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(投稿:by 僻地の産科医)
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医師4人に1人が36時間以上連続勤務
キャリアブレイン 2008年8月1日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/17460.html
心身共に限界-疲れ果てる小児科医
キャリアブレイン 2008年7月30・31日
(前)http://www.cabrain.net/news/article/newsId/17405.html
(後)http://www.cabrain.net/news/article/newsId/17442.html
「小児科医師中原利郎先生の過労死認定を支援する会」(守月理会長)が、全国の小児科医に協力を求めて実施した当直に関する調査結果がまとまった。過酷な勤務によって、うつ病を発症し、過労自殺した小児科医・中原利郎さんについて、「中原先生の事例は特殊なものではなく、日本の多くの小児科医が抱える問題の表れ」と指摘する現役医師の声などが相次いで寄せられ、小児科医が依然として厳しい勤務を強いられていることが分かった。
当直勤務の負担や心身への影響などは、病院勤務を経験した人でないと分かりにくいが、今回の調査では、多くの小児科医が現場の実態を克明に証言しており、結果に関する記事を2回に分けてお届けする。
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中原さんは月平均5.7回の当直を担当していた。この回数の負担と精神的・肉体的影響に関する問いでは、「まっとうな小児科医療体制なら、週に1回の当直業務が最低限の安全確保レベルと感じている」(東京都・34歳)、「週1回以上の当直は、ストレスや疲れが蓄積され、回復しない可能性があると思う」(新潟県・37歳)など、中原さんの当直回数が通常の“基準”を超えていたという意見が相次いだ。
また、中原さんが当時44歳だったことについて、「40歳を超えると、当直の疲労回復に時間が掛かるようになった。当直回数の増加、院内での立場など、精神的疲労の慢性化は、思考力や判断力に大きな影響を与える」(千葉県・55歳)と、相当な負担が掛かっていたことを裏付ける証言が寄せられた。
中原さんは、最大で月8回の当直を行ったが、この負担と影響についての問いでは、「常識的な業務量を超えた『異常な状態』。いつ改善されるともなく、『当然』のこととして課され、この中にあっても『最善の医療行為』を求められるのなら、医師という一人の人間に対して非人道的な扱い」(東京都・36歳)など厳しい批判があった。
自らも月8回の当直経験があると答えた東京都の40歳の医師は「現在の当直は、医師の健康と能力をむしばむもので、交代勤務ができなければ、やるべきではない。患者の安全が脅かされる」と訴えた。
また、「20歳代、30歳代前半でも、かなり無理があると思う。40歳を過ぎると、精神的にも肉体的にも限界を超えるものと考える」(東京都・50歳)と、月8回の当直は異常な状態と指摘する医師が目立った。
【中原利郎さんの過労死裁判】
中原さんは1999年8月、勤務先の立正佼成会附属佼成病院(東京都中野区)の屋上から身を投げた。99年1月から4月にかけて、医師6人のうち3人が退職。部長も退職したため、中原さんが部長代行になった。中原さんは、医師の補充対策や小児科経営などの責任を負ったほか、3月には8回、4月には6回の当直を担当。中原さんの当直回数は月平均5.7回で、小児科医の平均の約2倍に達し、極度の過労から、うつ病になった。
妻のり子さんは、医師の過重労働などの改善を求め、2002年12月に佼成病院を相手取り「民事訴訟」、04年12月には国を相手取り「行政訴訟」を起こした。
行政訴訟は07年3月の判決で、東京地裁が「うつ病になる直前の1999年3月には、宿直が8回に増え、休日は2日。後任医師を確保できず、管理職として強いストレスが掛かっていた。病院での業務が精神疾患を発症させる危険性を内在していた」として労災認定した。
しかし、半月後の民事訴訟の判決では、「宿直が8回に増えたとしても過酷ではなかった。業務が原因でうつ病を発症する危険な状態だったとはいえない」として原告の訴えを棄却。医師の当直の過重性に対する判断などでは、行政訴訟、民事訴訟共に同様の争点でありながら、逆の判断が下された。
のり子さんら原告が東京高裁に控訴。このほど結審し、判決が今年10月22日に言い渡される。
☆☆後編☆☆
当直業務では、救急患者がひっきりなしに来院する場合もあれば、深夜帯(午前零時-7時)に「空き時間」ができる場合もある。調査では、この「空き時間」に心身を休めることができるかどうかについても尋ねた。
「一人で『夜の小児科を守る』ことは、精神的緊張を伴い、決して休めるものではない」(東京都・36歳)、「いつ急患が来るか、病棟の患者が急変しないか、神経が興奮した“臨戦態勢”」(同・40歳)など、当直を担っている時に心身を休めるのは難しいようだ。
東京都の36歳の医師は、「実際の現場では、救急外来のみならず、(入院患者がいる)病棟勤務もこなさなければならない。ほかにも、書類記入、指示入力、検査結果確認などで断続的に仕事をしていることが多い。加えて、電話相談への対応にも時間を取られることが多く、体を横にして深く眠れる状態ではないため、かえって疲労が蓄積する」と窮状を訴えている。
中原さんが勤めていた病院では、当直時の急患で重症の場合には「第三次救急病院」に転送することになっていた。調査では、重症患者を転送できれば、当直は過重ではないと言えるかどうかについても尋ねた。
東京都の34歳の医師は、「全く言えない。理由は、来院するまで、患者が三次救急レベルかどうか分からないこと。また、来院してからの急変があること。少なくとも三次救急が必要かどうかの見極めが時間の経過とともに変化するため、油断できないから」と答えた。
また、東京都の36歳の医師は、「転送を要する患者が急患の中にいるという状態そのものが非常に過酷」と指摘した上で、「その場で、でき得る限りの医療行為を施し、家族に説明をして、紹介先を探す。そして、搬送の手はずを整え、無事に搬送を終えるという作業は心身共にストレスになる。ましてや、急激に悪化する患者を診ながら、紹介先が見つからないこともしばしばあり、極度の緊張を伴う」と、当直自体が過重としている。
このほか、調査では、小児科勤務に関する自由意見も求めた。
滋賀県の48歳の医師は、「臨床現場では、常に複数の患者の状態が変化していく。救急車が連続して飛び込んでくる時もある。その中で、いつも『間違いのないベストの判断』を求められる。下した判断が『ベスト』でなければ、医師は司法で裁かれる。こういうストレスの下で、医師は仕事をしている。このストレスを医師以外の人にも理解してほしい」と訴え、中原さんが月平均5.7回の当直をしていたことについて「体調や精神のバランスを崩すことは必至」、最大で月8回に及んだことは「殺人的」と、医師の過重労働の見直しを強く求めた。
また、大阪府の50歳の医師は、「書類上は、当直室で仮眠となっている時間帯も、何度も起きては病室を訪問し、ナースステーションに足を運んでいる。(回数だけでは測れない)精神的・肉体的な負担を強いられている。子供たちがいい医療を受けられるよう、小児科医が誇りを持って、いつも元気に働けるような労働条件を」と訴えている。
【三次救急】
救急には、入院治療の必要がなく、外来で対処できる帰宅可能な患者に対応する「初期救急」、入院治療を必要とする重症患者に対応する「二次救急」、二次救急で対応できない高度な処置を必要とするケースや重篤な患者に対応する「三次救急」がある。
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