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(投稿:by 僻地の産科医)
医師たちの労働状況レポート1
勤務医の過労状況が明らかに
ある自治体病院のアンケートから
MTpro 2008年7月1日 井奈波良一氏
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0807/080701.html
全国的な勤務医不足と病院閉鎖が続くなか,政府は6月27日に「経済財政改革の基本方針(骨太の方針)2008」を閣議決定,医師不足対策を重要課題の1つとしている。
医学部の入学定員も増加に転じる方向だが,一方で,来年度から医学部入学者が増えても,臨床の場では当面勤務医不足が続くことが予想される。
また,いわゆる「医療崩壊」が注目されるなかで,医師の勤務環境,労働条件についても厳しい状況が明らかにされる機会も増えている。そうしたなか,第81回日本産業衛生学会(6月24~27日,札幌市)では,医師の労働に関する報告があったので2回に分けて紹介する。1回目は,自治体病院の勤務状況や日常生活,職業性ストレスについての報告である。
男性勤務医の1週間の平均実労働時間は約67時間
岐阜大学(産業衛生学分野)准教授の井奈波良一氏は,研修医以外の男性医師の勤務状況,日常生活習慣および職業性ストレスを明らかにするため,昨年( 2007年)5月中旬に,ある大規模自治体病院勤務の研修医以外の男性医師66人(年齢39.9±9.8歳)を対象にアンケートを行った。
調査の結果,1日当たりの平均実労働時間は11.5±2.0時間であった。1週間当たりの平均実労働時間は66.9±16.4時間であった。
内科系医師は燃え尽き度やストレス度が高く,“総合した健康リスク”が高い
また,勤務する診療科により,内科系群(37人)と外科系群(29人)に分け,回答の解析を行った。
両群間で,労働時間や夜間当直回数などに有意差は認められなかった。日常生活習慣では,パソコンの使用時間が内科系群で有意に長時間であったが,それを除いた睡眠時間,飲酒量,ライフスタイル得点(森本兼曩氏による客観的評価法)などの項目に有意差は認められなかった。
旧労働省の開発した職業性ストレス簡易調査票を用いた検討では,内科系群でストレス度が有意に高かった。Pinesの「バーンアウトスケール」日本語版による検討でも,内科系群で得点が有意に高かった(表)。また,「臨床的にうつ状態」または「バーンアウトに陥っている状態である」と判断された医師の割合は,内科系が41.7%で外科系が13.7%であった。
ストレスによって起こる心身の反応の各項目における素点平均は,外科系群に比べ内科系群で「活気」が有意に低く,「疲労感」,「不安感」,「抑うつ感」が有意に高かった。またストレス緩和因子について,いずれの項目も両群で有意差はなかったが,仕事のストレス判定図から判定された「総合した健康リスク」は,外科系群100.3%に比べ内科系群で123.2%と高リスクであった。
井奈波氏は「大規模自治体病院の研修医以外の男性医師では,概して内科系が外科系より燃え尽き度やストレス度が高く,“総合した健康リスク”が高いことが示された」と報告した。
病院は,労働基準法上の特例対象事業に当たり,1か月あるいは1年間を平均した1週間の法定労働時間は一般的な40時間ではなく,44時間となる。長期間の過重業務については,厚生労働省の脳・心臓疾患の過労死認定基準で,「1か月ないし6か月にわたって,1か月当たりおおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど,業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できる」とされている。
このアンケート回答における内科系・外科系両群の1週間の平均労働時間から44時間を引いた超過労働は22.9時間である。この勤務を4週間続ければ,1か月当たりの時間外労働は45時間の基準を大きく超えていることになる。
現在,過労や仕事上のストレスによるうつ病発症は,労災認定の対象となり,一般社会では認定対象者が増加中である。医師についてもこうした点で注意が必要なことに変わりはない。
調査を行った病院について同氏は「自治体病院のなかで,比較的恵まれた労働環境と言える」としており,さらに厳しい状況に置かれている勤務医も多いことが推察される。人々の命と健康を守る医師の労働状況を改善することも,また緊急な課題と思われた。
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