのは、仙台赤十字病院(仙台市太白区)の1カ所。県医療整備課などによると、同病院の産婦人科医は6人で、夜間・休日の当直は1人。人手が足りない場合には、病院近くにいる医師を呼び出す「オンコール」で対応するという。
一方、国の指針が産科の医療従事者について「24時間体制を確保することが望ましい」としている「地域」認定病院で、当直がいるのは▽仙台医療センター(同市宮城野区)▽東北公済病院(同市青葉区)▽NTT東日本東北病院(同市若林区)▽仙台市立病院(同)--の4カ所。いずれも当直は1人で、NTT東日本東北病院のように「3人の医師で当直を回しており、負担が重い。現場は情熱だけでやっているのが実態」という病院もあった。
また「お産は深夜、早朝までかかることがあり、医師2人で昼間の診療と当直の両方をやるのは不可能。定時で帰宅する医師はまずいない」という県立こども病院(同市青葉区)のように、当直を置かない「地域」認定病院も7カ所あった。このうち6カ所が、夜間・休日は「オンコール」で対応。05年から産科医が1人になっている東北厚生年金病院(同市宮城野区)は、夜間・休日の対応は行っていないという。各病院は十分な体制が構築できない要因として「きめ細かい診療をするようになったのに、産科医の数が増えていない」(仙台医療センター)、「産科医はリスクが大きいとされ、なり手が減っている」(NTT病院)など、産科医不足を指摘している。厚労省は各地の周産期母子医療センターの現状を調査中で、県も近く調査に乗り出す予定という。
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【県内の周産期母子医療センターの産科の状況】
医師の人数 夜間・休日の態勢
仙台赤十字病院 6 当直1人、オンコール1人
県立こども病院 2 オンコールで対応
公立刈田総合病院 1(+院長1) オンコールで対応
みやぎ県南中核病院 1 オンコールで対応
仙台医療センター 8(+非常勤1) 当直1人、オンコール1人
東北公済病院 8 当直1人
NTT東日本東北病院 3 当直1人(オンコールの場合あり)
仙台市立病院 7 当直1人
大崎市民病院 4 オンコールで対応
石巻赤十字病院 3 オンコールで対応
気仙沼市立病院 2 オンコールで対応
東北厚生年金病院 1 平日昼間のみ対応
オンコール……病院近くの自宅などで待機し、呼び出しに応じて出勤
総合母子医療センター“綱渡り” 産科常勤医55%欠員 全国施設緊急調査 半数が「1人当直」 医師確保 90%超が「苦労」
西日本新聞 2008年10月30日
http://www.nishinippon.co.jp/wordbox/display/6114/
緊急処置の必要な妊婦や赤ちゃんを受け入れる全国の「総合周産期母子医療センター」(計75施設)のうち、共同通信の緊急調査に回答した60施設中55%は必要な産科の常勤医数を確保できずに定数割れに陥っていることが29日、分かった。当直の産科医が1人態勢のセンターが半数を占め、全体の90%以上が産科医確保に「苦労している」とした。
センターに指定されている東京都立墨東病院など8病院に受け入れを断られた妊婦の死亡判明から1週間。母子の命を救う「最後のとりで」ともいえるセンターの中には、東京以外でも綱渡り診療を余儀なくされているところが少なくない現状が浮かんだ。
調査は23日から全センターを対象に質問用紙を配布して実施。匿名を条件に医師数や診療上の不安を尋ね、60施設(回答率80%)からファクスで回答を得た。
定数は各病院が望ましいと考える医師数を独自に定めるもので、それより産科の常勤医数が下回っているのは33施設(55%)。うち4施設は定数の半分以下だった。定数を満たすのは17施設(28%)で、残る10施設は定数なし(9)と無回答(1)。
国はセンターについて原則「24時間体制で複数の産科医が勤務することが望ましい」としているが、平日または土日の当直が1人態勢で、緊急時は別の医師を呼び出しているのは30施設(50%)。ほかは2人から3人の医師が当直していた。1人当直でも地方の施設からは「待機の医師が10分程度で駆け付けられるので問題ない」などの意見は多かった。
産科医の確保に36施設が「非常に苦労している」とし、「やや苦労している」(19)も合わせると「苦労している」は92%。産科医不足のために何らかの受け入れ制限をしているのは5施設あり、1人当直を理由に受け入れを断った経験のある施設も3カ所あった。
医療を提供する上での不安(複数回答)は「産科医の確保」が85%で最多。次いで「新生児科の医師確保」(73%)、「病床不足」(55%)、「脳外科などほかの診療科との連携」(22%)などが挙げられた。「いつまで続けられるか不安。疲れ切っていますから」(中部地方のセンター)などの切実な声もあった。
周産期センター常勤産科医 15施設が6人以下厚労省調べ
しんぶん赤旗 2008年10月30日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-10-30/2008103001_03_0.html
厚生労働省は、全国の総合周産期母子医療センター七十五施設の医師数を公表しました。脳出血を起こした妊婦が、東京都内の八病院に受け入れを断られて死亡した問題を受け、緊急に調査したものです。産科の常勤医数が、妊婦の受け入れを最初に断った都立墨東病院と同じ六人以下の施設が十五施設にのぼるなど、周産期医療をめぐる医師不足の実態が浮き彫りになりました。調査は、電話などによる聞き取りで、二十七日時点の医師数を集計したもの。医療法の基準に照らし、週三十二時間以上勤務する研修医も常勤に含めています。
