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(投稿:by 僻地の産科医)
ある先生から、上記のようなご指摘をいただきました(>▽<)!!!
読売新聞の記事が問題だという意見で、
ある医療刑事裁判の進行について良くご存知の方です。
割りばし事件といえば、知らない方はいらっしゃらないと思いますが、
1999年7月10日、綿飴の割り箸がお子さまが転倒の際に
左頚静脈孔というとても小さな孔を通って脳幹部に達して
しまったという稀な事件です。
救急外来では見つけられなかったために、
(恐らく救命可能性は大変低い上、稀なケースで考えが及ばないのは
仕方がなかろうと思われるわけですが)
翌日死亡したという事件ですが、刑事上業務上過失致死罪に問われ、
2008年12月2日 刑事判決で無罪判定(確定)となりました。
この裁判そのものはかなり問題が多く、長期化し、
(結審までにかなりの時間を要しています)
さらに法医解剖が入ったにもかかわらず、
法医解剖の標本が途中で消えたり、大変、
捜査そのものに疑問符がつけられる箇所の
多かった事件と漏れ聞いております。
また大野事件については、説明するのも大変ですので、
興味をお持ちの方々はこちらをお読みください。(丸投げo(^-^)o ..。*♡)
さて、問題の箇所は以下です。
> 犯罪被害者基本法を所管する内閣府によると、
> 医療ミスがあったとして医師が業務上過失致死傷で起訴された
> 場合、被害者や遺族は無罪判決が確定しても同法によって
> 保護される「犯罪被害者等」に当たる。
というのがひどくおかしなミスリードで、
「犯罪被害者」という属性など無関係に、
単に「誹謗中傷されない権利」なら、
名誉毀損罪・侮辱罪や民事なら、
不法行為で守られています。
犯罪被害者「等」であるからということで、特別なわけでも、
なんでもないのですよねo(^-^)o ..。*♡ 基本的人権ですから。
だから「無罪判決どうこう」という文章に
悪意が見え隠れします。
そもそも「被害者」でしょうか?
「被害者」の規定は何ですか?
「被害者」と「被害者等」の違いについても
鮮明に書かれるべきでしょう。中立でありたいなら。
とてもおかしな記事で、逆にこの記事で
読売新聞は「名誉毀損」訴えられても
おかしくないんじゃないかと思います。
大野事件、割りばし事件ともども、
「無罪」と書きながら、
「医師を犯罪者のように感じさせる書き方」をしているからです!
もっとも「被害者」という言い方はともかくとして、
「ご遺族」と言う意味でなら、このような中傷は
大変お気の毒だと思っています。
では、その読売新聞記事全文をご覧下さいませ(>▽<)!!!
自分勝手、クレーマー…医療事故被害者遺族をネットで中傷
読売新聞 2008年12月12日
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20081212-OYT1T00427.htm
医療ミスで患者を死亡させたとして医師が起訴された事件の遺族たちが、インターネット上で誹謗(ひぼう)中傷にさらされている。中には死亡した当事者本人を責める書き込みもあり、専門家からは「このままでは遺族が正当な主張さえできなくなる」と対策を求める声が出ている。
「医療崩壊を招いた死神ファミリー」「被害者面して医師を恐喝、ついでに責任転嫁しようと騒いだ」
割りばしがのどに刺さり死亡した保育園児杉野隼三ちゃん(当時4歳)の診察にミスがあったとして、耳鼻咽喉(いんこう)科医(40)が業務上過失致死罪に問われた裁判。2審・東京高裁の無罪判決に対し、東京高検が4日、上告断念を発表した直後から、インターネットの掲示板「2ちゃんねる」やインターネット交流サイト「ミクシィ」内のブログには、隼三ちゃんの両親を非難する文章が次々と書き込まれた。中傷が始まったのは、医師が在宅起訴された2002年。1審・東京地裁で無罪判決が出ると、「自分勝手」「クレーマー」などと非難はエスカレートした。母親の文栄さん(51)は「発言することが恐ろしくなった」と語る。
福島県立大野病院の産科医(41)が業務上過失致死罪などに問われ、9月に福島地裁の無罪判決が確定した事件でも、死亡した妊婦の父、渡辺好男さん(58)が非難の的になった。自宅住所を調べるよう呼びかけたり、「2人目はだめだと言われていたのに産んだ」と妊婦を侮辱したりする書き込みに、渡辺さんは「罪のない娘まで中傷されることが一番つらい」と憤る。
医師自身が中傷を書き込むケースもある。奈良県で06年、脳出血を起こした妊婦(当時32歳)が、19病院に受け入れを断られた末に死亡した問題では、ネットの医師専用掲示板に、妊婦の診療経過など詳細な個人情報が流出し、最初に書き込みをした産科開業医が遺族に謝罪する事態に。同じ掲示板に「脳出血を起こした母体も助かって当然、と思っている夫に妻を妊娠させる資格はない」と書き込んだ横浜市内の医師は、侮辱罪で摘発された。
奈良女子大の栗岡幹英教授(医療社会学)は「患者側がネット上で激しく中傷されることで、被害者が萎縮(いしゅく)する傾向がある」と分析する。
犯罪被害者基本法を所管する内閣府によると、医療ミスがあったとして医師が業務上過失致死傷で起訴された場合、被害者や遺族は無罪判決が確定しても同法によって保護される「犯罪被害者等」に当たる。
常磐大の諸沢英道教授(被害者学)は「他国に比べ日本では、被害者側にも落ち度があったのではないかという偏見が強い。刑事責任の追及は、捜査当局が独自に判断して行うもので、バッシングは被害者の権利行使を妨げる。行政や司法は『中傷は許されない』という姿勢を明確にするべきだ」と指摘している。
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