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(投稿:by 僻地の産科医)
大淀病院事件における、病状について考察してみます。
まず当該時間のカルテです。
記憶に頼ったメモより、こちらの方が正確ですから、こちらを参照に。
(1:37) 突然の痙攣発作出現。当直室の産婦人科医師を呼ぶ。
BP175/89mmHg、水銀血圧計でBP200/100mmHg。
SPO2 97%、いびきをかき始める。強直性の様な痙攣を認める。
子癇と判断、すぐにマグネゾール20ml 1A 側管より静注すると痙攣はおさまった。
引き続き微量注入装置を使用し、マグネゾールを 20ml/hr. のスピードで点滴開始。
(1:50) 産婦人科医師は内科医を呼び出し、
循環器系の管理を依頼するとともに、
バイトブロックを咬ませ、口腔内と鼻孔を吸引した。
バルーンカテーテルも挿入した。
この時点で、母体搬送を決断し、奈良医大付属病院に連絡し、
当直医を呼び出して搬送を依頼した。
(2:00) BP148/75,HR76/min.
SPO2 97%,R26/min.痙攣発作は認めない。
二回目のBP144/71,HR96/min. 瞳孔散大。
搬送用紙、紹介状を作成。
[原]身内が除脳硬直と判断し、CT等の検査を要求したが、担当産科医は「子癇なので、動かさないほうがよい」として検査せず、「転院先を探している」と言うだけ。
(4:30) 呼吸困難状態発生。気管内挿管。 そして裁判閲覧資料から。 ちなみにこの国循での診断は、CTの読みだけになっていて、 それからこれは記録だったか以前読んだものだったか忘れましたが、 似たようなCT画像(イメージ)を探してみました。 そして脳血管撮影ができていませんから、 さて、今までに産婦人科的にはいろいろと文献を上げさせていただいています。 原因が特定できない場合には子癇発作として対処するのが原則ですし また子癇とほかの脳血管障害との鑑別はむずかしく(中略)現状では診断の遅れや誤診の可能性は回避し難く,また,最近の有効な治療方法を導入しても予後の改善が得られるとも断言できない(日高敦夫)ことも報告されており、 また最近の日産婦の報告でも、脳出血による妊産婦死亡に関していえば母体死亡回避可能性はなしというのが結論でした。 ま、それはともかくとして、脳出血です。 瞳孔散大。 (搬送用紙、紹介状を作成。) この時点で脳外科のみ そしてご家族は除脳硬直を主張されているそうですが、 【大淀】除脳硬直 1.くも膜下出血(一過性で改善してくるケースが時にある) このうち、脳出血については、 とのコメントをいただいています。 さて、なんちゃって救急医先生からも自験例をふまえた報告です。 とのコメントをいただいています。 脳出血の場合、 さてこちらの、脳出血における手術適応です。 とあります。つまり重症すぎる場合は基本的には手術しない、 また、くも膜下出血のような脳実質外での出血の場合には 脳梗塞に関しては、最近、血管内治療や血栓溶解が進んできたので論文は その意味では1:37から搬送までの神経所見などについて 今回の大淀事件裁判にて感じたことなどの報告は以上でひとまず終了とさせていただきます。 脳外科の先生方、間違いについては順次ご指摘くださいませo(^-^)o..。*♡
(4:50) 救急車へ移送。大阪へ。
(6:00) 国循到着
これ以降は国循の記録
JCS Ⅲ-300、瞳孔5mm、対光反射-、自発呼吸+(挿管中)、痛覚反射-
【CTの読影】
右前頭葉に7cmの血腫、明らかなMidline Shift、脳幹にも出血、脳室穿破
脳血管撮影の余裕なし、直ちに開頭手術
CTそのものの証拠提出はされていないようです。(間違っていたらごめんなさい)
また開頭術の術中所見では、
脳動静脈奇形(AVM)などの血管病変は明らかでなく、
死後の病理解剖もされていませんので、正確な出血原因は不明です。
カルテの主病変は「脳内出血(大脳半球皮質)」となっています。
血腫除去術は行えずに保存的治療しかおこなえなかったように記憶しています。
論文に載っているものが主体ですけれど、
7cmの血腫となるとかなり大きいです。
(女性成人の頭の大きさを考えていただければわかりますが)
イメージ画像としては、このようなものになるかと思います。
(被殻出血・脳室穿破)
AVM等の先天奇形についてはわかりません。術中所見ではあきらかではなく、そして病理解剖もおこなっていませんからCTだけなのです。
(宮崎医大 鮫島浩)
上記カルテ、2時時点での話です。
(産科搬送可能性のある施設には断られているわけですから)
の施設に送ってみて下さる病院があるでしょうか。
41w1d、分娩第一期の患者さんです。
(2:00)の時点です。
除脳硬直が起こる病態は脳外科医のTaichan先生の記事によりますと、
以下3つだそうです。
マイアミの青い空 2007.09.03
http://blog.m3.com/Neurointervention/20070903/_.
2.脳内出血(大淀の症例、是よろずERでは脳幹出血呈示)
3. 脳幹梗塞(特に脳底動脈閉塞症の場合)
脳内出血でこの姿勢を呈した場合、手術をしても意識が改善して人間らしい生活が出来るレベルまで改善するかというと絶望的でしょう。診断時のCTで予後が予想できます。発症から手術までの時間が問題になるのは寧ろ下記の3の脳底動脈閉塞の場合となります。
除脳硬直とCT検査
日々是よろずER診療 2007-09-02
http://blog.so-net.ne.jp/case-report-by-ERP/20070902
除脳硬直をきたす状況とは、その時点できわめて予後不良な状況です。 今すぐCTをとろうがとるまいが、予後が変わるわけではありません。
大淀病院の細かい体制まで存じ上げませんが、CTがすぐに取れない(技師呼び出し、移動に時間がかかるなどの要因)状況かつ脳外科緊急対応ができない状況で、私が除脳硬直をきたす患者に遭遇したら、その場所でCTを撮る事よりも高次施設へ転送依頼を優先します。つまり、大淀病院で対応した先生と同じ対応をした可能性が高いということです。
『脳卒中ガイドライン』というものが存在します。
http://www.jsts.gr.jp/jss08.html
http://www.jsts.gr.jp/guideline/114-118.pdf
1.一般論として、血腫量10mL未満の小出血または神経学的所見が軽度な症例では、部位の如何に関係なく手術の適応にならない(グレードD)。また意識レベルが昏睡の症例は、手術の適応にはならない(グレードD)。
ということになります。
一般的にいえば「手の施しようがありません」という病態です。
治療時期についての言及はありますが、
http://www.jsts.gr.jp/guideline/151-152.pdf
脳実質内での出血については意識レベルが手術するかどうかの
重要な決め手であり、すでに呼びかけに反応がなかったとしたら
搬送が早くても『手遅れ』と判断された可能性が高いのではないか、
とおもうのです。
散見されるのですが、実際のところ、脳出血に関しては治療法が
10-20年で進化したという感触は論文をざっと見た限りではうけません。
また今回の病態は、実際開頭しても血腫除去の出来得なかった例です。
もっと調べるべきでしたが、今後、また行ってきたときに、
報告を順次上げていくつもりです。
よくまとめていらっしゃいます。この事件は今後の日本の産科医療、医療界全体に与える影響が強く、先生の活動を微力ながら応援させて頂きます。
投稿情報: Taichan | 2007年9 月 5日 (水) 11:36
すばらしい解説です。
記事を引用させて頂きましたよ!
っていうか、9割方パクリですけどw
投稿情報: Dr. I | 2007年9 月 5日 (水) 23:33