調査によると、常勤産科医の数が九人以下のところが三十八施設で、半数を占めました。厚労省は「病床数や非常勤医師数にもよるが、常勤が十人はいないと当直が回らないのではないか」としています。七十五施設の産科の常勤医は、合計で八百八十一人。施設別での最少は、群馬県立小児医療センターの三人でした。
赤字病院32%、診療報酬下げなど重し 08年度調査
日本経済新聞 2008年10月30日
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20081030AT3S3001730102008.html
民間病院を中心に構成する全日本病院協会(東京・千代田)が30日発表した2008年度の病院経営調査によると、病院経営の大半を占める医療・介護関連の収支率が赤字となった病院の比率が前年度と比べ8ポイント上昇し、32%となった。過去の診療報酬引き下げや医師不足が重しとなり、病院経営は悪化している。
医療・介護関連の収支率は回答病院全体で1.9ポイント低下し、102.3%となった。収支率が100を下回り赤字となった病院の比率は、6年ぶりに3割に達した。とくに都市部の病院で経営難が深刻。東京都では半数以上の病院が赤字だった。
前年度と比べて病床の稼働率が低下したほか、外来患者数も減少した。自己負担増などで患者が受診を抑制する傾向も影響しているとみられる。従業員1人当たりの医業収入が減少した一方で、従業員1人当たりの給与費は増えた。
病院経営悪化、32%が赤字 東京では54%も
MSN産経ニュース 2008年10月30日
http://sankei.jp.msn.com/life/body/081031/bdy0810310002000-n1.htm
民間病院の経営状態が悪化していることが、全日本病院協会が30日まとめた「平成20年度病院経営調査報告」で明らかになった。調査対象となった32%の病院が赤字経営で、19年度の24%に比べて大幅の悪化。とりわけ東京は54%(前年度42%)と赤字率が高かった。病床規模別にみると、「20~199床」の病院の経営が比較的安定しているものの、「200床以上」の大規模病院で経営状態が悪いところが目立った。病床種別では、一般病床のみの病院で赤字経営が目立った。
協会では「診療内容や方針を1人の患者にていねいに説明する必要などから、診察できる患者数が落ちて収入が減っている。その一方で、必要なスタッフ確保のため人件費が増加したことなどによる支出増が経営悪化の要因。都市部や大規模病院ほどその傾向が強くみられる」と危機感を強めている。
20年度は診療報酬改定があり、これまで開業医に向けられてきた財源の一部が勤務医の待遇改善に振り向けられた。しかし、協会では「産科、小児科などに重点的に配分されたため、病院全体の経営改善にはつながっていない」とみている。調査は全国288病院の今年5月の経営状況をまとめた。国公立病院など、地域の基幹病院は含まれていない。
病院と消防が医師派遣協定
新潟日報 2008年10月30日
http://www.niigata-nippo.co.jp/pref/index.asp?cateNo=1&newsNo=114369
救命率の向上を目指し、県立十日町病院と十日町・津南地域の消防活動を行う十日町地域広域事務組合が30日までに、医師を救急現場に派遣する県内初めての協定を結んだ。既存の高規格救急車を利用し、医師が同乗する「ドクターカー」の役割を果たす。11月1日から運用を始める。山間豪雪地で患者搬送に時間を要する地域で、救命への期待は大きい。
協定書によると、消防の要請に応じて、十日町病院が医師らを派遣。消防本部が所有する高規格救急車2台を中心に運用する。派遣要請はこれまでも行われているが、協定を結ぶことで出動態勢が円滑となるなどのメリットがある。同組合の江村久消防長は「今ある医療資源を最大限に活用し、一人でも多くの人を助けたい」と話す。病院側は今年2月に発足した災害派遣医療チーム(DMAT)の医師、看護師の派遣が主になるが、傷病状況によって他の医師も出動する。同地域は豪雪地で、消防本部から最も遠い津南町の秋山郷までは車で約1時間半。一刻を争う救急救命に救急車を活用、病院と消防が連携して地域医療に取り組む。
医療機関に配備されるドクターカーは、県内では新潟市民病院だけ。運用には100人規模の医師が必要とされる。十日町病院の常勤医は25人だが、塚田芳久院長は「不採算を度外視しても積極的に取り組むのが公立病院の義務。公立の誇りを持ち、地域の安全を守っていきたい」と話した。
脳卒中治療で地域連携パス 北播磨、丹波の11病院
神戸新聞 2008年10月30日
http://www.kobe-np.co.jp/news/touban/0001546251.shtml
長崎市民病院と原爆病院統合問題 田上市長、県提案を拒否 構想破たん 現地建て替え変更せず
西日本新聞 2008年10月30日
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/56599
茨城・医療考:筑西市民病院の行方/下 迫る決断の時 /茨城
◇再生には理念が不可欠 民営化も「全適」も茨の道
毎日新聞 2008年10月30日
