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(投稿:by 僻地の産科医)
外科系学会の入会者数が減っている!
M3.com 橋本編集長 2008/08/04
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現状の医師不足は、医師の絶対数の不足と、「偏在」が相まって生じている‐‐。これが、政府の医師不足に対する現状認識です。この「偏在」には、地域による偏在と診療科による偏在の両方がありますが、先週開かれた、「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会で興味深いデータが公表されました(検討会の記事は、「私立は29大学で320人の定員増を予定」をご覧く ださい)。
図1は、2004年度の新しい卒後臨床研修制度の導入を機に、内科、外科、小児科、産婦人科の新規入会者数がどう変化したかを分析した結果です。
この4学会を含め、計18の基本領域学会のデータが公表されたのですが、同検討会の委員である北里大学産婦人科教授の海野信也先生が、以下の通り、詳細な分析を行っています。
各学会への新規入会数を「導入前」(1994~2003年平均)、「導入期 」(2004~2005年平均)、「導入後」(2006~2007年平均)で分析すると、4つに分類できます(カッコ内の数字は、「導入前」に対する「導入後」の数字)。
1.「導入期」に減少、その後は「導入前」の水準以上に入会者数が回復
内科(2.4%)、医学放射線学会(3.9%)、形成外科(10.2%)、小児科(14.9%)
2.「導入期」に減少、その後も「導入前」の水準に入会者数が回復せず
外科(-29.9%)、整形外科(-18.8%)、産婦人科(-20.9%)、眼科(-31.2%)、耳鼻咽喉科(-38.0 %)、泌尿器科(-23.1%)、脳神経外科(-22.4%)、病理(-14.0%)
3.「導入期」に入会者数の明らかな減少が認められない
皮膚科 (-19.6%)、臨床検査(5.0%)、救急医学(40.0%)、リハビリ(0.1%)
4.データが不完全、あるいは導入期と専門医制度の改革が重なって、入会者数が 新規専攻者数を反映しない可能性あり
精神神経科(431.6%)、麻酔科(23.7%)
「1」と「2」、つまり「導入期」に新規入会者が減少した学会の多くは、医師が新規に専攻する診療科を決定すると同時に、入会することが一般的になっている科です。導入前の水準に戻っていない、「2」の多くが外科系ですが、「臨床研修制度自体の是非は別として、制度の導入前後で新規専攻者に明らかな変化があれば、それは臨床研修制度の影響を考えざるを得ない」と海野氏は分析しています。
「産婦人科では、制度導入以前から減少してきたが、導入期の『空白の2年』がダメージとなり、急速な医療提供体制の崩壊が認められるようになった。また他の外科系の学会は導入前には減少傾向が見られたわけではないが、制度導入後に明らかな減少傾向が生じている」(海野氏)。
また、海野氏は、「3」に属する救急医学などについて、「他の基本領域学会と重複して入会することの多い学会であり、入会者数の推移はさらに数年様子を見る必要がある」としています。
では、なぜ新臨床研修制度を機に、診療科による偏在が生じたのでしょうか。まず挙げられるのが、緊急手術があるなど勤務の過酷さ。「診療科を専攻する前に、臨床研修で各科をローテーションし、その実態に気付いてしまうと、過酷な科を専攻しなくなる」というのは多くの医師が認めるところ。これまで厳しい勤務実態を改善してこなかった結果が今日の状態を招いているとも言えます。
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