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(投稿:by 僻地の産科医)
今、法制化をいそぐべき時でしょうか?
診療関連死の委員会、以前から興味を持って追いかけています。
第八回の検討会にも実は傍聴に行っています。
それで、この記事をみて。
「ああ~、相変わらず、委員会の声はなにも届いていないな」というのが私の感想。
前々から同じ議論がなされ、しかし、出てくる案には何一つとして検討会の検討内容は反映されていません。
ずっと、同じ問題が議論され、問題点も当初からはっきりしているにもかかわらず、あいも変わらず同じ問題点がそのまま先送りされて、同じ反対意見にひっかかり、ひっかかったようにみえて、そのまま同じ案が繰返されるという繰り返し。
このまま検討会を続けても仕方がないのではないか、
というのが私の意見です。
いま、急いでこの機構を作り上げる必要はありますか?
波紋を呼ぶ死因究明制度 (日本医事新報 No.4364 2007年12月15日 p24-27) 医療界に賛否両論を巻き起こした厚生労働省の「診療行為に関連した死亡の死因究明等の在り方に関する第2次試案」。現時点で厚労省と自民党が考える制度の概要と関係者の反応をまとめた。 自民「責任追及が目的ではない」 厚労省が10月17日に公表した第2次試案に関しては11月11日の自民党・社会保障制度調査会医療紛争処理検討会、8日の厚労省・診療関連死の死因究明制度等検討会でヒアリングなどが行われた。これに出席した日本医師会、日本病院団体協議会、厚労省「診療関連死調査分析モデル」事務局の3者は大筋で容認する見解を表明。その一方で、医療界の一部からは反対意見も上がった。 こうした状況を受け、自民・医療紛争処理検討会は11月30日、第2次試案に対する党の見解「診療行為に係る死因究明制度等について」の原案を提示。第2次試案を踏襲しつつ、制度の趣旨について「責任追及を目的としたものではない」と明記するなど、踏み込んだ説明を行うことで事態の収拾を図ろうとしている。 届出義務化、報告書の刑事利用も 調査組織のあり方 届出制度の義務化 刑事手続等との関係 第2次試案のパブリックコメントに寄せられた反対意見(抜粋) ■総 論 ■診療関連死の死因究明を行う組織 ■届出制度 ■刑事手続との関係 反対根強く、法制化にはなお曲折も
どのような仕組みが想定されているのか
『医療崩壊』の著者で虎の門病院泌尿器科部長の小松秀樹氏は、講演会やウェブ上で、第2次試案を「法的責任追及という理念の実現が目的」と断じた。さらに、これを容認した日医を痛烈に批判、勤務医に「日医を脱退し、『勤務医医師会』を結成すべき」などと呼びかけた。
また、厚労省が募集したパブリックコメントに対しては、後述のように「萎縮医療、医療崩壊が決定的なものになる」など、反対意見も多く寄せられている。
同検討会の大村秀章座長は、「第2次試案に対し意見をたくさんもらったが、誤解、曲解がほとんどだ。現段階でのイメージを整理した」と述べ、来年の通常国会に厚労省が提出する法案に反映させる考えを示している。
厚労省、自民党が法制化を目指している制度はどのようなものなのか。第2次試案、自民党の見解案を基に概観してみる。
制度を担う組織(別掲参照)としては、「医療安全調査委員会(仮称)」(医療事故調査委員会から名称変更)を設置。その構成は、
①厚労省内に設置する「医療安全調査中央委員会」
②全国8ヵ所の地方厚生局に設置する「医療安全調査地方委員会」
③地方委員会が編成する「調査チーム」
の3者からなる。
それぞれ、医療専門家を中心に、法曹関係者、患者・遺族の立場を代表する者ーなどが参加する。
医療機関から診療関連死の届出があった場合、地方委員会は事例ごとに調査チームを編成。調査チームは解剖、診療録の評価、遺族への聞き取りなどを行い、死因、死亡に至る臨床経過診療行為の内容や背景要因再発防止策などに関する調査報告書の原案を作成。地方委員会はこの原案を調査報告書として決定する。報告書は、遺族、医療機関に交付される。
中央委員会は再発防止に関し、関係大臣に対する勧告、建議などを行う。
なお、自民党見解案では、調査委員会について「医療関係者の責任追及を目的としたものではない」と明記しており、大村座長は「この趣旨を法律に書き込みたい」と説明。調査の対象事例については「当面、死亡事例のみ」としている。
すべての診療関連死の届出は義務化され、届出先は医療安全調査委員会に一本化される。調査委員会が事例の振り分けを行い、必要な場合には警察に通報することとなる。このため、現行の異状死届出との重複を避けるため、医師法21条は改正される見通しだ。
また、義務化に伴い、届出を怠った場合には「何らかのペナルティを科すことができる」とされている。
厚労省医政局総務課は、調査委員会が警察に通報する基準について、「今後詰めていきたい」とコメント。ペナルティの内容については、「1例でも届け出なかったら即、ペナルティではないが、何らかの行政罰を科すことが考えられる」としている。
