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(投稿:by 僻地の産科医)
産婦人科の実際2008年9月号から!
特集は婦人科がんの検診-その効果と問題点-
わたしはツッコミません(>_<)!!!!
ツッコまないけれど、くぅぅぅ~。三周くらい意識が遅れてるの!
もうさ、これしきのことでなんとなかると思っているなら大間違いだっ!!!
>都の周産期医療を今後も支えていこうという意識に確実につながっている
ってなによっ!!!!
好きでやってるんだ!今までだって支えてきたんだ!!
それを打ち砕いてきたのは誰だっ(>_<)!!!
もう支えられない、燃えつきが多いって何で分からない?無神経すぎます。
産科医師の待遇改善の施策(東京都の場合)
東京都病院経営本部経営企画部
大野あゆみ
(産婦人科の実際 Vol.57 No.9 2008 p1435- )
全国的な産科医不足は地方の問題にとどまらず,都市部にも深刻な影響が出始めている。都立病院でも,平成18年頃から分娩制限を余儀なくされるなど,危機的状況に陥った。このため,東京都では,平成20年度から産科医の確保困難度,業務困雌性を正当に評価するため,初任給調整手当を倍増するとともに,異常分娩に従事した場合に支給する「異常分娩業務手当」を新設した。また,女性医師の増加に応じた,24時間院内保育,育児短時間勤務制度の導入,さらに,医師の過重労働軽減に向け医療クラークを試行的に導入する等,多角的・重層的な総合医師確保対策に取り組んだ。この結果,産科医師をはじめ,診療の中核を担う中堅医層の確保定着に一定の手応えを感じている。
はじめに
都立病院は公的病院として,東京都における周産期医療の一翼を担っているが、平成18年頃から一部病院において分娩を中止,あるいは縮小せざるを得ない状況となった。
なぜこのようなことが生じたのか,またこうした事態に直面し,東京都ではどのような対策を講じたのか,以下述べたい。
Ⅰ.東京都における産科医不足の状況
厚生労働省の「医師数調査」結果によると,全国的に医師総数は増加傾向にあるにもかかわらず,昨今問題となっている産婦人科については減少傾向にある。こうした傾向は東京都においても如実に現れている(図1)。
増減率でみると,医師総数は全国平均が15%増,東京都が16%増とほぼ同程度の状況でありながら,産婦人科医は全国平均が10%減のところ,東京都では12%減と全国平均を上回る減少状況となっている(図2)。
医療訴訟率が高いことに加え分娩行為に伴う長時間の拘束といった過酷な勤務の常態化,さらに,医師臨床研修制度の開始も重なり,新人医師の産科離れが急速に進行し,産科医療を支えるマンパワーが不足したこと等を契機に分娩を取り扱う病院・診療所が減少,その結果,分娩を行う一部の病院に妊婦が集中し,そこで勤務する医師の過重労働を一層招き,医師が疲弊して病院を去っていくということが報道等で指摘されている。
東京都も例外ではない。「医療施設(動態)調査」によると,都内における分娩取扱医療機関数は平成5年の943施設に対し,平成17年には602施設へ減少するなど,実に36.1%の減となっている。 602施設のうち,産科を標榜しながら実際には分娩を取り扱っていない施設もあることから,実際の施設数はこの数字よりさらに少ないものと考えられる。
こうした産科をめぐる状況から大学医局への入局者も減るなど,これまで都立病院を含む市中病院へ医師を派遣してきた複数の大学医局では,医師を出したくても出せない状況になってきた。この結果,都立病院においても産科医不足が生じ,従来,1桁台で推移してきた産科医の欠員状況(定数一現員)は,平成18年度以降には2桁台になり(表1),複数の病院で分娩中止,あるいは通常分娩について受入数の制限を行う事態に陥った。
Ⅱ.都立病院から産科医がいなくなった背景
病院経営本部では,日本産科婦人科学会,各大学医局、都立病院で実際に診療に携わる産科医から忌憚のない意見を聞かせてもらった。その結果,給与が一律であり,産科医の激務に見合った処遇となっていないこと,近年,医師に占める女性の割合が高まっているにもかかわらず,女性医師対策が制度上不十分であること等,様々な問題点が指摘された。
まず給与についてであるが,平成17年度の地方公営企業年鑑決算値によると,都立病院の医師は全国61都道府県・政令指定都市のなかで最低の給与水準となっている(表2)。加えて,現行の給与制度では,母体と胎児双方の命を同時に預かる産科医のストレス,分娩進行中に母体・胎児の容態が急変し急浦帝王切開等手術に切り替えるなど,迅速かつ的確な判断を要するといった産科独特の業務困難性が処遇に反映されていない,との指摘がなされた。
増え続ける女性医師対策についても,産休・育休制度はあるものの,その間の代替要員が確保できないこと,また復帰しても,子どもを預ける院内保育室の利用時間が8時30分から19時30分までであり,対象年齢も2歳未満であることから,病院勤務と育児の両立が極めて困難であること,このため,妊娠・出産を契機に離職またはより条件のよい職場へ転職してしまうことなども判明した。
都立病院は,産科医にとって多様な症例を経験することができ,医師としてのキャリアアップが可能になるといった魅力はあるものの,処遇や勤務条件等の問題から,大学医局として,医師に都立病院への就職を勧められない,また医師も都立病院を敬遠する状況となっていることが明らかになった。
Ⅲ.産科医を含む都立病院医師確保総合対策の開始
