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(投稿:by 僻地の産科医)
今週号の週刊文春より(>▽<)!!!!
というか。どこが再生プロジェクトなのか教えて下さい。
この記事の内容のどこが?再生??ふざけないでください。
人員がいない、体制が整っていない、
そんなのずっと叫んできたはず。
それを鬼の首をとったように伝えるこの記事のひどさ!
「妊娠中の脳出血の救命」は著しく難しい事実から目をそむけた報道!
後期研修医が一人で
これをどうにかできると思うのですか???
断ることが罪ですか?
受入れ拒否ではなく「困難・不能」だとなぜわからない?
週刊文春「医療再生プロジェクト」
ルポ 「産婦人科の戦慄」
首都東京を「たらい回し」にされ
「36歳妊婦」は死んだ
(週刊文春 2008年10月30日号 p35-37)
「子どもの誕生をあんなに楽しみにしていた妻に、息子の顔を見せてあげることができず、声をきかせてあげることもできず、名前を呼ばせてあげることもできなかった・・・それが何よりも悲しくて、悔しいです」
高橋和男さん(仮名)は妻の死に対して涙ながらに無念の思いを口にした。
十月四日、またも痛ましい妊婦たらい回し事件が起きてしまった。亡くなったのは東京都江東区在住の高橋洋子さん(仮名、享年36歳)。なぜ母親は、わが子の顔を見ることもなく逝かなければならなかったのかー。 小誌「医療再生プロジェクト」取材班は、前回「『救急崩壊』最前線」と題して、東京の救急システムが崩壊の危機に直面している現実をレポートした。そこから浮かび上がってきたのは、最も尊重されるべき人命が最優先さていないという矛盾した現実であった。だが、その問題は救命救急だけに止まらない。“産科崩壊”という言葉だけが大きくクローズアップされる産婦人科医療。新しい命を取り上げるこの現場でも、戦慄を覚えるような惨状が放置されたままになっているのである。
事件を改めて振り返ろう。平穏な休日であるはずだった土曜日。洋子さんの異変はあまりにも突然訪れた。「夕食後にDVDを見てくつろいでいたときでした。妻がトイレに立ったのですが、なかなか戻ってこない。ちょっと長いかな、と思って様子を見に行くと『吐き気がする』と言って戻していた。僕は食中毒でお腹を壊したのかなと思ったのですが、横になっても一向に気持ちが悪いというのが治らなかった」(和男さん)
洋子さんは妊娠35週目だった。これまで妊娠中毒や合併症の症状は見られなかった。心配した和男さんは、かかりつけの産婦人科医院に相談し、救急車を呼んだ。「妻は救急車が来る直前に、今度は『頭が痛い』といい始めました。救急車の中でも、『頭が痛い、頭が痛い』と何度も言って、苦しみはじめた」(同前)
かかりつけの病院に到着したのが18時50分頃。診察をした医師が振り返る。「超音波でお腹の様子を見せてもらったのですが、張った様子も出血もない。診察のあいだも彼女は『痛い、痛い』とすごく苦しむ。脳の疾患の疑いがあるのでCTを撮りたいけれど、うちの病院ではCTが撮れない。そこで救急隊に『すいません転送がしたい、このまま待って下さい!』とお願いをしました」
東京都ではエリアごとに「総合周産期医療センター(以下、総合周産期センター)」を中心とした母体搬送システムを構築している。総合周産期センターとは、危険な状態にある妊婦や胎児の処置に対応できる高度な医療機能を持った中核病院のことである。江東区は「区東部ブロック」に位置し、都立墨東病院が総合周産期センターの役割を担っているはずだった。
19時、まず墨東病院に最初の転送の打診が行われた。都内医療関係者が事情を明かす。
「墨東病院は『土日は取れません』とすぐに断ったそうです。しかも転送依頼を断ったのは墨東病院だけではなかった。名だたる中核病院が相次いで患者受け入れを断っており、医師のあいだで大騒ぎになったのです」
小誌の取材で判明した、墨東病院以外に陽子さんの受け入れを拒否した病院は、以下の7病院である。<編集部注:()内は病院側が回答した受け入れ拒否理由>
東京慈恵会医科大学付属病院・同青戸病院(新生児科が対応できる状態になかったが、当院でも他の受け入れ先を探していた)、日本赤十字医療センター(脳外科が埋まっており、全ての依頼を断った)、日本大学医学部付属板橋病院(回答なし)、慶応義塾大学病院(感染症の疑いがあるため、産科個室が必要と判断したが空床がなかった)、順天堂大学医学部付属順天堂医院(満床のため)、東京大学医学部付属病院(新生児集中治療室が満床のため)。
