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(投稿:by 僻地の産科医)
周産期医療崩壊防止に若い力を
松田秀雄
(JAOG news 日本産婦人科医会報 第60巻第7号 NO.700 P4)
平成20年4月より幹事を務めさせていただいております。15年目の産婦人科医です。公立・私立病院の勤務医、市立病院の産科一人医長、大学病院の助手などを経て現職にあります。若手幹事として同世代および後輩諸氏にメッセージをと思い考えをまとめてみました。
景気の低迷・少子化・出産年齢の高齢化に引き続き、医師不足・助産師不足・福島県立大野病院事件・看護師による内診問題・助産院問題・母体搬送受け入れ問題・未受診出産問題・男性医師減少問題など「周産期医療崩壊」は報道だけでなく日常の臨床現場でも肌で実感する問題です。特に最近のハイリスク症例の地域中核病院への集中現象を分析すると、少ない人数で大きなリスクを背負いながらもがき続ける勤務医諸氏の実像が浮き彫りになります。なぜ、私たちはここまで追い込まれてしまったのでしょうか?
私たち医師が日常臨床の中で感じている「周産期崩壊」と、病院・市民・行政・立法・報道が感じている産科問題は、体感温度・切迫度が大きく異なります。私自身、小泉内閣による「沖縄県立病院産科閉鎖による医師一人派遣」、福田内閣による「福島県会津地方病院産科閉鎖に伴う医師玉突き派遣」を防衛医大で経験し、産婦人科医と非産婦人科医の認識のズレに困惑いたしました。聖域なき財政再建の方針の下、公的病院の予算は減額になり、設備投資・人件費は抑制されています。その結果、個人の馬力でハイリスク症例の集中に対処→地方で医師が燃え尽きる→では国からと突然医師が派遣される→派遣元では人数が少なくなるから馬力で……の悪循環。
さらに、「医師が不足しているから産科を縮小しましょう、勤務に余裕がないからハイリスク妊娠・分娩管理は辞退しましょう。人件費を圧縮しましょう」という総合病院の理論が押し通され、体力は尽き心も折れ各個撃破されていく産婦人科医師たち……。政策立案者たちは人口動態が変化し財政不足が顕在化した昔にこれらのことを予測しえたはずです。残念ながら、実効性のある対策はとられてきたとは思えません。例えば、このまま地域の中核病院に若手医師(女性が多数派)を集中させてもその財政基盤はどこにあるのでしょうか。いまや税制・財政と連動した包括的な対策が求められるレベルの危険度であるという私の認識は悲観的すぎるでしょうか。
一方、産婦人科医側にも問題はあります。危機の喧伝はしっかり市民に伝わってきたのでしょうか? しっかり信頼されてきたのでしょうか?
今、医会では周産期崩壊を防ぐ方策の提言を積極的に推し進めています。産婦人科診療点数増額、産科医療補償制度、医師法21条問題等、数々の懸案事項に必死に取り組んでいます。医会役員先生方の辣腕ぶりには鬼気迫るものがあります。しかしながら、私はそれだけでは不安なのです。20年30年先の周産期医療の安全を守るために、中核となる同輩・後輩諸氏がより大きな声を上げて産婦人科医の声を日本社会全体により浸透させていく必要があります。臨床現場でも大学の医局でもブログでも何でも結構です。若手当事者間の議論の衝突が老壮を動かし医会を動かし最終的には社会を動かしていくと考えます。恐れず元気に声を出していきましょう。私たちが未来を作るために。
「医療崩壊」緊急勤務医アンケート
http://www.yabelab.net/blog/2008/07/22-182703.php
ついにマスコミが勤務医の生の声を取材しテレビ放映予定!!!
ぜひ、アピールしましょう
投稿情報: YS | 2008年7 月22日 (火) 20:26