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(投稿:by 僻地の産科医)
週刊新潮 2008年11月6日号からですo(^-^)o ..。*♡
ちなみに週刊文春の方も読みました。
でもほとんど墨東のバッシング。ひどい記事です(>_<)!!!
大文字になっている所を拾うだけで、
「症状が軽いなんてありえない」「当直医はパニックだった」
「都は医者を集める努力をしない」
(最後の章だけ拾ってもいいかなとは思ったのですが)
全体が許せません。なので、許さんっ!!!!
新潮はいい記事を書いていると思います(>▽<) ..。*♡
150億円「五輪招致費」で都立病院の「産科医」を雇え!
(週刊新潮 2008年11月6日号 p58-60)
病院たらい回しで亡くなった妊産婦の悲劇は、そもそも都立病院に産科医が慢性的に不足していたことが原因だった。その重大な責任は、事態を放置していた東京都にある。石原都知事は、150億円かけて五輪を招致する前に、急ぎ産科医を雇うべきなのだ。
「東京都に任せられない」
と、舛添厚労相が言えば、
「医師不足にしたのは誰だ。厚労省の医療行政が間違って、こういう体たらく」
と、石原都知事は責任を国に擦り付けた。
この発言は、五十歩百歩に過ぎない。大本では、医師不足という事態を招いたのは厚労省の失態。だが、「総合周産期医療センター」の運営や、「ER(緊急医療)構想」の推進で、肝心な医師確保の財源的な手当てをしてこなかった東京都の責任も重大。そこから今回の悲劇が起こった。
都立墨東病院は、JR錦糸町駅から徒歩7分。東京都の東部、いわゆる下町にある総合病院で、1961年、地元にあった病院を統合、墨東地区の唯一の公的医療機関として開設された。現在は、5階建の診療棟に14階建の一般病棟(入院729床)からなるが、診療日には各外米とも患者で溢れ(1日当たり約1400人)、1時間、2時間待ちはザラである。
東京都は、都下を8つの地域に分け、それぞれに「総合周産期母子医療センター」とする病院を指定している。高度な医療機能を持ち、緊急事態に陥った妊産婦をいつでも受け入れるという触れ込みで、99年から墨田、江東、江戸川3区を担当しているのがその墨東病院だ。
10月4日夜、江東区在住の妊産婦は激しい頭の痛みを訴えて、救急車で掛かりつけの地元の産科医院へ搬送された。その医院は、墨東病院に受け入れを打診したが断られた。
同病院は、今年7月から土日祝日の搬送受け入れが困難になっていた。その日はあいにく土曜日だった。
「センターとしての体制が十分でなかったことは間違いありません。ただ、わかっていただきたいのは、当院の産科医不足の現状です」
と説明するのは、同病院の林久美子事務局長である。
同病院の産科には、現在、常勤医は4名しかいない。都が望む常勤医の定数は9名であり、大幅に不足している。
「当院では、他に研修医を2名、非常勤医師を2名、当直専門の非常勤医師を7名配置していますが、これでも、都がセンターの施設基準としている“常時2名の当直体制”を組むことは非常に難しい。今の人員では、1人当たり月9回の当直になってしまう。当直をすると、その日の日勤と翌日の日動も含めて、36時間勤務になる可能性が高い。それでは労働基準法や健康上、どうみても問題があるので、やむを得ず土日祝日は1人の当直体制にしました。その1人も研修医に頼らざるを得ない状況なので、母体の搬送を受け入れることができなかったのです」(同)
そのため、同病院からは同センターの看板を下ろしたいとの声が出ていた。
「年間を通してセンターの機能を果たしていないのであれば、その分の診療点数を受けることは不正請求に当たるので、請求をしておりません。1人当直体制になることは、都の病院経営本部に連絡した上、地元の医師会等で説明会を開き、地域の主な産科にも報告をしております」(同)
問題が産科医不足にあることは明らかだが、何故、そうした事態に陥ったのか。