http://mainichi.jp/area/ibaraki/news/20081030ddlk08040119000c.html
退院率低いと診療報酬減額 リハビリ難民も
東京新聞 2008年10月30日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008103002000086.html
脳卒中などで体が不自由になった患者が入院する「回復期リハビリテーション病棟」で今月から、患者の退院率が低いと病院が減収になる診療報酬制度がスタートした。長期の入院患者を減らすことで、国は医療費削減を狙う。医療への初の成果主義の導入ともいわれるが、患者や医師からは「重症患者の入院を嫌う病院が増え、リハビリ難民が生じる危険がある」という不安の声が上がっている。
車いすに乗った妻(50)の手を握り、会社員の夫(51)は声をかけた。「調子いいな、ずいぶん元気になったよ」。妻の硬い表情の中に、かすかにほほ笑みが浮かんだ。
高校教師だった妻は昨年七月、くも膜下出血で倒れた。救急搬送された病院で手術をした後、今年二月から首都圏にある回復期リハ病棟に入院している。全身まひの状態が続くが、一日三時間のリハビリで、少しずつ体に「力」が戻ってきた。介助すれば寝返りができ、車いすやベッドへの移動も楽になった。栄養はチューブで胃に入れ、気管も切開してチューブが入っている。リハビリの効果で必要な栄養の半分を口から取ることができるようになったが、家庭で介護するのは困難だ。
診療報酬制度の改定で、リハビリ病棟では二年前から、一定の日数(最長百八十日)を超えると、報酬が半額以下になり、リハビリが制限されるようになった。妻の入院は既に二百数十日。「今は病院の好意でおいてもらっている」と夫は言う。さらに今月から患者の自宅などへの退院率が低いリハビリ病棟は、一日の入院料が5%減額されることになった。他の医療機関に移るのは退院とみなされない。夫は「病院でのリハビリを続けたい。制度の改変は理解できない」と訴える。
介護やリハビリで知られる「鶴巻温泉病院」(神奈川県秦野市)の澤田石順医師は「退院率を上げるには、重症患者や後期高齢者の入院を断るしかない。当病院では、四月以前は重症患者が六割だったのに、十月以降は七割以上に増えた。他の病院から流れてきたとしか思えない」と指摘。「成果主義は医療になじまない。長期リハビリが必要な患者さんが医療費削減の狙い撃ちにされた」と憤る。
拠点病院充実へ知恵絞れ/広島
読売新聞 2008年10月30日
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hiroshima/news/20081029-OYT8T00705.htm
備後地方の産科救急医療の現状を取材し、改めて産科医不足の深刻さを痛感した。「たらい回し」のような事案は起きていないが、どの病院もぎりぎりの状態。より安心してお産が出来るような体制作りには何が必要とされているのか。
福山市周辺では、新生児集中治療室(NICU)を持つが重篤な3次救急患者(妊婦)を受け入れられない福山医療センターと、NICUはないが母体を救える救命救急センターのある福山市民病院の機能が分離している現状が問題だ。もし、両病院の機能が合わされば、理想的な救急医療体制と言えるだろう。
一方、尾三地区では、JA尾道総合病院の拠点性を更に高める必要がある。三原市の開業医から「産科医やNICUをもっと増やしてほしい」との声も聞かれた。同病院は2011年の新築移転も決まっている。これを機に産科医を2、3人集める手はないのか。
産科医不足を解消する“特効薬”がない中、多くの医師が拠点病院に産科医を集約し、地域の救急体制を充実させる必要性を強調していた。そのためには、産科医を多く抱える病院とそうでない病院との利害調整も必要だ。行政がリーダーシップを発揮し、関係機関が知恵を絞らなければならない。
周産期センター 産科医不足解消は緊急課題だ
毎日新聞 2008年10月30日
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20081030ddm005070073000c.html
医師不足 協力体制強めて解決せよ
MSN産経ニュース 2008年10月30日
http://sankei.jp.msn.com/life/body/081030/bdy0810300304000-n1.htm
医師手当削減 医療の質低下が心配だ
沖縄タイムス 2008年10月30日
http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-10-30-M_1-005-1_001.html?PSID=aa23aeeebe660f128bd1eca1e3079cb1
国民のだれもが等しく願っていることは、自身や家族、周囲の人たちが「安心」して暮らす社会の実現だろう。その礎となるのは、医療や年金など社会保障制度の充実にあることは間違いない。だが、東京では出産の近い妊婦が複数の病院に受け入れを断られ、痛ましい事故が起きた。原因は医師が不足していたためだが、沖縄も同じで、北部地域や離島などでの産科医、脳外科医不足などが顕在化し、地域間格差も明らかになっている。そんな中、県内の医療をめぐり住民サービスの低下が懸念される議論が起きている。県病院事業局が、県立病院の医師手当の大幅な見直しをするというのだ。医師としての特殊性を考慮した手当を全廃する代わりに、県の医師として従事している一年目から十六年の間に支払われている初任給調整手当(月額)を現行約三十万円から十万円程度引き上げるのが柱だ。これに対し、現場の医師たちは強く反発している。