病院までは数分の距離だった
まさに“たらい回し”そのもの。時間の経過とともに洋子さんの容態は次第に悪化していった。周囲の呼びかけにも苦しそうに応えるのが精一杯だったという。
受け入れ病院が決まらず、再び墨東病院に電話をかけたのが19時45分。
「今度は転送のお願いではなく、『どこもダメだから、取って欲しい。どうして取れないんだ!』と怒鳴り込むような形だったそうです」(前出・都内医療関係者)
20時すぎ、受け入れ可能の返答を行う。初めの電話から1時間が経過しようとしていた。
再び救急車に運び込むため、ストレッチャーに乗せられた洋子さんの体には脱力の症状が見られた。鮮明だった意識レベルは、意識不明の状態まで低下、かなり危険な状態にあった。
「救急車のなかで妻は『痛い』とは言わなくなって、朦朧として目を閉じそうになっていた。手を握って『目を開けて!』と何回も叫びました。3回くらいは目を開けたのですが、だんだん言うことを聞かなくなって・・・・・。墨東病院に到着したころには目を閉じてしまった」(和男さん)
皮肉なことにかかりつけの病院から墨東病院まではわずか数分ほどの距離しかなかった。緊急搬入された洋子さんはCT検査後、帝王切開と開頭手術に入った。頭痛の原因は脳内血管の破裂による脳出血だった。和男さんはオペ後、脳外科医からこう説明を受けた。
「自分のところに来たときには手遅れの状態でした。やるべきことはやったのですが、脳が死んでいる状態でどうすることもできなかった。あとは心臓が動いているだけで、それがいつ止まるかもハッキリと言えない」
唯一の救いは帝王切開で取り出された赤ちゃんが健康体だったことだ。しかし母親の意識のない状態が続いた。洋子さんは再びその目を開くことはなく、3日後の10月7日、帰らぬ人となったー。
大阪の国立循環器病センター・周産期科の池田智明部長はこう指摘する。
「脳出血は妊婦の死亡原因の第2位と重要疾患であり、脳外科や救命救急の連携が重要となる。1回目の電話で収容することが総合周産期センターのあるべき姿です。もし収容が不可能であるなら、直ちに他の病院が受け入れられるよう調整するリーダー的役割が求められます」
“妊婦たらい回し”が社会問題として広く認識されるようになったのは、06年奈良県の大淀病院で重体となった妊婦が19病院に搬送を断られた末、脳内出血で死亡した「大淀事件」が報道されてからであろう。その後も、たらい回し事件が次々と発覚した。しかし、母体搬送を改善すべきではないかという議論は十年以上前から始まっており、その解決策の一つとされたのが、総合周産期センターの設置であった。
「通常の分娩は地域の診療所や病院が担当し、リスクが高い分娩は総合周産期センターが担当する。最後の砦としての総合周産期センターは、産科医療にとって必要不可欠なものなのです」(都内産科医)
ところが高橋さんのケースでは、最後の砦たるべき墨東病院は役割を充分に果たせなかった。なぜなのか。「一般的に総合周産期センターには少なくとも8人以上の常勤医師が必要だと言われている。ところが墨東病院にはわずか4名の常勤産科医しかいなかった。しかも当日は、シニアレジデント(後期研修医)の若い産科医が一人いただけ。マンパワー的に、とても高度な医療を行える体制にはなかったのです」(東京都関係者)
墨東病院の総合周産期センターが崩壊寸前にあるという現実は、すでに地元医師の間では認識されていた。「昨年11月頃おから、病院と地元医師会とのあいだで墨東病院の人員不足が深刻であるという問題が話し合われていた。医師会は東京都に、区東部ブロックの産科医療をどうにかして欲しいと質問状を出したが、主体的に動いてもくれなかった」(医師会関係者)
先の7月にはとうとうブロック内の産科医院に対して、<医師確保が困難になった関係から、土曜日・休日については総合周産期センターでのこれまでどおりの母体搬送受け入れが困難となる状況になりました>との連絡を入れる事態になっていたのだ。
たらい回しワースト1の東京
「墨東病院は事実上、総合周産期センターの看板を降ろしていた。しかし、その事実は都民には周知されていなかった。事件は『最後のを失えば、地域のお産は“綱渡りの医療”になってしまう』という懸念の声があがっていた矢先に起きてしまったのです」(同前)
洋子さんが倒れたのは「受け入れ困難」が通知されていた土曜日。東京都が都立病院唯一の総合周産期医療センターの崩壊を傍観し続けたことが、結果的に患者の命をたらい回しにしたのである。
