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(投稿:by 僻地の産科医)
産婦人科の実際
2008年08月号からo(^-^)o ..。*♡
特集は肥満およびやせ女性における栄養代謝学的問題点と対策
女性医師のための保育所
―働く女性に必要な環境整備―
池田美智子
(産婦人科の実際 Vol.57 No.8 2008 p1291-)
近年,女性医師が増加し医師国家試験合格者の30%強を占めるまでになっているが,出産・育児のために離職する女性医師も多い。今後の医師確保を考える上で,女性医師が出産・育児をしながら仕事を続けられるための環境の整備が喫緊の課題である。なかでも,女性医師の仕事の特殊性を考慮し,そのニーズに対応する女性医師のための保育所の設立が急務と考える。そして産前産後休暇制度・復職後の仕事の保証・勤務時間の短縮や勤務形態の工夫・離職後の再教育制度などといった環境の整備も重要で,両者が車の両輪のように機能しなければならない。
はじめに
女性医師は年々増加の傾向にあり,2002年以降3割を超えるようになった(図1)。今後も増え続けるであろう状況のなかで,出産・育児のために医療現場から離れる女性医師の存在が,現在の医師不足の要因の一つとして問題になっている。特に女性医師の多い小児科・産婦人科・眼科・皮膚科などの診療科では深刻化している(表1)。
しかしこの問題は,女性医師が結婚・出産・育児をしながらキャリアを中断することなく働き続けられる環境の整備がなされていないためであり,女性医師の仕事に対する意識・意欲のなさに起因するものではない。
女性医師が出産・育児をしながら仕事を続けられる環境の整備が喫緊の謀題である。
Ⅰ.女性医師の育児と
仕事の両立のための環境整備
出産・育児中の女性医師を取り巻く環境・実態は2006年度厚生労働省の統計(図2,3)や女性医師のアンケード調査(図4~12)からすでに解明されており,出産・育児と仕事の両立のために必要な環境の整備には次のような問題が挙げられる。
1)保育所の整備・拡充
院内保育所・病児保育・24時間保育・時間外保育の整備など
2)就業形態の多様化・制度の確立
フレックスタイム制・ワークシェア制・当直の免除・短縮勤務・専門性を生かす部門のみの就業など。
大阪厚生年金病院・大阪医療センターは,このような柔軟な勤務体制を導入し,女性医師の雇用に成功している。
3)復職支援(再教育制度・女性医師バンク)
出産・育児などでやむなく医療の現場の第一線を離れた女性医師が職場復帰をしようとしても,日進月歩の医療の現場に戻ることの不安がある。そこで,現場復帰のための再教育研修制度や,育児中の女性医師の個々の事情に即した就労可能な職場の斡旋をする女性医師バンクの設立が望まれる。
東京女子医大が女性医師再教育研修センターを設立し活動を始めた。また女性医師バンクは,日本医師会・千葉県医師会・徳島医師会・日本小児科学会・大阪医療センターなどで行われ始めている。
4)社会全体および職場の意識改革
父親の育児参加・子どもは社会全体が育てるという意識など。
Ⅱ.保育所の整備・拡充
女性医師が出産・育児をしながら仕事をしようとしても,子どもを預ける保育所がなかなか見つからない。よって環境整備のなかでまず,保育所の整備・拡充が必要であろう
政府は少子化問題とも関連する働く女性の環境整備の一環として,保育所待機児童ゼロを目指し,保育所の増設・拡充などに取り組んでいるが,厚生労働省によると,昨年春の時点で全国でまだ1万8千人待機児童がいるという。
保育所の現状
1)全国の保育所数は22,720,うち公営は11,510(50.7%),私営は牡210(49.3%)である,私営には社会福祉法人,社団・財団医療法人および日赤,学校法人,宗教法人,NP0,株式会社,有限会社,個人が含まれる。
2)開所時問では,公営は10時間~10時間半,~11時間,~11時間半までがほぼ同数の約20%,~12時間まで26.2%,12時間を超える所は1.6%と少ない。一方,私営は11時間半~12時間が多く56.7%,12時間を超える所は15%である(2006年厚生労働省統計による)。
3)病児保育は,わずかに小児科医療機関が併設で行っているのが現状と思われる。
帽院内保育所は年々増加の傾向にあるが,その経営困難なため,閉鎖したり,保育業者に委託経営をしたり社会福祉法人化して認可保育園にするケースもある。認可保育所にすると,地域に広く聞かれたものになり,女性医師が利用しにくい状況を招いているという。また院内保育所では看護師・コメディカルが優先して女性医師は利用しにくい問題がある(ジャミックジャーナル2007.2による)。
Ⅲ.女性医師のための保育所の設立
大学病院をはじめとする医療機関がそこで働く女性のための保育所の整備・拡充に取り組み始めたが,その実現・実効にはまだ時間がかかりそうである。また,認可・認証をはじめとする既存の保育所では,内容・仕様が一律で,女性医師のニーズに十分対応できているとはいい難い。
そこで,女性医師の仕事の特殊性を考慮した,女性医師のための保育所の設立が急務と考え,2006年5月,新宿区左門町にDr.MOM Nursery School を開所した。
Ⅳ.Dr.MOMの特徴
1.長時間間保育・月曜日~土曜日
出産・育児中の女性医師は,大学病院や教育医療機関で研究または臨床経験を積まなければならない卒後問もない医師が多いものと想定し,長時間保育(7:00~20 : 00)と土曜日も開所している。
2.突発的ニーズに対応する延長保育(22時まで)
医師の仕事の特殊性から,患者の急変や急患・手術の延長など突発的ニーズに対応し,22時までは延長可能としている。
