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(投稿:by 僻地の産科医)
ご報告が遅くなりましたo(^-^)o ..。*♡
病理学会で、日本病理学会医療関連死関係専門委員会の委員長で頑張っていらっしゃる黒田教授のお話を聴いてきました!
お弟子先生、お誘いくださってありがとうございました(>▽<)!!!
講演内で一番心に残ったのが、
第三者機関の本当の隠れたテーマは
「医師法21条」でなく
「刑事訴訟法」であると、いうことです。
隠れたテーマは「業務上過失致死」である。と。
ここを見直さない限り、きちんとした医療の再評価は難しいのではないか、という話でした。
また現状の問題点としては、
刑事事件の場合の「鑑定書」の非公開性が大きいと。
「鑑定書」は当事者でさえ内容を知らされず、ぽんと裁判に出ておしまい。
鑑定書が間違っていても検証される余地がないことo(^-^)o ..。*♡
医学的検証をいつでも閲覧できるようにする!
というのはある意味公正性を補償されますので、医療側、患者側にもメリットは大きいが、ただそれをきちんと費用などをかけずに「現場の自助努力」という形で病院に押し付けられるのはたまらない、というお話だったと思います!
昨日の共産党の小池議員の新聞記事みますと、
「あっ!講義受けてらっしゃる(>▽<)!!!」
と思いましたです!!!
こちらもどうぞ(>▽<)!!! では、講演内容です! 特別講演 死因究明の方向性について」 日時 平成20年2月21日(木) http://www.daidohp.or.jp/pdf/Meet-the-Pro20.2.21.pdf 1999年に横浜市大での患者取違え事故が起こってから、医療史にのこるような事件が次々と起こってきました。 ちらりとお話したいとお話したいと思いますが、これは大野事件についての最新版Medical Tribuneの記事です。 総論をお話していきます。 こういった発見されたご遺体のうち、 さて、解剖、と一口に申しますが、みなさんには違いがわかっていないのではないかと思います。 ちなみに行政解剖(監察医が行う)は東京23区、大阪市、神戸市、名古屋市、横浜市に制度はありますが、名古屋市、横浜市は予算も充分とられておらず、行う機関とかもはっきりしていません。 明らかなる犯罪死体でない場合には検視が行われます。これは見るだけ。 そのうち「診療関連死」といえなくないものは、どれでしょうか? 現在病理学会の病理専門医は2000名、法医学者は150名程度でしょうか。 法医解剖に関わる医師数 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/dl/s1227-8d.pdf より ) 病理解剖は昔は4万体だったのですが、減少して現在2万体。 こういった中、現在の病理解剖の問題点です。 一方で、中小病院では周産期関係や死産児など特殊なものが多い。という傾向があります。 傾向としては上のような傾向が認められます。 というわけで、こちらです。
冷たいフローチャート
ssd's Diary 2008年2月23日
http://ssd.dyndns.info/Diary/2008/02/post_557.html
「病死と異状死の再検証・診療行為に係る
~日本では、人は死ぬとどう対応されているのか~
藤田保健衛生大学 病理部 教授 黒田誠 先生
場所 だいどうクリニック 5階講堂
このような中で2005年9月にモデル事業が始まりました。2006年2月には大野病院での妊産婦死亡が起こっております。
このような流れで厚生労働省の診療関連死の討議が始まったわけですが、法案化されようとしている法案には問題点が多く、全国医学部長病院長会議や勤務医の方々が反対の声を上げておられます。
この根本にある問題点の歴史的な流れと問題点を今日は整理してお話ししたいと思います。
このように医療準則に反する行為は行っていないと思われる場合でも、遺族は被告となってしまった医師の責任追及をしようとする。
これは医療を取巻く状況として、日本の悲しむべき風潮のひとつです。
現在の日本の年間死亡者数は100万人、
そのうちの80%が病死ですが、20%は異状死であります。
日本で解剖されるのは1998年の統計で4%。
WHOの1998年の統計ではハンガリーで49%
アイスランドやスウェーデン、フィンランドといった東欧諸国では35~8%と高い確率を誇っております。
日本は大変立遅れている状態です。
それを示したのがスライドです。
どの機関が、どのように行っているのか、違いをわかっていただくためにこの表は大変重要ですのであとでご覧になってください。
解剖一体に25万円かかりますが、名古屋市の行政解剖用の年間予算など30万円です。事実上機能しているのは、東京、大阪、神戸だけです。
それで残った死体のうち、どのような死亡を病理が解剖した方がいいのか。
①,②,③,④,⑤,⑧は医療関連死となりうるんですよね。
(補足 by僻地の産科医 (Yosyan先生ありがと!))