県が組合側に提示した案では、医師全体に支払われている月額四万五千円から二十万円の手当がカットされる。引き上げられるのは勤務年数が限られ、中堅からベテランの医師たちはその分がそっくりなくなるのだという。県側は削減幅と増額幅を対比し、支出される総額は変わらないと主張しているが、医療現場の実情を見据えた対応なのかどうか、疑問が残る。背景にあるのは都道府県や政令都市が直接運営にかかわる公営病院の厳しい運営実態だろう。全国千近い公営病院の七割が赤字を抱えている。国からの交付税は減り、税収は伸びない。
県財政が窮迫する中、効率化に向けて組織運営そのものにメスを入れ、人件費の抑制にも着目しているのは民間企業でも同じと言っていい。ただし、今回の提示には強い懸念を抱かざるを得ない。医療現場が混乱し、最終的に住民が等しく受けるべきサービスの質低下が予想されるからだ。引き上げられる初任給調整手当は年を重ねるごとに減額され、期限を過ぎれば対象外になる。
公営病院の現場は業務環境の悪化が叫ばれて久しい。
医師や看護師不足による過重な労働、資金難による設備投資の遅れなど、県内からも悲痛な叫びが聞こえてくる。これではキャリアを積んだ医師が、より待遇の良い民間や他県に流出する可能性のほうが高くなるのではないだろうか。それが心配だ。
医療現場の環境改善がなされないまま、労務に見合った待遇にまで切り込むのは、性急すぎるのではないか。もちろん、県だけが責任を負う問題ではない。医療現場は刻一刻動いており、国が一日も早く対策を講じる責務がある。さらに言えば、社会保障制度を将来にまで安定的に支える財政基盤の確立を国民論議に押し上げることが不可避だ。
県内21病院で研修医受け入れ90人 過去最多、2年連続増/三重
中日新聞 2008年10月30日
http://www.chunichi.co.jp/article/mie/20081030/CK2008103002000024.html
県内21病院で、来年4月から研修医の受け入れを予定しているのは、昨年より8人増え90人と過去最多となった。研修予定者の全国総数は減っているが三重県は2年連続で増加。県単位でのPRや、病院ごとの研究プログラム改善の効果が表れたとみられ、関係者は「地域の医師確保につながれば」と期待している。
2004年4月に始まった新しい研修制度では、大学病院以外での研修が可能になり、「医師臨床マッチング協議会」が行うマッチングで研修先を決める。医学部卒業後の2年間、希望の病院で研修が義務づけられる。県内の受け入れ予定者は、06年は74人だったが、07年は82人に増加。定員に対する充足率も06年48・7%、07年53・2%、08年58・4%と伸びている。ことしの90人のうち三重大出身者は50人。
病院別では、三重大付属病院が昨年の6人から14人に大幅増。山田赤十字病院(伊勢市)は6人から12人に倍増し、松阪市民病院も昨年の1人から5人に増えた。一方、尾鷲総合病院や紀南病院(御浜町)など6病院は研修予定者がゼロ。尾鷲総合と紀南の県南部2病院は6年連続で研修医のいない状況だ。
県内では、研修を受け入れている21病院が特定非営利活動法人(NPO法人)「MMC卒後臨床研修センター」を04年に設立。全病院の紹介をまとめたパンフレットを作り、県外での説明会を開くなどPRに取り組んでいる。同センターの安井浩樹事務局長は「人気があるのは研修プログラムの第3者評価などを受け、努力が目に見える医療機関」と指摘。県内で第3者評価を受けた医療機関が4つあり、評価実施率が全国3位と高いことも研修希望者が多い理由に挙げた。
伊豆東部総合病院:太田・東伊豆町長、移転中止求める 医療法人に要望書 /静岡
毎日新聞 2008年10月30日
http://mainichi.jp/area/shizuoka/news/20081030ddlk22040149000c.html
八戸市立病院:ドクターヘリ場建設、県と市で見積額に食い違い /青森
毎日新聞 2008年10月30日
http://mainichi.jp/area/aomori/news/20081030ddlk02040022000c.html
病院形態アンケートで「独立行政法人化」が多数に 山梨
MSN産経ニュース 2008年10月30日
http://sankei.jp.msn.com/region/chubu/yamanashi/081030/ymn0810300244002-n1.htm
県立総合病院の不適切支出 587万円を回収、納付
静岡新聞 2008年10月30日
http://www.shizushin.com/news/pol_eco/shizuoka/20081030000000000010.htm
北橋・北九州市長:公共事業前倒し検討--記見 /福岡
毎日新聞 2008年10月30日
http://mainichi.jp/area/fukuoka/news/20081030ddlk40010337000c.html
日赤看護大が助産師課程を来春開設
中国新聞 2008年10月30日
http://www.chugoku-np.co.jp/Health/An200810300306.html
笑顔で支援者に謝意―村上裁判で両親ら
キャリアブレイン 2008年10月30日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/18917.html
