(関連目次)→医療事故と刑事処分 目次 医療事故安全調査委員会
(投稿:by 僻地の産科医)
三回分の連載です!
一気にどうぞ ..。*♡
金田先生かっこいいです~ステキ(>▽<)!!!!
(大淀傍聴に行かれた方はご存知でしょうが、
この方が病院主任弁護士だとおもわれいつも発言されてます)
医療事故と刑事処分◆Vol.1
刑事事件となる医療事故は少ないのが現状
捜査機関の知識不足と医療側の認識不足が関係
司会・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)
http://www.m3.com/tools/IryoIshin/080512_1.html
“医療崩壊”には医師不足をはじめ様々な原因が挙げられるが、「医療事故が刑事事件化することが最大の原因」と指摘する医療者は多い。厚生労働省は医療事故の原因究明などを行う機関の設置を検討しているが、それでもなお、「どんな医療事故に、業務上過失致死傷罪を適用するか」という点を議論しない限り、医療者の懸念は払拭できない。
東京地検特捜部長・最高検公判部長を歴任した弁護士の河上和雄氏と、医療機関の弁護士として数多くの民事訴訟を手がける金田朗氏に、医療事故と刑事処分をめぐる諸問題について対談してもらった。第1回は、刑事処分の現状について(計3回にわけて掲載)。
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河上和雄氏 東京大学法学部卒業、ハーバード大ロースクールグラデュエイトコース卒業。1958年に検事任官。東京地検検事としてロッキード事件捜査などを担当、法務省公安・会計課長を経て83年東京地検特捜部長、最高検公判部長を歴任。弁護士、北海学園大学・駿河台大学教授。
金田朗氏 京都大学理学部入学。法学部に転部後在学中に司法試験合格。卒業後、ロンドン大学留学。1984年より長島・大野法律事務所(現長島・大野・常松法律事務所)勤務。HIV訴訟では被告製薬会社の代理人を務める。93年大阪で開業後、医療事件を専門とし、医療側の代理人を担当。大阪府医師会顧問。
――警察への医療事故の届け出件数は2003年と2004年辺りがピークで年間約250件、その後はやや減少し200件前後で推移しています。そのうち検察に送致されるのは年間90件前後です。この現状についてどうお考えですか。
河上 医療事故のうち、業務上過失致死傷罪に当たるとして刑法上の過失が問われるケースは極めて少ない。その原因としては、捜査機関に医療について十分に分かっている人が少ない、医師同士のかばい合いが見られるほか、警察は日常の捜査において医師に様々な面で頼っている、といった理由が挙げられます。警察、特に地方の警察は医師と深い関係にあります。だから、地元の医師に対しては、腰が引けている面があります。医師の立場から言えば、警察はあまり無理をしないと考える。しかし、都市部などを中心にそうでない地域もあり、「(医療事故で送致される例があると)警察が無理なことをして」となるのですが、本当に無理かどうかは裁判になってみないと分からないことです。最近、警察への届け出や送致件数が増えてきたのは、患者・遺族側の要望や人権意識の向上のほか、医療事故に対して強い態度を取る米国の風潮が影響しているのでしょう。しかし、一番の要因は、責任逃れをするなど、医療者側の被害者への対応の問題ではないか。捜査機関は、被害者と医療者双方の意見を聞くので、一方的に「医療者は保護されるべき対象である」という考えを持ちにくいと言えます。
――本来、もっと業務上過失致死傷罪を適用すべき医療事故があると。
河上 そうかもしれません。ただ一方で、業務上過失致死傷罪はそう簡単に適用すべき性格のものではない、捜査機関に対して、医療に関する教育を行うなどして、理解を深めることも重要でしょう。捜査機関に、医師などの専門家を入ることも考えられます。この辺りは検討すべき課題だと思います。
金田 私自身は医療側の代理人として民事事件を多数手がけていますが、刑事事件にはあまり関与したことがありません。われわれの観点から言えば、民事訴訟は患者側に生じた損害を誰が賠償するかという損害調整のメカニズムに基づいており、民事と刑事で問われるべき過失のレベルはおのずから異なると考えています。ところが、患者さんの死亡という重大な結果となった事案に関して、遺族から告訴があれば、警察による捜査が先行してしまうのが現状です。民事裁判で争えると思った事案でも、捜査機関が一部の医師の意見を聞いた程度で、医療的に過失があると判断した場合、「起訴猶予をするから、示談を」と強要されることがあります。このような時に、もう少し捜査に当たる方が、医療の不確実性、時にはリスクを取って患者さんを救済することもあり得る実態を理解してほしいと思うことがあります。
河上 それはあり得る。ただし、それは交通事故でも、単なる傷害事件でも同じです。刑事罰と民事罰をどう折り合いをつけるかという問題は常に生じています。
――警察が示談を進めてくることがあり得るということですか。