こうした実態を踏まえ,都では,都立病院総体としての診療能力の一層の向上を目指して,産科医をはじめ流出傾向にあったベテラン中堅医層の定着・確保を目的とする「都立病院医師確保総合対策」に着手した。この対策を講じるにあたってば大学医局や現場の医師と幾度となく意見交換を行い,現場の実態に即したものとなるよう留意した。また,この間,日本産科婦人科学会長が都知事に直接面会し,産科を取り巻く厳しい状況を説明するとともに,過重な勤務環境のなかで奮闘している現場の産科医に対し相応の処遇改善を図る必要性について要請,また,都が率先して産科医の処遇改善に取り組むことが,産科医不足に直面する全国自治体にとって打開策の一つにつながる旨を陳情した。それに対し知事が真摯に取り組むと言及したことにより,都立病院の医師確保総合対策が都における最重要課題の一つとして取り組まれることとなった。
Ⅳ.都立病院医師確保総合対策の概要
1.「東京医師アカデミー」の開講を契機とした医師確保対策の構想
東京都では,次代を担う若手医師を計画的・継続的に育成するために,既存の後期臨床研修制度を拡充し,都立病院・公社病院7,200床のスケールメリットと豊富な症例を経験でき,かつ重層的・体系的な教育指導システムを採用した「東京医師アカデミー」を平成20年度に開講することとしていた(図3)。
当該アカデミーには内科をはじめ計12コース設置し,そのなかには産婦人科コースも設定されているが,産科を志向する若手医師がいても,これを教育指導できる力を持った中堅産科医が不足していては十分な指導はできない。このため,臨床を行いながらアカデミー・レジデントを教育指導する指導医層の業務負担増への対応策を講じることとした。
なお,東京医師アカデミーの詳細については,以下のアドレスを参照されたい。
http://www.byouin.metro.tokyo.jp/academy/index.html
2.初任給調整手当の引き上げおよび特殊勤務手当の創設
都立病院の医師給与は,人事委員会で決定される。現在,医師の月額給与は,「基本給」に,医師の確保困難度に対応した手当として「初任給調整手当」を加えたものとなっている。人事委員会は平成19年10月の人事委員会勧告において,「都立病院において仏産科等を中心に,医師の人材確保が年々厳しくなってきている。こうしたなか,都では,臨床医師の育成と定着を図るため,都立病院等における新しい専門臨床医研修システムとなる「東京医師アカデミー」を,平成20年度から開講する予定である。今後,都立病院の医師を確保するためには,この「東京医師アカデミー」において指導にあたる部長級・医長級の医師など,都立病院の中核を担う人材の給与面での改善策について,都として検討していく必要がある」という意見を付した。
そこで都では,産科医の確保困難度に基づき,従来医歴20年までは一律「175,100円」であった初任給調整手当を,産科都医長は現行より3段階高い最高区分(306,900円)に産科医員については2段階高い区分(268,500円)にそれぞれ引き上げを図った。さらに,母体と胎児双方の命を預かる産科医業務,とりわけ異常分娩業務の特殊性・困難性に着目し,その主術者に1件当たり4,750円の「異常分娩業務手当」を,また,先述した「東京医師アカデミー」開講にあわせ,レジデントの指導に責任をもって携わる部医長に対し1日当たり4,500円の「指導医業務手当」を創設することとした。
都議会や関係部署の理解・支援も得ることができ,東京都としては実に11年以来の特殊勤務手当の新設となった。この結果,産科医一人ひとりの医歴、指導実績,異常分娩業務実績等によって異なるものの,平成20年度から,年収では,産科部長級の指導医層で約250万円から300万円,医長級で約290万円,医員においても約130万円の増額を実現させることができた。
なお,他の診療科都医長の職にある医師についても,初任給調整手当を現行より2段階高い区分(268,500円)に引き上げることで,平均120万円前後の年収増を図った。
3.女性医師確保定着対策や医師勤務軽減策の実施
増え続ける女性医師の確保定着を図ることは重要である。このため,24時間院内保育室の実施(2病院),育児短時間勤務制度の導入を図るなど,ワーク・ライフ・バランスの充実に向けた取り組みを強化することとした。すでに利用者もあり,今後さらに増加していくことが予想される。また,こうした制度を構築したことで,女性医師のほか,看護師等も出産後も継続して就業することが可能となり,女性医療職員全体の確保定着にも寄与すると考えている。
また,昨年度,医師の過重労働の軽減に向けて医師の事務処理の補佐を行う「医療クラーク」を広尾病院・墨東病院・府中病院のERに試行的に導入した。事業評価を十分に踏まえ,今年度中には全都立病院に設置できるように準備を進めている。
4.医療訴訟対策の充実
医師が安心して医療に専念できる体制として,医療訴訟対策も重要である。都立病院では,平成13年度から診療行為(非常勤医師も含まれる)に対する訴訟対策として病院賠償責任保険に加入,さらに平成15年度から医師免許を有する弁護士を活用し,医療リスクヘの組織的な体制整備を図っている。
おわりに(総括)
東京都では,現行の制度上実施可能な範囲内でできうる限りの処遇改善を講じた(図4)。そのための予算額は年額14億円強であり,平成20年度予算収入1.700億円超の都立病院において約0.8%に当たる。この「0.8%」を多いとみるか,少ないとみるか,病院の経営状況等によるが,こうした総合対策により,都立病院で働く産科医師のモチベーションが向上し,都の周産期医療を今後も支えていこうという意識に確実につながっている。
今回の処遇改善策により,産科医師の採用も好転しつつあり,分娩を中止していた都立病院でも分娩再開に向けて着々と準備の段階に入りつつある。また,産科医以外の他診療科についても,採用環境について明るい兆しが見え始めている。
東京都の取り組みが,他の自治体等にも波及し,産科医師の処遇・職場環境の改善につながれば幸いである。
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