看護師の労働環境の改善を
キャリアブレイン 2008年10月30日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/18916.html
国立循環器病センター(大阪府吹田市)の看護師だった村上優子さん(当時25歳)のくも膜下出血による死亡について、大阪高裁が10月30日、公務災害と認定する判決を下した。高裁は、村上さんの時間外労働を月50-60時間と算定。これは、過労死の「認定基準」を下回る“数字”だ。しかし高裁は、「過労死認定の判断は、時間外労働時間の量のみに基づくのは相当ではなく、その量に併せ、業務の質的な面を加味して総合的に判断する必要がある」と、労働の質的な過重性について踏み込んだ見解を示した。社会問題化している過労死が、減るどころか増えている現状にあって、今回の判決は大きな意義を持つ。
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国立高度専門医療センターで看護師“バーンアウト”
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村上さんは1997年4月から同センターで勤務していた。判決では、同センターについて、「循環器疾病に対する高度の専門的医療・調査・研究を担っている。ここに勤務する医師や看護師は日夜、先端的な医療、新しい医療技術の開発などに専心しており、求められる業務の水準も自ずと高度であり、身体的負担や精神的緊張の程度も大きい」と指摘。その上で、村上さんが担当していた脳神経外科病棟の業務を挙げ、「主に脳血管外科の手術待機患者や回復期の患者が入院しており、外来や一般病棟に比べると、勤務内容の負担が高く、恒常的に時間外勤務をせざるを得ない状況だった」ことを重視した。
看護労働の質的な過重性に関しては、変則的な夜勤や交代制勤務の問題を取り上げ、「勤務シフトの変更度合い、一つひとつの勤務間隔、深夜勤務の頻度などの観点から検討し、評価すべき」と、時間の長さだけでは測れない労働の過重性に言及している。こうした観点に基づき、村上さんがこなしていた日勤から深夜勤、準夜勤から日勤のシフト間隔が5時間程度しかなかったことを重視し、「勤務間隔の全部を睡眠に当てたとしても、最適な睡眠時間を確保することは不可能。通勤や家事に要する時間を考慮すると、確保できる睡眠時間は3、4時間程度に過ぎず、村上さんが疲労回復のための十分な睡眠を取れなかった」として、短い間隔での勤務や恒常的な残業など、労働の質にかかわる過重性を総合的に判断する必要性を強調した。
関西大教授で労働問題に多数の著書がある森岡孝二さんが厚生労働省の調査を基にまとめた「過労死・過労自殺などの労災認定状況」によると、例えば、脳・心臓疾患での死亡が1999年の48人から2005年には157人に急増している。
過労死が増える労働現場にあって、今回の判決は「発症前1か月間に概ね100時間、または2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たり概ね80時間を超える時間外労働が認められる場合、業務と発症との関連性が強いと判断される」とする「過労死認定基準」の“妥当性”を問う内容とも評価できる。
しかし、看護師不足はなお深刻で、看護職の労働条件の根幹をなす夜勤・交代制勤務について、夜勤体制が3人以上の病院は5割に過ぎず、2人や2人未満の病院もある。
1965年の人事院の夜勤判定から40年以上が経過しているにもかかわらず、いまだに「月8日以内夜勤」は実現しておらず、夜勤が月に9日以上の病院が2割を超えている。
入院日数の短縮化や医療安全対策、医療・看護内容の高度化で、看護の現場の忙しさが増している。夜勤・交代制の不規則な勤務でありながら、仕事が終わらず数時間の残業が常態化し、疲れ果てて燃え尽き離職していく看護師も少なくない。過密な業務と少ない人員体制では、患者の命と安全の確保にも否定的な影響を与える。
昨年7月、月8日以内の夜勤、勤務間隔の12時間以上確保、夜勤後の時間外労働の禁止などを求める「看護職員確保法」の改正を求める請願が参院で採択された。しかし、いまだに実現していない。
今回の判決も踏まえ、看護師が健康で安心して働き続けられる職場をつくることに、国など関係機関が全力で取り組むことが求められている。
医療費増に希望も、抑制への利用に警戒 <日医、国民会議の推計で見解>
Japan Medicine mail 2008/10/30
日本医師会は29日の定例会見で、政府が23日の社会保障国民会議・サービス保障分科会に示した2025年の医療・介護費用の推計に対する見解を示した。「現時点では国民会議の最終報告でシミュレーションがどのように位置付けられるか決まっていない。淡々と受け止めるにとどめたい」とした上で、「医療費を増加させるというシミュレーション結果は、国民、患者、医療関係者に希望を与える反面、財政当局に医療費増加の危機感を与え、かえって医療費の抑制が強められることになりかねない」とし、今回の推計結果が医療費抑制のツールとして利用されないよう注視する考えを示した。
DPC導入で経営改善は79.8% <日病・アンケート調査報告>
Japan Medicine mail 2008/10/30