「その背景には全国的な産科医不足に加え、都の産科医の待遇の厳しさがある」と、墨東病院関係者。
「今年度から年収で200万~300万アップしたとは言うものの、民間の病院に比べればかなり低い。それに加え、お産はハードワークで、月7~8回の当直というケースもある。個々の医師が体力と熱意でカバーしているのが現状で、これではなかなか都立病院に産科医は定着しません」
民間病院なら年収は2~3倍
民間とはどの程度の格差があるのか。墨東病院に勤務する医師は言う。
「墨東に勤めていれば、卒業後17~18年の医師の年収は、1400万円程度。町の産科に勤めれば、非常勤でも同じくらいの年収が稼げてしまう。墨東を辞めて常勤で民間病院に行った産科医に聞いたら、年収は2~3倍になったと喜んでいた。都立病院だと、症例経験は豊富に持てるので若い医師は来る。でも、数をこなして一人前になると辞めていってしまうケースが非常に多い。それは産科医だけにとどまらない。要するに都立病院とは、今や医者から見捨てられた病院になってしまっている」
民間病院では、年収2000万円とか3000万円で産科医を募集している例がある。これでは都立病院の産科医のなり手はいない。
「もちろん、産科医を増やす努力はしてきました。定期的に関連の大学病院や、地元の医師会などを訪問し、産科医をくださるようお願いしてきました。が、どこもギリギリの状況で“検討します”というお返事はいただけるのですが、やはり産科医は来ません。HPに常勤医の募集を出していますが、応募すらゼロでした」(林事務局長)
都下の他の地域では、センターを私立の大学病院や民間の大病院が担い、当直を2~4人置いている。
墨東病院では、以前は年間1300件もの分娩を手掛けていたが、ここ数年の産科医不足で、06年11月から外来の新規の分娩ですら受付を止めていた。
そうした状況下でも、同病院は、都内の総合周産期医療センターの中で母体搬送の件数が突出していた。
「例えば、昨年度、9施設の母体搬送の平均は109件でしたが、当院は199件とダントツ。これは、この地域にマンションが林立し、若いご夫婦がたくさん住んでいることが関係しているのではないかと思います。また、この地域に大きな病院は意外と少ないので、とりわけ、産科は当院に集中するのでしょう」(同)
それだけニーズが高いということなのだ。ところが都は産科医不足を解消する手立てを講じてこなかった。
先の墨東病院の医師は言う。
「現場サイドの認識としては、土日を1人当直にしてしまっているのだから、センターの看板は下ろしてしまったものだと捉えていた。それなのに、都の病院経営本部は自らが出した方針が失敗に終わるのが嫌だから、無理して周産期医療センターにしている。今回の件だって、センターの指定から外されていれば、これだけ非難されなかったはず」
東京都でも悲惨な実態を知ってはいるようなのだ。
「給料が低い上、ハイリスクな妊婦を受けるとなると、医師のなり手がないという認識はあります」と、東京都病院経営本部の担当者は言うが、
「実態を都の役人は全くわかっていない。都の病院経営本部にいる事務屋さんは、畑違いの交通局やら水道局から来て、2年で別の部署に移っていきますから、何も変えようとしないのです」(前出・墨東病院の医師)と、医療現場からは不満が漏れる。
ERの実態はコンビニ診療
「都立病院の医師の給料があまりにも低いことが問題。産科医不足は、他の都立病院も直撃している」と、この問題を取材したことのあるジャーナリストの栗野仁雄氏は語る。
「都立豊島病院も06年秋からお産は全面的に休止。ここは地域周産期センターですが、定員6人のところが激務に耐えかねて、医師1人になったことも。都立大塚病院では、5ヵ月間、分娩予約が埋まっていた。都は、かつて19あった都立病院の統廃合を進め、少子化を理由に、産科に特化した病院を次々と廃止してきた。それが今や産科不足ですから、おかしな話」
