(関連目次)→婦人科癌 目次 経口避妊剤(ピル)について
(投稿:by 僻地の産科医)
海外文献から
卵巣癌と経口避妊薬
(産婦人科の実際 vol.57 No.6 2008 p1410)
Ovarian cancer and oral contraceptives: collaborative reanalysis of data from 45 epidemiological studies including 23,257 women with ovarian cancer and 87,303 controls.
Collaborative Group on Epidemiological Studies of Ovarian Cancer. Lancet. 2008 Jan 26;371(9609):303-14.
【背 景】
経口避妊薬(以下OC)は使用されてから50年以上の歴史があり,今現在1億人以上の女性に使用されている。OCは卵巣癌を予防するといわれているが,明らかなevidenceがないのが現状である。本論文は,OCによる卵巣癌予防効果について評価することを目的としている。
【方 法】
23,257人の卵巣癌女性のデータと87,303人の卵巣癌でない女性のデータを45施設(21カ国)から集積した。その解析により,OC使用による相対危険度を評価した。
【結 果】
卵巣癌患者群の7,308人(31%)とコントロール群の32,717人(37%)にOCの使用経験があり,その使用期間の平均は各々4.4年と5.0年であった。より長くOCを使用すれば,有意差をもって卵巣癌のリスクを減らすとの結果であった。さらに危険度の減少は,使用中止30年以上経過しても認められるが,中止時期から年を経るごとにその影響は弱まる傾向にあった。そのなかでも使用期間が長いほど危険度が低下した(p<0.0001)。1960年代の群では1980年代の群に比べ,0Cのestrogen投与量は2倍以上であったが,危険度の違いは認められなかった。組織型別では粘液性卵巣癌でOCによる発生抑制効果は少なかったが,その他の組織型において差は認められなかった。先進国では.10年間OCを使用することにより,75歳以前発症の卵巣癌を1.2%から0.8%へ抑え,死亡率を0.7%から0.5%へ減少させていた。言い換えると,5,000 woman-years 当たり2人の罹患を予防し,1人の死亡を予防している計算となる。
【結 論】
OCの使用は,長期にわたって卵巣癌を予防する。この結果は,今まで20万人の卵巣癌発症を予防し,10万人の命を救っていることになる。また,この先数十年の卵巣癌発症を年間3万人以上予防することが期待できる。
(浜松医科大学医学部産婦人科学講座 加賀俊章,杉原一廣 抄)
しかしこの論文一つではエビデンスのコンセンサスに変化は起こらなそうですね。
投稿情報: 麻酔科医 | 2012年2 月 6日 (月) 11:49
あ、それがもうこれは追試がたくさん出ていまして、ほぼ公認の事実のようになっています。
排卵を抑えることにより、毎月の卵巣壁破裂をしなくてよくなることから、癌変異の確率が減るのではないかとも言われています。
大腸がんが減るのはなんでか不明なんですけれどね。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2012年2 月 7日 (火) 20:48