日本病院会は29日、「DPCについてのアンケート」の調査報告を発表した。DPC導入後5年が経過し、問題点も明らかになりつつあるとの考えから、入院医療の包括払い方式の今後の在り方を探る目的で現行のDPC方式の利点と問題点をアンケート方式で調べた。
日病加盟のDPC対象病院400施設にアンケート用紙を今年6月に送付し、273施設から回答を得た。2008年4月時点のDPC対象病院は534施設で、回答病院はそのうちの約半数に相当する。
調査結果によると、DPC対象病院となったことで「大きく増収となった」「増収となった」「若干増収となった」と回答した病院は全体の79.8%に達し、現時点でのDPC導入は経営改善につながる傾向を示した。ただ、医療の質の変化については「何とも言えない」との意見が64.8%を占めた。
高度医療評価制度「当面の推移を見守る」 <日医・中川常任理事>
Japan Medicine mail 2008/10/30
日本医師会の中川俊男常任理事は29日の定例会見で、甘利明規制改革担当相が24日の規制改革会議で高度医療評価制度の積極的な運用を提案したことを受け、「日医としては高度医療評価制度が導入後、間もないため、現時点では当面の推移を見守りたい」との見解を示した。また「本来は速やかに薬事法の申請、承認をしていくことが重要だ」と述べ、高度医療評価制度がその妨げにならないよう注視していく考えを示した。
軽症患者利用して 夜間輪番制を導入 御津医師会11診療所で きょう地元と 連携強化へ調印/岡山
読売新聞 2008年10月30日
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/okayama/news/20081029-OYT8T00723.htm
八尾の呼吸器外し:元看護師らに罰金 東大阪簡裁が略式命令 /大阪
毎日新聞 2008年10月30日
http://mainichi.jp/area/osaka/news/20081030ddlk27040412000c.html
八尾市の「八尾徳洲会総合病院」で昨年12月、末期がんで入院中の女性患者(当時87歳)が人工呼吸器を外したまま放置され死亡した事件で、東大阪簡裁は16日付で女性看護師(30)と元女性看護師(27)にそれぞれ罰金30万円の略式命令を出した。起訴状などによると、2人は患者の体をふくために人工呼吸器を外したまま、再装着するのを忘れた。東大阪区検が業務上過失致死罪で略式起訴していた。
都城市で医療ミス2件 大腸損傷とワクチン誤接種/宮崎
読売新聞 2008年10月30日
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/miyazaki/news/20081029-OYT8T00793.htm
都城市は29日、大腸がんの内視鏡検査で市内の女性(81)の大腸を誤って傷付けたことを明らかにした。ワクチンを誤接種するミスも判明し、松元清光・市保健福祉部長は「多大な迷惑と心配をおかけしたことをおわびしたい」と陳謝し、再発防止を図る考えを示した。
市によると、内視鏡検査は27日、同市山田町の市山田総合福祉センターで実施。市が委託した男性医師(37)が検査した際、誤って女性の腸壁を傷付けたという。出血があったため、女性を病院へ搬送したところ、腸に長さ約8ミリの穴が見つかり、縫合した。約2週間の入院が必要だが、今のところ順調という。市は女性や家族へ謝罪した。医師は当日、64人を検査する予定だったが、事故後に中止。すでに受診した20人に異状はなかった。
一方、誤接種は24日に発生。市の委託を受けた市内の診療所で、医師が麻疹(ましん)風疹(ふうしん)混合ワクチン接種を希望した男子高生(17)に、誤ってインフルエンザワクチンを注射したという。医師と看護師が、ワクチンの種類を記した予診票を確認せずに、接種したことが原因。今のところ、健康被害はないという。市では2006年以降、ワクチンの種類や量を誤って接種するミスが相次いでいる。
県赤十字血液センター:基準値満たさぬ血液製品化、埼玉の乳児に輸血 /長野
毎日新聞 2008年10月30日
http://mainichi.jp/area/nagano/news/20081030ddlk20040033000c.html
母子保健奨励賞:毎日新聞社賞に3人
毎日新聞 2008年10月30日
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20081031k0000m040131000c.html
ノロウイルス:新座の小学校で感染 児童ら140人欠席 /埼玉
毎日新聞 2008年10月30日
http://mainichi.jp/area/saitama/news/20081030ddlk11040239000c.html
地元で安心出産・育児を 東村山の女性ら発行--多摩東部8市など /東京
毎日新聞 2008年10月30日
http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20081030ddlk13100304000c.html
妊娠に関する電話相談
大分放送 2008年10月30日
http://www.e-obs.com/obs-news/genko/DD10300007632.html
不妊治療、どこまでやるか
毎日新聞 2008年10月30日
http://mainichi.jp/life/love/news/20081030org00m100038000c.html
女性に多い甲状腺の病気!
