(関連目次)→脳性麻痺 目次
(投稿:by 僻地の産科医)
ジャミックジャーナル1月号より ..。*♡
本田先生の連載などもあって、相当オモシロかったです(>▽<)!!!
とりあえず無過失補償から!
産婦人科の実際の2008年1月号にも岡井先生の無過失補償のってましたので、ご希望の方はそちらもどうぞ!
【関連ブログ】
脳性麻痺について
ある産婦人科医のひとりごと 2008/02/06
http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/2008/02/post_d6f6_2.html
無過失補償制度 (2008.1 JAMIC JOURNAL p16-17) 訴訟割合の高い産科医療への「無過失補償制度」導入が論議されている。医療事故が起きた際、医師の過失の有無を問わす患者を補償する同制度は、訴訟増加の歯止めとなるのか。 制度実現に向けた5つの論点 医療崩壊の要因のひとつに、訴訟の増加があげられる。医療訴訟のなかでも、医療事故にあった患者が医師や病院に賠償を求めるケースは少なくない。そうした裁判は、事故の原因が医師の過失にあったかどうかを巡り、争われることになる。 論点1 補償対象 審議中の制度案では、補償対象を無過失補償制度に加入している分娩機関で生まれたすべての脳性まひ児としている。医療保険の加入は条件ではない。脳性まひは訴訟になることが多く、原因の特定が難しいため裁判が長引きやすい。また、看護が必要な期間が長いことから、日本医師会は「もっとも緊急性の高い事例」と位置づけている。 論点2 財源 補償財源は、民間の保険会社の商品を活用し、医療機関が保険料(1分娩につき2~3万円の見込み)を支払うことになっている。これに対し、「なぜ医療者だけが負担するのか」といった反発や、民同企業の関与で営利優先の制度になることへの懸念がある。 論点3 補償額 補償額は患者一人につき2000万~3000万円が想定されている。しかし、脳性まひの患者の生涯にわたる看護や介護にかかる費用に対して安すぎるという声もある。 論点4 第三者調査機関 補償の適否の判断や、原因の分析は第三者調査機関が行うことになっている。現在の審議では、日本医療機能評価機構のなかに第三者調査機関を設ける方向で議論されているが、独立性への懸念も指摘されている。 論点5 裁判との兼ね合い 無過失補償制度は、医療訴訟を減らす効果が期待されているが、日本の法制度では、訴訟を制限することはできない。無過失補償制度で補償を受けた場合は訴訟を起こさないとするルール作りが求められている。 「産科で導入後、全診療に拡大を」
医師が訴訟に巻き込まれるリスクを減らそうと、今、医療界では「無過失補償制度」の制定に期待が寄せられている。無過失補償制度は、医師の過失の有無を問わず、医療事故に遭った患者を補償するものだ。
現在は、特に訴訟の多い産科医療に限定して準備が進められている。日本医師会が作成した原案を元に、06年に自民党が政策発表をし、(財)日本医療機能評価機構に設置された準備委員会が検討を重ねている。
ここで、主な論点を整理しよう。
しかし、ここに先天性の障害が含まれていないことに、反対意見もある。
ただし、実際には医療機関は保険料を出産費用に上乗せすることが想定される。妊産婦の負担が増す可能性があることから、無過失補償制度の発足と同時に、出産育児一時金を引き上げることが検討されている。
岡井崇氏 (昭和大学医学部産婦人科学教室教授)
現役産婦人科医の立場から、岡井崇氏は無過失補償制度の必要性を強く訴えている。岡井氏の書いた小説、『ノーフオールト』(早川書房)は、産婦人科における医療訴訟をリアルに描き、産科の医療崩壊の深刻さと、無過失補償制度の必要性を投げかける。医療を裁くことの限界と、現在、審議が進められているこの制度への期待を問いた。
◇
私は02年からの3年間、厚生労働省のプロジェクトで産科医不足の原因分析を行いました。無過失補償制度の必要性を痛感したのはそのときです。
調査の結果から、産科志望者が減った原因の1位は過重労働、2位は訴訟が多いことだとわかりました。私自身、これまで幾度となく産科の現場で訴訟になったケースを見てきたので、問題の重大性は身にしみていました。
過重労働の問題はすぐに解消できなくても、訴訟の増加だけでもなんとか食い止めたい。そのために必要なのが無過失補償制度、と考えたのです。
ほとんどの医療事故の原因は診療能力の低さ
医療訴訟の多くは医療事故に関するもので、原因は3つに分けられます。
ひとつは悪意や故意によるもので、刑事訴訟になって当たり前です。もうひとつは、いわば医療者の不誠実さが原因のものです。効果より報酬の高さを優先して治療法を選ぶ、研究のために同意も得ず新しい治療法を試すなどのケースで、これも場合によっては刑事責任を問われて仕方ありません。
でも、これら2つのケースは訴訟の数としては極めて少ない。訴訟の8~9割は、診断や治療技術など、医師としての能力が問われているのです。
たとえば、レントゲンに写った白い影を見落としてしまった、そう難しくない手術で大量出血を起こしてしまった、などのケースは、故意で右不誠実でもありません。要するに、医師の能力が及ばなかったということです。
裁判では、医師の能力の問題による医療事故が、やむをえない範囲だったかどうかを、専門家が鑑定します。
しかし、医療には不確実性があり事故当時の判断が妥当かどうかは一概に言えません。鑑定言は書く人の考え方によって大きく内容が変わり、それによって、裁判の結果が左右されるのです。私も何度も鑑定言を書きましたが、正直に言えばそうした鑑定書で医療事故の原因が過誤がかどうかを判断するのは無理があると思います。
ひとたび裁判になれば、医師の精神的苦痛は計り知れません。私の後輩も裁判に巻き込まれたとき、自殺を考えるほどに追い込まれていました。医療に裁判はなじみません。だから、無過失補償制度が必要なのです。
スウェーデンでは訴訟件数が10分の1に
私は、日本医師会が無過失補償制度の原案をつくる際の検討会の委員を務めました。海外の事例も調べましたがスウェーデンでは無過失補償制度の導入で、医療訴訟の件数が10分の1に激減していました。この結果は、大いに参考にすべきデータだと思います。
ただ、補償対象や財源など難しい問題も少なくありません。まずは訴訟の多い新生児の脳性まひで導入し、追って他の症例や他科へ拡大し、制度の細則を整備してもらえれば、と考えています。私は、産科医師不足の解決という視点からこの制度について勉強したのですが、今では、そういうことよりも、事故後の処理として社会にとって最もよい制度だと考えています。
一番の課題は、医療事故を起こした医師への教育的ペナルティです。もし、診療能力に劣る点があるとすれば、事故の原因になった点について、しかるべき病院や専門医師の教育を受けることを義務づけるなどがよいと思います。
無過失補償制度で患者を補償しただけでは、また同じ事故が起こらないとは限りません。医師のスキルアップのシステムを併せ持つことで、本当に医療訴訟を減らす制度になると思います。
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