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(投稿:by 僻地の産科医)
後期高齢者医療・国民目線から外れた厚労省
日経NetPlus 2008-07-22
http://netplus.nikkei.co.jp/nikkei/news/mhlw/mhlw/mhl080718_3.html
75歳以上のすべての高齢者を対象にした新しい医療保険制度、後期高齢者医療制度が4月からスタートした。75歳になると、それまで加入していた市町村の国民健康保険(国保)などから脱退して同制度に加入する仕組みで、医療費のかかりがちな高齢者を一つの保険制度のもとに集めみんなで支え合おうというのが狙いだ。
■混乱招いた説明・準備不足
ただ制度の趣旨は評価できるが、厚労省の説明や準備の不足で大きな混乱を引き起こしてしまった。保険料の年金天引きの是非など、感情論に流されてしまった面も否めない。制度の導入をきっかけに深める議論はほかにもあったのではないか。
この制度の大きな特徴は高齢者のための医療給付費の財源構成を分かりやすくした点にある。高齢者の医療給付費は2008年度で約11兆円。これを高齢者が払う保険料で1割、若い世代の保険料で4割、税金で4割を負担することにした。2年ごとに高齢者の負担割合を見直して、若い世代の負担が過大にならないようにしている。透明性を高め、高齢者にも応分の負担をきっちり求めていく制度ともいえる。
■狙いは長持ちする保険制度だったが……
対照的なのはそれまで多くの高齢者が加入していた国民健康保険。市町村ごとに運営しており、巨額の税金を投入し、保険料を低い水準に押さえていた市町村もあった。高齢者にはやさしいといえる半面、財政の内訳が不透明で、若い世代の負担が知らないうちに膨らみすぎる懸念があった。高齢者が多く住む過疎地では医療費が膨らみすぎて将来財政が行き詰まる恐れも指摘されていた。
厚労省は06年に「高齢者の医療の確保に関する法律」を国会で成立させて、同制度の導入を決めた。来るべき“大高齢化社会”に備え、長持ちする医療保険制度を創設することに狙いがあった。
■置き去りにされた財源議論
だがこの制度は今年4月の導入時から批判が相次いだ。「なぜいま新しい医療保険制度が必要なのか」「保険料は上がるのか。将来どの程度まで負担しなくてはならないのか」。こうした点について厚労省が十分な説明を欠いたため、高齢者が説明を求めて市町村の窓口などに押し寄せる一幕もあった。
「保険料が上がる高齢者はどの程度いるのか」。ごくごく基本的な問いにみえるが、厚労省が事前調査を怠っていたため、役人はだれ一人答えられなかった。厚労省がいかに国民目線から外れているかを示すエピソードといえる。
世論の批判を受けて政府・与党は6月に保険料の軽減策などを盛り込んだ見直し策をまとめた。だが高齢者の怒りを和らげることばかりに焦点を当て、増え続ける医療費の財源をどのように賄うのか、根本的な議論はいまも置き去りにされたままだ。
医療と福祉に多額の国費を導入(財源としての消費税や所得税が高く、高福祉・高負担)、高度医療の無料化、高齢者医療、診療関連死や有害事象に対する医療裁判のシャットアウト(国民に民事裁判も刑事裁判も起させない)、無過失補償制度・・・日本もスウェーデンから学ぶべき点が多々あります。
スウェーデンのカロリンスカ医科大学の消化器内科に留学中の先生のホームページ”Heja Japan ”から。
(http://plaza.rakuten.co.jp/gaksuzuki34/)
『高医療と福祉、医療訴訟免責は国益の合理性を追求するとこうなった?』
http://plaza.rakuten.co.jp/gaksuzuki34/diary/200808020000/
(参考)
スウェーデン患者傷害法の一考察
http://www.reference.co.jp/imori/info/info7.html
『患者は賠償を受ける権利を得るためにもう医師を「やっつける」必要がない。この保険は医師などの医療要員と患者の間の信頼を強化するための基盤を創造した。』
投稿情報: 鶴亀松五郎 | 2008年8 月 3日 (日) 10:45