石原都知事は、00年6月に24時間体制で緊急医療が受けられるというER構想をブチ上げた。その中核病院に指定されたのが、いずれも都立の墨東、広尾、府中病院だが、医師不足で台所は火の車。今回のたらい回しのケースでは、最初からERに連絡しておけば、という報道もあったが、重篤な患者には対応しきれていないのが実情である。
「墨東の場合、救命救急センターが対応していた時と比べ、大して手術の数は増えていない。増えているのは、所謂コンビニ診療。年中24時間開いているものだから、先週から熱があるとか、平日は仕事で来られないとか、そんな患者が押し寄せている。その対応にERの医師は疲れ果てている。だから重篤な患者が来ても見落としたり、検査に回したりという事態が出てくるのです。そもそも、ERの大半は研修医で判断ミスも多く、医療の質も確保できていない。そして、そういう研修医は、16時間働いて1日換算にして5000円程度といった、コンビニどころではない薄給で働かされている」(墨東病院関係者)
都立府中病院の桑江千鶴子産婦人科部長は語る。
「必要な人員手当てもなく、見切り発車の形でスタートしたのがERです。府中病院のER受診者数は年間約6万件で日本一となり、単純計算で1日当たり150人以上。専門医が通常の診察と並行して行うのは困難です。本当に救急医療が必要な人が何時間も待たされることになってしまいます」
府中病院でも研修医がERの主力になっている。ともあれ、産科医不足を解消するためには、まず給与面の待遇を改善すべきである。
その財源がないわけではない。例えば、石原都知事は五輪招致に3年間で約150億円もの予算を組んでいる。その使い道はといえば、
「五輪会議への出席など直接経費55億円以外に、PR活動で95億円。パリ、アムステルダムでプロモーション活動を行い、国内各地でイベントも開催される。気運向上のため、児童向けの五輪読本を都内の学校に配る他、ポスターや旗も作成される」(都庁担当記者)
というから、ムダと思えるものばかり。その予算を医療に回せば、年間50億円。単純計算で、年収3000万円の医師を16人から17人雇えることになる。
新渡戸文化学園・短大の中原英臣学長(医学博士)は言う。
「周産期とかERとか、実体を伴っていないのですから何の意味もない。産科医が不足しているなら増やせばいいが、そのための手を打っていない。募集していると言っても、ただ求人広告を出しているだけでは来ないに決まっている。五輪招致にお金を使うなんて馬鹿馬鹿しい。必要なものに見合ったお金を出して、産科医を補充すべきです」
お祭り騒ぎに金をつぎ込んでもドブに捨てるようなもの。五輪招致に浮かれる前に、まず都民の生命を守ることこそが都知事の使命なのだ。
新潮は私も買いました。
文春は立ち読み。文春の後半、東大からのお願いに都がまったく対応しなかったのは当たり前といえば当たり前なんですけど、それを報道している所は少ないので、「そこだけは」評価します。あとは全然ダメですね。
投稿情報: げ〜げ〜 | 2008年10 月30日 (木) 20:22
僻地の産科医さま
週刊文春の記事にお怒りのご様子ですが、トンデモ記事の収集にも、それなりに意味があると思います。
「(自称)医療ジャーナリスト伊藤隼也」関係の文章は、保存の価値が大いにあります。何の専門教育も医療系資格もなく、ちょっと前までは裸のオネエチャンの写真を撮ってたのに、医療ジャーナリストと称してTVワイドショーなどで使ってもらったとたんに「自分はマスゾエよりも医療が解ってるんだぞ!」ばりの記事を書ける精神構造はスゴイですねえ。
お手数で恐縮ですが、こういうトンデモ記事も著者名ともどもアップしていただければ幸いです。
投稿情報: clonidine | 2008年10 月30日 (木) 21:02
うう。だって読むだけでも眩暈がするんですよう(;;)。
OCRかける気力なんて湧きませんもん。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2008年10 月30日 (木) 22:53