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(投稿:by 僻地の産科医)
というわけでシンポの続きですo(^-^)o ..。*♡
遺族側「医療者と患者はパートナー」 死因究明制度でシンポ(1)
死因究明制度でシンポ(4)
国会議員「原因究明と再発防止は両立しない」
熊田梨恵
キャリアブレイン 2008/06/19
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/16649.html
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死因究明制度シンポ(1)遺族側「医療者と患者はパートナー」
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<厚労省の説明>
■「医療者が真剣に取り組むかどうか」
厚生労働省・岡本浩二大臣官房参事官
厚生労働省の岡本浩二大臣官房参事官は、6月13日に同省が発表した死因究明制度の第三次試案を基にした法案大綱案について説明した。警察への通知範囲について、「重大な過失」の文言をなくし、判断に際してさらに細かく配慮できるようにしたことや、病院などでシステムエラーがあった場合に改善計画の提出を求める権限を都道府県知事に付与したことなどを説明。「第三次試案について法律で手当てしないといけない部分について、現段階で示したもの。今後も幅広く国民の議論を望む」と述べた。
最後に、「われわれはインフラやケーブルを整える役割。実際に担当するのは医療者自ら。本当に(医療安全調が)機能するかどうかは、医療者がこの仕組みに真剣に取り組むかどうか。医療者の理解がないと、この医療安全調は機能しない」と強調。医療安全調の成否は医療者自身が同制度に積極的に取り組むかどうかに懸かっているとの認識を示した。
<国会議員の主張>
■刑事介入を遮断、全患者が対象―民主案
足立信也民主党参院議員
足立議員は、6月11日の党厚生労働部門会議で了承された、死因究明制度に関する私案(通称・患者支援法案)について報告した。
足立議員は「良質な医療とは、不満があっても納得があること。良質な医療従事者を育てることが大事で、成功のために失敗を乗り越えて努力していくものだが、今はミスすると、退場させられようとしている」として、厚労省の法案大綱案に警察への通知について盛り込まれていることを問題視した。
足立議員は、私案の特徴を、
▽すべての患者が対象
▽原因究明のための機関設置
▽刑事介入を遮断
▽医師法21条を削除―と解説。
私案に盛り込まれている医療事故調査委員会は、「原因究明」の機能を有しており、「再発防止」については、日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業を充実させるべきとした。
法案大綱案との違いとしては、
▽Ai(死亡時画像診断)や解剖を活用した死因究明を実施し、死亡診断の精度を高める
▽医療メディエーター(対話促進者)を置き、患者・家族に理解を促すとともに、医療機関との対話を促進
▽医療事故があった場合の院内事故調査
▽患者側が院内調査に納得がいかなければ、院外の調査チームなどを紹介してもらえると告げる
▽医師法21条を削除し、死因究明、責任追及への刑事介入を遮断する―などを挙げた。このため、医療法と医師法、薬事法を改正するとした。
私案では、警察への届け出を、「医師は死体または妊娠4か月以上の死産児を検案し、死亡診断書または死体検案書もしくは死産証書を発行できないときは、24時間以内に所轄警察署に届けなければならない」と記載。死亡診断書の発行は、「診療中の患者の死亡原因が、診療に係る傷病または診療行為と関連したものであるとき」、死体検案書は「死亡した者が診療中の患者以外の者であった場合または診療中の患者であった場合(当該診療に係る傷病に関連して死亡した場合を除く)において、当該死亡の原因を特定することができるとき」としている。
足立議員は、医師法21条による届け出について、「異状」の判断が主観的な構成要件になっていると指摘。「どの場合が死亡診断書、死体検案書となるかを分けるべき。その上で、死亡診断書や死体検案書を発行できない場合に捜査で死因を究明するという客観的な要件にすることが必要」と、医師法21条の規定を削除する理由を説明した。
救急医療の現場については、「警察と常に連動している。届けは調査委員会か、警察かは明確に分けられない。警察の情報があることで正しい診断ができる場合もある。必要なのは、死体検案書や死亡診断書で、それすら書けない場合なのか、それを明確にする必要がある」と解説した。
■「『佐原三原則』、医療安全調だけでは無理」
鈴木寛民主党参院議員
鈴木議員は、シンポジウムでの遺族や弁護士、医療者の主張について、「すべてもっともと思う。わたしたち国会議員や厚労省の仕事は、それぞれの方程式をどう解くか。難問だが決して相矛盾しないし、必ず解ける。医療者と患者の対立にしてはならない」と述べた。
死因究明制度については、「これまでの議論を総括すると、いわゆる『事故調』設置については、おおむねコンセンサスが得られており、ぜひ実現したい。しかし、業務上過失致死罪から医療行為を除くという話については、国会で言う『継続審議』にさせていただくというのが現段階の結論。刑事法学者の力も得ながら議論していきたい」との考えを示した。
調査機関の機能については、「『佐原三原則』(死因究明制度についての厚労省担当者は佐原康之医政局総務課医療安全推進室長)といわれている、
▽被害者のための真相究明
▽医療事故の再発防止
▽委縮医療の防止―という大命題では合意する」と述べたが、3つの機能をすべて医療安全調が担うことに疑問を呈した。「例えば、(医療事故後の)院内でのカルテ保存、情報提供、疑義がある場合の相談支援、紛争解決、再発防止など、事故直後からステップを踏んでやるべきことがあり、総動員するのが望ましく、制度設計で法定すべきと思っている」と、法案大綱案で未整備な部分を指摘した。
また、警察が介入することで医療者と患者側との溝が深まることも問題視した。「業務上過失致死の警察への通知を、制度設計上に盛り込んでいる。結果として医療安全調の原因究明や事実認定は、刑事過失が前提になる。そうすると、患者さんのためになるのか、被害者感情の克服につながるのか。どうしても刑事過失となると『硬め』の原因究明・因果関係の想定になる。相対的に見ると、患者さんに不満が残り、混乱が進む懸念がある。過失概念から離して、事故検証に絞ったニュートラルなものが必要。特に患者の思いは、別の枠組みで知恵を出し合うのが必要」と述べた。
■「カルテ書き換えなくてよい医療現場を」
阿部知子社民党衆院議員
阿部議員は、自身の兄が悪性リンパ腫による脊髄手術の翌日に死亡した経験談を語った。事実を確かめるためにカルテを見たが、その時には何も記載されておらず、後日に再度確認すると、呼吸の状態や脈拍数などが詳細に書き込まれていた。「いつ書いたのか。誰が変えたのか。患者6人に対して看護師が1人、呼吸器が3台あるHCUで、兄は何も言わない患者だったから、(看護師が忙しくて)手が抜けたと思う。彼女は失敗したと思い、悪意からではなく、書いたのだろう。そうせざるを得ない医療現場の実態だった。医療現場が追い詰められている。看護師がカルテを書き換えなくてよい環境をつくってほしい。責任や懲罰の問題ではない現実が浮かぶようにしなければ、医療事故は後を絶たない」と訴えた。
・阿部議員は、「現場に負担を掛けた医療行政を変えなければいけない」との思いから、2003年に「医療事故防止議連」を設立し、自民党の中山太郎衆院議員と共に取り組んだことを紹介した。
・医療安全調については、真相究明に重点を置いて刑事罰と切り離すシステムにしなければ、真相を究明できないと主張した。「医療者が罰せられる場でなく、構造的なミスを是正できる、医療現場にゆとりと人材ができるものにすべき」と述べた。
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