「墨東病院サイドは『宿直医は後期研修医で断ることしか考えておらず、依頼内容も覚えていない。他の施設で受け入れてもだったほうがいいと考えたのでは』と語っている」(都内関係者)
もちろん問題は墨東病院だけにあるのではない。相次いで受け入れを拒否した7病院も同罪である。
“たらい回し”の現実は、統計数値にも如実に現われている。平成18年の周産期救急における「最大収容時間」(総務省調べ)の都道府県別ワースト3は次の通りである。
① 東京都217分
② 北海道148分
③ 宮城県146分
同じく「受け入れにいたらなかった電話照会回数」(同前)においても、東京都は10回以上が30件と、2位の千葉県の6件を大きく引き離している。東京都は他を圧倒する“たらい回し”多発自治体なのだ。
国立成育医療センター産科医長・久保隆彦氏はこう指摘する。
「9年前、私が状況して驚いたのは、東京では普通に受け入れ拒否がなされていたことです。地方では中核病院の責任が明確で、ベッドがなくても人道上の理由から患者を受け入れていた。確かに一つの病院で全ての患者を受け入れることには無理があります。様々な患者に対応するためには役割と責任を明確にしながら連携することが必要です。その為には、行政が『地域完結型医療』という発想のもとで指導力を発揮することが求められます」
東京都は小誌の取材にこう回答した。
「周産期医療が厳しい中、医療体制の確保に引き続き関係者と共に努力を続けていきたいと考えています。墨東病院は厳しい状況下、病院として取れる対応はとったと考えている」
和男さんはこう疑問を投げかける。
「痛がっている彼女を横にして、何で行き先が決まらないのか本当に悔しい思いでした。素人なりに考えても、死にそうに苦しんでいる人間の受け入れ先を探すのに1時間以上もかかるのは異常だと思います。もし30分(搬送が)早くても妻が無事だったかどうかはわかりません。しかし、尊い命を救うのに、1%でも可能性が上がるなら、1分でも早く対応する。最善を尽くすのが医療なのではないでしょうか?」
遺族の痛恨の思いを、行政や医療機関は真摯に受け止め、早急に改善への一歩を踏み出さなくてはならないはずだ。
「もう誰にもこんな気持ちを経験させたくありません。二度とこのような母親を生み出さぬことを切に願っておりますー」(同前)
次号では連続する産科医療事故がなぜ起こるのか。その深層を検証する。
スクラップ アンド ビルド
再生のためには一度全部壊してしまおうと言う事でしょうかね
今回の不幸な事件を食い物に、またいい加減な言説が流布してしまうのでしょう
それならば、いっそ壊れてしまえば良いのでしょうか
無力感
システムの不備を個人・病院の責任になすりつけている限り、問題解決は遠く向こうですね
マスゴミはどこまで医療を壊すのでしょうか
投稿情報: trias | 2008年10 月23日 (木) 21:36
大事な情報が抜けてますよ。
「伊藤隼也と小誌特別取材斑」著
を、追加しておいてください。
投稿情報: clonidine | 2008年10 月23日 (木) 21:53
気の毒な妊婦さんの死と、転送遅れは医学的には因果関係ないですね。でもこういう報道ばかりだと、同様に悲惨な事件が繰り返し起こり、頻度も増えるでしょうね。メディアはわかってないね。
投稿情報: 元外科医 | 2008年10 月23日 (木) 23:22
僻地の産科医先生、週刊文春が根拠もなく産科医を叩いているのは、大野病院事件の無罪判決が原因でしょう。
大手新聞やテレビなどのマスコミは、大野病院事件で産科医が刑事事件で有罪になるのを待ち望んでいたが、判決は無罪。現場の臨床医を陥れたくて貶めたくて、しかたなかったが、それが無罪判決で果たせなかった。
それで、今回の産婦の死亡症例(奇しくも大野病院事件と同じ、産婦は死亡したが、赤ちゃんは助かった)をネタに、産科医をよってたかって、貶めているだけです。
もちろん、臨床医学の専門知識を根拠とにしておらず、医療安全のシステムの基本知識を根拠にもしておらず、ただ単に貶めたいだけ、それだけの理由で、週刊文春や大手新聞社やテレビのコメントが発せられています。
21世紀の日本のテーマは、マスコミ・厚労省役人・一部の破壊的市民団体と断固として戦う、まっとうな臨床医と一般市民の国際的基準の医療安全システムづくりです。
投稿情報: 鶴亀松五郎 | 2008年10 月23日 (木) 23:53
新聞の一斉報道と同日にこの記事が出るって、許せない何かが私の心の中にメラメラと。
しかも「伊藤隼也と小誌特別取材斑」!