大手小町 2008年10月30日
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/beauty/kokokara/20081030ok09.htm?from=os2
重さ3.3キロの腫瘍、生後14カ月の赤ちゃんから摘出
CNN Japan 2008年10月30日
http://www.cnn.co.jp/science/CNN200810300027.html
心臓発作、「病院まで自分で運転」3割以上 カナダ
AFPBB News 2008年10月30日
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2533485/3479079
ブドウ球菌の治療が困難に~最新調査で判明、耐性が強まる
USFL.COM 2008年10月30日
http://www.usfl.com/Daily/News/08/10/1029_028.asp?id=65126
ウガンダ:カラモジャ地方における栄養失調
国境なき医師団 2008年10月30日
http://www.msf.or.jp/news/2008/10/1344.php
【フォーラムのお知らせです(>▽<)!!!】
公開市民フォーラム「これからのお産のあり方を考える」
兼 第4回拡大産婦人科医療提供体制検討委員会
http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_20080922.html
日時:2008年11月1日(土曜)午後1時より4時まで
場所:学術総合センター(旧一ツ橋講堂) 中会議場
〒101-0003 東京都千代田区一ツ橋2丁目1番2号
TEL : 03-4212-6000
(関連目次)→コメディカルの人手不足 目次 海外医療事情 目次
(投稿:by 僻地の産科医)
MMJ2008年10月号からo(^-^)o ..。*♡
アメリカでも看護師不足なのですねo(^-^)o ..。*♡
日本の医師不足・看護職不足に対する政策などでも、
もっと現場の声を吸い上げ、参考にしていけばいいのに
といつも思っています。
看護師不足:横断的な組織連携で乗り切る米国
(MMJ October 2008 VOI.4 N0.10 p820-822)
米国内では今後、看護師の需要が増加すると予測されているが、看護職の労働人口を増やすうえで最大の障害となっているのが看護学校だという。そこで、米国内で強い影響力をもつ2つの非営利団体(NPO)「American Association of Retired Persons[AARP;全米退職者協会])」と「Robert Wood Johnson財団(RWJF)」が連合し米国労働省(DOL)などの連邦組織や州当局と合同で今年6月にサミットを開催した。
JAMA(2008 ; 300 : 887~888)によると、同会議では、看護学校のかかえる障害をいかに取り除き、入学者の枠を拡大して今後のニーズに備える方法について議論が交わされた。全米から選ばれた18州の代表も参加し、看護師教育課程の卒業者教を増やすのに参考となる模範例を共有化するとともに、今後の計画が立案された。上記の3組織は共同で、この目標達成に向けて特に各地域で効果が期待される対策を中心に白書を発表した(http://www.championnursing.org/uploads/NursingEducationCapacityWhitePaper20080618.pdf)。
今回のサミットおよび白書の作成は、AARPとRWJFが取り組む活動の一環で、今後さらに状況の悪化が予想される看護師不足問題に対し解決を迫られている州に、専門的支援や組織的な支援活動も提供している。米国健康資源・サービス局(HRSA)によると、看護師不足は今後12年間で100万人以上になると予測されている。
看護師の需給
看護師の需要が高まっている背景には、高齢者人口の増加、看護職労働人口の高齢化、そして医療の質に看護師の果たす役割の大きさが認識されてきたことなど、さまざまな要因が考えられる。比較的給与が高く、長期雇用率が高いこと、将来需要の増大が見込まれることから、看護専門職に対する関心が高まっている。
しかし、米国の看護学校では教員や施設が不足し、助成金も限られている。卒業者に紹介できる医療施設も非常に少ないという問題対応にも追われているため、将来の看護師需要を見込みつつも、なかなか入学者の枠を広げられない状況にある(Kuehn BM.JAMA 2007; 298: 1623~1625)。実際、2006~07年に看護学校へ入学を希望した資格のある応募者のうち42,000人以上が入学を拒否されている。
「看護職を目指す人が増えてきた今こそ、その門戸を開く必要がある」とAARP公共政策研究所のSusan Reinhard所長は言う。
看護教育課程の修了者を増やし、看護職の定着を促進する目的で、AARPとRWJFは2007年に合同事業として「Center to Champion Nursing in America(CCNA)」を発足させた。同センターは現在AARPが運営しており、会員数は3㈲O万人を超え、政府機関への陳情など、かなり大きなロビー活動を展開することが可能だ。RWJFは1000万ドルをCCNAに資金援助を提供しており、同財団のスタッフが保健医療制度の改革など、専門的な知識・経験に関して支援することになっている。今年開催されたサミットは、CCNAによる最初の対外的な活動である。