調査報告書については、
①刑事手続
②行政処分
③民事手続
での活用を認めている。
このうち、①の刑事手続での活用について自民党の見解案は、第2次試案から一歩踏み込み、「故意や重大な過失のある事例、その他悪質な事例に対象を限定するなど、謙抑的に対応すべき」と明記。
ただ、調査報告書を「刑事手続に使用することを妨げない」ことも併記しており、調査報告書が刑事訴追の端緒となる可能性を否定していない。
②の行政処分のための審議は、厚労省の医道審議会が行う。また、行政処分は医師などに対する再教育や、医療機関のシステムエラー改善に重点を置いたものとしている。
③の民事手続については、ADRの活用推進を図るため、医療界、法曹界、厚労省などからなる協議会を別途設置するとしている。
募集期間:19年10月17日~11月2日
意見総数:104件(個人87件、団体17件)
個人の職業構成:医療従事者65件、弁護士3件、一般14件など
・医療関係者の法的責任追及に傾倒しすぎるなど、全般的に懲罰的な意味合いが濃い
・現状を無視した医療に対する過大な要求が更に強くなる。調査委員会は、裁判の促進や関係者の処分か目的ではなく、安全で積極的な医療を行う環境づくりが一番の目的のはず
・萎縮医療、医療崩壊が促進されるまたは決定的なものにする懸念がある
・国の責任として、必要な予算と人材を配置して航空鉄道事故調査委員会などと同等な公正中立な第三者機関を設立すべき
・事故調査と行政処分を同じ厚労省内が担当すること、医療行政を通じて医療制度、診療システムに関与している厚労省が、そのシステム事故の調査委員会を直属傘下に置くことなど、問題かある。厚労省内に調査委員会を設置する場合、同省は事務手続きのみを行い、委員に関与しないようにしていただきたい
・病理医、法医の不足かあり、解剖に対処可能なよう、労働環境を含めた支援が必要
・調査委員会が同時に抱える二面性(紛争解決と真相突明)については、もう少し時間をかけてきめ細やかな論議を尽くすべき
・「診療関連死」の定義が曖昧であり明確化すべき
・届出義務化は萎縮医療を招く。ペナルティはないようにすること
・届出義務化すると医療側か過剰に判断し自らの判断を避け、膨大な量の届出が出されると考えられるが適切に対応しきれるか
・届出義務ではな<、調査への協力を義務化すべき。ペナルティは非協力や隠蔽に対するものとすべき
・届出義務化と刑事・行政処分の連動は、医療の向上には、有害無益である
・警察に通報する場合は、その判断基準や意思決定の手順を明確に定めなければならないが、そもそも医療行為に刑事訴追は馴染まない
・調査委員会の報告や活動と行政処分、民事紛争、刑事手続との関連をなくすべき。医療従事者個人を罰しても、医療の安全にはつながらず、むしろ医療の崩壊につながる
・刑事処分等に使われるのであれば、当事者が証言を拒んだりするため、医療行為の透明化はできず、真相究明は困難になる
・罰をおそれるための萎縮と隠蔽が必ず起こるので、罰しない代わりに事実を正確に申告右舷、原因究明をするのが正しい事故防止対策ではないか。業務上過失致死傷罪は、故意罪とは異なり、抑止力による再発防止は不可能
これに対し、現場はどんな不安を感じているのか。
第2次試案に対するパブコメ(上掲)では、①届出の義務化、②刑事手続、行政処分、民事手続での訓告報告書の活用、③死因究明を行う組織のあり方-の3点が問題点として浮かぶ。
①の届出の義務化については、「診療関連死の定義が曖昧」「医療側が過剰に判断し、膨大な届出が出される」など、届出範囲の明確化が求められている。
また、「萎縮医療を招く」など、義務化そのものやペナルティが診療に与える悪影響にも不安の声が上がっている。
②の刑事手続、行政処分、民事手続での活用についても同様に、「医療従事者個人を罰すれば医療崩壊につながる」など、診療への悪影響が指摘。特に刑事手続については、「当事者が証言を拒み、真相究明は困難になる」「罰しない代わりに、事実を正確に申告させるべき」など、反対意見が多い。
また、訓告委員会が警察に通報する基準づくりの必要性も指摘されている。
③の死因究明を行う組織については、「事故調査と行政処分を同じ厚労省が担当すること」などの矛盾が指摘、真の第三者機関として設置すべきとする声が多数上がっている。
厚労省が今後行う法案作成作業では、パブコメで明らかになったこうした懸念をどこまで払拭できるかが焦点となるだろう。
ただ、自民党の有力議員の中には公然と反対論を唱える者もいるという。民主党も対案を提出する構えをみせており、法制化にはなお曲祈が予想される。
医療関係者以外の目には、互いにかばい合っているように見えてしまうでしょうか。
死因の究明って難しいと思います。
過程をもっと重視していただきたいですね。
投稿情報: せんせい ありがとう♥ | 2007年12 月20日 (木) 16:52