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(投稿:by 僻地の産科医)
医師不足への処方せん◆Vol.6
「名ばかり管理職」是正も、宿日直の課題残る
滋賀県立成人病センターが労基署の是正勧告を受け
部長職にも時間外手当
橋本佳子(m3.com編集長)2008年06月10日
http://www.m3.com/tools/IryoIshin/080610_1.html
滋賀県立成人病センターは5月30日、大津労働基準監督署に対して、院長を除く管理職は、実態上、管理職ではないとし、「時間外手当」を支払うなどとした改善計画書を提出した。また、部長職以上も含め全医師について、宿日直時の「通常勤務」について割増賃金を支払うことも盛り込まれている。
この改善計画は、2008年4月18日に労基署から受けた是正勧告を受けた対応だ。具体的内容は以下の通り。今回是正勧告を受けたのは、成人病センターだが、滋賀県立の他の2病院についても同様の改善を行う。
【滋賀県立成人病センターの改善計画書】
(1)時間外・休日労働に関する協定の締結、届け出
※労働基準法第36条に基づく協定を締結し、大津労働基準監督署に届け出る。(予定時期:2009年3月末日)
(2)部長職以上の医師について、時間外・休日勤務および深夜勤務の割増賃金の支払い
※病院長を除く部長職以上の医師について、時間外・休日勤務および深夜勤務に係る割増賃金(以下、時間外手当)を2006年4月1日に遡及して支払う。(予定時期:作業の状況に合わせて、年度内に支払う)
(2-2)すべての医師について宿日直勤務時の通常勤務に係る割増賃金の支払い
※ 医師について、宿日直勤務時の通常勤務に対して、割増賃金を2006年4月1日に遡及して支払う。(予定時期:作業の状況に合わせて、年度内に支払う)
(3)労働者の労働時間の適正な管理
※「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずるべき措置に関する基準」に基づき、ICカード導入により適正に管理する。 (予定時期:2008年6月末日)
部長職以上の29人のうち「管理職」は院長のみ
(1)は、いわゆる36協定だ。労働者に所定労働時間(週40時間)を超える時間外労働をさせるには、36協定を結んで労働基準監督署に届け出なければならない。締結の予定時期が来年3月末と遅い理由について、滋賀県病院事業庁経営管理課は、「現在、滋賀県職員の組合は2つあるが、職員数の過半数が加入している組合はない。36協定は過半数を超える職員の代表者と締結する必要があるため、代表者の選定までに時間がかかる。従来、36協定を結んでいなかったのは、この代表者がいなかったためでもある」と説明する。
(2)は部長職以上に関する改善計画。滋賀県立成人病センターの常勤医師は今年4月1日現在77人。うち部長職以上は29人で、院長、副院長、主任部長、部長の4職種に分かれる。院長については、権限や組織の中での位置付けなどから、労基法が定める「管理監督者」に該当するとしたが、それ以外の28人は「現状では、明確に管理監督者であるといい切れない部分がある」(経営管理課)。
現在、管理職には、月8万~9万円の「管理職手当」が支払われている。時間外手当を支払うことになるため、管理職でなくなった以上、「管理職手当」を支給することが妥当かどうかを今後検討するという。
(2-2)は全医師が関係するもの。労基法第37条によれば、宿日直の際に、「通常勤務」を行った場合、宿日直手当のほかに、割増賃金を支払う必要がある。従来は、部長職以外の医師にも、この割増賃金を支払っていなかった。
勤務実態把握のために2年分の当直日誌を精査
(2)と(2-2)の「予定時期」が来年3月末日と時間がかかるのは、2つの理由からだ。
一つは、過去にさかのぼって賃金を支払うこと、また管理職の定義を見直すことなどから、条例の改正が必要なためだ。この6月の県議会には間に合わないため、関係条例の改正は早くてこの9月の県議会になる。
もう一つは、ここ2年間の実態把握の作業に時間を要すること。医師はタイムカードや勤務表などで出退勤時間を管理していなかった。このため当直日誌や看護記録、会議記録などを洗い出し、「誰がいつどんな業務に従事していたか」を調べる。その上で、個々の医師から自己申告してもらい、すり合わせを行う。その上で、割増賃金の支払い額を決定する。
(3)のICカードは、出退勤の状況を把握するため、医師を含め全職員に導入する。もっとも、この記録と時間外手当支払いは別だ。「時間外手当は現在、事前の申請と事後の報告に基づき支払っている。今後もこのルールに基づき支払う」(経営管理課)。
依然として残る「宿日直の扱い」
今回の改善計画は、管理職に時間外手当が支払われること、また宿日直時の「通常勤務」に対して、割増賃金が支払われる点で、一歩前進と言える。もっとも、過去2年間さかのぼって支払い額を決定する作業は容易ではない。
さらに今回、「宿日直」で「通常勤務」を実施した際に、「割増賃金」を支払うことになったが、そもそも「宿日直」扱いのままでいいのかという点は解決されていない。これは多くの病院が直面している問題だ。
「宿日直」とは、「通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のもの」であり、「一般の宿直業務以外に、病院の定時巡回、異常事態の報告、少数の要注意患者の定時検脈、検温など、特殊の措置を必要としない軽度の、または短時間の業務に限ること」とされている(厚生労働省資料「医師の宿日直勤務と労働基準法」)。これに該当しない場合は、「宿日直」ではなく、通常の勤務時間として取り扱わなければならない。
ほとんどの病院が、「宿日直」と称して、通常勤務を医師に強いているのが実態だ。この点で、注目されるのが、奈良県立奈良病院の裁判の行方だ(「時間外手当支払いを求めて提訴したわけ」)。この裁判では、同病院に勤務している産婦人科医が、分娩や救急患者への対応をしていた「宿日直」ではなく、通常勤務に当たるとして、それに相当する賃金の支払いを求めて県を訴えている。
部長などの「名ばかり管理職」にも時間外手当を支払う…当たり前だと思います。
以前、某労災病院勤務だったとき整形外科7人体制のNo.4(学年的にど真ん中)でしたが7人中で最も薄給でした。
カラクリは…私より上の3人は部長で当然私より給料が高い。私は“副部長"などというワケわからん肩書きをつけられて時間外手当は大幅にカット。私より下の3人は管理職の肩書きがないのでキッチリ時間外手当が付いて雀の涙の副部長手当をもらう私よりずっと給料が高い。副部長だからと言って当直や拘束や緊急呼び出しに関して優遇されるわけでもなく、自分が拘束じゃなくても後輩で手に負えないときは呼ばれるし一番実働してたのに…。
あんまりアホくさくて「ただの医師に降格してください。」と申し入れましたがダメ。1ヵ月のうちで給料日が最もmotovationが下がる日でした(笑)
投稿情報: つよぽん | 2008年7 月 6日 (日) 02:08