病理医数:1928人
・大学法医学教室に所属している医師数:253人
・法医認定医:119人
・死体検案認定医:87人
法医解剖は1万5千体。
それに対して異常死体検案数はどんどん増えていて15万件という状態になっているんです。
大病院における病理解剖は60%が悪性腫瘍なんですよね。
死因のうちの悪性腫瘍は30%なんですが。
(これに対して、会場からは
「悪性腫瘍では長い間治療をしていく上で、患者さんとの信頼関係が出来上がっているから勧めやすい。突然きた突然死の患者さんには勧めにくい」という意見がありました)
入院患者の死亡に際し、病理解剖その他の死因解明に必要な措置について提案しなかった病院に死因解明の義務違反の過失があったとされた事例がありますので、みなさんもなるべくカルテ記載をし、また病理解剖をすすめてください。
それから遺族が病理を拒否した場合の医療紛争については、基本的には「証明困難に追い込んだとして病院に有利な判定をした事例」もありますので、このあたりにはご留意いただくといいと思います。
しかし、現実にはこれらは医療機関の自己犠牲によって行われているのが現状です。
現在、世界で医療訴訟に持っていかれているのはたったの0・5%!
無用な紛争をやめよう!!!
ということで始まった第三者機関の構想だったわけです。
ここで4大学で構成されたワーキンググループで、司法解剖、行政解剖、病理解剖の問題点をまとめてみました。
司法解剖は、他人の立場の方が鑑定書がかかれます。
公正性は確保されます。
しかし、この鑑定書は公開されません。
しかも裁判にならないとでてきません。
裁判のあとでも見ることはほとんどできません。
関係者の「納得」のためにつくられたものではないからです。
これは古くは明治期からの「お上」な考え方によるのですが、明治期にこの司法解剖などの制度ができたころには「捜査ありき」だったんですね。
それがマッカーサーが入ってきて、こんな密室性が高くて非民主主義的な制度はいけないということで、みんなが利用できる、みんなが死因を知ることができるように行政解剖ができました。監察医制度です。
でもこれ、いまでは残っていないんですよね。日本人は「行政解剖」の理念がわからなかったので。
進駐軍が引き上げた時に、次々にやめてしまったんです。今では大都市にしか、しかも一部の政令都市にしか残っていない。
でも、医療のフィードバックを行うためには、
WHO?(誰が起こした?)
↓
WHY?(どうして起こったか?)
の考え方にしないと再発防止には役立たないんですよね。
というわけで、あれこれ世界の制度についてあれこれ勉強しました。
モデル事業がお手本としたのは、オーストラリアのビクトリア州の制度です。ここでは朝から晩まで、死体専用CTが動いて、隣ではもくもくと朝から晩まで解剖医が解剖しています。
データはデータベース化され、犯罪に関連したもの以外はインターネットで見られるようになっています。公正性、中立性は保たれています。
つまり本当に医療関連死の原因を探り、安心・安全のためにフィードバックしようとしたらここまでやるべきなんですね。
ADRのシステムもしっかりしています。
病院の自助努力に頼っているようでは、ダメなんです。
モデル事業に関わるスライドです。
こういったことをモデル事業では、病理学会では提唱してきました。
しかし、厚労省は根本的なところを変える力がありません。
既存の法律と法体制のなかでやろうとして、かなり厳しい状態です。
結果的に厚労省関係者・刑法学者によって検討会メンバーは示されています。
現在の検討会の青写真では、やはりWHO?なんですね。WHY?ではありません。
それに対してアメリカでは「過誤を罰しない」という決定の後に、過誤の報告が10-20倍に激増しました。
日本の厚労省の現在のやり方の裏には、懲罰主義が見え隠れします。たとえば、業務上過失致死という刑罰がなければ、医師法21条違反なんてささいな問題なんです。
懲罰がなければ、なにかあれば届出をすればいい。
刑法を変えないまま、運用するとなるとどのような組織であっても運用した途端にうまくいかないのは目に見えています。
解剖だけを考えても、立ち行かないのは目に見えています。でも無理ですよね。ここから1万体となると現在2万体やってるのに、さらにといわれても困ってしまいます。
日経メディカル1月号でも医療事故調は機能するか?という特集が組まれていましたのでぜひ読んでいただければと思います。
(そのうちアップします)
解剖しなかった例、証拠のろくろく残っていない症例をどのようにこなしていくか。構想ばかりあっても現実的には、この第三者機関ができあがってからが医療者にとっての正念場となるでしょう。
第三者機関はいずれ絶対に必要なんです。
なにが問題点か、ということを最後にお示ししておわります。
●質疑応答(ピックアップ)
スライドに愛知県での解剖症例の半数が、周産期死亡に関連しているというものがありましたが、モデル事業でこういったものを扱っていらっしゃってその後、訴訟になったりしましたか?
