Medical Tribune 2008年2月7日(VOL.41 NO.6) p.54
福島・大野病院医療事故裁判
<第12回公判>
証拠調べを終了,3月21日に論告求刑
福島県立大野病院で2004年12月,帝王切開手術を受けた女性が死亡した医療事故で,業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた産婦人科医・加藤克彦医師の第12回公判が 1月25日,福島地裁で開かれた。この日で証拠調べが終了,3月21日の次回公判で検察側による論告求刑が行われる。
供述調書を証拠として採用
検察側が請求した証拠のうち,弁護側が「任意性がない」として争っていた捜査段階の加藤医師の供述調書について,同地裁は一部を除いて証拠採用した。弁護側が請求した胎盤病理専門医と周産期医療専門医 2 人の鑑定意見書はいずれも採用が決定した。しかし,医師法21条(異状死の届け出義務)違反に関する法律家の意見書は証拠として採用されなかった。
遺族3人が意見陳述
この日の公判では,亡くなった女性の夫,父親,弟による意見陳述が行われ,加藤医師の責任を追及する厳しい遺族感情が語られた。その一方で,3 人は再発防止を望む陳述を行い「なぜ事故が起こったのか検討し,二度と事故が起こらないようにして欲しい」と述べた。
夫は第 2 子誕生と妻の死亡について「まさに天国から地獄へという状況だった」と説明。「いきなり死亡を告げられ,手術経過の説明を受けたが,納得できる内容ではなかった」とした。さらに,「手術を受ける患者は医師に命を預けている」とし,「(加藤医師の手術に)問題がなければ,なぜ妻は死亡したのか。子供と妻のために責任を追及する。責任を取って欲しい」と述べた。
父親はまず,手術の経過について説明する加藤医師の姿が淡々としていることに疑問を感じたと指摘。また,法廷での同医師の説明は「事故当時聞いた説明とはかなり違う」とも述べた。さらに,「大野病院でなければ亡くさずにすんだ命」,「医師不足と今回の事故は別問題」などとしたうえで,「患者に安心と安全を与える医療を」と訴えた。
弟は「姉がなぜ死亡したのか病院から説明もなく,真実がわからずに苦悩していた両親に光を差し伸べてくれた警察・検察に感謝する」などとする陳述を行った。
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