河上 捜査機関にとって医療事故は難しい事案なので、事件性があり、「絶対に起訴し、裁判にする」という事例以外は、正直言ってあまり捜査したくないわけです。現実的には、何とも判断しかねるものが大半であり、それが示談を進めることにつながるのでしょう。先ほどの送致件数の少なさとも関連する問題ですが、捜査機関の知識不足だけではなく、過失や業務上過失致死傷罪に対する医療者の考え方、この両方が現状の問題だと思います。 例えば、多少冒険的な治療法であっても、医師は「この場合は、この方法がいい」と考えます。それ自体はいいのですが、自分にその能力があるのかを考えずに実施する例があります。1968年に行われた、日本初の心臓移植手術と同じです。あの件は結局不起訴になりましたが、今の基準で言えば恐らく起訴もあり得たでしょう。しかし、当時は心臓移植手術がどんなものであるか、理解されていなかったことが不起訴になった一因と言えます。
――では具体的には、業務上過失致死傷罪をどんな医療事故に適用すべきだとお考えですか。
河上 故意の事例だけではなく、医療行為に過失があれば、起訴し、罪を問うのは当然でしょう。
――ここで言う「過失」とは、どのようなものなのでしょうか。
河上 医師の中には「医療については(それ以外の分野と)別個に考えるべき」など「免責」を求める意見がありますが、刑法に携わっている人の大半は、医療だからといって過失概念を変えるとは考えていません。過失があれば、当然、民事裁判にも、刑事裁判にもなり得るわけです。これは、医療者、特に医師に対して優しい考え方ではありませんが。
長崎で日本外科学会が開催中ですが、本日、診療関連死のセッションがありました。
モデル事業の高本眞一教授が主役でしたが、パネリストの一人のヤメケンの飯田英男弁護士が、河上氏と全く同じ論調で、聞いていて笑ってしまいました。
因みに日本外科学会は代議員の約95%の圧倒的賛成で、第3次試案を支持しました。
記者会見もあったはずです。
投稿情報: rijin | 2008年5 月16日 (金) 22:59
さすが、ヤメケン(笑)。
すばらしいですね。徹底的ですo(^-^)o
内科学会の見解も読みましたが、あれは賛成ではないですね。
外科学会の方の見解をもし入手できるようであれば、どなたか送ってくださると嬉しいのですがo(^-^)o ..。*♡
投稿情報: 僻地の産科医 | 2008年5 月16日 (金) 23:22
平成20年5月14日
声明
社団法人 日本外科学会
厚生労働省の「診療行為に関連した死亡の死因究明などの在り方に関する検討会」に於いて議論されている中立的専門機関としての医療安全調査委員会の設立の主旨が厚生労働省の第3次試案として提示されました。これに関しては々日本外科学会の見解を述べます。
日常診療の中でも外科診療は最もリスクの高い医療であります。我々外科医が誠意と善意に基づいて診療を行ったとしても、その結果によっては、現時点ではいつでも医師法21条による警察届出から刑事捜査の対象になる可能性があります。こうした現状が小児科産婦人科、外科における萎縮医療や医療崩壊の元凶となっています。
厚生労働省第3次試案として提示された中立的専門機関としての医療安全調査委員会は、医療者が自ら医療安全を目指して医療事故の原因究明と再発防止を図ろうとする新しい仕組みであります。現在の医師法21条の取り扱いを改めて、我々医療者を突然の逮捕や不合理な刑事訴追から守るものであると共に、医の原点に立ち戻って、患者と医師の信頼関係を再構築するための新たな仕組みであると考えます。
我々日本外科学会は第3次試案に提示された「医療安全調査委員会の設立」の精神を支持し、委員会が真に医療者と患者のためによりよい医療を目指すものとなるように、その成立に向けて努力します。また、この医療安全調査委員会が設立された暁には、この委員会の精神を正しく遂行するために、学会としてあらゆる協力を惜しまない所存です。
医療は患者と医療者の相互の信頼の上に成り立っています。我々日本外科学会は、患者と共に、また国民とともに日本の医療を守る努力をする決意です。
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…だいたいこんな感じです。
投稿情報: rijin | 2008年5 月17日 (土) 07:49
ありがとうございます!
たったこれだけなのですね。。。。
産婦人科と同じような崩壊がすぐそこに見えている外科なのに。あまりののんきさに驚きました。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2008年5 月17日 (土) 10:19
外科の場合は比較的中堅層が健在で、まだ団塊の世代のお歴々の負担が重くはないからだろうと思います。
外科の世界は上下関係も厳しく、あまりやんちゃをやる先生はいらっしゃいません。
代議員会でも反対票を投じたのは300人中18人(?)だったそうです。反対の論を張る先生が居たと言うことですが、外科学会としては珍事の類に属します。
(遠くて見えませんでしたが多分)東北大学の里見教授から、医療安全の確保には医療費の拡大が必要である旨、きちんとしてくれるようにフロアからご発言がありました。
団塊の世代よりも下の教授陣だと、身近に崩壊の危機が迫っているという実感もあるのでしょう。
投稿情報: rijin | 2008年5 月17日 (土) 12:19