それともモデル事業によって、解決したという例が多いのでしょうか。
→ お子さんの場合と母体死亡の場合はずいぶん違います。
お子さんが亡くなった場合は、解剖で割りと納得されることが多い。
しかし母体の場合はなかなか納得されません。
それでも最終的に紛争になる場合は、なんとなく、
クレーマーな感じがする方々が多いのも事実です。
医師法21条が改正される見通し、といわれましても、しばらくは21条下でやっていかねばなりません。異常死を見てから24時間というタイムリミットの中で、私たちは今どうすればいいのでしょうか?
→突然、異常死の届出をすると所轄のお巡りさんたちが
大騒ぎになります。
こういった捜査をするのが捜査一課といって県に一個しか
捜査部隊がありません。
県によって違うと思うのですが、
愛知県の場合は捜査一課もよくわかってます。
「こういった事例があったが報告した方がいいのか」
病院長から、相談してみるのがいちばんいいと思います。
お疲れ様です。スライド込みですごい量。よくもまあ、これだけまとめられたものですね。
でも、モデル事業をやっていらした偉い先生と問題意識が共通しているというのは心強いです。
投稿情報: 山口(産婦人科) | 2008年2 月23日 (土) 21:42
>お子さんの場合と母体死亡の場合はずいぶん違います。
>それでも最終的に紛争になる場合は、>なんとなく、クレーマーな感じがする方々が多いのも事実です。
なるほど・・・
確かに、堀病院も大野病院も大淀病院も
すべて母体死亡事故ですね。
投稿情報: うろうろドクター | 2008年2 月23日 (土) 23:45
講演やスライドのアップ、お疲れ様でした。
情報量も多く、読み応えもありました。
第三者機関は必要ですし、法整備も重要です。しかし、戦前の特高や治安維持法になってはイカンです。
投稿情報: 風はば | 2008年2 月24日 (日) 10:31
職場ですので取り急ぎ失礼します。
アップありがとうございました。あんどお疲れ様です。
病理医については、ソースがどこか探し出せていないのですが、専門医の平均年齢が50歳を越えているという話を聞きます(病院勤務病理平均年齢が48.3歳ってのはソースがどこか判明していますけれど)。
私の知る限り、40代以下の病理専門医はこの制度に対して「無理に決まっている」以外の感想を持っていません。
モデル事業においては、剖検業務からレポート作成までに8ヶ月かかっており、その間に何回もミーティングをやって会議を開くそうです。
先生もご懸念の通り、そんな状況であればたとえモデル事業程度の症例数であっても、全国で開始されれば瞬時に日本の病理業界はパンクすると思います。具体的に最初に起こる影響は、院内&検査会社委託病理診断標本の診断所要日数が極端に伸びることではないでしょうか。これがどのような結果を招くかは、悪性腫瘍を扱う外科系もしくは消化器内科の先生方であればすぐにおわかりになるかと……。
投稿情報: 三上藤花 | 2008年2 月24日 (日) 14:50