DOL雇用訓練局(Employment and Training Administration;ETA)労働人□計画室のGay Gilbertによると、当局もブッシユ大統領が提言したHigh Growth Training Initiative(成長分野において専門的訓練を受けた労働人口を増やすために、地域の人材養成機関、大学などの教育機関、その他の関係機関に資金援助するプログラム)にのっとり、看護職の労働人口不足の問題解決に取り組んでいるという。これらの助成金の約半分は医療訓練プログラムに与えられている。
看護専門家で、RWJF人材チーム(Human Capital Team)プログラム責任者でもあるSusan Hassmmerによると、今回のサミットには49の州から多分野の看護職グループが参加に応募し、最終的に18州が選ばれたという。
サミットでは、若グループが看護教育の受け入れ能力の問題について現状ならびに現在実施している対策の情報を交換し、各州で問題の解決に必要な計画作りに取りかかった。
今後12ヵ月間にわたり、CCNAはこの18グループに専門的な支援を提供していく。例えば、AARPのスタッフ加州や全国レベルでのロビー活動に協力し、看護教育プログラムの財源確保を図るといった展開が考えられる、とReinhardは述べている。DOLも同様な支援を各グループに行う。同省では各種産業分野の労働人口に関して戦略作りに必要な教育資材などを提供している(http://workforce3one.org/)。 CCNAは今後毎月、ウェブ放送を通じて参加している州(代表グループ)に専門的な支援を提供する予定だ。
多面的アプローチ
今回発表された白書のなかで、CCNAとDOLは「看護学校がかかえる障害を緩和するためには多面的な方策が必要だ」と提言し、重要項目をいくつかあげている。主な対策としては、商工会議所などの法人と戦略的提携関係を構築する、これらの提携先の資産を活用する、看護学生の受け入れ能力を増大させ、多彩な教員を登用する、看護教育システムを再構築する、教育プログラムに政府や資格認定機関を参画させること――などだ。
これらの要点を取り入れたプログラムの一例として、オレゴン州の看護教育コンソーシアム「Oregon Consortium on Nursing Education」を白書は紹介している。このコンソーシアムは2006年にオレゴン保健科学大学(OHSU)看護学部とオレゴン州にある8つのコミュニティーカレッジが設立した組織で、その成果として4年制の共通カリキュラムが作られた。
学習課程の多くはオンラインでも単位を取得でき、コースを修了すると看復学の学士号が授与される。直接OHSUへの入学を認められる学生もいるが、他の学生は通常、OHSUと他のコミュニティーカレッジ1校の両方に籍を待ち、最初の教育課程をコミュニティーカレッジで修了した後、最後の1年間をOHSUで修了する。
教育課程を共有化することのメリットは、教員が複数の学校で授業を行えるようになり、教員間で共有可能な教育用資料のオンラインデータベースも構築できるようになる。最初の臨床実習は、ナーシングホームやホームレス保護施設を含む、さまざまな施設で実施される。さらに高度な看護の臨床実習は、同プログラムで特別な訓練を受けた専門看護師(practicing nurse)の監督下で実施される。
HassmiHerによると、CCNAは、プロジェクトに参加している州同士がそれぞれプログラムを作るときに得た知識・経験を共有化できるように、オンラインフォーラム(掲示板)やチャットルームの準備も進めている。また、今回サミット参加に応募したが選ばれなかった州にも何らかの形で参加できる方法を模索しており、その1つとして、一部のウェブ放送をすべての州に公開する計画もあるという。それ以外にサミットに参加した州が近隣の州をも指導できないか、その可能性も検討されている。
看護師の定着率向上
CCNAは、看護教育の拡充に取り組んでいる州への支援だけでなく、看護師の定着率を向上させるための病院や医療関係の組織、プロジェクトの理事会・役員会メンバーなどに対しても、看護師の枠を増やしていくよう働きかけることを目標に掲げている。
看護師の大多数は現役として医療の現場で活躍している、とReinhardは言う。事実、HRSAが実施した調査によると、2007年には正看護師のうち83.2%が医療施設に就労していた。しかし、看護師が専門職をやめる理由を把握し、労働条件・環境などを改善すれば、いまより多くの看護師人口を確保し、離職率の高い職場での定着を促すのに役立つ可能性があるという。
「新卒看護師の多くは病院に勤務するが、離職率が高い」とReinhardは問題を指摘する。「過酷な労働で“燃え尽き症状"を感じたり、孤独感を訴える看護師は少なくない」と彼女は話す。「仕事の内容や職場の環境を改善し、看護師の定着につながる方法を見つけたいと考えている」
年齢が比較的高く、熟練した看護師をとどめておくことも重要課題の1つだ、とReinhardは述べている。職場の照明を改善する、病棟内の回診回数を減らす、患者の体位変換や重い器具・機材の挙上など身体的負担の大きい仕事に就かせない、といった工夫を図れば、年齢の高い看護師の離職を防げる可能性もある、と彼女は示唆する。医療機関の理事会(役員会)に看護師の枠を設けることも、看護職の問題を拾い上げ、改善策を講じるなどして定着率を向上させることにもつながると期待されている。
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