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(投稿:by 僻地の産科医)
さて、産経の連載も最後です(>▽<)!!!!
私も22週以降はみなさん補償すべきと考えています。
産科の無過失補償制度加入9割 患者救済に懸念も
47NEWS 2008年10月1日
http://www.47news.jp/CN/200810/CN2008100101000895.html
患者救済のため来年から始まる産科の「無過失補償制度」に加入した医療機関の割合が、申込期限の9月末現在で88・2%にとどまり、目標の100%に届かなかったことが1日、制度を運営する財団法人「日本医療機能評価機構」のまとめで分かった。
脳性まひの赤ちゃんが生まれた場合、医師の過失の有無にかかわらず患者側に補償金が支払われる仕組みだが、全医療機関の加入が実現しない場合、救済されない妊婦が出るなど、混乱も予想される。制度への加入は任意で、同機構は「保険料負担を敬遠する医療機関がある」とみている。10月以降の加入は来年1月から運用される分には間に合わない見通しだが、今後も加入を呼びかける。
同機構によると、加入したのは、病院・診療所では2847施設のうち、89・5%にあたる2549施設。助産所は429施設のうち79・5%の341施設だった。
医療 問われるお産の質 産科医療補償制度(下)
MSN産経ニュース 2008年10月1日
(1)http://sankei.jp.msn.com/life/body/081001/bdy0810010802001-n1.htm
(2)http://sankei.jp.msn.com/life/body/081001/bdy0810010802001-n2.htm
■「先天性」は補償対象外
産科医療補償制度では、先天性などの脳性まひ患者が補償対象から除かれています。5年後には補償範囲の見直しが行われますが、産科医や患者家族からは「救済される妊婦と、救済されない妊婦をつくるべきでない」と、見直しを求める声が上がっています。
◇
神奈川県に住む坂口朋子さんは毎朝、午前6時に起床し、長女の成美さん(11)の鼻から胃へ、約1時間半かけて流動食を注入する。成美さんは重度の脳性まひで、常時、介護が必要だ。流動食での食事が1日5回。学校へは車で送り迎えし、就寝後もたんの吸引や寝返りをさせる。坂口さん自身の就寝は午前2時ごろだ。流動食や医療器材など、療育の費用は月に5万~7万円。家の改修をはじめ、成長に応じ、車いすの買い替えも必要だ。
坂口さんは平成9年、破水して入院し、陣痛促進剤の投与後、帝王切開で出産した。後の裁判で作成された鑑定書では、脳性まひの原因として、陣痛促進剤の過剰投与、不十分な分娩(ぶんべん)監視、帝王切開の遅れなどが指摘された。坂口さんは「病院や医師の過失が指摘された鑑定書を何度も読み返し、やっと自分を責めることがなくなりました」という。病院側は明確に謝罪はしなかったが、坂口さんは娘の介護と育児に専念しようと、勧告を受けて和解した。
当時、もしも産科医療補償制度があれば、成美さんは補償対象だ。制度発足前の誕生だから、対象外だが、来年1月以降の出産でも、やはり補償対象にならない脳性まひの子供はいる。先天性や感染症による脳性まひだ。坂口さんは「周囲には、先天性脳性まひのお子さんを持つお母さんもいる。こうした子供がいれば、親の苦労はどこも同じ。原因が生まれつきか事故かで違いません」と、補償対象の拡大を求める。
新制度では、出産時の事故で子供が脳性まひで生まれた場合、家の改修費などの一時金600万円と、毎月10万円が20歳になるまで支払われる。坂口さんは「費用は十分だと思う」と評価するが、「家族の心身負担は一生続く。補償よりも、事故が起きないことを望みたい」と、医療事故の防止を訴えている。
■対応の落差に反発も
新制度の補償対象は、妊娠33週以上なら、
(1)分娩に関連して発症した脳性まひの子供
(2)体重2000グラム以上
(3)身体障害者等級の1、2級に相当する
-の3条件を満たす必要がある。ただ、33週未満でも、28週以上なら、場合によっては個別の審査で認められることもある。
日本産婦人科医会の石渡勇常務理事は「1~2年たてば、補償総額のめどがたつ。その後、財源配分などを検討し、5年をめどに、対象範囲の拡大などを議論する」と方針を示す。新制度で補償が認められれば、脳性まひの子供には3000万円が支給される。仮にその子が死亡しても、補償は20年続く。対象外の子供とは、対応に落差がある。
このことに反発する医師や患者家族らは多い。長崎県では当初、9割以上の分娩機関が加入を見合わせた。牟田郁夫・産婦人科医会県支部長は「産科医は、障害のある赤ちゃんが生まれれば、悲嘆にくれる親を助けたいと、自然に思う。だから、一貫して事故か否かで線引きをしないよう求めてきた。それなのに、補償対象が限られた。誰のための制度かと思う」とする。医会本部から「制度開始後の調整に期待してほしい」と説明され、県医会は一定の理解を示し、8割が加入したが、現時点で加入しないことを明言する医師もいる。
医師の間では「補償を行うことで、訴訟を誘発するのではないか」との懸念もある。補償金が出ても、妊婦側が訴訟を起こせば、司法手続きは始まる。医療機関に過失が認められれば、補償金のほかに、賠償金が求められる可能性もある。医師からは「一時金の600万円が訴訟原資となる可能性もある。訴訟を減らすために始めた制度が、逆に増やすことになるのでは」との声も上がる。こうした見方について、石渡常務理事は「可能性は否定できない」としながらも、「利害が対立する裁判と違い、新制度では原因分析も示される。補償対象外になっても、不服申し立てもできる。こうした姿勢が理解されれば、長期的には訴訟は減少していく」と期待する。
脳性まひの長女(29)を介護する「東京都重症心身障害児(者)を守る会」の岩城節子会長は「補償されても、納得できる原因が示されなければ、訴訟を起こしてでも説明を求める」としたうえで、「そうはいっても、家族にも訴訟は負担。公平な制度にし、原因究明を迅速に行ってほしい」と求めている。
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