3.病児・病後児保育
認可・認証保育所などは,38℃の発熱があると子どもを預からないし,保育中に38cC以上発熱すると,すぐに呼び出しがあり迎えに行かなければならない。 Dr.MOMでは,小児科嘱託医との連携・看護師が2人体制で常勤しているので,伝染性疾患(流行既耳下腺炎・水痘・麻疹・インフルエンザなど)以外で全身状態が著しく悪くない場合は,38℃以上発熱があっても預かることにしている。医師は子どもが病気でも病棟のケアや外来・手術をキャンセルしたり,急に代替医師を頼むことが困難な職種であることを考慮している。また認可・認証保育所などは与薬は行わないが,Dr.MOMではそれも実施する。
4.保育と幼児教育の一体化
幼稚園は時間が短いため,その後の保育が必要になる。最近は幼稚園も幼稚園後のお預かり保育をする所がでてきているが,それもせいぜい6時頃までのようである。 Dr.MOMでは,幼稚園に通わせその後保育所に預けるという二重の手間を省くために,幼稚園に通わせなくともよいように,十分幼児教育に力を入れたいと考えている。
5.特別カリキュラム
幼児教育の一環として,リトミック・英語・造形教室をそれぞれ週↓回行っている。今後は体操や音楽教育も行う予定である。
V.女性医師のための保育所の今後の課題
1.公的補助金制度の改革
現行の制度では,Dr.MOMのような対象を限定している保育所には公的補助金は支給されない。開設時補助金・運営費補助金・保育料の補助金の一切の補助金を受けられない。
特に保育料の補助が得られないため,全額利用者の負担となり,他の保育所より高額になってしまう。医師とはいえ育児中の女性医師はまだ経済的に余裕がないため,女性医師のニーズに対応した保育所に預けたくとも預けられない現実がある。
そこで,保育料の補助金は公的機関から一定の条件を満たした保育所に直接支払われる仕組みになっている現行の制度を見直し,利用者が保育所からの証明書を直接公的機関に提出し,所得に応じた補助金を受け取る仕組みに変える。また利用者がその補助金を利用して,認可・認証・公立・私立・対象を限定している特化した保育所などの区別なくすべての保育所から,自分の就業形態,仕事の内容に即した保育所を自由に選択できる仕組みに変えるべきである。そうすれば,Dr.MOMのような他と比べ高額な保育料でも一定の補助金に足して預けることができ,利用者の負担が軽くなり利用しやすくなるものと考える。
今後は,女性医師のみならず他の載積を対象とした,内容の様々な保育所ができればよいのではないか。働く女性の仕事の形態に即した保育所の多様化である。一律な内容・形態に規制せず,多様化した保育所(無論一定の質を保持した)を認め補助金を支給する。保育所の増設・拡充を図るための規制緩和・行政改革が望まれる。
2.保育所の役割分担
女性医師が出産・育児をしながら他の医師と対等に仕事を続けられるためには,24時間・365日の保育所が必要である。また病児保育が必須と思われる。しかし,それらを全部カーバーできる保育所の実現は困難である。
一方,大学病院をはじめとする医療機関が,施設内に保育所を(特に女性医師のために)整備・拡充しようと取り組み始めたが,昨今の医療費削減・医療制度の改定などで経営が厳しくなっている現在,内容の充実した高質な院内保育所を整備するほどの財政的余裕はないと思われる。
そこで,保育所の役割分担を提唱する。
通常時間帯の保育は他の保育所に任せ.医療機関は病児保育・夜間保育を分担するのが,実際的かつすぐに実現可能ではないか。病児保育は,医療機関であるから施設的にも人材的にも最適である。また,夜間保育は女性医師でも当直が可能になり,他の医師の負担軽減となる。保育中に何か問題があってもすぐに子どもの様子を見に行ける利点もある。
おわりに
女性医師が出産・育児をしながら働き続けられるためには,女性医師の仕事の特殊性を考慮し,そのニーズに対応できる保育所がまず必要であるが,それと同時に職場の就業形態や周囲の意識改革も重要である。両者が車の両輪のように機能しなくてははならない。
医師不足は,女性医師が増加しているなかで,結婚・出産・育児のための女性医師の離職がその一因ではあるが,医師の総数が不足していることを厚生労働省も認めるようになり,医師数を増やす方針を打ち出した(2008年6月18日)。しかし医師が一人前になるまでには入学してから10年はかかる。そこで,現在の医師不足対策として,女性医師が出産・育児のために離職せずに仕事が続けられような環境整備が急務である。
そして,育児中の女性医師のフレックスタイム制・ワークシェア制・短縮勤務・専門性を生かす部門のみの就業など就業形態の多様化が,医師全体のワーク・ライフ・バランスに配慮した多様な勤務形態にまで発展することを期待したい。また,大学病院をはじめ教育的医療機関・基幹病院などにおいて,現在の主治医制度に代わり緊密な医療チーム制度が構築されれば,育児中の女性医師もその医療チームの一員として参加し十分医療に貢献できるものと考える。
しかし、小学校にはいったら、楽になるわけではなく、学童という壁、、そして、中学受験という試練が待っているのでした。
投稿情報: 麻酔科医 | 2008年9 月11日 (木) 19:27
そうですね
そしてそれも過ぎたら今度は両方の親の介護という問題が迫ってきます。
そこそこに頑張ろうっと・・・・
投稿情報: なつみかん | 2008年9 月12日 (金) 13:13
まったくです。。。タメイキ。。
楽な道はどこをみてもありそうにありません(笑)。小学校の次は受験に入るし~。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2008年9 月12日 (金) 21:42