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コメント

鶴亀松五郎

アメリカ合衆国における診療関連死の取扱いについての詳細なリポートがあります。
一般的にアメリカでは、故意や悪意以外の診療関連死が刑事事件化することはありませんが、その対応は州ごとに異なっています。
診療関連死が起きた場合は、各州の医療安全担当部局に報告する決まりがあります。
義務付けている州と、自主的な報告に任せている州があり、一律ではありません。
それに応じて、州のメディカル・ボードが医師や歯科医師、ナースなどの処分を決定します。

連邦保健局のAgency for Healthcare Quality and Researchが報告書を出しています。
Regulation of Health Policy:
Patient Safety and the States
http://www.ahrq.gov/downloads/pub/advances/vol1/Weinberg.pdf

(そのなかの一説です。)

有害事象の報告制度は一般国民からは支持されているが、いまだに医療専門職からは根強い抵抗がある。最近(2003年)のアメリカ医師会誌の調査では、有害事象を州の当局に報告することが問題の解決に有益であると答えている一般市民が71%であるのに対し、医師は23%しか有益であると答えていない。また2003年のLambらの調査では、一般市民の62%が報告を公開すべきと答えているのに対して、公開すべきと答えた医師は14%に過ぎなかった。この理由は明らかである。医師は報告がどういう結果をもたらすかを、より強く認識しており、より強く恐れているのである。つまり、医療過誤裁判だけでなく、専門職団体や医師を規定する団体(州のメディカル・ボード)から制裁的な処置を受けることを恐れているのである。いくつかの州は、このことに強い関心を持って、秘匿や非公開の法律を制定するように努めてきた。しかし、こういった法律はまだ新しく、報告が増えるかどうか見極めることはできないし、法的な異議申し立てをまだ受けていない。

義務であれ、自発的であれ、報告システムが存在するところでさえも、医師は最も報告をしない医療専門職である。これは上に述べたように、いくぶん、医療過誤裁判やある種の報復措置をおそれていることにもよる。しかし、沈黙や不開示は看護師や他の医療職と比 べて、医師文化のなかに深く埋め込まれている。このことは、法律上の義務があろうがなかろうが、自発的であろうが強制的であろうが、内部の文化が有意にかわらない限りは、報告制度への引き続きの抵抗であり続けることを示唆している。

鶴亀松五郎

道標主人先生が、紹介してくださった読売の記事はシリーズになっていますね。
ちょうど、大野病院事件が起きた直後に掲載されたので、記憶に残っています。
(私も、当時の記事をコピーしていました)
(1)患者との和解導く「謝罪」
紛争の仲介役「メディエーター」
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/feature/20060523ik06.htm

(2)プロ意識保つ“分業制”
「専門医」と「経営専門」病院長
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/feature/20060524ik05.htm

元臨床医

やっぱりそういう仕組みがあったんだ…

「医療過誤が刑事になるのは日本だけ」というプロパガンダはよく目にするけど、米国でこれほど医師免許取り消しが多いとは知らなかったなぁ。

医師が医師免許を取り上げられたら、娑婆にいるより牢屋にいた方がましかも、体験したくはないが(笑)

鶴亀松五郎

>やっぱりそういう仕組みがあったんだ

アメリカの場合、医師資格と医師免許が日本の場合とは若干ニュアンスが異なるのでは、と思います。
USMLE(米国医師資格試験)に合格すれば米国医師資格を取得できる。
自分が働く州のボードに医師免許申請をして、医師免許(医師としての労働許可)を得る。
医師免許停止になっても、医師資格そのものは、失われていないので、一定の再教育期間ののちに、USMLEとは別の医師試験(しばらく、ブランクが有った場合に臨床医として再び働きだすための試験)を受けて州の当局に再び医師免許申請ができると聞いています。州の医師免許停止を隠して、別の州に医師免許申請をして働いている医者がいることはいた。
米国の事情にお詳しい先生方も多いと思いますので、間違ってたら訂正、お願いします。


イギリスの保健省が2005年に医師と歯科医師の資格停止や資格保留に関してのプロトコールを出しています。
NHSの複数の専門医や関係する医療職による詳しい調査、当事者でない医療職からの聞き取り調査、当事者の医師の弁明(代理人による弁明も可能)、で資格停止・資格保留の有無が決まります。
証拠がない、他者からの悪意のクレームもあるようで、この場合は資格停止にはならない。
また、調査の結果で資格停止・保留が決まっても、異議申し立てができる。
公平なやりかたを取るようにしているようですよ。
人口あたりの医師数がほぼ日本と同じのイギリスで2000~2003年で実際に資格停止になった医師は毎年30人弱。
今までは単に資格停止や医療職資格剥奪だったですが、考え方を変えて、(悪意での医療過誤例を除いて)再教育機関を設けて、再び復職できるようなシステムです。
Maintaining high professional standards in the modern NHS
http://www.dh.gov.uk/en/Publicationsandstatistics/Publications/PublicationsPolicyAndGuidance/DH_4103586

マシュマロ

診療関連死が起きた場合は、各州の医療安全担当部局に報告する決まりがあります。義務付けている州と、自主的な報告に任せている州があり、一律ではありません。それに応じて、州のメディカル・ボードが医師や歯科医師、ナースなどの処分を決定します。

---------

義務づけている州の場合、WHOのガイドラインに反しているようですが、アメリカの医師はなんとも思っていないのでしょうか。それとも、WHOのガイドラインには反していないと言うことでしょうか。

鶴亀松五郎

マシュマロさま。
言葉が足らなかったです(いつものことですが)、すみません。
医療安全の報告を受ける部局と、処分を下す部門は別々の機関です。
クレームのうち、明らかな怠慢や診療能力不足による医療過誤が疑われる場合は調査して、処分の対象になります。
イリノイ州やメイン州のように裁判に使われないように、匿名化して、情報を開示しないことを定めている州もあれば、
原則匿名であっても、情報を開示する州もあり、規定は州ごとに異なるようです。
(具体的には、上のURLをご参照下さい)。
要するに国として一律ではなく、州ごとに対応が異なります(アメリカは医療も教育も地方分権で法律も異なる)。

それで、医師側としても医療過誤裁判に使われる可能性を考えば、有害事象の報告をためらうわけで、医師側の有害事象報告制度への信頼度が低い原因になります。


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