伊藤隼也氏の肩書きに「医療ジャーナリスト」とありましたが、ちゃんと「自称医療ジャーナリスト」と書いてほしいです。
「相次いで受け入れを拒否した7病院も同罪である。」…同罪って、どこに犯罪者がいるの?
投稿情報: hirakata | 2008年10 月24日 (金) 12:48
>「墨東病院サイドは『宿直医は後期研修医で断ることしか考えておらず、依頼内容も覚えていない。他の施設で受け入れてもだったほうがいいと考えたのでは』と語っている」(都内関係者)
その通りだと思いますよ。当該病院は既にそういう重症妊婦を助ける力を失っているわけですから。お気の毒ですが日本の産科救急はこのレベルなのです。
投稿情報: 元外科医 | 2008年10 月27日 (月) 22:12
初めて投稿いたします。
私は産科医療とはまったく関係のないものですが、この記事を書いた伊藤隼也なる人物の近所に住んでおり、先日、いいがりをというか、因縁??をつけられ、ショックで精神科を受診するにいたりました。あのようなチンピラまがいの人間が、ジャーナリストを名乗り、メディアで発言を続けていることに、強い憤りを感じています。文春の広告に、あの名前を見るだけで、今でも気分が悪くなり、立っていられなくなるほどです。
詳しい経緯をまとめたものがありますので、お時間のあるときにでも、メールをいただけませんでしょうか。ぜひ、広く知っていただきたいと思います!!!
投稿情報: 伊藤隼也の近所の者です | 2008年12 月 2日 (火) 23:50
コメントありがとうございます。
彼の書く文章はひどいと思いますし、医療側としてかなり浅いレポートであると常々思っています。私個人の感想ですけれど。
ただ、個人的な人格について、知りたいと思いませんし、出された出版物に対して声を上げてすくなくとも、この記事を読んで何がしか先入観の入った方々の意識修正を図りたいとおもっているだけなのです。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2008年12 月 4日 (木) 10:55
伊藤隼也って以前は父親の病死に関して「自称医療事故被害者」で蠢動していた人ですね。もともと程度の低いゴシップ雑誌でしたが、類は類を呼ぶというべきか。
とにかく私は自分にできる範囲で雑誌・書籍のほかに広告主(特に製薬関係)への抗議ならびに不買を行っていきます。
投稿情報: 放置医 | 2009年3 月11日 (水) 20:53
この記事は、 第15回「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」で大賞を受賞したそうです。(詳細は↓リンク参照)
大野事件の某県警受賞とか大淀事件の某新聞受賞とか・・・なんか・・・もういいや・・・
投稿情報: clonidine | 2009年3 月11日 (水) 23:53
よりによってこの記事が、第15回「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」の大賞だそうです。
雑誌編集者の皆様にとっては、産科医療の問題も「モナ・二岡騒動」と同レベルの認識しかないみたいです。
雑誌ジャーナリズム賞に『モナ・二岡』『妊婦死亡』
http://www.asahi.com/showbiz/news_entertainment/TKY200903060295.html
投稿情報: orz | 2009年3 月12日 (木) 11:13